捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第21話

『今度の日曜日、秋葉原に来て♪』

 金曜日の夜、高坂さんから来たメールにはそう書いてあった。

 え、何これ、デートのお誘い?この子俺の事、好きなの?などと、中学時代なら勘違いしていたかもしれない。そして大ダメージを受けていたかもしれない。

 まあ、さすがに今ではそんなラブコメ展開がないのはわかりきっている。つまり、このメールは……

「ライブ……か?」

 場所は秋葉原だし、高坂さんから個人的な誘いを受ける心当たりがない以上、そう考えるのが妥当だろう。しかし、なんて情報の少ないメールだろうか。

『何かあるのか?』

 さすがに謎すぎるので、質問メールを送る。

 数分後に返ってきたのは、『日曜日楽しみにしてて!』というメールだった。

 

「穂乃果、どうかしたのですか?」

「何でもないよ。それより海未ちゃんのその格好、すごく似合ってるよ!」

「よ、余計なことは言わなくていいのです!くっ……はやく日曜日を終えてしまいたい……」

 

 日曜日になり、高坂さんのメールに書いてある住所まで行くと、無骨な外観のビルに辿り着いた。ここの2階らしい。途中でどんな場所か検索してもよかったが、行ってからの楽しみにしておこう、という自分らしからぬ思考が働いてしまった。

 階段を上がり終えると、ファンシーな外観の扉があった。

 店名からして……メイド喫茶……だよな?

 千葉でも見かけた事がある。いや、むしろ客として来店までした。確か、川……何とかさんのバイト先を探してる時だったか。

 不安を押し殺し、扉をゆっくりと開く。

 すると、やけくそ気味の挨拶が飛んできた。

「おかえりなさいませ~!ご主人様!」

「はっ?」

「…………」

 そこにはメイド服姿に笑顔のまま固まる園田海未がいた。

 

「穂乃果ぁ……」

 園田は恨みがましい目つきで高坂さんを震え上がらせる。

「ハラショー……」

「ご、ごめんねぇ。ほら、サプライズというか……」

「このようなサプライズは欲しくありません!」

「注文したいんだが……」

「貴方はせめて私に確認しようとは思わなかったのですか!?」

「アイスコーヒーで」

「無視しましたね!?」

 園田はそう言うが、俺に非はないのでどうしようもないのと、何故かあまり園田の方を見れていない。さっきから、戸塚の姿を思い浮かべ、自我を保とうとしていた。

「ハラショー……」

 何故彼女達がメイド服を着用しているかというと、新曲のコンセプトに関わる重要なミッションらしい。敢えて聞くまい。

「…………」

「な、何ですか?」

「……いや、何でもない」

 目を馴らすまでには、しばらく時間がかかりそうだ。

 

「ハラショー……」





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