捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第20話

 結局、デート擬きは中止となり、しばらく3人で話し込んでから、秋葉原に戻り、解散する事になった。

 帰り際、園田が小声で謝ってきた時の表情がやけに印象的で、帰りの電車の中も、食事中や入浴中でも、頭に貼りついたままだった。

 そう、その表情は残念そうに見えたのだ。

 人間観察が特技の自分が自信を持てるくらいに。

 あんな表情をされたら、淡い期待のようなものに胸が高鳴り、あり得ない幻想の中に身を委ねてしまいそうだった。

 いかん。らしくない事になりそうだ。

 さっさと寝てしまおうと思い、目を閉じると、スマホから呼び出し音が鳴り響く。

 画面の確認をする必要を、何故か感じなかった。

「どした?」

「あ、いえ、今日の事です」

 やはり園田だった。少し遠慮がちな声音だ。

「ああ、まだ途中とか言ってたな」

「それもあるのですが……」

「…………」

「…………」

「どうかしたのか?」

「今日は……ありがとうございます」

「……べ、別に大した事してない」

「ふふっ。そうかもしれません」

「そこは否定しないのかよ……」

「でも、貴方だから頼めました」

「……そっか」

「はっ!べ、別にそういう意味ではないですからね!」

「わかってるっての」

「そ、そういえば貴方は穂乃果にやけにデレデレしていましたね」

「いや、してないから」

「そうですか?初対面の割にはやけに楽しそうに会話をしていましたが」

「会話っつーか、あれは殆ど質問に答えてただけだろ」

「それもそうですね。貴方が初対面の女性と上手く会話などできるはずがありませんね」

「反論したいところだが、事実だから言い返せねぇ」

「いえ、ごめんなさい。ただ、もしかしたら穂乃果みたいな女性が好みかと……」

「いきなり何だよ。それに俺が好きなスクールアイドルは優木あんじゅって言っただろうが」

「……そういえば言っていましたね。ちなみにどんなところが好みなのですか?」

「何で、んなこと言わなきゃいけないんだよ……」

「さ、参考です!貴方の一言が今後のスクールアイドル界を左右します!」

「え?そんな重要な話題なのか?」

「当たり前です!さあ、答えなさい!」

「…………あー、その、あれだ」

「…………」

「スタイルよくて優しそう……」

「…………は?」

「まあ、あれだ。男の妄想が具現化した存在みたいだしな」

「貴方は最低です」

「理不尽すぎる……お前が言えって言ったんだろ」

「まさか、下心一色の理由とは思わなかったからです!」

「ふざけんな。馬鹿言うな。そんなんじゃねーよ。なんつーか、人柄だよ」

「ほう……貴方は会ったこともない方の人柄までわかるのですね」

「あ、当たり前だろうが。人間観察が特技のぼっちなめんな……」

「ふぅ……私だってその内、きっと大きく……」

「どうした?」

「いえ、何でもありません。やはり貴方は破廉恥だというだけです」

「お前は古手川さんかよ……まあ、でも……」

「?」

「ああ、なんつーか……μ'sの歌詞は……結構好きだ。元気がでるというか……やっぱお前、すげーな」

「……そう、ですか」

「あ、ああ……」

「ハ、ハラショー……」

「……は?」

「い、いきなり、歌詞を褒めるなんて……イミワカリマセン!」

「園田……ど、どうした」

「ど、どうでもいいのです!いえ、いいんですにゃ!そ、それより貴方は明日からも早寝早起きを心がけなさい!ファ、ファイトですよ!」

 園田らしからね言葉と共に、通話は一方的に途切れた。

「……何だったんだ?」

 

「あ、あの男は卑怯すぎます!」

 翌朝、私は寝坊してしまいました。





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