捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第19話

「やっぱり海未ちゃんだ!」

「ど、どなたでしょうか?」

「いきなり、他人のフリ!?」

「私は海未ではありません。私の名前は……河です」

「誤魔化し方が雑すぎるよ!それと……」

 高坂さんの目がこちらに向く。希望的観測とかではなく、その瞳には、悪意や疑惑などはなく、純粋な興味が宿っていた。

 彼女は海未に向き直り、躊躇いがちに尋ねる。

「も、もしかして……海未ちゃんの……」

 それを言わせんとばかりに、園田は勢いよく口を開く。

「付き人です!」

「おい」

「そうなの!?」

 何故か信じてしまう高坂さん。まじか。

「ええ。穂乃果にはマネージャーという言い方の方がわかりやすいでしょうか」

「マ、マネージャー……なんかすごいね!」

「いや、違うっての」

「じゃあ、君は海未ちゃんの……」

「し、知り合いです!ただの!」

「でも、さっき『あ~ん』ってしてたような……」

「あれは……それより、穂乃果はどうしてここに!?」

「何となく散歩してたら、いつの間にかここに着いちゃって……」

「「…………」」

 俺と園田は、高坂さんの言葉に何ともいえない表情になり、目を見合わせた。この子……由比ヶ浜クラスのアホの子じゃないだろうか。

「じゃ、私も一緒にお茶していいかな!?」

「え、ええ……もちろん」

「君も大丈夫?」

「あ、ああ……大丈夫だ」

 すると、彼女の目がテーブルの上にあるものに向けられる。

「あれ?これってカップル専用のメニューだよね?やっぱり二人は……」

「いえ、これは私が飲みたいから頼んだのです!ええ、そうですとも!その為に二人で来たのです!ああ、喉が渇きました!」

 畳みかけるようにいうと、園田は半分以上残っていたトロピカルジュースをストローで一気に飲み干してしまった。

 その様子を、俺は残念なものを見るように、高坂さんはただただ不思議そうに見ていた。

 

「比企谷八幡君、だね。私、高坂穂乃果!よろしくね!」

「あ、ああ……」

「穂乃果、行儀が悪いですよ」

 こちらに身を乗り出す高坂さんを窘める園田は、まるで姉のような立ち振る舞いで、高坂は笑顔でそれに従う。いや、ペットと主人……はさすがに失礼か。

 お互いに自己紹介を済ませ、何とかあらぬ誤解を取り除くことができた。それからは、それぞれの学校の話をした。まあ、こちらが話せることは殆どないのだが。

「ねえ、比企谷君!今度ライブに来てよ!」

「お、おう、気が向けば……な」

「じゃあ、私とも連絡先交換しようよ!」

「あ、ああ……」

「むっ……」

 連絡先交換している間、園田から刺すような視線が注がれている気がした。





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