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それでは今回もよろしくお願いします。
「ふむ……これでゲームセンターデートは達成しました」
園田がメモを確認しながら呟く。
しかし、そう言いながらも視線はプリクラコーナーにチラチラと向けられていた。
さらに、ばれてないと思っているのか、こちらにも同じように視線を向けてくる。いつものようにはっきりしない辺りが色々と鬱陶しい。
「はあ……行くぞ」
「どこにですか?
べ、別に私は……」
「いや、そういう面倒くさいのいいから。これも参考資料だろ?」
「で、でも……」
「別にあんなの写真撮るだけだろ」
「むぅ……」
「ほら、行くぞ」
「…………す」
園田の言葉は聞き取れなかったが、とりあえずこれでいいと思った。こいつの彼氏になるのは謹んで遠慮するが、今日は園田の作詞の為の恋愛体験みたいなものだ。中途半端にやってグダグダ感を出すのは真っ平ごめんだ。何の為に惰眠を貪るのを止めたかわからなくなる。
園田から視線を感じるのは気のせいという事にして、プリクラコーナーへ向かった。
コーナーに入り、適当な機種を選ぶ。そういや、前に戸塚と撮影したなぁ。また撮りたいなぁ。
「見ろよ、あの子。めっちゃ可愛い」
「ちきしょー、ぼっちのクセに」
周りの視線がチクチク突き刺さる。また失礼な奴がいたような……万死に値する。
園田は俺以上に視線を感じるようで、さっさとカーテンをくぐり、中に入ってしまった。見た目がいい奴なりの苦悩というやつだろう。
フレームなどの選択は彼女がやってくれた。
しかし、それにしても……
「…………」
「どうしました?驚いた顔をして」
「いや、ちゃんと操作できるんだな、と思って」
「貴方はさっきから、私を何だと思っているのですか?家は和風ですが、普通の女子高生ですよ」
「魂を抜かれるとか言ったらどうしようかと思ったんだが」
「それはお年寄りでは……それより、失礼ですよ!射抜かれたいのですか!」
「冗談でも怖いから止めてね……」
「全く……では撮りますよ」
「お、おう……」
さっきまであれだけ躊躇っていた癖に、撮る段階になると、園田はやたら体を寄せてきていた。俺が意識しすぎなだけかもしれないが、微かに触れた肩が妙に熱く感じる。
「……あ、あまりこっちを見ないでください」
「悪い……」
出てきた写真に写る二人は、無表情で肩を寄せ合い、控え目に言っても気味が悪かった。
「何とか終えました……」
「ああ」
ゲームセンターを出た俺と園田は、何かを乗り越え、一つ成長したような充足感があった。きっと周りから見たら小さな小さな一段だろうが。
「あの……」
「?」
園田は俺の肩を掴み、もじもじしている。
「トイレなら戻って済ませてこいよ」
「貴方は本当にデリカシーがないですね!違います!」
「いたたたたたたたたっ!?」
肩が、肩が割れちゃうっ!!
「その……気を遣っていただきありがとうございます」
「あん?……ああ、別に……小町がμ'sのファンなんでな」
「じゃあ、小町さんにも感謝ですね。それで……貴方は誰が……その……こ、好みなのですか?」
「A-RIZEの優木あんじゅ」
「…………」
今度は理不尽に蹴られました。
「なあ、写真は……」
「こ、こ、これは私が預かっておきます!貴方に渡すとどんな破廉恥なマネをするかわかりませんから!」
「いや、しないから。写真に破廉恥なマネって……」
「とにかく!これは私が誰にも知られる事なく処分しておきます!」
「お、おう……」
次に訪れたのは、いかにもなオシャレカフェだ。ぼっちがこういう場所に来ると、店員や客からドヤ感を感じてしまう。我ながら卑屈だ。
「ほら、行きますよ……って、何を怒っているのですか?」
「……いや、怒ってないけど」
「今、親の仇を見るような目を向けていましたよ」
「いつもの癖だから気にすんな」
「それは……かなり重症ですね」
「それよか、このカフェに何かあるのか?」
「ええ、カップル専用のメニューがあると聞きました」
「カップル専用……ね」
嫌な予感しかしない。
「お待たせしました~」
「「え?」」
そこには、色鮮やかなトロピカルジュースの入った大きなグラスに二つのストローが差してあった。
まさか、こんな定番イベントが発生するとか。
「「…………」」
二人して固まる。
「じゃあ、どうぞ……」
「いや、先に……どうぞ」
「いえいえ、殿方から先に……どうぞ」
「いやいや、レディーファーストって言葉を俺は大事にしてるんで。つーか、メモにはこういう場合、どうするって書いてあるんだ?」
「これは予想外です。流石に二人で同時に、というのは躊躇われますね」
「……確かに。本物のカップルでもないしな」
「ええ。貴方といる時間は決して嫌ではないのですが」
「…………まあ、俺も嫌いじゃない。面倒くさいことは多々あるがな」
「へえ、面倒くさいとは何の事でしょうか?」
「はやく飲めよ」
「話を逸らそうとしましたね。……もう、お互い喉も渇きましたし、一緒に飲みますよ」
「はいはい」
周りの客
『お前ら、何なんだよ』
ふふっ。何故かこの人といると、時間がはやく過ぎてしまいますね。穂乃果達といる時とはまた違った楽しさ……あれ、楽しい?
確かに私はこの時間を楽しんでいる。
出会いは最悪だったのに、彼との時間が日常に変わりつつある。
私はこの温かい気持ちが何なのかを知りたかった。
急に俯いた園田が、またすぐに顔を上げ、ジュースに乗っかっているクリームを掬い、こちらに差し出してきた。
「はい……あ、あ~ん……」
「は?」
何が起こっているのか、理解が追いつかずにいると、園田は手を奮わせながら小さく呟いた。
「こ、これもプランに入っていますので……」
「ま、まじかよ……さっきと言ってることが……」
「ほら、早く!」
「…………」
渋々口を開く。
「あれ……海未ちゃん?」
「○×△*♪!?」
園田がわけのわからない叫び声をあげる。
あまりの声のボリュームに、周りの目がこちらに向いた。かなり恥ずかしいんだが。
しかし、園田はそんな事はお構いなしに、口をぱくぱくさせ、声をかけてきた人物を指差す。
「ほ、ほ……穂乃果」
「…………」
そこにはμ'sのメンバー、高坂穂乃果がいた。
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