捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第17話

「ねえー、はち……比企谷くーん。とってー」

「うわぁ……」

「な、なんて顔をしているのですか!そんな気味悪そうに!」

「いや、実際気味悪すぎるぞ……」

「ど、どこがですか!?」

「色々と」

「曖昧すぎます!」

 いや、だって……ねえ?

「どうしたんだよ、その棒読みキャラ。もう、キャラ変更は無理だぞ。ポンコツは絵里さんで間に合ってる」

「何を言っているのですか?絵里がどうかしましたか?」

「いや、こっちの話だ……それより、そのメモは何なんだ?」

「私の台詞です」

「…………」

「あらゆる場面において、私が言うべき、か、彼女としての台詞をまとめています」

 こいつ……まじか……。てか、何照れてんだ。そんな表情されると、こっちにも動揺が移るんですけど。

「なあ、その……普通でいいんじゃないか?」

「認められないわ!」

「いや、せめて最低限のキャラは保てよ。だから、普通で……」

「拒否する!」

「またわかりにくいボケを……」

 真似事とはいえ、お互いに初デートである。少しぐらいの混乱はつきものだろう。……そういう事にしておこう。

 そんなわけで俺達は、クレーンゲーム機の前で、しばらく不毛なやり取りを続けた。

 

「ふぅ……私としたことが……つい、混乱してしまいました」

「まあ、仕方ねーよ。つーか、そろそろやろうぜ」

「ええ、そうですね。では……」

「メモは見るのかよ」

「もちろんです。せっかくまとめたのですから」

 園田はお金を機械に入れ、こちらに目で合図を送る。お前がやれ、という事だろう。自分できちんと金を出すあたりが、律儀な奴だと思わされる。

 その律儀さに応えてやりたいとは思うものの、クマのぬいぐるみは、クレーンからぽとりと落ちてしまう。

「くっ……」

「むぅ、意外と難しいものですね」

「そりゃあな」

「はっ……もー、比企谷くーん。しっかりしてよー。わ、私の為に、あの、ク、クマさんとってよー」

「…………」

 やっぱりやりづらい。つーか、棒読みが不気味すぎて、可愛くもなんともない。なんだ、この残念美少女。

 この後、計5回チャレンジしたが、結局取れなかった。

 

 次は何のゲームをするのか、聞こうと園田に目を向けると、彼女は立ち止まり、何かを見ていた。

 すると、そこはプリクラの機械がズラリと並んでいた。男子のみの利用は出来ないコーナーだ。

「「…………」」

 俺と園田はそんなプリクラのコーナーを……

「次はなんだ?」

「次はあれですね」

 スルーした。

 

「シューティングゲームか……」

「ええ。盛り上がると聞きました」

「…………」

「どうかしましたか?」

「いや、お前の事だから、弓なんか持ち出すんじゃないかと思ってな……」

「貴方は馬鹿なんですか?そんな女子高生はいません」

「ぐ……」

 正論すぎて言い返せない。

 先程は園田がお金を出したので、今度は俺が二人分の料金を投入する。

 最初の導入部分の映像をスキップすると、早速ゾンビが出現した。

「わー、ゾンビだー。こわーい」

「…………」

「えーい。ラブアローシュート!バァン!」

「は?」

「こ、これも台詞の一つです!」

「最近の女子にはそんなのが流行ってんのか……」

「そ、そんなのとはなんですか!」

「いや、ラブアローシュートって……あれ?この前総武高校で……」

「忘れなさい!あ、ゾンビが来ました!」

 意外と園田のセンスがよく、第3ステージまで進むことができた。

 

 次は何をするのかと園田に確認しようとすると、彼女はチラチラとあるコーナーを見ていた。

 その視線の先には、やはり先程と同じようにプリクラのコーナーがある。

「「…………」」

 そこで、俺達はプリクラの機械を……

「お、おい、あそこにリズムゲームあるぞ」

「そうですね!行きましょう!」

 再び通りすぎた。

 





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