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それでは今回もよろしくお願いします。
ファーストフード店に入った俺達は、注文した品を受け取り、奥の禁煙席の方へ向かった。園田の目的はわからないが、ひとまずは腹ごしらえといったところだろうか。席へと向かう園田の背中からは、何ともいえない緊張感が漂う。……本当に俺、消されないよね?
「きゃっ!」
「っ!」
考え事をしながら歩いたせいで、女性店員とぶつかる。
「も、申し訳ございません!!」
「いえ……こちらこそ」
幸いトレーの上の商品は無事だった。いや、それよりも、女性店員の豊かな胸が俺の腕に当たったままだ。
「あ、すいません!」
「だ、大丈夫でしゅ……」
この後、慌ててやってきた、俺とは正反対の労働意欲に溢れた大学生くらいのスタッフの丁寧な謝罪を受け、しどろもどろになりながら、席に戻る。……噛んでしまったのが、すごく恥ずかしい。
席につくと、園田は腕を組んで、こちらを睨んでいた。
「…………」
「ど、どうした?」
「…………」
「何で怒ってんだよ」
「いいえ。呆れているだけです」
「?」
「ちょっと大きな胸を見ただけで鼻の下を伸ばす貴方にです」
「の、伸ばしてねーし!」
「私だってその内……」
「あん?」
園田はやや俯きながら、胸の辺りに手を添える。ああ、確かに……
「ってぇ!!」
「ど、どこをまじまじと見ているのですか!!」
「い、今のは不可抗力で……」
「ま、まあ、貴方は小さくてもいいという事ですね……って何を言わせるのですか!」
「理不尽極まりねぇぞ……」
「まあ、そんな事はどうでもいいのです。それより……」
園田はポテトを一本つまみ、こちらに差し出してきた。
「…………」
「…………」
何も出来ずに固まっていると、園田の顔がみるみるうちに紅くなる。何をやろうとしているかはわからないではないが、何でやるのかが、全くわからない。怖すぎる。
数十秒経ってから、やがて園田は消え入りそうな声で呟いた。
「はやく食べなさい……」
まじか。
「嫌だ」
「なっ!?こ、ここまで来て女に恥をかかせる気ですか!?」
「いや、さすがに……恥ずかしいし」
「あ、貴方という人は……!私のあ、あんな姿を見ておいて!この程度で……」
「ちょっ……!」
周りの女性客の目が冷たい。『サイッテー』とか『ぼっちのくせに』とか聞こえてくる。おい、後者の発言は絶対におかしい。いや、当たってんだけどさ。
とりあえず、今は目の前の問題を片付けよう。
「わ、わかった。やる。やるから」
「それでいいのです」
「ただ、理由ぐらい教えてくれ。じゃないと、俺もどう振る舞えばいいのかわからん」
「むぅ、確かにそれはそうかもしれませんね。私の配慮が欠けていました。実はですね……その……を……」
園田は何かを呟いているが、肝心な部分の声が小さくて聞き取れない。
「何だって?」
「だから……私と……デートを……してください」
「…………は?」
時間が止まったような感覚を、生まれて初めて味わった。
園田の真っ赤に染まった頬がやけに印象的だった。
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