捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第13話

「八幡?」

「おう、戸塚」

 俺は起き上がり、戸塚に向き直る。

「そっちの人は確かこの前……」

「気のせいだ。気のせい」

「でも、今膝枕……」

「気のせいだ」

 そう。俺は別に園田の圧力に屈した訳ではない。苦行を乗り越えた先の極楽を、トンネルの向こうの光を信じたからこそ、休日にも関わらず、己の体を痛めつけたのだ。

「やっぱり八幡だ!どうしたの?ジャージ着てるなんて珍しいね!あ、もしかしてランニング?」

「ああ、たまには自己鍛錬をしないといけないからな」

 つい、心にもない事を滑らかな口調で言ってしまう。

「朝は嫌そうにしていたのに……」

 園田からツッコまれるが、今はそれどころではない。

「戸塚はこんな所で何をしてたんだ?」

「僕はテニススクールに通う途中。八幡は……えっと……」

 戸塚は俺と園田を交互に見て、とんでもない言葉を口にする。

「デート?」

「違う」

「違います」

 即答。

 これ以上にないくらいの清々しく突き抜けるような即答。

「戸塚、よく見てくれ。そんな甘ったるいものじゃないんだよ」

「戸塚君、といいましたか、私がこのようなハレンチと付き合うとでも?」

「おい。お前、今人の事をハレンチそのものみたいに扱わなかったか?」

「失礼、噛みました」

「嘘吐け。わざとだ」

「それが何か?」

「開き直りやがった……」

「あはは、仲いいんだね」

「「良くない」」

 

 戸塚と別れ、自宅まで戻った俺達は、交代でシャワーを浴びる事になった。当たり前か。

 ここで、これまでの経験を生かそう。

 迂闊に風呂に近づくと、変なTo LOVEる……じゃなくてラッキースケベが発生してしまう。

 なので俺は自分の部屋から出ない。

 何なら布団で自分を簀巻きにしてもいいぐらいだ。やらないけど。

 しかし、朝っぱらから動いたせいか、かなり……眠い……。

 

「比企谷君。シャワー空きまし、きゃっ!?」

 顔の横にドシンという大きな衝撃と震動が走り、目が覚める。……正直かなり焦った。どうやら眠っていたらしい。

 そして、俺の視界に飛び込んできたのは青い……

「な、なあ、これはどういう事だ」

「……私も知りたいですね。教えていただけますか?」

 俺はとりあえずの予測を立てる。

・俺、ドア付近で寝る。

・園田、入ろうとして、俺の頭を踏みそうになり、慌てて避ける。そして、俺の頭を跨ぐ形になる。

・俺、目を覚ます。←今ここ。

「なあ、何で制服姿なんだ?」

「今から東京へ戻り、部活動に参加するからです」

 俺は園田のスカートの中を直下アングルで覗く状態のまま言った。

「……なあ、俺が助かる方法は……」

「ありません」

 意外なくらい明るい声音で、園田は俺の顔面をゆっくり踏みつけた。




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