それでは今回もよろしくお願いします。
「八幡?」
「おう、戸塚」
俺は起き上がり、戸塚に向き直る。
「そっちの人は確かこの前……」
「気のせいだ。気のせい」
「でも、今膝枕……」
「気のせいだ」
そう。俺は別に園田の圧力に屈した訳ではない。苦行を乗り越えた先の極楽を、トンネルの向こうの光を信じたからこそ、休日にも関わらず、己の体を痛めつけたのだ。
「やっぱり八幡だ!どうしたの?ジャージ着てるなんて珍しいね!あ、もしかしてランニング?」
「ああ、たまには自己鍛錬をしないといけないからな」
つい、心にもない事を滑らかな口調で言ってしまう。
「朝は嫌そうにしていたのに……」
園田からツッコまれるが、今はそれどころではない。
「戸塚はこんな所で何をしてたんだ?」
「僕はテニススクールに通う途中。八幡は……えっと……」
戸塚は俺と園田を交互に見て、とんでもない言葉を口にする。
「デート?」
「違う」
「違います」
即答。
これ以上にないくらいの清々しく突き抜けるような即答。
「戸塚、よく見てくれ。そんな甘ったるいものじゃないんだよ」
「戸塚君、といいましたか、私がこのようなハレンチと付き合うとでも?」
「おい。お前、今人の事をハレンチそのものみたいに扱わなかったか?」
「失礼、噛みました」
「嘘吐け。わざとだ」
「それが何か?」
「開き直りやがった……」
「あはは、仲いいんだね」
「「良くない」」
戸塚と別れ、自宅まで戻った俺達は、交代でシャワーを浴びる事になった。当たり前か。
ここで、これまでの経験を生かそう。
迂闊に風呂に近づくと、変なTo LOVEる……じゃなくてラッキースケベが発生してしまう。
なので俺は自分の部屋から出ない。
何なら布団で自分を簀巻きにしてもいいぐらいだ。やらないけど。
しかし、朝っぱらから動いたせいか、かなり……眠い……。
「比企谷君。シャワー空きまし、きゃっ!?」
顔の横にドシンという大きな衝撃と震動が走り、目が覚める。……正直かなり焦った。どうやら眠っていたらしい。
そして、俺の視界に飛び込んできたのは青い……
「な、なあ、これはどういう事だ」
「……私も知りたいですね。教えていただけますか?」
俺はとりあえずの予測を立てる。
・俺、ドア付近で寝る。
・園田、入ろうとして、俺の頭を踏みそうになり、慌てて避ける。そして、俺の頭を跨ぐ形になる。
・俺、目を覚ます。←今ここ。
「なあ、何で制服姿なんだ?」
「今から東京へ戻り、部活動に参加するからです」
俺は園田のスカートの中を直下アングルで覗く状態のまま言った。
「……なあ、俺が助かる方法は……」
「ありません」
意外なくらい明るい声音で、園田は俺の顔面をゆっくり踏みつけた。
読んでくれた方々、ありがとうございます!