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それでは今回もよろしくお願いします。
園田の家での謎のトレーニングから早一週間。
俺は自室にて穏やかにベッドで寝転がっていた。
そう、これが正しい休日の過ごし方。これを俺は望んでいたのである。暴力女から小突き回される休日など断じて望んでいない。やっぱり平和が一番だ。
そんな事を考えながら、徐々に眠りの世界へと意識が誘われようとしたその時……
コンコンとドアをノックする音がした。
「おはようございます」
凛とした声がドア越しに聞こえてくる。小町じゃない。戸塚でもない……よし。
だが俺は返事をしないただの屍になった。
「……失礼します」
何とその声の主は、こちらが許可もしていないのに勝手にドアを開け、部屋に入ってきた。RPGのキャラクター並みに失礼な奴だ。
しかし気を遣ってくれているのか、足音を立てる事もなく、ベッド脇へやってくる。
「まだ寝ているのですか?」
「…………」
危ねえ。うっかり返事しちゃうところだった。だがそんなお約束をしでかす俺ではない。
「どうやら寝ているようですね」
あれ?この子あっさり信じちゃったよ……。
「まったく、寝顔までハレンチですね」
どんな寝顔だよ!え、何?もしかして家族が誰も俺を起こさなかったり、カマクラが俺の布団に入ってこないのも寝顔のせい?頼むから嘘であってほしい。
「…………」
何やら人の気配が近くなった気がする。
侵入者……園田の呼吸音の位置が低くなった。
「目は汚れていますが、それ以外は……」
こいつ……人が眠っていると思って言いたい放題だな。
どうせもう逃げられないので、諦めて目を開ける。
すると、思いっきり園田と目が合った。
「「…………」」
呼吸が止まるような張り詰めた沈黙に包まれる。
園田の目は驚きに見開かれたまま、逸らされる事はなかった。ほんのりと紅い唇もぴたりと閉じられている。
そして、そんな長いような短い時間も終わりが訪れた。
「っ!!」
園田は尻餅をつき、声を出そうとしても出ないのか、口をパクパクさせている。
こっちも朝から無駄に心臓が跳ね上がり、上手く思考が働かない。
「あ、あ……」
ようやく園田の口から声が出てくる。
「貴方は寝たふりをしていたのですか!」
「いや、寝てた」
「嘘をつかないでください!」
「…………」
「あ、こら!二度寝なんてさせませんよ!」
布団を剥ぎ取られ、カーテンと窓を全開に開け放たれる。梅雨も消え去ったのか、というくらいの澄んだ朝陽の光と、生温い風が、この部屋に新しい一日を告げた。
「さ、顔を洗ってきてください」
珍しく微笑む園田を見ながら、何となく声をかけた。
「なあ……」
「何ですか?」
「お前……俺の事好きなの?」
「…………」
再び時が止まる。
もちろん本気で言った訳ではない。だが目の前の暴力大和撫子にはそんな冗談など通じるはずもなく、次第に不自然なくらい優しい笑顔を浮かべた。
「面白い事を言いますね。貴方は」
その後、園田のチョップが脳天に炸裂し、立ち直るのにしばらくの時間がかかった。
さっきの胸の高鳴りなど欠片も残っていなかった。
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