捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第10話

 

「二人共、そろそろお昼ご飯にしましょう」

 園田と並んで腹筋をしていると、先程の女性から声をかけられた。……た、助かった。500回なんて無理。ランニングの疲れもかなり残っているのに……。

「わかりました。お母さん」

 あのお淑やかな大人の女性はなんとこの体力バカの母親だそうだ。どこでどんな遺伝子操作をしたら、こんな暴力女が生まれてくるのか。

「何ですか、その目は」

「いや、何でも……」

「本当ですか?またハレンチな事を企んで」

「ないから。一回も企んだ事ないから」

「ほう、まだ認めないのですか?」

「いや、ここまで来るとハレンチ連呼してるお前の方がハレンチな気が……」

「そこに直りなさい」

「あらあら、仲が良いのね」

「「違います」」

「海未が男の子を連れてくるなんて初めてだから嬉しいわ。八幡君、この子の事よろしくね。真面目過ぎて融通が効かないところもあるけど、根は優しい良い子だから」

「は、はあ……」

「お母さん、止めてください!そ、そんな仲ではありません!貴方も否定しなさい!」

 そこまで顔を真っ赤にして否定されると俺も軽く傷つくんですが……まあ、こいつの彼氏とかこっちから願い下げだが。

 園田の母親、美空さんは俺達の反論は華麗にスルーし、俺達にタオルを渡して道場を後にした。

 その背中を見送った後、園田と目が合ったが、ぱっと逸らされた。彼女はそのまま開けっ放しの扉へと歩きながら、こちらを見る事もなく呟く。

「……じゃあ、休憩にしましょうか」

「ああ……」

 道場には二人の汗と何とも表現しづらい空気が残った。

 

「お兄ちゃん、海未さん、お疲れ~♪」

 小町が御盆を抱えてやって来た。

「おう……てかお前何してたんだよ」

「お昼ご飯の準備手伝ったり、海未さんのお母さんにお兄ちゃんの事教えたり、海未さんのアルバム見せてもらったり……」

「…………」

「もう、お母さん……!」

 何だ。何を言ったんだ。ナルシスト事件か。アニソン事件か。それとも別の何かか。

 園田も隣で頭を抱えている。

「ささっ、お昼ご飯食べて食べて♪」

 午後からこいつも同じトレーニングをさせてやろう。10キロランニングから忠実に再現って事で。

 そんな事を考えながら、縁側に俺と園田が腰かけ、小町が間に御盆を置き、俺の隣にちょこんと座る。

「小町さんは料理が出来るのですね」

「はい!一応、家では私の担当なので」

「…………」

「な、何ですか。私も料理なら少しは出来ます」

「何も言ってないけどそこまで言うなら聞いてやろう。得意料理は?」

「……炒飯と餃子」

「小町、この卵焼き美味いな」

「ち、炒飯と餃子の何が悪いんですか!」

 園田の慌て気味の声が少し微笑ましい。

 いつもと違う場所で摂る昼食は、賑やかな時間が流れた。





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