まさかのイベント発生。
親戚挨拶とか想定外すぎるだろ。いや、いつかは会うんだろうけど。
内心の動揺が顔に出ていたのか、海未が優しく微笑んだ。
「ふふっ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。八幡の良さはしっかりと伝えてありますので」
「そ、そうか……」
一体何を伝えたのだろうか。後で美空さんに聞いておかねば。
海未は笑顔のまま拳を握り、自信満々に口を開いた。
「それに、八幡は日々の鍛練を怠っていません。もっと自分に自信を持ってください」
「……まあ、それはそうなんだが」
まさか自分の腹筋が綺麗なシックスパックになるとは思ってもみなかった。何なら、そろそろペンタル・ファクラッシュとか百烈百歩神拳とかマスターできそうな気がしている。いや、もちろん冗談だけど。
とりあえず、今は体を動かすのが楽しいまである。
「しかし、海未の親戚か……まあ、どんな感じかは気になるな」
「そうですか?まあ、特に変わったところはありませんけど」
そうは言っても、園田家の血筋ということは、どこかクセのある人達なのは間違いない。
……月いちでフルマラソンとかやらされたらどうしよう。今なら何だかんだやっちゃいそうな気がする……。
「なっ、ど、どういう意味ですか!クセしかない貴方に言われたくはありません!」
「いや、当たり前のように心読むのはやめようね。あとクセしかないって……」
「最近は手に取るように貴方の考えてることがわかりますから」
「え、なにそれ、こわい」
「これも……ふう……恋人同士だからこそ、ですね」
「いや、普通の恋人は読心術まで身につけないから」
「八幡は私の心が見えないのですか?」
「……わかる時とわからん時がある」
「じゃあ、今私が何を考えているかわかりますか?」
「…………『今日は久しぶりにお母さんの手料理が食べられます』、とか?」
「むっ、半分は当たっているのですが、もっとこう雰囲気といいますか……」
「全部わかってたら、それはそれで面白味がないからって事で……」
「ふふっ、それもそうですね。では、心を読むのは八幡の浮気を見抜く時くらいにしておきます」
「いや、しないから」
そんなやりとりをしているうちに、やがて園田家の門が見えてきた。
「……着いたな」
「そうですね。さあ、行きますよ」
海未からそっと手を握られ、俺は自然と頷いた。
また少し騒がしくなりそうな確信に近い予感と共に、俺は園田家の呼び鈴を鳴らした。
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「へえ、あの人が海未お姉ちゃんのフィアンセかぁ。面白そう♪」