大学生活が始まり早二年。私と八幡は大学は別々ですが、彼が進学と共に東京に引っ越してきた事もあり、順調に交際を深めています。とはいえ、まだ学生の身分ですので、節度ある清らかな交際を心がけています。彼は私の家の近くのアパートに住んでいますが、彼の部屋に泊まるのはできるだけ控え、せいぜい毎晩御飯を作り、週3で泊まるくらいです。
このように私達はまだ学生の身ですので、節度を持ったお付き合いを心がけています。
「ねえ、海未ちゃん」
「どうしたのですか、穂乃果?」
「海未ちゃんってさ、最近……エッチぃよね」
「っ!?」
穂乃果のいきなり過ぎる一言に、危うく水を吹き出すところでした。危ない危ない。いえ、それより……
「……今、何と……?」
「海未ちゃんってさ、最近……エッチぃよね」
「な、何を言っているのですか、貴方は!?」
「だってさ、この前学校で言われたんだよ?「あの綺麗な人妻っぽい人、高坂さんの知り合い?」とか「あの色っぽい人紹介して」とか」
「後者の不埒者はすぐに私の前に連れてきなさい。きつめの折檻を加えてあげます」
まったく……これだから男の人は。
しかし、色っぽいですか……私がそのような評価を得るとは……確かに胸は少し成長しましたが……。
そ、それもこれも八幡が悪いのです!もう……
色んな事を思い出し、頬が熱くなるのを感じる。
「海未ちゃん。どうしたの?いきなりニヤニヤして……」
「いえ、何でもありません。とにかく、私は普通なのです」
「今のは普通に怖かったような……」
「あっ、そろそろ時間ですね。じゃあ私は八幡と約束がありますので」
「あっ、うん。またね!」
「はい、それでは」
「……仲良いなぁ。皆言ってたけど、本当に学生結婚しちゃったりして」
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「八幡!」
顔を上げると、海未が長い髪を靡かせ、こちらに駆け寄ってきていた。
「……おう」
軽く手を挙げて挨拶すると、彼女は慣れた動作で腕を絡めてきた。
肘のあたりに柔らかな感触がぶつかるのが、未だに慣れないのはナイショの話である。
「……八幡、何を考えてるかわかりますよ。破廉恥です」
「いや、君のせいだからね?すっかり破廉恥になったそっちが悪い」
「だ、誰が破廉恥ですか!失礼ですね!」
なんて言いつつ、体は押しつけてくるのだから困る。嬉しいけど。
「……まあ、今日も一緒にいれて嬉しいとは思ってるよ」
「そうですか。それはもちろん私もです」
恥ずかしげもなくこういう事を言えるようになったのも、いい意味で毒されてきたということだろうか。
……今さらながら、こういう感じになったのはどっちからなんだっけ?
そんなことを考えていると、海未がさりげなく体を離した。
「……どした?」
「いえ、向こうに後輩らしき人物がいたので」
「ああ、そういうことか」
海未は後輩の前では清楚な大和撫子で通っているらしい。まあ、今さらそんな仮面を被らなくてもいいとは思うが。
「八幡!どういうことですか!?私は清楚ですよ!」
「お、おう……」
私は清楚ですよ!なんてアピール初めて聞いたわ。
「そういや、今日はお前んちで何するんだ?」
「実は今日、遠方から親戚が来るので、その……貴方を紹介したくて。未来の夫として」
「…………は?」
もじもじと頬を染める彼女に、俺はただただ呆気にとられていた。