捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第102話

 

 ライブ当日。

 全国のスクールアイドル達が秋葉原の街に集結するイベントだけあって、どこもかしこも人で溢れていた。まあ、この街は年中賑わってる気がするが……。

「八幡、μ'sの皆とは連絡はついたの?」

「ああ、もうじき開演だと……そういや、お前は準備しなくていいのか?」

「僕……男の子なんだけど……」

 何だ。戸塚も歌って踊るのかと思っちゃったよ。でも、想像するだけなら自由だよね!

 そんなやり取りをしている内に、開演の合図らしきサイレンの音が鳴り響く。いつの間にか、上空を『Love Live!』と書かれた飛行船が飛んでいた。観客達も変わり始めた空気に歓声を上げる。

 すると、スクールアイドルが整列し、即席の花道を作り上げた。

 そして……

『μ's……ミュージック、スタート!!!』

 九つの声が高らかに重なり、彼女達の最後のライブが幕を開けた。

 

 *******

 

 まだ3月末だというのに、秋葉原の街は真夏のような熱気に包まれていた。

 彼女達のパフォーマンスに観客が声援を送り、彼女達もまたさらに躍動感溢れるパフォーマンスで魅せる。

 そんな凄まじいエネルギーの交換が行われていた。

 A-RISEやヒフミトリオやμ'sメンバーの妹も笑顔で踊っている。

 俺は、その祭りの中心点にいるμ'sの……海未の姿を見つめ、大きく息を吸った。表情がぎりぎりわかるくらいの距離だが、何とかなるだろう。

 柄でもないし、目立つのは嫌いだし、感情を表に出すのは苦手だが……

「海未ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 全力で叫ぶ。

 隣にいる戸塚が肩を跳ねて驚くくらいに。

 見知らぬスクールアイドルの視線がこちらに向くくらいに。

 彼女の耳に届くくらいに。

 心が震えるくらいに。

「……ふふっ」

 海未の口元が綻ぶ。スクールアイドルとしての笑顔ではなく、ただの園田海未として。

 それは一瞬のことではあるが、この瞬間を忘れることは一生ない気がした。

 

 *******

 

「もう……驚いてダンスが乱れるところでした」

「悪い……」

 祭りの後の街の片隅、人目を憚るように建物の陰で会話をする二人。まあ、実際のところは俺が叱られているだけだが。いつものやり取りである。出会った時から叱られている。

 出会った時と違うのは、最後にやわらかく微笑むところだ。そして、この瞬間は結構好きだ。

「でも……ありがとうございます。約束通り、ちゃんと見てくれましたね」

「ああ、まあな」

 どちらからともなく拳を突き合わせる。

 まだ彼女はスクールアイドルだから。

「では、また後で」

「おう」

 仲間の元へ駆けていく彼女の背中。

 俺はその背中に小さく「お疲れ」と呟いた。

 





 次回で最終回です!

 読んでくれた方々、ありがとうございます。

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