インストール@プリキュア!   作:稚拙

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 バグッチャー大図鑑・特別編

 ネガキュアバグスター(ステージ3:ネガキュアバグッチャー)

 ふたりのネガキュアバグスターに、何者かによってキュアチップが埋め込まれ、さらに大量のワルイネルギーを投与されたことで、バグスターとバグッチャーの複合体といえる存在へと突然変異した存在。CRの面々は『合併症』という通称を付した。
 無理やり埋め込まれたキュアチップとワルイネルギーからの膨大なデータにバグスターの人格データが圧迫されている為か、理性は殆ど崩壊状態となっており、目についたモノすべてに襲い掛かる野獣のような存在となっている。

 通常形態(バグスターモード)での戦闘能力は大幅に向上、さらに歴代プリキュアシリーズに登場した戦闘員を模した雑兵バグスターを生み出せるようになった。
 また、キュアチップの力に由来した変異形態(バグッチャーモード)へと即座に変化し、バグッチャーとしての力を行使することが可能。この際『ブラック』は『キュアスカーレット』を模した炎を自在に操り、自身を火の鳥へと変える能力を、『ホワイト』は『キュアマジカル』を模した魔法能力や、自身を無数のコウモリへと変えて撹乱する能力を、それぞれ行使する。

 永夢のゲーム攻略により判明したこの2体を完全攻略する方法は、『2体同時に撃破する』こと。しかし、通常形態時はプリキュアの攻撃を、変異形態時はライダーの攻撃をそれぞれ無効化してしまう厄介な特性を持つため、この2体を攻略するには、『プリキュアとライダーの力を兼ね備えた攻撃を2体同時に叩き込む』という、現状極めて困難な手段が必要となってしまっている。

 ――――――――――

 ……コロナを必要以上に恐れる父によって映画館に行くのを止められ、劇場版ゼロワン&セイバーが配信待ちになった稚拙です……。
 それでもパンフレットは通販で入手、配信開始まで開封しないつもりでおります……

 さて、トロプリがついに始まりました!
 第1話を見終わって抱いた印象は『明るく楽しいプリキュア』といった感じですな。……某プロレス団体のキャッチコピーっぽい……

 今回、一ヶ月以上お待たせしたのは間違いなくバトルがあるから……
 そして注釈欄に凝ってしまったからです、ハイ……

 さて、今回は投稿後に寝ます……稚拙は基本、この時間以降は起きていられません……

 送信……おやすみなさ~い……


(CLEAR)率0%の無理GAME(ムリゲー)

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 ――――――――――

 

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 ――――――――――

 

 

 ゆうべ、一刻も早くCRに行きたいと思いながら床についたからか、朝5時に目が覚めてしまった。

 向かいにあるむぎの家―――――『稲上ベーカリー』から、パンを焼く香ばしい匂いが流れてきている。

 今日は土曜日、学校も休みだ。むぎもきっと、早起きして手伝いをしてるんだろうな。

 せっかく早起きしたんだし、早朝ランニングするのも悪くない―――――そう思って布団から起きあがる―――――

 

 《ほくとくんっ!!》

 「ぅわぁっ!?」

 

 いきなり背中から叫ばれた。心臓が強く打ってびっくりする。僕はその声の元だろう枕元のネットコミューンを反射的に見ていた。そこには―――――

 

 「ど、どうしたの……ピース……?いつの間に……??」

 

 コミューンの画面の上に、真剣な眼差しで僕を見上げる、立体映像のキュアピースが立っていた。ゆうべはCRのキュアットタブに泊まってたはずだけど、いつの間に戻ってきてたんだろうか。その疑問を口にする前に、ピースは―――――

 

 《ワタシ、ようやくわかったの!ワタシがホントに好きなコト、『カッコいい』ってなにかが!それに、それにねっ!?》

 「ちょ、ちょっと待ってピース……まだこんな時間……!師匠達が起きちゃうよ……!」

 《あ……ご、ゴメンね……》

 

 あわてて口元を両手で覆うピース。そのまま申し訳なさそうに、潤んだ上目遣いで僕を見てくる。

 この仕草……確かに"守ってあげたいオーラ"が出てるなぁ……ピースの人気がトップクラスという話、わかる気がする。

 ……でも、その金色の瞳からは、昨日までのどこか迷いを含んでいた色が、確かに消えていた。

 

 《実はね、ほくとくん……》

 

 ピースは、それまでデータにしか話していなかったことを、僕にも語ってくれた。

 他のプリキュアたちが、サーバー王国に来てから16年の間に編み出した『究極の技』を、ピースだけはどうしても編み出せなかったこと。

 そして、昨日ネガキュアバグスターと戦った時にも、ピースの中に『焦り』があったから、上手くチカラを貸せなかったかもしれないこと。

 でも、ピースはこれまでの人生や戦いを振り返って、見つめ直して、ピースの中の『理想の自分』を、ようやく見いだせて、心の中で『カタチ』にできたことを―――――

 

 《今まで……ごめんなさい!……ワタシ、ちょっとどうかしてたみたい……!ワタシにとっての夢とか、『カッコいいこと』とか、全部ワタシ、知ってたの……知ってたのに、心の奥に閉じこめて、見えないようにフタしてて……でも、もう―――――》

 

 その、澄んだ金色の瞳が、真っ直ぐ僕を射抜いた。

 

 《大丈夫》

 「ピース……」

 《……さては、永夢センセーにハッパかけられでもしたか?》

 

 突然、ピースの隣に立体映像のデータが立った。

 

 《!データ……》

 《抱え込んでんじゃねぇかって、ミラクルが心配してたぜ?……でもその様子じゃ、いいアドバイスをもらえたみてぇじゃねぇか》

 《うふふ♪ちょっと、ネ♪》

 「ね、ねえ!永夢先生と話したの!?どんな話したの!?」

 《ソレはナイショで~す♪》

 

 ピースの告白を聞いて、僕は彼女のみならず、レジェンドプリキュアたち全員に詫びねばならないと思った。

 忘れかけていたんだ。

 『レジェンドプリキュアたちも、人間なんだ』ということを。

 僕の中で、『伝説の戦士』という彼女たちを表現する称号が、独り歩きをしてしまっていた。雲の上の、それこそ物語の主役として映像化されるほどの手の届かぬ存在に、僕の心が勝手に昇華してしまっていた。

 でも、違っていたんだ。世界を守るために戦い抜いた彼女達だって、未だに『完成』されていない。否、おそらくこの先も、『完成』される時は未来永劫やってこない。だからこそ、迷って、足掻いて、悩んでいたんだ。

 ピースは今、確かにひとつの『壁』を破壊して、高みへと昇った―――――僕たちの次元を、またひとつ引き離して。

 そしてそれは、僕とデータ、東堂さんとメモリアが超えるべきひとつの『壁』が、より強靭になったことを意味する。僕たちが強くなるのを、彼女たちも座して待ってるワケじゃない。

 

 『プリキュア』は、無限に強くなっていく―――――

 

 僕たちが彼女たちを捉えるのが先か、彼女たちが僕たちの届かぬ境地へと達するのが先か―――――

 不謹慎かもしれないけど、こう思ってしまった。

 

 

 ―――――面白くなってきたな。

 

 

 そして同時にこうも思った。

 

 

 ―――――う、うらやましい……ッッッ。(涙目)

 

 

 僕が永夢先生と話せたのは、バグスター関連の話題だけだったのに……プライベートのこととか、色々話したんだろーか……僕も永夢先生と話したりゲームしたりしたい……ッ!!

 だ……ダメだ。今はバグスターを倒して、東堂さんとキュアマジカル、キュアスカーレットを助け出す、それに全力を尽くさないと。

 大丈夫、時間はある。何しろこの日本、それも車で行けるくらいの距離に、聖都大学附属病院が実在していることがわかったんだ。僕は本物の仮面ライダーにいつでも会いに行ける機会を得られたんだ。この件が終わったら、永夢先生たちの仕事の邪魔にならない程度に、CRを訪ねればいい―――――

 

 

 ―――――この時の僕は、架空の存在だと思っていた偉大な先達が、本当に実在していたことに興奮していて、何もわかっていなかった。

 

 『プリキュア』と『仮面ライダー』が、"同じ世界に同時に存在している"ことが、如何に『(イビツ)』であるのか、を。

 

 そして、そんな『奇跡の日々』を長々と続けさせてくれるほど―――――

 

 『世界』は、都合良くできてはいなかったということを―――――

 

 ――――――――――

 

 「……検査結果が出たぜ」

 

 その日CRに着いてすぐ、僕は貴利矢先生に呼ばれた。

 

 「ニラんだ通り……ほくと、お前の血液にも"例の細胞"が存在していた。……オトコらしからぬカワイイ細胞がな♪」

 「カワッ…………!!?////」

 

 昨日、僕は念のためと思って、貴利矢先生に僕の血液検査をお願いしていた。貴利矢先生も渡りに船だったらしく、即座に了承してくれた。

 そして結果は―――――予想通りだった。

 顕微鏡で拡大された僕の血液サンプル写真には、それはもう見事なハート型の細胞が写し出されていたのである。

 

 「りんくお嬢ちゃんに続いてお前からも"コイツ"が検出されたことで確信した……コイツはプリキュアだけが持つ免疫細胞だ。プリキュアが持ってる『イーネルギー』……だっけか?それに長時間曝された白血球が変異したんだろうよ。名付けて『イーネ細胞』といったところか」

 「はぁ……」

 「ンでさっそく、この細胞が持つ抗体を電子化したデータと、昨日リサーチしたプリキュアのデータを元にして、あちらの"カミサマ"が何やらこさえてるみたいなんだが―――――」

 

 貴利矢先生はCRの一角、ゲームルームに視線を向けた。そのゲームマシンの画面の中には、ラベルが貼られておらず、塗装もされていない真っ白なガシャットを前に、難しい顔で唸る黎斗神さんがいた。

 

 「―――――……逆転の切り札、未だ完成せず、ってところだ」

 「……」

 

 あからさまに不安が顔に出てしまったのか、貴利矢先生は笑って言う。

 

 「そんな顔すんなって!そのトシであんまりネガティブに考えんなよ?いざ人を"ノせる"って時、そんなんじゃ誰もノってこねえぜ?」

 「……はい」

 「出来るコトからすりゃいいんだよ。諦めず、ブレーキ踏まずに足掻いてりゃ、必ず道は見えてくるモンさ。あとはその道をアクセル全開で突っ切りゃいい。気負えとは言わねえけど、期待はさせてもらうぜ、『伝説の戦士』さんよ♪」

 

 貴利矢先生は僕の肩を手のひらでポンポンと叩いて椅子から立ち、CRの奥へと戻っていった。

 

 「……出来るコトから、か……」

 《金言だな。ヒーローの基本だぜ》

 「……そうだね」

 

 データがポケットの中から言う。

 僕に出来るコトは限られている。それは僕だけじゃなくて、ここでバグスターと戦っているCRのドクターたちも同じなんだ。

 そして―――――今、僕に出来るコトは―――――

 

 ――――――――――

 

 「……気分は、どう……?」

 

 こう僕が訊ねると、ベッドの上の東堂さんは、笑って応える。

 

 「うん、ちょっとダルい感じはするけど……まぁまぁ元気、かな?」

 《いっぱい寝たからかいちょーかいちょー!》

 《ったく、入院患者らしからねぇな……》

 

 コミューンの上で健在をアピールするメモリアに、呆れ顔でデータが笑う。

 ―――――そう、永夢先生たちが東堂さんのゲーム病を治すために必死で戦っている中、バグスターと直接戦うこと以外で僕が出来るコトは、ただひとつ。

 東堂さんの傍にいること、それだけだ。

 少しでも、彼女が負っているストレスを和らげることしか、CRにいる僕が出来るコトはないから。

 東堂さんが入院したのが昨日だというのに、ベッドのそばの机にリンゴが置いてあるのが目に留まった。誰が持ってきたんだろうか。気が早いなぁ……

 

 「リンゴ食べる?」

 「うん!……皮むき、できるの?」

 「任せてよ」

 

 子供の頃から、自然とリンゴの皮がむけるようになっていた。最近はどれだけ切らずにつなげられるか、にも密かに挑戦中だけど、なかなか上手く行かないもんだ。

 

 「ほくとくんって、割と女子力高めだよね」

 「!?じょっ!?」

 

 急にそう言われて、手がすべりかけた。危うく果物ナイフを取り落とすところだった……危機一髪だ。

 

 「だってほら、こないだの合同調理実習の時に見てたけど、お料理手慣れてる感じだったし……今も皮むき上手だし……私なんか包丁持っただけでgkbr(ガクブル)なのに……」

 「家の環境でたまたま、だよ……家族で家事を持ち回ってれば、ね」

 「いいなぁ……私もプリアラ見てからお菓子づくりやってみたけど、あんまり上手く行かなくって……」

 「……」

 

 皮をむく手が、ふと止まる。

 

 「ほくとくん?」

 

 

 ―――――ほくとが作ったお菓子……甘く、ないね……

 

 

 「どうしたの?ほくとくん??」

 「…………え?……あ……ううん、なんでもないよ……ごめん、手が止まって」

 

 ―――――……今のは……そうか。

 何年か前、小学生の時の―――――

 ある程度料理が出来る僕が、『お菓子』だけは作れなくなってしまったきっかけになった、あの―――――

 

 その時、僕の心を(うつつ)へと引き戻すかのように、データが叫ぶ。

 

 《ほくと!》

 

 その胸のイーネドライブが、赤々と光っていた。

 

 ――――――――――

 

 僕は永夢先生、飛彩先生、貴利矢先生と一緒に、聖都大学附属病院の駐車場へと出た。

 件のふたりが、そこにいた。

 

 『モヤス……スベテヲモヤシツクス……』

 『マホウ……モット……マホウ……!』

 

 紅蓮の炎と漆黒の影。さながら、自然現象そのものが女の子のカタチになって、敵意を向けてきているかのようだ。

 怪訝そうな表情で、貴利矢先生はふたりのバグッチャーを睨む。

 

 「なるほどな……確かにバグスター反応が無いな。つまり今は"バグッチャー"の状態、ってコトか」

 「変身していなくてもわかるんですか?」

 「自分、バグスターだからさ。"同類"かそうでないかは雰囲気でわかるんだよな」

 「元社長が突貫で『ゲームスコープ』*1とゲーマドライバーにインストールした『バグッチャー探知システム』も、問題なく作動しているようだ」

 

 飛彩先生がゲームスコープに目を落としながら言う。

 昨日の戦いでは、ブレイブとスナイプがバグッチャーを探知できず、対応に苦慮する様を僕は間近で見た。黎斗神さんはその問題に早速対応したらしい。あのカミサマは『出来るコト』をするのがホントに早いんだよなぁ……。

 

 「子供番組のキャラからだいぶかけ離れたな。こんな姿のプリキュアを見せられた日には、テレビの前のお茶の間のガキ共はギャンギャン咽び泣くだろうな」

 

 大我先生も姿を現し、永夢先生を見やって訊く。

 

 「……ゲンムが作ってる"切り札"は?」

 「まだ、完成していません……今のぼくたちが、あのバグスターを攻略できる手立ては、現状――――――――――ありません」

 「ニコから聞いたぜ。こういうゲーム、『無理ゲー』とかいうらしいな」

 「確かにそうです。……でも、無理ゲーでも、やるんです。たとえクリアできなくとも、ぼくたちが戦った時間の分、必ず"次"へとつながるんですから……!」

 

 永夢先生は、隣に立つ僕を見る。

 

 「ほくと君……ここはぼくたちが戦って時間を稼ぐ。だからきみは―――――」

 「いえ、大丈夫です。僕もみなさんと戦います。……出来るコトからするって、決めましたから。……ですよね、貴利矢先生」

 「!……よく言った。お前、ノってるじゃねぇか♪」

 「ノせられましたからね♪」

 

 見習いとて、僕も頭数に入っている。

 それに、今の"ヤツ"の姿は"バグッチャー"だ。まともに通用する攻撃を放てるのは僕しか―――――プリキュアしかいない。

 

 「……わかった。お互い、無理をしないように戦おう」

 「はい!」

 

 永夢先生たちがゲーマドライバーを装着して、ガシャットを取り出すのを見て、僕もコミューンをこの手に取った。

 ―――――……いよいよだ。

 

MAXIMUM MIGHTY X(マキシマムマイティ、エエエェェェックス)!!!!!

 

TADDLE FANTASY(タドルファンタジー)!!

LET'S GOING KING OF FANTASY!

 

BANG!BANG! SIMULATIONS(バァン!バァン!シミュレーションズ)!!

I READY FOR BATTLESHIP!

 

BAKUSOU BIKE(爆走バァァイク)!!

 

 ガシャットの起動キーが押され、周囲にゲームエリアが波紋のように広がるのが見える。

 

 《本物の仮面ライダーと同時変身たぁ、ファン冥利に尽きるじゃねぇか……!なぁほくと!》

 「……ああ……!」

 

 緊張感と高揚感に板挟まれる中、僕は少し力が入った手で、コミューンにキュアチップをセットした。

 

START UP! MATRIX INSTALL!!

 

 僕と4人のドクターたちは、まっすぐに2体のバグッチャーを見据えたまま、静かに、そして鋭く変身の(ポーズ)を演じ、そして。

 

術式レベル50……!

 

第伍拾戦術……!

 

零速……!

 

変 身 ! ! !

 

マ ッ ク ス 大 変 身 ! !

 

プリキュア!マトリクスインストール!!

 

 《《DUAL GASHAT(デュアルガシャット)!!》》

 《《GA!CHAAAANNNN(ガッチャーーーン)!!DUAL UP(デュアルアァァップ)!!》》

 

 《GASHAT(ガシャット)!!》

 《GA!CHAAAANNNN(ガッチャーーーン)!!LEVEL UP(レベルアーーーーップ)!!》

 

 《MAXIMAM GASHAT(マキシマムガシャット)!!》

 《GA!CHAAAANNNN(ガッチャーーーン)!!LEVEL MAX(レベルマーーーーーックス)!!》

 

 《CURE-DATA! INSTALL TO HOKUTO!!》

 

TADDLE MEGURU(タドルメグル) RPG!!

TADDLE FANTASY(タドォォォルファンタジーーーー)!!!!

 

♪スクランブルだァッ!♪出撃発進!!

BANGBANG SIMULATIONS(バンバンシミュレーショォォォォンズ)!!!!

発 進 ッ ! !

 

♪爆走!独走!激走!暴走!

BAKUSOU BIKE(爆走バイクゥゥゥゥッ)!!

 

♪最大級のPOWERFUL(パワフル) BODY(ボディ)!

DARIRAGAANNN(ダリラガァァァン)!!

DAGOZUBAAARRRNN(ダゴズバァァァン)!!

MAXIMAM POWER(マキシマァァムパワァァァ)!! X(エエェェェェェックス)!!!!

 

CURE-DATEAR!! INSTALL COMPLETE!!!

 

渾  然  一  体

 

涙  祓  一  心

 

 

キ ュ ア デ ー テ ィ ア ! !

 

 

 眩い閃光が周囲へと迸り、構築された『ゲーマ』がブレイブとスナイプへと装着される。そして、エグゼイドの顔を象った一際巨大なゲーマへとエグゼイドが吸い込まれ、即座に人型へと変形し、地響きを立てて着地する。

 その隣で、僕もプリキュアの姿へと変わり、ここに5人の戦士が並び立つ。

 

 ―――――仮面ライダーブレイブ・ファンタジーゲーマーレベル50*2

 

 ―――――仮面ライダースナイプ・シミュレーションゲーマーレベル50*3

 

 ―――――仮面ライダーレーザーターボ・バイクゲーマーレベル0*4

 

 ―――――そして、仮面ライダーエグゼイド・マキシマムゲーマーレベル99*5

 

 歴戦の戦士たちが、僕を中心に並び立つ―――――

 ……って、僕がセンター!?

 ちょ、ま、待ってって……!?

 い、いいのかな……ホンモノの仮面ライダー達を差し置いて、僕が戦隊で言うトコロのレッドのポジションに……っっ……///

 

 『ノーコンティニューでクリア……は、今は出来ない……けど、ゲームオーバーには絶対にならないぜ!』

 

 エグゼイドのいつもの決め台詞も、今回ばかりは少し違う。

 現時点では絶対にクリアできない―――――勝利条件のない戦いに、僕たちは挑むんだ―――――

 

 『場所を移すぜ……!』

 《STAGE SELECT!》

 

 レーザーターボがスイッチを起動し、周囲の景色が文字通り一変、駐車場から、きわめて見覚えのある岩場になった。

 

 《おお、コレがホンモノのステージセレクトか!生の特撮ワープ*6が体験できるとはなぁ。この感じ岩船山*7か?》

 『何の話だ?』

 『い、いや、なんでも……』

 

 レーザーターボの問いにしどろもどろする中、2体の"ネガキュアバグッチャー"が咆哮し、無数のザコバグスターを生み出したと思うと、嵐のようなビームの弾幕が視界を埋め尽くす。

 刹那、爆音が鼓膜を震わせ、背後から熱気が豪風とともに無遠慮に追い巻き、僕の長髪とマフラーを乱れ靡かせる。

 ―――――これこそ、魂を屠る光。

 ―――――命を侵す、戦の熱。

 それに急かされ、背を押されるように―――――

 

 『行くぜ、ほくと!!』

 『……はいッ!!』

 

 ―――――憧れの声とともに、駆け出す。

 

 同時に、またも爆発が巻き起こる。

 僕の右側面から、スナイプが砲弾を一斉射し、左側面からブレイブが放つ魔法の光が、灰色の砂利地を色とりどりに染め上げる。

 そして眼前には、視界と殺風景を埋め尽くし、奇声を叫びながら殺集する異形の兵群(レギオン)―――――

 

 『『『『『『『『バグゥゥゥァァァァア!!!!』』』』』』』』

 

 いつ終わるかもわからない、勝ち目の見えない戦いに、僕らは今、身を投じた。

 

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 ――――――――――

 

 さっき、軽口を叩いて悪かった。

 コイツはヤバい。

 これまでアタシたちが戦ってきた中で、間違いなく最大級の難戦だ。下手すると―――――否、十中八九、プリキュアたちが敗れ、アタシとメモリアが落ち延びるキッカケになった、ジャークウェブの『第二次サーバー王国侵攻』……それに匹敵するヤバさだ。

 何しろ、今のアタシたちにとって、勝つための条件がまったく揃っていない。やれることは時間稼ぎだけだ。ゲームみてぇにザコ狩りまくって経験値が手に入るならまだしも、残念ながらそんな気の利いたシステムはこの現実様には実装されてねぇんだと。非情だ。

 それでいて、負ける可能性だけが残されてるとか、冗談だと思いてぇ。隣に『準最強フォーム』のマキシマムゲーマーのデカいガタイが立ってても、まったく安心できねえ。

 歴代プリキュアがノしてきたザコキャラを不恰好に真似たザコバグスターが、ゾンビめいて殺意を向けてくる。

 ほくととエグゼイドが雄叫びを上げながら殴り、蹴り、投げちぎって叩きつける。スナイプに目を向けると、全身の砲塔から閃光が奔り、次の瞬間、10体くらいのザコバグスターが爆発と同時に木っ端のように舞い上がって吹っ飛ぶ。反対側ではブレイブがマントを翻すとともに無数の魔法陣が浮かび、そこから剣や槍、矛や斧を持った別のザコバグスターの一群が召喚され、"ネガキュアバグッチャー"率いるザコ共と交戦を開始する。別の地点では、レーザーターボが"双刃烈破"ガシャコンスパロー*8を手に、撃っては蹴り、斬っては殴るの大暴れ。

 これを、100体以上のザコの大軍相手にやっている。しかもザコは"ネガキュアバグッチャー"から無尽蔵に補充されてくるときた。

 岩船山めいた広大な荒れ地が戦場と化す。だがコイツは、レジェンド大戦*9のような見てて心躍る戦いじゃねぇ。

 ハッキリ言ってやる。この『インストール@プリキュア!』が『小説』で良かったよ。

 

 ―――――こんな地獄絵図を映像化できてたまるか。

 

 《!?なんて数だ!?》

 《増殖能力が昨日より格段に向上している……!このままだと数に押し切られるぞ!!》

 《目に入るヤツ全部が敵だと思えッ!手も足も止めるな、ノンストップでブチのめせ!!》

 《言われるまでも無ェ!!》

 《無秩序に増殖する……まるでガン細胞だ……!!》

 

 爆音や喧騒に紛れて、ライダーたちの怒号が通信で飛び交う。

 

 《これは……ヤバいかもしれない……!》

 『永夢先生……!?』

 

 アタシたちをフォローするためか、さっきからアタシたちと離れず戦ってくれているエグゼイドの呟きが聞こえた。

 

 《ゲームエリアの"容量"は無限じゃない……!このままバグスターが増殖し続けたら、"容量"がパンクしてゲームエリアが崩壊する!》*10

 『それって……!?』

 《ここで増殖したバグスターが全部エリアの外に放出されて―――――》

 

 最悪のシナリオが、アタシとほくとの脳裏によぎり、背筋に戦慄が走る。

 

 『!!…………聖都大学附属病院に、こいつらが殺到する……!!!』

 

 アタシたちが失敗(トチ)ったら、メモリアとりんくのゲーム病を治せないし、マジカルやスカーレットを救えないのはもちろんわかってる。

 それに加えて、病院にいる何百人というニンゲンの命が危険に晒されるコトになるたぁ……!!

 ……このハードさ……このシリアスさが、『仮面ライダーの戦い』ってヤツ、なのかよ……!!

 

 《レーザー!?テメェどうした!?押されてるぞ!!》

 

 スナイプの爆音雑じりの声が通信越しに響く。ほくとは余裕が無いから、アタシが"中"からそちらを見やると、ザコの大群の中、勢いに押されて一歩、また一歩と後退するレーザーターボの姿が一瞬だけ確認できた。

 

 《チッ……!プロトガシャットは全部返しちまったからな……!かといってギリギリチャンバラはレーザーターボ(コイツ)のレベルアップにゃ対応してねぇし……!*11泣き言言ってもしゃあねぇが……!》

 『どういうことです……!?』

 《レーザーターボは基礎スペックこそ高いが、本分は機動力で攪乱する高速戦闘だ。乱戦には致命的に向いていない》

 《飛彩センセーバッサリだねェ……》

 

 確かに、レーザーターボの華奢な体で、こんな大乱闘は酷というものだ。よくスパロー一本で凌いでる。もっとも……ほくとは素手なんだが。

 

 《それなら、コレをレーザーに届ければ……!》

 

 エグゼイドが、群がるザコをブッ飛ばし、合間に一本のガシャットを取り出した。

 

 《……く……!いつの間にこんなに引き離されたんだ……!?レーザーが孤立している……!》

 『僕が届けますッ!』

 「お、おい!?」

 《ほくと!?》

 

 ほくとはエグゼイドの手からガシャットを引っ手繰る(ひったくる)と、レーザーターボの方向めがけて猛進を始めた。視界を埋め尽くす敵、敵、敵―――――を、全身で薙ッ倒す。ある意味わかりやすい。目に入るヤツ、仮面ライダー以外は残らずブチ()めしゃいいんだから。

 左手のキュアットサモナーに、ほくとは青いキュアチップを呼び寄せた。

 

 『キュアチップ、『キュアマーメイド』!キュアッと……―――――!』

 『バグゥゥァァ!!!』

 

 目前のザコにチップをはね飛ばされた……!

 それだけでなく、足を止めたほくとの手足に、我先にとザコが喰らいついてくる。

 

 『ぐッ!?』

 「ほくとッ!!」

 『なぁ、めるなぁぁーーーッ!!!』

 

 両手脚からイーネルギーを噴き出し、群がるザコを吹っ飛ばし、目の前のザコの肩と頭を踏み台にして跳び上がり、空中でチップをキャッチした。

 

 『―――――、変ェン、身ッッ!!』

 《澄みわたる、海のプリンセス!キュアマーメイド!》

 

 水色の閃光が迸り、身体に水魚の装束を纏って着地する―――――!

 

(チョウ)()(セイ)(カイ)

 

キュアデーティア、"マーメイドスタイル"!!

 

 アタシの隣に青い『部屋』が形成され、その中にキュアマーメイドの姿が現れる。

 

 「……始まったのね」

 「あぁ……好評決戦中だ。すまねぇけど、今は時間稼ぎにしかならねぇ……スカーレットを助けるのは―――――」

 「それで充分よ」

 「!」

 

 マーメイドは、凛とした笑みをアタシに向けていた。

 

 「それが、最後にスカーレットとマジカルを取り戻すための布石になるのなら……これからほくとが打つ手は無駄ではないと……私も信じるわ」

 「……ありがてぇ……ッ」

 

 こんな、時間稼ぎのためだけに力借りるってのに、何もかもわかってくれてるマーメイドには頭が下がる。何としても、必ずスカーレットを助け出す。……必ずだ。

 

 『流れの(まま)に……ただ、逆らわず乗りこなすのみ……!』

 

 ほくとの足元から水柱が立ち、アタシたちは宙に舞った。天高く身体を翻すその様は、人魚(マーメイド)の名に相応しい。

 

 「さて跳んだぜ……ここからどうするよ?」

 『そのまま跳び続ける!』

 「それって……!?」

 『この状況にピッタリの技があるんだ!データ、マーメイド、行くよ!!』

 

 最近流行りの"全集中"、足先に全神経を尖らせて―――――

 ほくとは『ザコの頭のてっぺん』に着地し、さらにバック宙で跳ぶ。跳躍の瞬間、水飛沫が飛び散る―――――

 ザコの頭のみを足場に、上半身を一切使わず、脚のバネだけを使った後方宙返りだけで、大乱戦の中を跳んでいく奇技―――――

 

 

―――――空現流 躍動術―――――

 

卅玖式(サンジュウキュウシキ) (ミナ)()(ガケ)

 

 

(スイ) (ギョ) (ハッ) (ソウ) (トビ)

 

 

 さながら、水面を跳ねる魚だ。なるほどこれなら、ごった返しの3密状態だろうと関係なしに進める。その上常にイレギュラーな軌道で空中を跳ね回るから、狙撃も当たりにくい利点がある。

 もっとも―――――

 

 《ぅぉわ!?なんだァッ!?》

 

 この光景を見たニンゲンは確実に腰抜かす。何しろ、『ごった返す人混みの中、その頭だけを足場に、美少女が連続バック宙しながら迫ってくる』ってビジュアルだぜ。案の定、貴利矢センセーはドギモを抜かれたようだ。

 

 『永夢先生からの、お届けモノ―――――ッ!!』

 

 最後の跳躍から、レーザーターボに躍り掛かろうとしていたザコの背中目掛けてライダーキックを放って足蹴飛ばし、レーザーターボの横へと着地して―――――

 

 『……です❤』

 

 と、満面の笑みでガシャットを差し出すもんだから、レーザーターボの複眼部分がふっと消え、真っ暗になるのが見えた。コレ、無表情になってるな。

 

 《お前……本当は男装のなんちゃらじゃねぇよな……?》

 『ち、違いますっ!』

 

 さっきも地の文でさりげなく言ったけどさ、『キュアデーティア』って掛け値無しの美少女だ。まぁ、変身した姿なんざ鏡で見る機会なんてほとんど無いだろうから、最初に変身した時以来、ほくとはまともに『キュアデーティア』の顔を見てねぇ。……というか、意識しないようにしてるのかもな。

 ともかく、ニコッと笑いかけりゃ、老若男女の9割はコロッと惹かれるくらいには、『キュアデーティア』はカワイイ。

 ……い、言っとくがな、自画自賛ぢゃねーんだぜ!?ほくとが女体化しちまうのはアタシのせいじゃぁねぇ!アタシも『変身アプリ』を何度も調べてみたけど『異常ナシ』の一点張り……ともかく、クイーンを助けて詳しく訊いてみるっきゃねぇんだ……

 

 『そ、それよりもコレを使ってください!』

 

 慌ててほくとが差し出したガシャットを、レーザーターボは手に取る。少し、複眼が怪訝げに変わる。

 

 《おいおい、コレか……自分と相性悪いだろ、コレ……まぁでも、この状況にゃ打って付けか……永夢センセープロデュースなら、ノるっきゃないっしょ!!》

 

 右手の指をガシャットのグリップに引っ掛け、クルクル回して小粋に構え、そのガシャットの起動スイッチをレーザーターボは押した。

 

GEKITOTSU(ゲキトツ)!! ROBOTS(rrrrロボォォッツ)!!!

 

 そう、コイツは『ゲキトツロボッツガシャット』。エグゼイドはコイツをレーザーターボに使わせたかったというワケだ。

 だが揃いも揃ってKYなザコ敵軍団は、『変身中は手出し無用』っていう暗黙の了解すらどこ吹く風、理性も品性も微塵も感じさせない奇声を上げて殺到する。

 ―――――まったく……。 

 

 『様式美(ルール)ぐらい、守ろうぜ……?』

 

 ほくとはクリスタルプリンセスロッドを手に取り、思い切りジャンプすると、

 

 『貴利矢先生!跳んで!!』

 《!》

 

 何をしようとしてたかは完全には伝わらなかったろうけど、『何かやる気だ』ってのは貴利矢センセーも悟ったようで、ガシャットを持ったまま真上に跳躍した。流石はひと跳び52.1メートルのハイスペック、アタシたちのジャンプ高度をアッサリ超えていった。それを見たほくとはニヤリと笑む。やはりほくともはこのジャンプ力を把握してた上で貴利矢センセーに跳んでもらったか。

 

ドレスアップキー!"アイス"!!
 

 

 ロッドにキーを捩じ込み、冷気が空気を巻き込み始める。

 

(レイ) (ゲキ) (ラク) (カイ)

 

"海 姫 零 凍 弾(フローズンリップル)"!!!!!

 

 一瞬にして巨大な氷塊……否、『氷山』がロッドの先に形成されたと思うと、ほくとはそれを地面に向け、思い切り蹴落とした。当然それは重力に従って降下し、群がっていたザコを圧し潰しつつ、重々しい音を響かせて叩き落ちた。視界の片隅の『撃墜カウント』が『28』増えた。

 

 《やるゥ……》

 『まだ、ここからです!』

 

 後は落下するだけ―――――だと思ったか? 

 ほくとはこれだけじゃ終わらねぇ男だよ。

 右の拳を強く握り締め、ただ一点を見据える―――――

 

 

―――――空現流 砲戦術―――――

 

壱拾陸式(ジュウロクシキ) 陣形裂断(ジンケイレツダン)

 

(ジュウ) (バク) (サイ) (ゴウ) (ガン)

 

 

 

 

 

 

 叩き落ちた巨大氷山に、自由落下の勢いを乗せた渾身の下段突きが打ち込まれた瞬間、砕かれた氷山が無数の徹甲弾と化し、全方位に放たれる。『陣形裂断』とはよく言ったもので、密集隊形だったザコ集団がそれはもう見事に吹っ飛んだ。視界の片隅の『撃墜カウント』が、一気に『79』増えた。

 

 「………………凄い、わね……」

 

 マーメイドには刺激が強かったか、顔をひきつらせてヒイている。『巨大氷山にジャンピング瓦割りブチかますキュアマーメイド』なんて映像(モン)、ネットのドコにもまず転がっちゃいねぇ衝撃映像だからな……

 ともあれ―――――

 

 『……露払いました……!』

 「カッコよく変身してくれよな!!」

 《……まったく、ノせ上手なこって!》

 

 ザコがひしめくゲームエリアの中、ポッカリと"ウルトラ広場"*12よろしく『穴』が空いた場所にアタシたちとレーザーターボが降り立つ。同時にアタシたちの全身から蒸気が噴き出し、視界を覆う。

 レーザーターボは待ってましたとばかりに―――――

 

爆 速 !

 

 《GASHAT(ガシャット)!!》

 《GA!CHAAAANNNN(ガッチャーーーン)!!》

 《LEVEL UP(レベルアーーップ)!!》

 

♪爆走!独走!激走!暴走!

BAKUSOU BIKE(爆走バイクゥゥゥゥッ)!!

A GACCHA(アガッチャ)!! ♪ブッ飛ばせ!突撃!激突(ゲ・キ・ト・ツ)パンチ!!

GE()KI()TO()TSU()! ROBOTS(ロボッツ)!!!

 

 衝撃波とともに白煙が散る。

 鋼鉄の左腕が目を引く真紅の拳闘士―――――『仮面ライダーレーザーターボ・ロボットバイクゲーマーレベル0』の爆誕だ。

 更なる『原作未登場フォーム』の登場に、ほくとはまたも見とれちまってる。

 

 《さァて……ノせる代わりに、全員まとめてノしちゃうぜ!!》

 

 群がるザコの群れへと突撃したレーザーターボは、左手の"ゲキトツスマッシャー"*13を最初に見定めたザコの土手ッ腹に叩き込み、吹っ飛ばす。それはもう美しい直線を描いてザコ集団に突き刺さり、ボウリングのピンのように四方八方に飛散する。見てて景気のいい光景だ。

 殴り散らされるのは御免と、ザコ集団の中のノットレイタイプのヤツがビームを撃ちかける。だがそこは脚力自慢のレーザーターボ、残像が見えるほどのスピードで光の弾幕をかいくぐり、ザコ軍団を殴り潰していく。一瞬動きが止まった―――――ところに死角から光迅が閃く―――――が。

 

 《見えてるぜ》

 

 突き出したゲキトツスマッシャーの掌に、ビームが受け止められてスパークしているのが見え、やがてぐしゃりと握り潰された。

 

 《言ったろ?全員ノす、ってな!》

 

 レーザーターボはザコ軍団を見据えると、キメワザスロットにガシャットを差し込み、右手でゲーマドライバーを触発させる。

 

 《GASHAT(ガシャット)!!KIMEWAZA(キメワザ)!!!》

 

 

GEKITOTSU

―――――――――――――――――――――――――

CRITICAL STRIKE!

 

 

 左腕にエネルギーが火花めいて溢れ出し、思い切り振りかぶった構えから射出された。ブースターに点火したゲキトツスマッシャーが先頭のザコに命中して殴り倒し、Uターンして戻ってくる。

 そこでレーザーターボは、ゲキトツスマッシャーをジャンピングソバットで蹴り返し、再びザコを殴らせる。あとは繰り返しだ。まるで足だけでテニスのラリーでもしているかのように、ゲキトツスマッシャーがレーザーターボとザコ軍団の間を凄まじいスピードで往復する。

 

 『凄い……!』

 

 唖然とするほくとを後目に、レーザーターボは高々と跳び、それをゲキトツスマッシャーが追いかける。そして―――――

 

 《うぉぉぉうりゃぁぁぁぁあ!!!!!》

 

 空中で一回転し、ライダーキックの体勢に入りながら急角度で降下してくる。そのライダーキックの足先に、なんとゲキトツスマッシャーが金属音を立てて合体、足先に握り締めた鉄拳が装着された、『ライダーキックの体勢で放つライダーパンチ』という、斜め上過ぎる技がアタシたちの前に顕現したのだった。

 ブースターの加速がノせられた爆撃の如き急降下攻撃が、ザコ軍団のド真ん中に『着弾』し、土煙とともに爆発と衝撃波が巻き起こり、四方八方にザコが舞った。

 

 『僕達も!……代わるよ、マーメイド!』

 「わかったわ!」

 

 アタシたちも見物してるヒマはない。殺到するザコの攻撃をかわしながら、ほくとは次なるキュアチップをコミューンに叩き込む。

 

 『キュアチップ、『キュアトゥインクル』!』

 《きらめく星のプリンセス!キュアトゥインクル♪!》

 『キュアっと……変身ッ!!』

 

()()(セイ)(レン)

 

キュアデーティア、"トゥインクルスタイル"!!

 

 今度はトゥインクルスタイルにチェンジだ。思えば、キュアデーティアになって初めてのレジェンドインストールがコレだったな。……さて、初心に返ってどう立ち回るか。

 

 『少し目が回るけど、ちょっとだけガマンして!』

 「え?えええ!?」

 

 いきなり呼び出されてこれなら、トゥインクルが困惑するのも無理はない。

 ほくとは星の力を練り込んで目の前に回転をかけて放ち、その高速回転する『☆』に、両手を重ねて突っ込み、『☆』の回転に乗って全身を回転体と化し、ザコ共の群れに突撃する―――――!

 

 

―――――空現流 槍突術―――――

 

卌式(シジュウシキ) 金剛螺旋(コンゴウラセン)

 

(ラン) (エイ) (マガツ) (ボシ)

 

 

 場所を埋め尽くす『敵』を、もはや『人』とは見做(みな)さず『壁』と見て、自分の身体を『ドリル』と化し特攻、『掘り進む』っていう―――――"常識?なんだそりゃ?食えるのか?"的発想から編み出されたとしか思えん狂気のワザだ。

 ほくとと一緒に蔵ン中の書物でこの技の図解を見た時ゃ、『こんな技、ニンゲンが出来るわきゃねーだろwww』って草生やしてたが……

 

 や り や が っ た 。

 

 回転エネルギーをトゥインクルの技から引き出すたぁ……ほくとのアイデアが眠る脳内在庫は売り切れとは無縁だ。……逆に、ほくとのじーさんやオヤジさん、生身ひとつでコレが出来るのか……??

 そんなわけで、アタシたちはゲームエリアにひしめくザコの群れを、ドリルのように掘り進んでるワケだが……

 つーか、ほくと―――――

 

 「ドコ向かってんだ!?」

 

 まさかと思ってレーダーを見ると、『敵』を示す無数の赤い光点の中に、一際目立つ巨大な2つの赤点へと、アタシたちは真っ直ぐ向かっていた―――――!

 

 「ボス狙いか……!でもよ!」

 『わかってる!"勝つ"方法はない!でも違うだろ?僕達は見習いとて『プリキュア』だ!―――――』

 

 "ザコの壁"を突っ切った先に―――――そいつらは立っていた。

 

 『"想い"を伝える……それが、僕達の戦いだ!!』

 「……!」

 

 忘れかけてた。

 アタシたちはプリキュアなんだ。

 周りがライダーだらけだからって、無理に合わせるこたぁねぇ。

 殴る蹴るの肉体言語は『手段』に過ぎねぇ、プリキュアの本質は『心を伝えるコト』なんだって、"お師さん"もそう言ってたっけか。

 そして、その伝えるべき『心』は―――――

 

 

 「トワっち!……リコりん!」

 

 

 ―――――『鍵の姫』の、『真心』で。

 

 

 「いっしょに帰ろっ……!みなみんとみらいっちも……他のみんなも待ってる……!そんなトコに閉じこもってないでさ!」

 《…………プシュゥゥゥゥ………………?》

 

 トゥインクルのその言葉に反応したのか、触れるモノを容赦なく灼かんとする赤黒い炎を全身から舞い上がらせている"スカーレット"が、くい、と、こちらに視線を向けてくる。何か、ガスが抜けるような吐息も添えていたが。

 

 《…………キ、ラ……、ラ…………―――――》

 「……!」

 

 通じた、のか。

 ―――――否、ミラクルの時と同じだ。

 『違う』のはもう知ってる。

 今までのもそうだったが、バグッチャーは取り込んでるプリキュアのキメ台詞やら名言やら、さらには『声が似てる"別の誰か"』の台詞まで、何の脈絡もナシにベラベラと、そのプリキュアと『同じ声』で口走ってくる。しかしそれには何の意味もない。クルマや機械の駆動(エンジン)音と同じだ。

 ……わかっちゃいる、いるんだが―――――

 ニンゲンってのは、そうしたコトに、滅法……ッ。

 

 「トワっち……!!」

 

 涙目のトゥインクルが叫ぶ。

 

 

 《…………………………メ……、》

 

 凶々しい双眸がアタシたちを捉えた時には―――――

 もう、遅かった。

 

 

 《メカラ、ビーム》

 

 

 言葉通りに"スカーレット"の両目から赤黒い光線が噴き、無防備なアタシたちの鳩尾あたりに叩き込まれた。ほくとの呻きと苦悶の声が重く響き、同時にアタシとトゥインクルにも衝撃と灼熱が襲いかかった。

 

 『ぐぅぅぁ………………ッッッ!!!』

 「がッッッ……………………!!!!!!」

 「うぅぅぅっっ…………!!!!」

 

 カラダが骨すら残さず融かされると錯覚するほどの悍ましい『熱』が、アタシとほくととトゥインクルが一緒くたになったキュアデーティアの全身をのた打ち回って荒れ狂う。     

 

 「……トワっちと……リコりんに……アタシの声……届かなかった……ゴメン…………ゴメン……みなみん……みらいっち…………―――――」

 

 星色の燐光を残して、アタシの隣からトゥインクルの姿がかき消えた。同時にレジェンドインストールも解除されてしまった。

 倒れた先の地面の砂利が、刺々しくて素肌に刺さるようだ……。

 

 《チッ、何やってやがるプリキュア!?》

 

 スナイプの怒号が飛んでくる。それでも援護射撃も飛ばしたか、アタシたちの周囲に群がるザコが爆風に吹っ飛ぶ。

 

 《中学生!ペースを乱すな!》

 《ったく、調子にノるのはいいけどよ、周り見ずに先走ってクラッシュしてちゃしゃぁないだろ!》

 

 ブレイブとレーザーターボの有り難い説教が身にしみる。そりゃ、ライダーのセンセー方からすりゃ、勝手に独断専行して勝手にやられたようにしか見えねぇだろうからなぁ……"プリキュアの心ライダー知らず"ってトコか。

 さらにアタシたちが視界に入って危険を察知したからか、ふたりのバグッチャーが進撃を開始した。ひしめくザコ共をかき分け、最後方で砲撃しているスナイプ目掛け、一直線に突貫してくる。

 

 《!させるかッ!!》

 

 それを見るや、エグゼイドが一瞬で進路上に仁王立った。マキシマムゲーマーはその巨体に反して俊敏で、100mを0.99秒で駆け抜ける。遮蔽物さえなけりゃ、このゲームエリアならドコでも一瞬だ。アタシたちにはエグゼイドが瞬間移動してきたようにしか見えなかった。

 

 『永夢先生……まさか!?』

 

 突っ込んできた"スカーレット"と"マジカル"の前に立ちはだかったエグゼイドは、その(おお)きな()で、ふたりのバグッチャーの頭をガシリと掴むと―――――

 

 《リプログラミングだッ!!!》

 

 ―――――その手があったか!

 『リプログラミング』―――――エグゼイド・マキシマムアクションゲーマーレベル99の真髄とも云える特殊能力(アビリティ)だ。

 バグスターの遺伝子を解析して、それを書き換え、能力を弱体化させたり、無力化させたりすることができる権能だ。

 ホントーはもっと複雑な事情やら設定やらが山ほどあるんだが、地の文でも注釈でもとても語りきれねぇから端折らせてもらう。一言で言えば―――――まぁ、『チート*14』だな。もっとも、コレはエグゼイドのチートの『その1』にすぎないんだけれども。

 ともかく、この手が通用すれば、倒せなくとも弱体化くらいは―――――

 

 《うォッ!?》

 

 だが、エグゼイドの両手がスパークして弾かれた。それを隙と見たふたりのバグッチャーは、掌底を同時にエグゼイドに叩き込んだ。

 

 《くぅッ!》

 

 身長256cmの『最大級のパワフルボディ』が土煙を上げて10メートルほど押し飛ばされ、片膝をつくその様は、アタシを、そしてほくとを慄然とさせるのに十分なインパクトを持つ絵面だった。

 

 『永夢先生ッ!?』

 《リプログラミングが……通用しなかった……!》

 『……!』

 《何だと……!?》

 

 ドラマの中でも、数々のトンデモ能力を発揮して、エグゼイドを勝利に導いてきたリプログラミングが、コイツには通用しなかった―――――

 もっとも、アタシにとっちゃある程度は想定内だったが。今のコイツらは『バグッチャー』の形態だ。対バグスターに特化している仮面ライダーの攻撃は通用しない状態で、果たしてどうだ、とは思ったが……やはり、か。

 しかも意地悪なことに、コイツらはさっきからずっと『バグッチャー』のままだ。こっちのメイン戦力が仮面ライダーだってことを見越してやがる。『この姿なら倒されない』コトをパーペキに理解してやがるのか。

 ……完全にナメられてる。畜生がッ。

 

 《モエテ、キエロ……!!》

 《ウゥゥゥ……!グゥゥゥゥゥァァァァ!!!》

 

 ふたりのバグッチャーが同時に炎と五色の怪光線を放ち、ザコ軍団がそれに合わせてレーザーを一斉発射した。目が眩むと同時に轟音が耳を塞ぎ、殺人的な爆発熱が全身を灼く―――――

 

 『『『『『うあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』』』』』

 

 レベル99やレベル50のライダーたちが、為す術無く膝を折って倒れ伏す―――――

 つまりは、それほどまでの脅威ってことか、『アレ』は―――――

 

 《く……くぅッ……!!》

 

 絞り出すような永夢センセーの声とともに、倒れたエグゼイドが砂利を被る。

 

 《時間稼ぎ……どころじゃないな……!》

 《このままだと遠からず……逆にこちらが制圧されてしまうぞ……!》

 《でももうリタイアもリトライも出来ねえ……!やれるだけのことをやってコレかよ……ッ!》

 

 歴戦のドクターライダー達までも、その口から勝機を出せなくなっている。

 

 《まだだ……!!》

 

 突っ伏したままのエグゼイドが、開いていた手を拳に握る。

 

 《まだ、オレは諦めない……!!》

 『!』

 《約束だから……!オレ達が運命を変える……必ずゲーム病を治すって、オレはりんくとほくとに約束したんだ……!!オレは……!絶対に諦めない……!食らいついてでも、オレはこの場を耐え凌ぐ……!!たとえこの戦いが"負けイベント"*15だとしても……!!》

 

 雄々しく立ち上がったエグゼイドは、肩を揺らしながら身構えると、バグッチャーを睨んで―――――

 

 《ゲームオーバーには……簡単には……なってやらないぜ……ッ!!》

 『……永夢先生……!』

 

 そうだな―――――

 アタシたちのヒーローは、決して諦めないんだ。

 でなけりゃ、アタシとほくとが―――――そして彼の戦いを固唾を呑んで見守ってきた子供達が、憧れねぇワケねぇんだよな。

 その憧れのヒーローと、肩を並べて戦ってるってんならさ……

 

 『……いつまで寝てんだ、僕ってヤツは……』

 

 おぼつかない脚になんとか力を入れて、ほくとは立ち上がる。

 

 『負けられない……!マジカルを待ってるミラクルのためにも……!スカーレットを待ってるマーメイドとトゥインクルのためにも……!そして……!東堂さんとメモリアに、元気になってもらうためにも―――――』

 

 全身にもう一度、イーネルギーを迸らせ―――――

 

 『笑ってもらうためにも!!』

 

 一歩、ほくとは前に出て、"スカーレット"と"マジカル"を見据える。

 まだ、立ち向かう気概ってヤツは、尽きちゃいない―――――

 

 『お前たちが放つ焔も、魔法も……!それは孤高を気取った冷たい城に過ぎない……!痛くない!熱くない!!今こうして、僕達はまだ立っている!!ここが絶望の淵だろうと、希望は灯ったまま消えちゃいない!!……必ず…………キミ達を助け出す―――――』

 

 ふっと、ほくとは険しかった表情を緩めて、優しく呟いた。

 

 『………………待ってて、スカーレット……マジカル…………東堂さん』

 

 

 その時だった。

 

 ほくととエグゼイドは2人分くらい間を空けて立っていたが、その間を、突然ピンク色のビームが後ろから突っ切っていき、ザコ共の群れを消し炭にしながらふたりのバグッチャーに直進して、命中した。

 

 「な……!?」

 

 アタシもほくとも瞠目していた。それはエグゼイドも同様だったようで、まずはふたりのバグッチャーを見た。まるでなんちゃらの十戒のようにキレイな直線がポッカリと出来上がり、その先でバグッチャーが唸り声を洩らしながらよろめいているのが見えた。さっきのビームが効いているのか。

 そして次に見たのは、そのビームの発射源と思しき後方。その先にいたのは―――――

 

 

八 手 ほ く と ォ !

 

 

 『!!!!』

 

 ……この、声は……!!

 そして、このイントネィションは……!!

 

 「何故君がプリキュアに変身しているのか……何故傷だらけでバグスターの攻撃を耐え凌いでいるのか……何故ゲームエリアの中で戦っているのくワァ!その答えはただ一つ…………ァハァ…………」

 

 …………まったく。

 どうやら遅刻癖持ちなのは、ヒーローだけじゃないらしい。

 

八 手 ほ く と ォ !

 

君がこの(クァミ)、檀・黎・斗・神の降臨を!!

心待ちにしていた男だからだァーーーッッ!!

アァーッハハハハハ!!!

アァァーーハハハハハハハハッッ!!!!

 

 

 この邪悪なテンプレが、今のアタシにはマジで神託に思えた。

 

 

 

 SAVE POINT……

*1
CRのメンバーに支給されている聴診器型ツール。患者の身体を瞬時にスキャンし、ゲーム病への感染の有無、感染したバグスターウイルスの種類を瞬時に診断し、診断結果を投影する。また、外部の医療機器と接続し、患者から採取した血液などの検体から、より高度かつ詳細な解析も可能。通信機能も搭載しており、ゲームスコープ同士の双方向通話はもちろん、ゲーム病関連の救急通報が優先して送られるようになっている。

*2
仮面ライダーブレイブが、新たに黎斗が開発した、2つのゲームデータがセーブされた特殊なガシャット『ガシャットギアデュアルβ』を用いて変身した強化形態。モチーフとなったゲームは、プレイヤーが魔王となり、勇者を倒し世界を征服するダークファンタジーゲーム『タドルファンタジー』。そのためか暗黒騎士を彷彿とさせる刺々しい鎧とマントを身にまとっており、『闇堕ちしたブレイブ』と形容できる姿となっている。ガシャコンソードを用いた近接戦闘はそのままに、『魔法』を発動することで遠距離への攻撃や魔力障壁による防御、瞬間移動や飛行なども可能とした。さらに雑兵バグスターウイルスをその場で生成し、意のままに使役する能力も持っている。圧倒的な攻撃能力と物量を以て、『相手の世界』を『征服』する『幻想の魔王』。当初は圧倒的性能に飛彩が振り回されており、変身解除後に苦悶の表情を浮かべ、時にはファンタジーゲーマに意識を乗っ取られ、暴走状態となったこともあったほど。しかし後に克服し、テレビシリーズ中盤におけるブレイブの主力フォームとして活躍した。

*3
仮面ライダースナイプが、『ガシャットギアデュアルβ』を用いて変身した強化形態。モチーフとなったゲームは、プレイヤーが多数の戦艦を率いる司令官となり、自軍艦隊を指揮して敵艦隊を撃破していくウォー・シミュレーションゲーム『バンバンシミュレーション』。両腕・両肩に10門の砲塔を装備し、そこから砲弾やミサイルを一斉発射することが可能で、その火力は凄絶無比。更に強化されたレーダー機能をも駆使することで、多数の敵集団を単騎で制圧できる圧倒的な砲撃能力を発揮する。全身からの一斉砲撃により、無数の敵を壊滅させる『全身爆装の殲滅戦艦』。当初、飛彩同様の負荷に襲われるも、プロトガシャットを使った戦闘を経験していた大我はものの数秒で克服し、この力をモノにしている。これ以上の強化がなされなかったスナイプにとっての最強形態であり、スナイプは最終盤までこのフォームで戦い抜いた。

*4
九条貴利矢がゲーマドライバーと『爆走バイクガシャット』を使って変身したライダー、『仮面ライダーレーザー』の強化形態―――――それが、『仮面ライダーレーザーターボ』である。通常形態であるレベル2がバイク型であり、いささか汎用性に欠けていた通常のレーザーとは異なり、最初から人型となっている。この形状変化は、檀正宗が複製・改造して貴利矢に与えた2本目の爆走バイクガシャットによってもたらされており、黎斗が使用している『プロトマイティアクションXガシャットオリジン』の機能の一部が移植されているためである。『レベル0』の固有能力として、バグスターウイルスを不活性化させる『アンチバグスターエリア』の展開が可能。モチーフジャンルは『レースゲーム』で、ゲーム『爆走バイク』の主人公キャラクターがモデルとなっている。他のライダーと比較して各部の装甲を極限まで削ぎ落としており、至ってシンプルかつシャープな容姿をしている。爆発的な瞬発力と機動力を活かし、パワー溢れる必殺の一撃を叩き込む『零速の蹴撃者』。死亡したと思われた貴利矢はこの姿で復活、一時は正宗の尖兵を演じたが、やがてCRに帰還した。

*5
不死身の仮面ライダーゲンム・ゾンビゲーマーレベルXを倒すため、ドクターライダーたちが協力して作り上げた『マキシマムマイティXガシャット』を使用して変身した、仮面ライダーエグゼイドの強化形態。それまでのドクターライダーとはありとあらゆる点において一線を画しており、ガシャットによって召喚された大型ゲーマ『マキシマムゲーマ』にエグゼイドが格納され、マキシマムゲーマが人型に変形することで変身が完了、パワードスーツ(武装外骨格)のようにマキシマムゲーマにエグゼイドが乗り込む形となる。それによって完成する身長256cm、体重256kgの巨躯は、『最大級のパワフルボディ』と謳われるに相応しい迫力あふれる存在感を持つ。戦闘能力も非常に高く、ボディ強度と腕力を活かした真っ向勝負での近接格闘は勿論、その見た目に反し機動力・走力も凄まじく、攻守において隙はない。手足には伸縮機構が組み込まれ、思いの外リーチは長い。さらに状況に応じてエグゼイドがマキシマムゲーマから離脱して一時的に別行動を行うことも可能で、その際はマキシマムゲーマが自律稼働モードに切り替わり、的確にエグゼイドを援護する。離脱したエグゼイドはレベル2と同様の外見であるが、レベルは99のまま維持されており、戦闘能力を落とさぬまま、様々な戦局に柔軟に対応することが可能。これらの究極とも云えるスペックを以てゲームエリアを縦横に蹂躙、有無を言わさずバグスターを駆逐する『バグスターの天敵』。しかし、この形態の真髄は単純な戦闘能力とは別にある。詳細は後述。

*6
特撮作品でよくあるシチュエーションとして、戦闘中にいきなり戦場が切り替わる光景を揶揄した言葉。その例は枚挙に暇が無く、まともに解説すると膨大な文字数になるため詳しくは読者様各自で検索されたし。メタ的には、市街地や公共施設等でのロケでは火薬を使った大規模な爆発が起こせないため、採石場跡地や廃工場といった、火薬が使える郊外のロケ地に移動する必要があるため。しかしこれを逆手に取った作劇が行われた例もあり、『宇宙刑事シリーズ』における各種異空間や『時空戦士スピルバン』のバイパススリップ、『ウルトラマンネクサス』のメタフィールドなど、『戦闘専用空間に引き込む』『空間転移装置を使って戦場を移動する』という設定がされる作品もある(ステージセレクトもこれにあたる)。『仮面ライダークウガ』ではさらにこれを突き詰め、『怪人を市街地で爆発させると周囲に被害が出るため、怪人を爆発させても被害が出ない場所にどのようにして誘き出すか』という現実的観点の問題へと昇華させ、作劇に盛り込み話題となった。

*7
正式名称『岩船山中腹採石場跡』。栃木県栃木市岩舟町畳岡にある大規模な採石場跡地。広大かつ殺風景で、火薬が使用できる郊外に位置している(それでも爆発を伴う撮影時には近隣住民にその旨が周知される)ことから、仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズにおける大規模戦闘シーンの撮影において幾度となく戦場(ロケ地)として使用されている『聖戦の地』。『いつもの採石場』と言えばほとんどの特撮ファンには通じる。東北自動車道の佐野・藤岡ICから車で15分、JR両毛線岩舟駅から徒歩10分の場所にあり、ロケをしていない時であれば無料で入山可能。稚拙が人生で一度は訪れたい場所のひとつ。インプリ外伝『こんニチ』の『キュアデーティア 対 蒼の怪盗団』でも戦いの舞台となったが、本編では初登場(?)となる。

*8
仮面ライダーレーザーが使用する専用武器。『ギリギリチャンバラガシャット』に登録されたガシャコンウェポンで、エネルギーの矢を発射する中距離攻撃用のボウガン『弓モード』と、分離させて接近戦用の双手鎌とした『鎌モード』を切り替えて使用でき、ガシャットスロットにガシャットを装填して必殺技の発動も可能。レーザーがゲンムによって倒されたことでガシャットごと奪われ、そのまましばらくゲンムの武器となっており、『遺品を戦いに用いる』という行為を以てゲンムの外道さを引き立たせていた。ゲンムの撃破後は永夢がガシャットを奪還、後に復活した貴利矢に返却されており、今回使用しているスパローはこのガシャットに由来する。尚、正宗の尖兵となっていた時期は、正宗から渡された『プロトギリギリチャンバラガシャット』由来のスパローを使用していた。レーザー、ゲンム、そして量産型ライダーであるライドプレイヤーが使用したが、その全員が倒され、一度は落命する憂き目に遭っており、一時期は『呪われているのではないか』と、ファンの間でまことしやかに囁かれていた。

*9
スーパー戦隊シリーズ第35作『海賊戦隊ゴーカイジャー』、及びその劇場版『199ヒーロー大決戦』等で描かれた、岩船山を舞台とした一大決戦。宇宙帝国ザンギャックの大艦隊襲来に対し、初代戦隊『ゴレンジャー』から当時の最新戦隊『ゴセイジャー』までの全戦隊のメンバーが一同に集結、ザンギャックの大部隊を相手に大乱戦を繰り広げた。この撮影における戦隊ヒーローはCG一切無し、200人近くにのぼるヒーロー、そして同程度の数の敵兵士は全員スーツアクターが演じた。普段アクションを担当しているJAE(ジャパン・アクション・エンタープライズ)のアクターでは当然数が足りず、引退状態のアクターや、全国のヒーローショーで活動している劇団員も駆り出されたという、空前絶後、前代未聞の撮影となった。数百人の色とりどりのヒーローたちが画面を埋め尽くすその映像の凄絶さはまさに『東映の本気にして狂気の極み』であり『歴史の集大成』。こんな注釈欄ではとても全容を語り切れぬため、是非実際の映像をご覧いただき、『奇跡』を体感していただきたい。稚拙はコレを初めて視聴した際、『自分は夢を見ているのか……?』と呟いたのを、ハッキリと覚えている。

*10
この設定は本小説オリジナルの設定であり、原作にこの設定は存在しない。しかしライダーガシャットは電子的記録媒体である以上、『容量』の問題は確実に存在していると思われる。

*11
ギリギリチャンバラガシャットでのレベルアップで出現する『チャンバラゲーマ』には、バイク型の仮面ライダーレーザーレベル2と合体して人型にするための四肢パーツが含まれているため、事実上通常のレーザー専用で、他のドクターライダーとの互換性が無い。

*12
ウルトラマンシリーズでの戦闘シーンやスーパー戦隊シリーズの巨大ロボでの戦闘の際、戦場となる市街地のド真ん中に、いかにも『ここで戦え』とばかりに一カ所だけ造成された場所を揶揄した言葉。撮影の際、破壊していいミニチュアと破壊してはいけないミニチュアがある故、スーツアクターの方々は立ち回りに苦慮する。そこで要らぬ予算を捻出しないように現場で生み出されたアイデアがコレ……であると思われる。あくまで稚拙の推測に過ぎない。昭和~平成初期までの特撮では頻繁に見られたが、近年はほとんど姿を消し、『無人となったビルのオフィスの窓越しに戦闘を撮る』『戦闘の震動で自動車や自転車が吹き飛び横転する』『ウルトラマンと怪獣が移動しながら繰り広げている戦闘が、ビルの隙間から見え隠れする』といった、市街地での戦闘を違和感なく、かつ魅力的に見せる工夫がされている。スタッフ諸氏が培ってきた"匠の技"には頭が下がるばかりである。

*13
ゲキトツロボッツゲーマーの左腕に装備された大型アーム。ライダーのパンチ力を10倍に増幅する効果があり、さらに小型ロケットブースターを内蔵しており、射出して遠距離攻撃も可能。最大握力は50tで、掴んだ敵は決して放さない。

*14
コンピューターゲームにおいて、プログラムを書き換えて行う行為全般を指す。主に操作キャラのパラメータを書き換えて最強にしたり、所持金をMAXにしたり、通常のプレイでは入手困難なアイテムをあっさりと入手したり……など、枚挙に暇がない。所謂『裏ワザ』が、製作者が意図して入れ込んでいたりしていて、発見者は賞賛されたりするのに対し、『チート』は製作者のプログラムの穴を突いたもので、あまり誉められたモノではない。特に不特定多数の人間がプレイしているネットゲーム等では忌み嫌われ、発覚すれば運営者から永久BAN(永久にそのゲームがプレイできなくなる)などの重い処分が科せられることも珍しくない。……ここからはあくまでも私見だが、チートは全くの『悪』ではない。どうしてもクリアできないゲームをクリアさせてくれる、ある種の『お助けアイテム』のようなものである。ただ、それに安易にすがり、『ゲームを普通に楽しんでいる他人』に対して使うのが悪なのだ。故にチートを用いるのは1人で楽しむ『1人用ゲーム』に留めておくべきであろう。無論、使わないに越したことはないのだが。

*15
『敗北イベント』『負け確』とも。RPGやアクションゲームのストーリー進行において、その時点のプレイヤーキャラクターの強さでは絶対に倒せない強敵が現れ、プレイヤーやその仲間キャラが必ず敗北する戦闘イベントのこと。この際敵として登場するのは、主人公や仲間と因縁を持つライバルキャラクター、もしくはラスボスであることが多い。敗北してもゲームオーバーにはならず、場面転換等で物語は進行する。主人公や仲間たちがこのイベントを経て敵の強大さを身を以て思い知り、挫折を経験し、更なる強さを求めて決意を新たにする、等のストーリー上の転換点となる事が多く、その『因縁の敵』を後々、主にストーリー終盤になってようやく撃破できるようになることでプレイヤーの溜飲を下げる、という展開が多い。なお、先述の『チート』を使えば、敗北イベントにあっさりと『勝利』してしまうことも不可能ではないのだが、プログラムが意図しない現象故、その後のイベントの進行に支障をきたすことがあるため、素直に負けておいた方がいい。ただ『やり込み派』のプレイヤーにとってはそそられる要素でもあり、チートを使わず、権謀術数を巡らせ、わずかな可能性と運に賭け、苦難の末に負けイベントに勝利するやり込み動画が、ネットには多数アップされている。近年は製作側もそれを意識し、達成のご褒美としてボーナスアイテムをプレイヤーに支給するなどの粋な計らいも見られたりする(もっとも戦闘で勝っても、シナリオ上はそこで『負けた』ことを前提に進行することがほとんどである)。




 キャラクター解説

 仮面ライダーレーザーターボ ロボットバイクゲーマーレベル0

 仮面ライダーレーザーターボが、『ゲキトツロボッツガシャット』を使用して召喚した『ロボットゲーマ』を装着、変身した形態。
 エグゼイドのロボットアクションゲーマーレベル3同様、左腕の強化アーム『ゲキトツスマッシャー』を使用した格闘戦を展開する。
 また、胸部に装備された『ガードアクチュエーター』によって単純な防御力も向上している。
 それまでレベルアップに用いていたギリギリチャンバラガシャットがレーザーターボのレベルアップに対応しておらず、檀正宗から渡されたプロトガシャットはCRに返却したため、結果的にレベルアップができず、多数の敵への対処に苦慮していたレーザーターボにエグゼイドが渡したガシャットによって変身した本形態だが、敢えて装甲を削ぎ落して瞬発力と機動力を重視したレーザーターボと、攻撃を受け止めつつ真っ向から攻め込むゲキトツロボッツガシャットは全く正反対の特性を持っており、ブレイブ・コンバットクエストゲーマー同様にバランスが悪い組み合わせである。

 だが今回の戦闘の主目的は『時間稼ぎ』であり、物量で攻めてくる敵に対して、回避でやり過ごすより、ある程度攻撃を喰らうことを前提として、耐え凌ぐ方が得策―――――と、貴利矢は『爆速判断』、この形態が顕現することとなった。
 もっとも、元のバイクゲーマーレベル0も瞬間的なパワー出力はエグゼイドのアクションゲーマーレベル2を上回るため、攻撃力自体はエグゼイドのロボットアクションゲーマーレベル3を遥かに凌駕する。
 必殺技は、『ゲキトツスマッシャー』を射出、テニスのラリーのように複数回蹴り返して攻撃、最後は飛び上がってのライダーキックにスマッシャーを装着して攻撃する『ゲキトツクリティカルストライク』。

 ――――――――――

 今回地の文がヤケに尖ってた気がします……劇場版ゼロワンが配信待ちになった腹いせ、でしょうか……。

 降臨、満を持して―――――(違)

 次回、神の恵みが来ちゃいます。

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