ネガキュアバグスター(ステージ1)
りんくが買ってきたゲームソフト『ベストフレンドプリキュア』(ジャンル:友情と絆のプリキュアクション)に仕込まれていたバグスターウイルスが、ゲームをプレイしたりんくとメモリアに感染した後、実体化したバグスター怪人。
元となった『ベストフレンドプリキュア』のステージ6『ネガポジ王国』のボス、『ネガキュア』がモデルとなっている。プレイヤーが操作しているプリキュアがネガポジ反転し、顔に仮面をつけた姿をしており、それまでのプレイヤーの操作の傾向やクセを読み取り、それを基に行動パターンが決定されるという強敵で、プレイヤーはまさに『自分との戦い』を強いられるのである。
キュアメモリアルに変身しているりんくに感染していたためか、ネガキュアバグスターの姿は『闇墜ちしたキュアメモリアル』と形容できる姿となった。しかし、これはバグスターウイルスがネットコミューンの変身アプリを暴走させているわけではなく、りんくとメモリアの記憶からキュアメモリアルの容姿と戦闘データを抽出したバグスターウイルスが、りんくを素体にウイルス自体を『肉付け』して、マリオネットのように操作しているに過ぎない。
しかし戦闘能力は通常時のキュアメモリアルに匹敵するほどで、キュアデーティアも変身解除に追い込まれるも、その後現れた仮面ライダーエグゼイドには、戦いの経験の差もあって劣勢を強いられる。追い詰められたネガキュアバグスターは……―――――
――――――――――
すぐ投稿するとかのたまっておきながら、毎度お待たせしてしまいスミマセン……
それにしても仮面ライダー滅の存在感ときたら……
悪堕ちした高岩さんがここまで恐ろしく見えるとは……!
相手は伝説の高岩さんだぞ!?絶対に勝てない……逃げるんだよォー!!
ゴーストでジャイロが出てきた時以来の絶望と恐怖を感じております……
今回で『エグゼイド編・前篇』完結です!
衝撃のラストを、お見逃しなきよう……!
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エグゼイドが2人に『分裂』したのを見て、更に気付いたことがある。
「……片方が……パラドだ」
―――――パラド。
本来は永夢先生の敵であるバグスターの首謀格だった存在だ。
永夢先生自身に感染していた『もうひとりの永夢先生』にして、『天才ゲーマーM』の
人間とバグスター……『命』の価値観がまったく違う故に永夢先生とは何度も剣を交え、絶対に分かり合えないと思われていた相手―――――
でも、永夢先生から『命はひとつしかない』ということ―――――『命の意味』を教えられ、それを受け入れたことで正義に目覚め、永夢先生とともに戦うようになった彼が、ここにいるということは―――――
《テレビの最終決戦間近か、それより後のエグゼイドか……》
データも考えていることは同じようで、そんな独り言が聞こえた。
《
そのパラドが変身していると思われる"R"が、9つのキーボードが備えられた、変わった風体の剣―――――『ガシャコンキースラッシャー*1』を手にした。
『行くぜ……!』
《
刀身部分―――――『ブレードエリミネーターGKS』から、青色のエネルギーで形成された刃が噴き出し、ブラックに振り下ろされた。とっさに両腕を交差させたそこへ命中して、金属めいた衝突音が響いた。
『!……この感じ、アンタもバグスター……!?』
『ああそうさ。もっとも、お前と違って"良性"の、な!』
"R"はスラッシャーを振り抜くように間合いを離すと、側面の『アタックラッシュキーパッド』、そのうちの大型の黄色いキーを叩くように押す。
《
刀身上部の銃身『ガンエリミネーターGKS』に、黄金色のエネルギーが迸る。両手持ちで狙いを定めた"R"がトリガーを引くと、銃口からエネルギーの弾丸が連射された。
何発かがブラックに命中して、炸裂音と同時に火花が舞い散る。
『く……同じバグスターなのに、どうしてあたしたちの敵に!?』
『俺がお前の敵になったんじゃない……
再度、"R"の
『バグスターと人間が一緒にいられるわけ……ない!』
その言葉を聞いた瞬間、橙色の
《
キーの下部の『アックスエリミネーターGKS』から、橙色のエネルギーの斧頭が飛び出し、力任せに振り抜いてブラックを引き剥がした。
遠間に着地したブラックを、うつむき加減から上目遣いに"R"が睨む。
『……勝手に決めつけんなよ。俺は自分の意志で此処にいる……それに、俺以外にも人間と共存してるバグスターはいくらでもいるぜ。…………仲間を手に掛けたくない。大人しく永夢のリプログラミングを受けるんだ』
『!?冗談じゃない!あたしの命はあたしのモノ!誰にもジャマはさせない!!』
強情にも聞こえるその言葉に、"R"は静かに返す。
『……………………お前、昔の俺だな』
『はぁ?』
『お前は自分の命が絶対大事で、それ以外はどうなってもいいって思ってるんだろ』
『当たり前じゃない。それがあたし達バグスターの存在意義なのよ!』
『存在意義なんて、幾らでも変えられる!それに何も、お前ひとりだけで変えなくてもいい!俺だってそうだ……『人間たちを攻略するバグスターの参謀・パラド』は"あの時"、永夢に
左の拳を握り、自分の胸を叩いた"R"が叫ぶ。
『
僕には、仮面の向こうのパラドの表情が見えた―――――そんな気がした。
数多の戦いを経て、『命の意味』を知った彼だからこそ云える言葉だ。
でも―――――
『言うだけならいくらでも言えるわ……そう簡単に運命なんて変えられちゃ、たまったもんじゃないわよ……!あたしはあたし、バグスターのままでいたい……!命や運命を他人に勝手にいじられるなんて……』
―――――そんなの、ぶっちゃけ、ありえない
『決裂か……―――――永夢!』
"R"が叫ぶと、それまでホワイトと格闘していた"L"が振り向き、『ああ!』と返し、ミドルキックを叩き込んでホワイトを吹っ飛ばすと、大ジャンプで"R"の隣へと着地した。そして、"R"が持つスラッシャーから幻影のようにもう一振りのスラッシャーが出現して、"L"の手に渡り、実体化する。
それを見て取った"R"と"L"は、スラッシャーのスロットに、それぞれのマイティブラザーズXXガシャットを装填した。
《
対称に構えたふたりのエグゼイドが、エネルギーが迸るスラッシャーを手に、ブラックを見据えた。そして―――――!
二振りのスラッシャーの刀身から、三日月形の斬撃波動が飛び出し、交差して『X』の文字を形作り、河原の草むらを刈り払いながら驀進する。そこへ―――――
『ブラック!危ないっ!!』
不意だった。
視界の死角から、白い影が黒い影を突き飛ばすのが見えた。
―――――ドッゴァァッァアァァァァァァンン!!!!!!
劈く閃光―――――
さっきまでブラックが立っていた場所が、轟音とともに爆裂した。へたり込んだブラックは、呆然とした様子でそれを見つめていた―――――。
《アイツ……!》
「仲間をかばったのか……!」
特撮でもよく見るシーンだ。でも、それを『敵』が行ったとなると、どうにも言えない複雑な気分になるのは僕だけだろうか。
その時―――――脱力したブラックの手が、ぐっと握られるのを見た。
『…………けない……』
「……!?」
"氣"の流れが、変わった―――――?!
悪寒に似た"氣"を感じ取った僕の背筋が、ぞくりと戦慄するのがわかる。
『
立ち上がり、絶叫したブラックの全身から、オレンジ色のバグスターウィルスの光が噴き出した。
『なんだ……!?』
身構えるふたりのエグゼイドの眼前で、放出されたオレンジ色の光が、人間の形を成していく。そして―――――
ついさっき、ブラックをかばって爆散したはずのホワイトが、まったくの無傷、五体満足の状態で顕現したのだ。
「な……」
《……ッソだろ……!?》
『『……!?』』
僕はもちろん、データも唖然とした。ふたりのエグゼイドが瞠目するのが見えた。
『言ったでしょ?"絶対に負けない"って!』
『私たち……"ふたり"なら!』
仕切り直しとばかりに、今度は逆に、ブラックが"L"、ホワイトが"R"へと突撃した。
『何度だって!!』
『相手してやるぜ!!』
《《
ふたりのエグゼイドが同時に『高速化』のエナジーアイテムを取った瞬間、エグゼイドとふたりのネガキュアは、もはや姿を目で捉えられない程に加速した。黒と白、橙と緑の"軌跡"だけが周囲の地面のみならず空間までをも縦横無尽に駆け、ぶつかり合い、火花を散らす。
《み、見えねぇ……!!》
「…………!!」
速すぎる……!!
特撮でもよく見るけれど、こうなってしまうと語るに語れない。四色の風が乱れ舞うそれはまさに、画面やスクリーンの向こう側の光景だ。
でも、"僕のすべて"を圧倒的に刺激する、視覚と聴覚に感じるそれは、紛れもない現実で―――――!
僕の眼前で一際強くぶつかり合った4つのシルエットが、視界の中で両端に別れる。
ふたりのネガキュアは抱え込み回転しながら宙を舞い、近くの橋の橋脚へと張り付くように
《
電子音声に振り向くと、川の浅瀬に立つふたりのエグゼイドが、ネガキュアのいる橋を見上げながら構えるのを見た。エネルギーがスパークし、足元の水面が激しく沸騰して蒸気が立ち昇る様まで見えた。
ふたりのエグゼイドが同時にジャンプし、左右対称のダブルライダーキックを『斜め上方』へと放った。そして、それを見て取ったかのように、ふたりのネガキュアも橋脚を蹴り出し、まるでエグゼイドと鏡合わせのようなダブルライダーキック―――――この場合はダブルネガキュアキックと云うべきか―――――を繰り出す。そして―――――
―――――!!!!!!!!!!!!!―――――
激突の瞬間、轟音と閃光が散った。衝撃波が四方八方へ襲い掛かり、僕の間近の地面にも着弾して爆炎を巻き上げる。
―――――反射的に、僕は東堂さんを庇っていた。幸い、僕と東堂さん、そして園長先生に直接衝撃波は襲い掛からなかった。
こんな爆発の中で殺陣をやっているスーツアクターさんは本当に凄いと感心し直すと同時に、死ぬかと思うくらい肝が冷えた。
「……!」
恐る恐る河原に視線を戻すと、そこはチリチリと雑草が燃え散る中の決闘場と化していた。
そして、ふたりのエグゼイドとふたりのネガキュアが、五体満足、ほとんど無傷で、4人それぞれ距離を置いて向かい合っていた。
あれだけの力の衝突を経ても、互いに譲らない。恐ろしいほどの互角の戦い。
これは―――――殺気……?それとも、闘気……、だろうか。
恐ろしいまでの冷徹な感情が、張り詰めながら、見えない渦を巻いて、空気さえも獣の様に呑み込んで場を支配している―――――
言葉一つ、息一つ、この両者の間に挿し込むことすら許されないほどの―――――
これが―――――本物のヒーローが……命の奪い合いを演じてきた戦士たちが放散する―――――
―――――"氣"―――――
『―――――…………互角……みたいね……!』
仮面にこびり付いた泥をぬぐいながら、ネガキュアブラックが"L"を見据える。
『……1回やられたクセに言ってくれるじゃねーか』
"L"の双眸が、苦々しげに鋭く変わる。
『永夢……もうわかってるな』
"L"とネガキュアホワイトを代わる代わる見ながら、"R"は力を抜いて、右手に携えたキースラッシャーをだらりと下ろした。
『ああ。
"L"が、"R"をちらと見て頷く。
『……決めるんだったらお前に任せるぜ、パラド』
『ああ―――――一気にクリアしてやる―――――よッ!!』
語気を強めた瞬間、"R"はキースラッシャーを"L"に向かっていきなり投げつけた―――――!?
『『「《!?!?》」』』
僕だけでなく、データも面食らった表情をしていたに違いない―――――後で聞いたところによると『マジで裏切ったかと思った』と語っていた―――――。まさかの『仲間割れ』に面食らったのか、ふたりのネガキュアの行動も一瞬遅れた。
しかし"L"は、飛来したキースラッシャーを身体を反らせて避けながら、グリップ部分を掴んでキーパッドの黄色部分を叩き、その勢いのままくるりと回転して片膝をつき、さながら猟師のような見事な構えで射撃を放った。
この一瞬で完全に虚を突かれた形になったネガキュアのふたりは、接近しようにも"L"の射撃に阻まれ、間合いを詰めることが難しくなった。
それを見た"R"が、ゲーマドライバーにセットされたマイティブラザーズXXガシャットを取り外し、黄色いダイヤルが備えられた、赤と青、ツートンカラーのガシャットをその手に取った―――――!
《お、おい!ありゃ……!!》
「うん……間違いない……!パラドの本気が来る……!!」
最初に永夢先生が変身した時と同様の躍動的な構えから、"R"がパラドの声で叫ぶ。
《
《The strongest fist! What's the next stage?》
《
《
"R"の姿が、まったく別の仮面ライダーへと変わるのを、僕とデータは瞠目して見つめていた。
金色のフレーム"ゴルビルドガード"に彩られたアーマーは、赤と青のツートンカラー。
太陽のそれを思わせる頭部に、左右の色が違う複眼。
さながら、中世の闘士を思わせるこの姿こそ、パラドの真の姿にして最強
「"仮面ライダーパラドクス*2"…………"パーフェクトノックアウトゲーマー・レベル
人間の遺伝子を取り込むことで、ゲーマドライバーの使用を可能としたパラドが変身した、パラドクスの最強形態―――――
この姿になった以上、もはや容赦はしないということか。
『……!また姿形を変えても!』
"L"の牽制射撃を掻い潜り、ホワイトがパラドクス目掛けて突撃する。でも―――――
『お前はそこで……止まってろ』
パラドクスが左腕をホワイトへと向けた。すると、周囲から紫色と灰色、黄緑色のエナジーアイテムが、さながら意志を持つかのようにホワイトへと殺到した。
《
《
《
立て続けにエナジーアイテムを喰らったホワイトは、ふらりと上体を不自然に揺らしたと思うと、足元から足首までが鋼鉄化し、ついには動かなくなってしまった。
《鬼畜過ぎんだろ……》
ドン引きする声がコミューンから絞り出された。それは僕も同じだよ……
『ホワイトっ!!』
『また横槍でも入れられたら厄介だからな……お前を確実に倒すためにはアイツは邪魔だ』
『く……!』
『……同じバグスターの
そう呟いたパラドクスは、ゲーマドライバーのレバーを閉じた。
《
《
『―――――……、楽にしてやるよ』
《
レバーの解放と同時にパラドクスの全身にエネルギーが満ちて、周囲の雑草を切り裂きながら迸る。
力強く跳躍したパラドクスは、両脚を揃えたドロップキックをブラックに放った。
それを見たブラックは、両腕を交差させて正面から受け止めようとする―――――!
『おおおぉおぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!』
パラドの吶喊が、轟音の中をかき分けて聞こえてくる中、僕はもう一つの声を確かに聞いた。
『―――――…………ごめん、ホワイト……―――――』
―――――ズガガアアァァァァァァァァァァンンン!!!!!
爆炎とともに、オレンジ色の粒子が周囲へと拡散して、そして、消えていった。
《……や……やりやがった……!!》
文字通り、塵も残さず消滅する様を、僕は確かに見た。
「最強フォームの必殺技を受けたんだ……これで……―――――」
復活する……出来るハズは無い……と思う。
ホワイトを復活させる能力を持っているブラックさえ倒してしまえば―――――
『後はお前だけだぜ?どうする?』
エグゼイドがそう声を掛けると同時に、ホワイトのエナジーアイテムの効果が切れたのか、足元をふらつかせながらもなんとか踏ん張り、エグゼイドとパラドクスを睨み返してきた。
『それとも……たったひとりで俺達に挑むか?』
パラドクスの問いにホワイトは答えなかった。
―――――でも。
『………………ふふふ……うふふふふ…………』
肩を震わせ、仮面の奥から泣き声にも聞こえる笑い声か、それとも笑い声に聞こえる泣き声か、切れ切れのか細い声が河原に流れる。
『何が
『可笑しい?……そうね……"それ"が可笑しいのだから、笑うしかないのかもね……?』
ホワイトはするりと舞うような構えを見せたと思うと、仮面越しにもわかるくらいの鋭い『視線』を、エグゼイドとパラドクスに向けた。
『だって――――――――――私は
『『!?』』
『ひとりじゃない限り……
今度はホワイトの全身から、オレンジ色の粒子が噴き上がる。この光景、ついさっきも……!?
《おいおいおいおい……まさか……!?》
データも僕と同じ予想をしていたようで、不安だけが高まっていく。
そして、そんな僕とデータの予感は、"その通り"に目の前に―――――
―――――"再生"した……!
『黒だけじゃなかったのか……!』
『くそ……こうなったらもう一度白から攻略するしか……!』
身構えるエグゼイドとパラドクス。しかし、よろめき片膝をつくホワイトにブラックが駆け寄ると、
『……ホワイト、ここは一旦退くよ!』
『……ええ!』
ふたりとも、バグスターのオレンジ色の粒子に包まれて、霧のように掻き消えていった。
激闘から一転、あっさりとした幕切れに拍子が抜け、少し遅れて安心感が胸に満ちた。
しかし―――――ネガキュアバグスターを攻略したわけじゃない。
あのふたりを完全撃破しない限り、ゲーム病を発症した東堂さんを治療することはできないのだから。
でも…………―――――
僕に果たして、何ができるだろうか―――――
ネガキュアバグスターにまったく敵わなかった僕は―――――
無力なのだろうか―――――
《
ゲーマドライバーの電子音声が鳴り響いて、うつむいていた僕は反射的にそちらに視線を移した。
エグゼイドとパラドクスが立っていた場所に、ふたりの青年が立っていた。
「……逃がしたか……」
「焦らなくてもいいよ。まだ詳細もわからない新種なんだから」
「必ず攻略法を見つけてやろうぜ」
「うん…………ありがとう」
「じゃ、また後でな」
黒い服を着た青年は、白衣の青年に笑顔を向けると、オレンジ色の粒子と化して白衣の青年へと一体化した。
―――――一瞬の静寂の中、風が吹いて、白衣がはためく。
「あ………………」
わかってる。
わかってる、はずだ。
「あの………………」
知っている。
僕は、この人のことを知っている。
だけど―――――
僕の呼びかけを聞いたのか、青年はこちらに振り向いた。
僕は―――――
問いかけずには、いられなかった。
「あなたは…………?」
精悍な表情が、ふっと和らぐのを、僕は見た。
そう―――――
画面の中―――――
スクリーンの向こう側―――――
『四角く』隔てられた世界の中にしかいなかった人が―――――
僕の『最終目標』へと、ずっと前にたどり着いていた、大いなる先達が―――――
『ナニモノ』にも隔てられていない、僕の視界の目の前に立っている―――――
「ぼくは―――――
笑顔で歩み寄ってきた彼は、姿勢を低くして東堂さんを守っていた僕へと、手を差し伸べた。
「……大丈夫。きみの友達は、必ずぼくが―――――ぼく達が、助けてみせるから」
僕はその手を取って、立ち上がった。
暖かくも―――――力強い手だった。
今まで、何人も―――――否、数えきれないくらいの人々の命を救ってきた、本物のヒーローの手―――――
僕の両の目から―――――自然と、涙があふれた。
そして―――――目の前の世界が、霞んだ。
ありとあらゆる感情が、頭の中と胸の中に渦巻く中で、これだけは、はっきりと、心にふっと湧いたことを覚えている。
僕は、今、奇跡のような―――――
ううん、『奇跡のはじまりに立ったんだ』と。
これから先、何があっても、絶対に忘れることのない、忘れることのできない―――――
『奇跡の日々』のはじまりを、僕は予感していた―――――
――――――――――
……ENEMY PHASE
――――――――――
日が傾きかけたあたりから、東栄市全域に夕立ちめいた大雨が降り出した。
アスファルトが濡れる独特の臭いが充満しだす薄暗い裏路地に、オレンジ色の粒子がふわりと湧き上がり、2つの人影を成していく。
雨宿りをしていたノラ猫が、『何やねん!?ワイのナワバリに勝手に入ってくんねや!!』と猛抗議するかの如く、全身の毛を逆立てて『フーッ!!』と唸る。
だがその粒子が実体化して、2人のコスプレじみた人間となると態度を一変させ、『おみそれしやした~!!』とばかりに駆け出し、路地の隅に置かれていた水色のポリバケツを蹴倒しながら逃げ出した。
仮面で顔を覆っているふたりの少女―――――その内黒色をまとったネガキュアブラックは、ビルの壁にもたれかかるように背を預け、雨を降らすどんよりとした曇り空を見上げた。
『……まさかあんな連中がいるなんてね……!完全な想定外だったわ……』
『復活する度に蹴り倒されてたらジリ貧だもんね……』
『このままじゃ……負けないにしても勝つことなんてできない……!あたし達に……もっとチカラがあったら……!』
―――――使い古しなセリフだけんなァ、今のテメーらが一番望んでる言葉をくれてやんぜ。
その場にいない第三者の言葉が響き、ハッとして身構えるふたりのネガキュア。
不意に、ネガキュアの進路も退路も塞ぐように、路地の両側にひとりずつ、ふたりの人影が立った。
その内のひとり―――――暗緑色の髪の少女が、悪魔じみた表情で言った。
『……
『誰!?』
『……まさか……プリキュア!?』
ホワイトの言葉に癪に障るモノがあったのか、暗緑色ではないもう片方―――――暗黄色の髪の少女が、一瞬で間合いを詰め、腰の後方から伸びる尻尾、その先端をホワイトの首筋へと付きつけた。電源コードのプラグに似ていれど、鋭利な先端からは『殺意』が滲み出ている。
『心外。憤慨。沈黙。掌握。存在―――――消去』
『……やめろキュアハック。デリートすんな』
『……………………是。キュアウイルス』
キュアハックと呼ばれた暗黄色は、尻尾をすっと引っ込めた。長い前髪で隠れた目線からはその感情を窺い知れないが、ばつが悪そうにしているのがありありと見て取れる。
『その名前……やっぱりプリキュアなんじゃ……!』
『それ以上その名前口にしない方がいいぜ?……流石ん
『……まぁいいわ。それで?さっきアナタが言ってた『力』ってどういうことかしら?詳しいお話を聞きたいんだけど』
『あーそーゆーのまどろッこしいからパスな―――――』
――――――――――ドズッッッッ!!!!!
鈍い音とともに、ブラックは腹部に鋭い、それでいて焼けつくような痛みを感じた。思わず下を見ると―――――
キュアウイルスの左手が自分の腹部にめり込んでいる、"ありえない光景"がそこにあった。
『!!!!…………あんた……何……を……!?』
『やれやれ………………テメーら………………
『……!?』
『モルモットんクセにイキんなッての』
『
痛みの中で目を向けたブラックの視界の隅に、ホワイトの鳩尾にも、キュアハックの左手が突き刺さっているのが見えた。
『バグスター。ワルイネルギー。因子。移植。……実験台。自我。不要』
『テメーらはジャークウェブの『次の計画』のために己達が培養したんだよ。『種菌』手に入れんのにも苦労したんだぜ?なのに勝手に戦われて勝手に消えられちゃ困んだよ』
『あ……あたし達は……あたし達は………………!!』
『『実験台なんかじゃない!』……ってかァ?―――――』
ありきたりな定型語を先読みして茶化すと、キュアウイルスは狡猾な笑みをブラックに寄せた。
『―――――……残ァン念ェンでぇしたァ!何をどう頑張ってもテメーらは己達の『
『抵抗。無駄。概念。不変。推薦。諦念。…………フフフ、クフフフフフ………………♪♪♪』
キュアハックも彼女らしくなく口元を歪めた。
『そん、な…………』
『だぁかぁらぁさァ………………力が欲しいんだったらくれてやんよ。本家本元の、『伝説の戦士』サマの力をなァ!!』
『そ……れ……は…………』
『あーもう黙れよ。つか、そもそもテメーらの見てくれが気に入らねぇ――――――――――"あのふたり"にそっくりなだけでブチ消したくなんだわ』
瞬間、ブラックとホワイトにねじ込まれた『何か』が、闇色の光を噴き、その光の奔流に意識がさらわれそうになる―――――
雨音と痛みと、それとは別の何かが、ふたりのバグスターの五感を掻き消し、埋め尽くして、呑み込んでいく―――――
『誇り高き灼熱の
『世を超越せし魔法よ、四つの色彩を以って、真なる宝を混沌に染め上げよ――――――――――』
……ま、精々暴れていいデータ採らせて役立ってくれや。
ギャハハハハハハハハハハハハッッッ!!!!!
―――――STAGE CLEAR!!
RESULT:NONE
プリキュア全員救出まで:あと50人
TO BE NEXT STAGE……!
『ふたりの魔法!』
『真紅の炎のプリンセス!』
―――――りんくの『今回のプリキュア!』
りんく「今回のプリキュアはだ〜れだ?」
『蒼い薔薇は秘密のしるし……ミルキィローズ!』
メモリア「『プリキュア5』のひとり、"
りんく「妖精のミルクが大変身!美々野くるみちゃんがさらに変身した、青いバラの戦士だよ!」
メモリア「そんなローズのキメ技は、コレ!」
『邪悪な力を包み込む、薔薇の吹雪を咲かせましょう……!ミルキィローズ・ブリザァァァァド!!』
メモリア「青いバラの花吹雪で相手を一瞬でバラバラにしちゃう、ミルキィローズ・ブリザード!……って、なんかヤバい技だよね、コレ……」
りんく「ファン投票では『最強のプリキュア』の呼び声もあるローズだけど、サーバー王国でも、やっぱり?」
メモリア「毎回プリキュアーツのベスト8には必ず入ってたよ!……戦う度にリングが穴だらけになってたけど」
りんく「ローズと言えばクレーター、クレーターと言えばローズ!これ、テストに出まーす」
メモリア「なんのテストなんだか……(-_-;)」
りんく「ちなみに一時期、シャイニールミナス共々プリキュア認定されてなかったのよねぇ……今でこそオールスターズにいるけど……名前に『キュア』がついてないからだったのかしら……」
メモリア「ほくとが言ってたよ?仮面ライダーにも『仮面』ってつかないライダーがいるって」
りんく「ガンダム顔してないけど実はガンダム……って感じかしら……ややこしや……でもって今回は二本立て!お次はこの子!!」
『遍く生命に祝福を―――――キュアフェリーチェ!』
メモリア「『魔法つかいプリキュア』のひとり、"
りんく「妖精のはーちゃんが成長した、花海ことはちゃんが変身した、3人目の伝説の魔法つかい!」
メモリア「そんなフェリーチェのキメ技は、コレ!」
『Cure up!―――――プリキュア!エメラルド・リンカネーション!』
メモリア「花の命のチカラでワルモノを浄化する、エメラルド・リンカネーション!はぁ~、いきかえるぅ~♪」
りんく「サーバー王国だとずっと変身しっぱなしのプリキュア達なんだけど、普段のフェリーチェってどーだったの?正直気になって……」
メモリア「なんってゆーか……オンとオフが激しいってゆーか、戦う時といつもはほとんど別人なんだよね……戦ってる時は『キリッとしたお姉さん』って感じでカッコいいんだけど、前に保育園に来た時なんか、ミラクルとマジカルそっちのけで、子供たちといっしょにはしゃいで鬼ごっこやお絵描きして遊んじゃうくらいだもん」
りんく「ちょっと想像できないかも……フェリーチェの姿のままで『はーちゃん』やってるとか……」
メモリア「ところで今回、どーしてローズとフェリーチェを紹介したの?」
りんく「う~ん、今回紹介しておかないといけないよーな気がして……ってゆーか最近の私、ミョーにぞんざいに扱われてる気が……主役なのに病気にかかっちゃうなんてはっぷっぷ~だよ……」
メモリア「??しゅやくって?」
りんく「次回は絶対に名誉挽回だぁ~!!はっくしゅん!!」
メモリア「無理しちゃダメだって……へ、へっきし!!」
――――――――――
―――――ほくとの『レッツゴーライダーキック!!』
ほくと「ついに本物の仮面ライダーと対面した僕!今回紹介するのは!」
データ「もちろん、コイツだぜ!!」
《MIGHTY JUMP! MIGHTY KICK!! MIGHTY MIGHTY ACTION! X!!!!》
『ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!!』
ほくと「聖都大学附属病院の研修医・宝生永夢先生が変身した"ドクターライダー"、それが彼、『仮面ライダーエグゼイド』だ!」
データ「まさかホンモノに出会えるなんてな……コイツぁどーゆーこった?」
ほくと「テレビの中の存在だと思ってた仮面ライダーが、僕達の目の前に……!」
データ「着ぐるみでもスーツでも、中に高岩サンが入ってる訳でもねぇ……目の前で変身したのを見たから間違いないぜ!!」
ほくと「戦いの中で、周囲の人々も、バグスターの心さえも動かしていったあの人を前に、僕は……―――――」
データ「ノセられちまってるなぁ♪」
ほくと「パラドとのコンビネーションも健在だった……もしかして、あの永夢先生は……?」
データ「お~っとそこまでだ、ネタバレはカンベンな。次回はなんと!あの『CR』に潜入だ!それじゃ、またな!!」
ほくと「え?!ってことはもしや!?」
次回予告
ナレーション「次回、『インストール@プリキュア!』」
―――――テレビの中にしかなかった場所が、ほくとの目の前に―――――
ほくと「本物の……CR……!」
―――――憧れのライダーたちが、次々と現れて―――――
??「新種のバグスターらしいな」
??「エグゼイド……お前そういうシュミがあったのか……」
りんく「パペピプペポパポ?」
????「ポッピーピポパポ!」
―――――現れたバグスターに変化が……!?―――――
????『バグスターの反応が消えただと!?』
????『攻撃が効かない?!』
―――――迷えるピースに、永夢が贈る言葉とは―――――
ピース《ワタシ……カッコ悪い、ですよね……》
永夢「何のために戦うのか……もう一度考え直してみるのは、どうかな」
―――――キュアデーティアとライダーに、新たなる力が……!?―――――
??「これぞ!二つのチカラの融合!"プリキュアガシャット"!!
デーティア「キュアデーティア……"エグゼイドスタイル"!!」
第15話『輝くHEROはキミのそばに! GAME START@エグゼイドスタイル!』
―――――そして明かされる、世界の真実―――――
????「ここが『稚拙な物書き』が書いた『小説の中』だからこそ……"彼"を封じ込めるのに丁度良かったのよ」
――――――――――
というワケで、『エグゼイド編・前篇』、完です!
エグゼイドのみならず、パラドクスまで登場させることができたのは嬉しい誤算でした!
彼、プロップの段階ではいなかったんですから……(汗
次回は更にエグゼイドキャラ続々登場!そしてオリジナルガシャットも出ますのでお楽しみに!!
……次は1話書くのに何ヶ月かかるんだろう……(遠い目)