インストール@プリキュア!   作:稚拙

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 レジェンドインストール図鑑

 ロゼッタスタイル
 属性:太陽

 戦力分析 力:2 技:4 速:3 防: 知:4 特:4

 『ドキドキ!プリキュア』のサブリーダー、『キュアロゼッタ』のキュアチップをネットコミューンにセットしてレジェンドインストールした、『インストール@プリキュア』の護葉戦闘形態。
 キュアロゼッタ同様の防御を主体とした戦闘スタイルであり、敵の攻撃をしのぎながら、その中で一瞬のスキを狙う。
 コスチュームにたくさん配置されたクラブマーク型パネル『プランテクローバー』から、赤外線から紫外線までのあらゆる『光』を吸収し、エネルギーに変換する。
 熱を持つ光源は大なり小なり赤外線を放出しているため、ほんの僅かな薄暗い光源や、それを受けた地熱からも光を受け、力にすることが可能。そのため昼間はもとより、完全な暗闇でない限り、安定した戦闘能力を発揮することができるようになっている。
 もちろん、世界で最も強力な光源である『太陽光』の下では最大限にパワーアップするのは言うまでもない。
 『ロゼッタウォール』と、それを大型化した『プリキュア・ロゼッタリフレクション』は、太陽エネルギーを集中させて物理的指向性を付与した、『結晶化した太陽光の盾』。光線のように一気に放出するのではなく、緩やかにエネルギーを注ぎ込みつつ展開するため、エネルギー消費がそれほど激しくない利点もある。
 また、リフレクションは攻撃を防御するごとに、相手の攻撃エネルギーを蓄積し、攻撃を受ければ受けるほど防御力が上昇する。
 しかしエネルギー許容量には限界があり、それを超過した攻撃を受けると破砕されてしまう。
 太陽エネルギーのバイアスを制御することで、片面に防御のための斥力を発生させたまま、もう片面を物理接触可能な平面とする、ということも可能。
 そのため盾として使うことはもちろん、空中に配置して足場として使うこともできる。
 また、バイアスの加速方向を変化させることで、攻撃手段として前方に射出したり、外縁部を刃とした斬撃武器として扱うこともできる。
 この際、蓄積されたエネルギーが、攻撃手段としてのリフレクションの破壊力にそのまま転換されるため、相手が苛烈な攻撃を行えば行うほど、ロゼッタの反撃もまた苛烈となるのである。

 マーチスタイル
 属性:風

 戦力分析 力:3 技:3 速: 防:2 知:2 特:2

 『スマイルプリキュア』のひとり、『キュアマーチ』のキュアチップをネットコミューンにセットしてレジェンドインストールした、『インストール@プリキュア』の旋風戦闘形態。
 キュアマーチ同様の機動力を重視した戦闘スタイルで、敵の攻撃に真っ向から一直線に突撃し、勇敢に戦う。
 コスチュームの翼状の『ウィングパニアー』によって周囲の気圧を探知し、自身から一定範囲内の任意の空間地点に特異点を設定、その一点の気圧をコントロールすることが可能。
 ある一点の気圧を上昇させ、別地点の気圧を低下させれば、気圧上昇させた地点から気圧低下させた地点へと、気圧傾斜力が働く。この際、気圧の不均一を解消しようとする空気の作用として発生する現象が『風』である。
 マーチスタイルはこうした気圧のコントロールを行うことで、頭の中で思い描いたとおりの風向・風速を伴う、ありとあらゆる『風』を発生させることができるのである。
 故に、カマイタチなどの『真空状態』を発生させることは実は『管轄外』であり、気圧制御における『空気流の操作』に対しては、それほど応用が利かない。
 だが、発生させた低気圧特異点に高気圧特異点を叩きつけることで、超高圧縮気体を作り出し、『衝撃波』として撃ち出したりなど、直接的な攻撃手段は数多い。
 『プリキュア・マーチシュート』もそのひとつで、球状に圧縮した超高圧縮気体を蹴り放ち、一定地点で炸裂させる技である。
 この際、安定していた超高圧縮気体がキックによって撃ち出される際に安定性が乱れることで『起爆』、急激膨張することで衝撃波が発生、気圧差によって爆発的に増幅することで局地的、かつ風速100m/hを超える激烈無比な竜巻を発生させる。
 あまりに強烈な気流故、生半可な攻撃で相殺することは不可能に近い。また、幾重にも積層化された衝撃波は、物理攻撃や質量攻撃、銃撃や、ミサイル・バズーカ弾頭といった砲熕兵器の進入やそれらの爆発エネルギーを遮断、放散させることは勿論、ビームやレーザーといった光学・粒子光線兵器すらも拡散・無効化するほどであり、活用次第では攻撃を防ぐバリアとしても機能する。
 また、上昇気流と下降気流を自在に発生させられるその利点から、炎属性と組み合わせての熱風や、氷属性と組み合わせての降雨・降雪、雷属性と組み合わせての雷雲発生など、局地的ながら天候を自在に操作することもできる。
 その点、炎属性のキュアサニーや氷属性のキュアビューティ、雷属性のキュアピースが同チームにいる『スマイルプリキュア』というチームはこの『天候操作』にうってつけであり、同じ5人編成の『プリキュア5』とは異なる連携戦術に、一層幅を持たせていると云えよう。

 ――――――――――

 『ぱすてるメモリーズ』に『グリムノーツ』……
 今期のアニメからはディケイドのニオイがすると常々感じる稚拙です。

 お待たせしました!
 今回から、本格的クロスオーバー『仮面ライダーエグゼイド編』に突入です!
 ……が、最初はワンクッション置いて、レジェンドプリキュアの皆さんが『あの回』を見てしまった話と、キュアピースの『新たな目標』を送信です!

 ……ちなみにスタイル解説は俄か齧りの『なんちゃって科学』ですので、拙いところはご容赦を……


仮面ライダーエグゼイド編 第14話 EXCITE@EX-AID!
笑顔の世界のSTONE FOREST!


 海風に揺れる一輪の花っ!

 キュアマリンこと、えりかさん参・上ッ!

 全世界ウン億万人のプリキュアファンのみんな、おっっ待たせ~!

 アタシの時代……久しぶりに来ちゃったかな……!(ドヤァ

 

 いやぁ~、あのジェミニって子、すんごいキャラしてるわぁ……

 顔芸キマりまくりだったし、ウェヒウェヒイイ感じに笑ってたし……

 後輩たち~?まごまごしてると主役取られちゃうよ~?

 ……なぁんてね♪主役はキャラで勝ち取るんじゃなくって……

 ―――――ハートの(ツヨ)さで、キマるのよ……!

 

 「……手札判ってる奴にドヤ顔で見せびらかして楽しむなんざ哀れみすら感じるぜ―――――」

 「チカラとか、出来ることとかだけじゃない……!!あたしたちのココロも……"生きてる(あかし)"も!!!ちゃんと、知ってよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 『自分の『正義』と、他人の『正義』が重なった時……それはもう、『自分だけの正義』じゃない……!それが、みんなとともに分かち合える、本当に信じるに値する『真の正義』なんだ!』

 『『待ってる』、なんて言わないよ―――――先に往ってる』

 

 コスモスの花言葉は『乙女の真心』!

 戦ってる間も、その相手とわかりあえる可能性をあきらめずに探すコト!

 パンチやキックで語るだけがプリキュアじゃないってね!

 ウチのリーダーなんか、『くらえ!この愛!!』なんて言っちゃうくらいだもん。愛が無けりゃ、プリキュアじゃないっしゅ!

 でもまぁ肩身せまいわぁ……帰ってくるなりマーメイドにネチッこくお説教されるし、ビューティには正座3時間させられるし、エースにはくどくどと……

 あ~もう!!トゥインクルとファッション談義するヒマもないじゃ~ん!!\(>△<)/

 つぼみぃ~!いつきぃ~!!ゆりさぁ~ん!!!アタシ、元気だけどなんかタイクツだよ~~!!

 でもアタシが来たからにはもう怖いモノなんて何もない!後輩たちも大船に乗ったつもりでド~ンとついてきちゃいなさぁ~い!!

 戦え!負けるな!『インストール@プリキュア!』~~~!!!

 

 ……え?調子に乗りすぎ?だぁってアタシ推しの作者さんがノリノリd(カット)

 

 ――――――――――

 

 《……何を言ってるのほくとくん?りんくちゃんは風邪をひいて、近所の病院に行ってきただけでしょ?なのにどうして、そんな遠くに……それに、そんな名前の病院、聞き覚えが無いわ……》

 「そんな……でも、確かに園長先生も一緒に……!」

 《早くののかちゃんをお迎えにいらっしゃい……待ってるわ》

 「せんせ……―――――!」

 

 電話が途切れて、静寂だけがその場に残った。

 だだ広い造成地―――――その向こうの海に、夕陽が沈んでいくのが見える。

 

 「どういう……コトなんだ―――――」

 《ほくと……》

 

 ……僕が見た幻だったのだろうか。

 あの日僕が出会った『彼ら』は、僕が『彼ら』を愛しすぎた故の夢に過ぎなかったのだろうか。

 すべて、泡沫の裡に消えた、『幻の夢』だったとでもいうのだろうか―――――

 

 「でも……僕は……覚えてる―――――」

 

 ―――――そうだ。

 夢や幻なら、僕がこの手にしている『これ』は、誰が説明できる?

 ―――――たとえ僕以外の誰もが忘れ去ったとしても、僕だけは覚えている―――――

 僕のこの目に、この記憶に、この手この足全身に、焼き付けられたあの戦い―――――

 そして残された、『プリキュアではない戦士の力』が封じられたキュアチップを―――――

 

 【EX-EXD KAMEN RIDER EX-AID】

 

 僕の『憧れのひとり』とともに戦ったあの日のことを―――――!

 

 ――――――――――

 

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 ――――――――――

 

 「たっだいま~!」

 

 今日も元気に、そしてジャークウェブが騒ぎも起こすことなく、無事に一日終わりました!

 今日はちょっとした用事があったから、放課後のプリキュア講義はお休みにして、まっすぐおうちに帰ってくると―――――

 キュアットタブがヤケに静かだった。

 普段なら、プリキュアたちの『おかえり~♪』の合唱で耳が幸せになるところなんだけど―――――

 

 「……??みんな、どしたの?」

 

 何か思ってタブをのぞき込むと―――――

 

 「………………ゑ」

 

 ―――――地獄絵図だった。

 

 ぺたんと座り込んでるハッピーとミラクルが青ざめた顔で涙目になってるわ、

 レモネードとトゥインクルの中1黄キュアふたりが涙を流して抱き合ってるわ、

 正座してるリズム・ロゼッタ・マーメイド・ビューティの4人組がハンカチで涙を拭きながら静かに微笑んでるし、

 エースとビートは『見てはいけないモノを見てしまった』的な愕然とした表情を浮かべてるわ、

 マーチはひとり全てを納得したような感じでうんうんとうなづいてるわ、

 寝転がってるマリンがどこから持ってきたのかおせんべいボリボリかじってるわ―――――

 …………つまり。

 

 「……えぇと……その……何があったの??」

 

 まったくわからん。

 

 《……あ……りんくちゃん、おかえりぃ~…………》

 

 ゆっくりと振り向いたハッピーが、引きつったままの顔をこちらに向けてくる。

 確か……今朝学校に行く前、みんなが『ブルーレイを見たい』って言ってきたから、こないだまでみんなが見てた『HUGっと!プリキュア』の続きをブルーレイプレイヤーにセットして、『キュアットゥース』でタブにリンクさせて―――――

 

 ………………『はぐプリ』の続き!?……ってコトは!?

 みんなが見たのって……まさか!!

 イヤな予感がしてタブのメディアプレイヤーを見ると、すでに再生は終わってチャプター選択画面に戻っていた。その最終チャプターのタイトルは……

 

 〈最終話 輝く未来を抱きしめて〉

 

 やっぱり!最終話!!

 あ……あの、放映された途端にネットで大騒ぎになった、あの伝説の……!!

 そう―――――25歳になった野乃はなちゃんが、その……比喩とかでも何でもなく、ホントーの意味で『はぐたんのママになっちゃう』、あの……!!!

 プリキュア史上前代未聞の最終話!!!

 その……あまり細かく地の文に書いちゃうと対象年齢上がっちゃうから書けません!!

 プリキュアは小さな女の子が見てナンボですから!!……って、私何言ってんの……

 

 《男の子も大人も子供もみ~んなプリキュアになっちゃったのも驚いたけど……》

 《ま……まさかあんな展開になるとは思いませんでしたね……》

 《見るだけで体力を使った気がする……》

 《感動のラストでしたわ……ワタシたちもあんな風に、お母様が苦しみ抜いた末に産んでくださっていたのですね……まさに奇跡ですわぁ》

 《こうしてここにいられるのも、生を授けてくださったお母様のおかげだということを……改めて実感することができました……》

 《カクゴがいるんだね……『お母さん』になるの、って》

 

 ……でも、みんなはしっかりと受け止めてくれたみたい。

 私だって、初めて見た時は感動と衝撃がないまぜになって、1時間くらい呆然としたままだった覚えがある。

 だから、かな。はぐプリを見てから、ママはもちろん、パパ、おばあちゃん、むぎぽん、そらりん、それから……私を取り巻く全ての人―――――

 みんなのことを、前よりもっと、大切に想えるようになった。

 私は、ひとりで『生きてる』んじゃない。みんなに『生かしてもらってる』んだって、思えるようになった。

 そして―――――『次の世代』に、命を、心を―――――『つないでいくことの覚悟』も、また―――――

 

 《《……………………(((|||゚Д゚)))》》

 

 一方で……顔を真っ青にしているプリキュアがふたり。

 タブの隅っこで肩を寄せ合っていたのは、エースとビート。

 

 《わ……わたくし……とんでもないカン違いをしていたのかもしれませんわ…………》

 《そ、そうね……響も奏も、あんなコト教えてくれなかったし……》

 

 そういえばこのふたりは、いわゆる『フツーの女の子じゃないプリキュア』、なんだよね……

 それで『あのシーン』を何の予備知識もなく見ちゃったとなると……たぶん、初見だった時の私よりもショック受けてるかも……

 ビートの様子を見ていたリズムが、《お、教えられるワケないでしょっ》と、小さくツッコむのが見えた。

 

 「ね、ねぇ……大丈夫?ふたりとも……」

 《す、少し……考える時間をください……あ、赤ちゃんはコウノトリが運んでくるものと信じておりましたが……その……////》

 《メイジャーランドで習ったのと違う…………》

 

 ああ、そういう認識なのね……ってか亜久里ちゃんってそもそも……おっと。

 

 《ですが…………》

 

 ふと、エースは表情を柔らかくした。

 

 《なんでしょう……自然と応援していました……『がんばれ』って……》

 

 その気持ち―――――私にもわかる。

 第1話からずっと『HUGっと!プリキュア』を見てきた人なら、最終回のあのシーンでショックを受けてこそすれ、目を逸らすなんてことは絶対しないと思う。

 あの瞬間―――――私も、はなちゃんに『エール』を送ってた。

 『ママになること』を、最初から最後まで、真正面からごまかさずに取り扱った『はぐプリ』だからこそのラストシーンだったんじゃないかなって、私は思ってる。

 

 《あたしは何回か、お母さんの出産に立ち会ったことがあるから知ってはいたけど……ちょっと思い出しちゃった》

 「え!?なおちゃん、それって本当!?」

 《く、詳しくお話を聞かせてくださいませ!》

 《あたしもあたしも~!》

 

 とたんに、マーチの元にプリキュア達が殺到した。

 そういえばなおちゃんって、弟と妹、合わせて6人の大家族なんだっけ。末っ子のゆいちゃんが生まれた時のことはスマプリの42話で見てたけど、『出産に立ち会った』っていうのは初耳だなぁ……

 アニメでは語られていないだけで、私が……というか、ファンの誰も知らないエピソードが、まだまだプリキュア達にはあるってことかぁ……

 ……ゼヒとも教えてほしいです、ハイ。

 

 《ま、結論から言えば『ママになるのはタイヘン』ってことだよね、うんうん》

 

 目を細めてニンマリしながら、おせんべいをぼりぼりかじるマリン。ってか、そのおせんべいどこから……そこ、タブレットの中、だよね……??

 …………あれ?

 なんだか、キュアットタブのディスプレイに違和感がある。プリキュアのみんなが過ごしている『プリキュアルーム』、その全体が画面に映ってるんだけど……

 

 「ハッピー、ミラクル、レモネード、トゥインクル、リズム、ロゼッタ、マーメイド、ビューティ、エース、ビート、マーチ、マリン…………」

 

 一人ひとり確認して―――――そこで初めて、私はその"違和感"の正体に気がついた。

 

 「ね、ねぇみんな!?ピースは!?やよいちゃんがいないよ!?」 

 

 ルームの中に、キュアピースがいない……!

 今朝、みんなにあいさつして家を出た時には、タブの中にいたのははっきりと覚えてる。それにキュアチップをどこかに持ち出したわけでもないし……

 軽くパニックになりかけていた私に、落ち着いた……というか、かる~い感じでマリンが言った。

 

 《あ、ピースだったら――――――――――》

 

 

デ ー ト ❤

 

 

 ( ゚Д゚)………………………………はゐ?

 

 

 《で!?》

 《ぇ!?》

 《と~~~!?!?!?》

 

 ハッピーとマーチ、レモネードが、すんごい変顔になりつつ飛び上がって驚いていた。

 ……って、デート!?デートってアレですか!?アイビキ!?ミンチ!?ハンバーグ!?

 エンキョリ恋愛してるあかねちゃんはともかく、やよいちゃんには恋愛フラグのレの字も立ってなかったのに、この世界に来てカレシができちゃったんですか!?!?

 ヴェエアアアアアアアアアーーーーッッッッ!!!??(`0言0́)どっ、どどどどどどどーーぉしよぉーーー!!!?こ、公式さんごめんなさぁ~い!!!

 くぁwせdrftgtyふじこlp

 

 

 ♪:ピンポンパンポ~ン

 

りんくさんがまともに地の文を綴れなくなってしまったため、恐れ入りますがしばらくお待ちください。

 

 

 (2分後)

 

 「…………はッ!?わ、私は一体何を……」

 《こないだキュアネットで見た"じょーききかんしゃ"みたいにお部屋の中を走り回ってたよ》

 

 メモリアがコミューンの中からそう言ってきた。

 

 「はぇ……??」

 《せっかくだから動画も撮っといたよ♪》

 「え!?……そ、それは削除しといて、お願いだから……」

 

 え……えぇっと……"お部屋の中をしゅっぽしゅっぽと走り回る私"なんて醜態、晒したくないのでご勘弁を……

 とゆーか全然覚えていないんですが……

 と、ともかく閑話休題(はなしをもどして)……

 

 「や、やよいちゃんがデートって!えりかちゃん、それ本当!?」

 《……ゴメン、モノのたとえだったんだけど、あそこまでショック受けるなんて思わなかったわ……それから……みゆき、なお、うららもごめんね》

 

 そう言いながら、マリンは苦笑いしながら私やみんなに両手を合わせていた。

 

 《りんくさんはワタシたちプリキュアのことになれば、たとえ火の中水の中、地の底から宇宙の果てまで、行きつく(ところ)まで行ってしまうヒトなんです》

 《私たちがうれしかったら、『うれしい』って笑ってくれて、悲しかったら、『悲しい』って泣いてくれる……まるで自分のことみたいにね》

 《いちいち、『プリキュア愛が重い』のよねぇ♪》

 《当のプリキュアのアタシたちがちょっぴりドン引くほどに、ね☆》

 《ですから……これからは突拍子の無いことをりんくに向かって言わないように……いいですね、マリン?》

 《りょーかいしましたっ、エース教官っ!海より深く、ハンセーしてます!!》

 

 びしっ!と、マリンはエースに向かって背筋を正して敬礼する。……『キュアドール体型』だからなんかカワイイけど♪

 ってか、まさしく『伝説の戦士』のみなさんに私のことをこんな風に言ってもらえるとなんだかテレますなぁ~……えへへ……

 

 《それで、ピースはどこに行ってるの?》

 

 話題を本線に戻すように、メモリアがたずねる。

 

 《あぁ、それね。こないだ『気合があれば自力でコミューンに行ける』ことがわかって、やよいにやり方教えてあげたらさ、さっそく!って出かけていったよ》

 「つまり行ける場所はコミューンだけってことね……でも私のコミューンには来てないから―――――」

 《そゆこと♪りんく以外にコミューンを持ってるのって―――――ひとりしかいないっしゅ♪》

 

 ――――――――――

 

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 ――――――――――

 

 《す……すっごいキラッキラ……コレって髪の毛!?》

 《アンタだってバナナみてーなすんげぇ髪してんじゃねえか……》

 

 コミューンの上に映し出されるホログラムのキュアピースが、『宇宙船』のグラビアに目を光らせる。

 雑誌の中で凛々しく構えるのは、『仮面ライダーエグゼイド・ムテキゲーマー』。エグゼイドの最強フォームだ。

 

 《ねぇほくとくん、これって借りてもいいの!?出来たら借りて、ね、お願いっ!》

 「……大判の雑誌は基本貸し出し禁止なんだ。明日も来るから、さ」

 《そんなぁ……ぐすん》

 

 涙ぐむピースを見ると、僕もなんだかいたたまれなくなる。でも、その気持ちはよくわかる。

 毎月こんな雑誌を買えるほどのお小遣いを、僕はもらっていない。だからこそ、こうして定期的に図書館に行って、『宇宙船』をはじめとした特撮ヒーロー専門雑誌を読み耽っている。

 今日、こうしてキュアピースが一緒に来ている理由を説明するには、3日ほど前までさかのぼらなきゃいけない。

 それは突然だった。

 

 ―――――ほくとくん、お願い!……特撮ヒーローのこと、仮面ライダーのこと……勉強させてほしいの!

 

 ネットコミューンに現れたピースは、真剣な表情で僕を見上げて、こう言ってきた。

 僕もデータも驚いて理由をたずねると、こども園での戦いの時、ピースサンダーや、ストロンガー電キックがバグッチャーに通用しなかったことがずっと心残りになっている、と答えた。そして―――――

 

 ―――――ヒーローのことを勉強して、もっともっと、みんなのために強くなりたいから……!だから!

 

 その『目』は、『ホンモノの目』だった。

 プリキュアとして、強くなりたいという強固な意志が、涙を溜めたその目に、はっきりと見えた。

 ……こうしてピースは、放課後になると僕のコミューンにやってきて、僕の家で一緒にライダーのDVDを観たり、こうして特撮雑誌を読んで『勉強』を始めたのだった。

 

 《か……顔に『ライダー』って書いてある……こんな大胆なデザインがあるなんて……こっちはひらがなで『らいだー』!?》

 

 今度は仮面ライダージオウと仮面ライダーゲイツのビジュアルに驚いてる。確かに……僕もジオウを初めて見たときは面食らったなぁ……『誰が何と言おうと俺は仮面ライダーなんだ!』と、強烈に自己主張するこのマスクには。

 ゲイツのマスクも好きだ。『ひらがな』は得てして『子供向け』になりがちだけど、鋭角的なデザインからは、幼稚さを微塵も感じないスタイリッシュな印象を受ける。

 

 《やっぱりカッコイイなぁ、仮面ライダー……昔の『昭和ライダー』も、最近の『平成ライダー』も、どっちも違ったカッコ良さがあって……》

 《すっかりハマッたみてぇだな♪アタシの見込んだ通りだったぜ、うんうん♪》

 「データだって最初、ライダーやスーパー戦隊のこと、『プリキュアと似たようなもんだろ』ってバッサリだったよね?」

 《ぁ?ンなこと言ったっけかぁ~?》

 「言ってたって」

 《忘れたなぁ~、そんな昔のこと♪》

 「昔って……出会って2ヶ月ちょっとだよ?」

 

 そういえば……4月にデータと出会ってから、『まだ』これだけしか経っていない。

 もう何年も前から一緒にいたような錯覚さえ覚えるのはどうしてだろう?

 

 《これからおうちでDVD?》

 「本屋に寄って、ね。『クウガ』のコミックス版の最新刊、今日が発売日だから」

 《え!?クウガってマンガ版あるの!?》

 《あぁそっか……ピース、DVDばっか見てたもんな》

 《えへへ♪おかげで昭和から平成、主役ライダーの変身ポーズ、全部できるようになっちゃった♪》

 《たった3日でよくやるぜ……》

 

 昨日、こんなことがあった。

 ふと授業中、引き出しの中のネットコミューンに目を落とすと、仮面ライダーBLACK RXの変身ポーズをキメているキュアピースが見えた……

 しかも、割とキレッキレだった。僕が憧れるスーツアクターの一人、『次郎サン』ばりだった。

 僕と目が合ったその瞬間、誰に向けたともわからないドヤ顔が見る見るうちに涙目になって―――――

 プツンと、画面が真っ暗になった。

 あぁそうか、ゆうべデータにイジられてピースが涙目でふくれっ面をしてたのはこれが原因か……

 ライダー談義を交わしながら図書館から出ると、沈みつつある西陽が不意に目に入って、目が眩みそうになる。

 ―――――明日もいい天気になるな。

 

 《あのね……ほくとくん、データ》

 

 その時、ポケットの中からピースがぽつりと切り出した。ポケットに目を向けると、上目遣いで僕を見上げるピース。

 

 「何?」

 《ホントはね……ふたりに言ってなかったことがあるの……ワタシが、仮面ライダーのことを勉強したい、もうひとつの理由……》

 

 右に左に、視線を泳がせてから、意を決したように僕を見据えたピースは言った。

 

 

 《ワタシ、仮面ライダーを描きたい!》

 

 

 彼女の目は―――――錦に輝いていた。

 夢を見つめて、その夢を叶えようと希望に満ちた、金色の瞳―――――

 

 《……昭和ライダーも、平成ライダーも……!サーバー王国のみんなにも、元の世界のみんなにも!こんな、カッコいいヒーローがいるんだって、ワタシだけが知ってるなんて、そんなのもったいないよ!》

 「教えて……って……ピースの世界に、仮面ライダーは……??」

 《テレビでもマンガでも、似たようなヒーロー番組はやってたけど、『仮面ライダー』って名前は、この世界に来て初めて聞いたの。石ノ森章太郎先生の名前を聞いたのも、つい最近だったから……》

 《サーバー王国で子供向けって言ったら、ほとんどピースのマンガのアニメだったしなぁ》

 

 データが付け加えてくれるに、サーバー王国には『特撮ヒーロー番組』は存在しないようだ。

 もっとも……アニメの中みたいなキュアネットの中で、どんな風に『特撮』を表現するのか、その辺りの疑問はあるけれども。

 

 《もちろん、そっくりそのまま描いちゃったら石ノ森先生に失礼だから、ワタシのオリジナルの仮面ライダーを描くつもり…………なんだけど……》

 「凄い!凄いよ!!」

 

 僕は人目もはばからず、ネットコミューンをポケットから取り出してディスプレイを見つめていた。

 ピースは驚いて目を丸くしていた。

 

 《ほく、とくん……??》

 「ピースは……元の世界に戻ったら、その世界で初めて『仮面ライダー』を描くんだよね……!?それって、『ピースが石ノ森先生になる』ってことだよね!それって……それって―――――」

 

 『仮面ライダー』という『ヒーロー』―――――

 人間の自由のために戦い、時代が望む限り現れ続ける、人知れず、はたまた人々の声援を受けながら平和を守る、バイクに乗った仮面の戦士―――――

 そんな"概念"を、萬画家・石ノ森章太郎先生はこの世界に生み出した。

 彼がいなければ、僕が『スーツアクター』という夢に憧れて、強くなろうと目標を決めることもなかったに違いない。

 いや―――――たぶん、僕だけじゃないだろう。

 『仮面ライダー』という存在に憧れ、心動かされ、救われ、希望を抱いて、心の中で想いを描き、祈り、声を張り上げて応援して、おもちゃを身に着け野山を駆け、技の数々を模倣しようと暴れ回り、無茶をして大人に叱られ―――――

 『仮面ライダー』という"概念"は、日本人……否、この世界に生きる不特定多数の人々の心の中に、『何かしら』を残している―――――そんな存在だ。

 この、スマホの液晶に立つ黄金色の女の子は、そんな偉大なる"概念"に感銘を受けて、世界の壁を乗り越えて、『別の世界』の人々にも、『それ』を伝えたいと、心の底から願っている。

 今、手のひらの上にいる彼女は、すぐ目の前にいるけれど、ものすごく遠く、高いところを目指している。

 キュアピースは―――――『別の世界の石ノ森章太郎先生』になろうと決意したんだ。

 元々語彙力に乏しい僕はただ……

 

 「……スゴいよ!!」

 

 ……としか言えなかった。

 ここまで考えて、言葉に出せるのはこれだけ。その時の僕は、感動が頭の中を圧迫していた。

 

 《ありがとう、ほくとくん……でも石ノ森先生は持ち上げすぎだって……ワタシまだ、ホンモノのマンガ家じゃないし……サーバー王国ではたまたま、ワタシ以外にマンガを描いてるヒトがいなかっただけだし、『元の世界』で、きちんとデビューしたわけでもないし……》

 「それでも……うれしく思うよ。ピースが、『ピースだけの仮面ライダー』を描く……僕がその手助けができる、ってことにもさ」

 《描けたらアタシたちが読者第一号だな、ほくと!》

 「え!?……その……いいの……?」

 《もちろん♪ワタシが描いた最初の仮面ライダーは、ほくとくんとデータに読んでもらうつもりだから!でも、もっともっとライダーのこと、一杯勉強しなきゃいけないし……クウガのコミック、早く買いに行こうよ!》

 

 ぐい、と、ネットコミューンが僕の手を引っ張る。

 

 「ちょ、ピースっ!?」

 《……やれやれ……まるでもうひとり、ほくとが増えたみたいだぜ♪》

 

 これは……僕も中途半端な気持ちでピースに協力するのはいけないな。

 僕が持っている資料が、これから『別の世界の仮面ライダー1号』の原型になるのかもしれないのだから。

 そう考えると―――――否応無しに心が躍る。

 そして、行きつけの本屋に向かう足取りも、心なしかいつも以上に軽く感じた。

 

 ―――――十数分後、『仮面ライダークウガ』のコミックス版の表紙を見て歓声を上げるキュアピースが、ネットコミューンの中にいた。

 

 ……SAVE POINT




 キャラクター紹介

 ジェミニ・ノーサップ(Gemini Northupp)

 『Dr.G』を名乗り、内閣電脳調査室のオブザーバーを務める、12歳の女の子。父がアメリカ人、母が日本人のハーフである。
 常に羽織っている白衣とまぶしいばかりのプラチナブロンド、昭和の漫画のキャラを思わせる瓶底メガネ、そばかす顔がトレードマーク。
 メガネは祖母が使っていたもので、祖母の死の間際に譲られたもの。そして白衣は母から誕生日のプレゼントとしてもらったもので、それぞれとても大事にしている。
 昨年MITを飛び級で卒業した、ネットワーク工学の天才と呼ばれる才媛。
 実体化ウィルス"XV"の対策と、"P"を直に調査するために来日した。
 英語・日本語を完璧に、中国語とドイツ語・イタリア語を日常会話レベルで話すことができる。もっとも本人は『日本語で話すのが一番ラクで、一番好き』と語る。
 常に丁寧な口調で話し、何ごとも淡々と事務的にこなすため、他人を寄せ付けない雰囲気を持ち、辛辣な皮肉を口にすることも。
 他人事や興味のないことにはとことん無関心を貫く一方、興味を持ったことや疑問はとことん追求し、結論や解決を見ないことには気がすまない性格。本人曰く『"未知"は敵』。
 そのためには他人などお構いなしに突っ走り、自身の知識欲の赴くままにテンションを暴走させて周囲を困惑させることもしばしば。
 一方、大人たちに囲まれて育ったためか、年相応の女の子として扱われると狼狽するという一面もある。
 『付き合いの浅い人間を本名で呼ぶのは無礼』という持論があり、初対面や付き合いの浅い人間に対しては、ニックネームめいたあだ名で呼ぶ。
 りんくの祖母である東堂いづみ博士を深く尊敬しており、ネットワーク工学を志したのも東堂博士の論文に感銘を受けたため。
 『"P"の正体・および関係者は中学生』と推測し、中学生の情報を多く得るために、りんくと同じ大泉中学校の1年に転校してくる。
 "P"を分析するためのプログラム『セーブシステム』を独自に開発しており、ネット上でプリキュアに差し向けたり、現実空間では『セーブシステム』を攻撃用ドローンにダウンロード、キュアメモリアルとキュアデーティアと戦わせたりと、プリキュアの本質を探るためにはジャークウェブもお構いなしの行動をとることも。
 祖母の実家が稲上家であり、こむぎとは親戚関係にある。彼女の家にホームステイという形で居候していて、時々パン屋も手伝っている。
 大学生の時に自炊をしていたため、意外と料理上手。
 鉄道マニアであり、暇な日は小旅行に出かける、所謂『乗り鉄』。
 口ぐせは『実に~』。

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 はぐプリの最終回はまさに衝撃的でした……
 しかしながら、『はぐプリだからこその最終回』でもあったとも思います。
 さて次回はりんくさんが遂に『アレ』を知っちゃう上に……!?

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