インストール@プリキュア!   作:稚拙

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超絶神回を見た―――――
その感動に震えながら、ルパパト見つつ投稿する稚拙です。

ドクタートラウム、桃キュア総攻撃"プリキュアストーム"(稚拙命名)を叩き込まれた上、しかもはぐプリの新キメ技の犠牲者第一号という、ある意味悪役冥利に尽きる退場でしたな……
『生みの親』をその手にかけたこととなるルールーさんの心中は果たして……

それと……やはり遅れまして申し訳ございません!

そして重ね重ね、今回で終わりじゃないです!スミマセン!!
長くなりすぎたので、書きあがった前半部分を先にお届けしたく思いまして……

劇団メモリアルの思わぬ弱点とデーティアの"爆闘"を送信!

P.S. 思う所あってタイトル変えました。


キュアデーティアのシンカ

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 いつもは、"ひとり"しかいない僕のパートナー。

 その姿が―――――全く相似形の姿が、僕の眼前に『10』もの数で現れた―――――

 僕には、まったく見分けがつかない。10人全員が『キュアメモリアル』の反応を示して、僕の視界の隅のレーダーに表示されている。

 

 《こいつぁ……》

 『……仮面ライダーナイトのシャドーイリュージョン……いや、ディケイドのディケイドイリュージョンか……!』

 《いや最近のヤツならオーズのガタキリバコンボだろ》

 

 心の中のデータと分身ライダー談義を交わす僕だけど、データがガタキリバコンボの話題を出したところで、ふと、ある想像が浮かんだ。

 ……でも、流石に()()まではできない、と思う。頭の中の雑念を振り払い、僕はしっかりと前を見据える。

 

 「むむむ……!!まさかご自身を現実空間にコピペするとわ……!!今更ですが非現実的で非科学的ですッ!!あ、アナタたち、1対11ですよ!?ヒキョーだとは思わないのですか!?」

 

 顔を真っ赤にして怒るジェミニさんに、10人のキュアメモリアルが口々にまくしたてる。

 

 『70体(コレ)のドコが『1』なんですかぁっ!?』

 『あのー……数だけならあきらかにそちらの方が多いと思うんですけど……』

 『どの口が言いやがるッ!!』

 『それに……あなたは大きなカン違いをしてるぴゅる!』

 『そう……たとえ私達がこれ以上に……貴女を上回る100人や1000人に分身したところで、変わらぬ真理がありますから』

 

 本物と思しき、ひとりのメモリアルがジェミニさんを指差し、叫んだ。

 

 『今の私たちは、1の力を10分割しただけ!!10人に増えようと、私は私、たったひとりだよ!ふんす!!』

 『つまり2対70には変わらないってこと!ふんす!!……(σ・∀・)σさっすがぁ~♪』

 

 ものスゴいドヤ顔で言い放つメモリアル。

 ……ど、どこかで聞いたようなコトバだ。東堂さん、特撮モノには興味ないって言ってたけど、ソレって明らかに特撮由来のセリフだよ?チーキュの猿顔の一般市民のセリフだよ……?

 

 「哲学的とてヘリクツはヘリクツですッ!!……でもでも、おふたりしかいなかったのを11人にまで増やしてくださったことは大・感・謝ですぅ……♪何故かって?みなさんまとめてお持ち帰りできるからですよぉぉぉぉぉっぉ~~~~↑↑↑↑↑!!!!!!」

 

 聞いてもいないのにこう叫ぶとともに、ジェミニさんは70体のプロトセーブをこちらにけしかけた。暗い夜空が、あっという間に銀色の幽霊じみたシルエットで埋め尽くされていくのを見た。人工知能で制御されているとは思えない動きで殺到する。

 

 『どっ、か~~~~~~~~~~~ん!!!!』

 

 ひときわ『ばとる』と連呼していたメモリアルが、右の拳を地面にたたきつけた。轟音とともに土煙が上がり、10体ほどのプロトセーブが巻き込まれて木っ端のように舞う。

 全く前触れない行動だったから僕も面喰らい、舞い上がったプロトセーブを追って、思わず上に視線を移す。

 10人の分身のうち、4人がすぐさまそれを追ってジャンプして―――――

 

 『『『『せーのっ!!』』』』

 

 ―――――どんッッッ!!!

 

 ほぼ同時に、思い切り振りかぶった右の拳を、ちょうど4人の目の前に浮いていた4体のプロトセーブに打ち込んだ。

 

 ……………………

 ………………

 …………

 ……

 

 『『『『いったぁ~~~~~~~い!!!!!』』』』

 

 『……え(;゚Д゚)』

 

 4人のメモリアルが絶叫して悶絶し、そのまま地面に落ちてきた時、僕は一瞬で呆気に取られた。

 ど、どういうこと……?いつものメモリアルなら、アレくらいの大きさの相手なら一発で吹っ飛ばせるはずなのに……!?

 

 『か……カタい……なんて硬さなのぉ……!?』

 『超合金Z……ううん、宇宙合金グレンぴゅる~~っ……』

 『こんなハズでは……!』

 『カンタンにボコれねーじゃねーかぁ~!!』

 

 口々にくやしさを口にするメモリアルたちの中、ひとりだけ―――――

 

 『す、スッゴくカタかったぁ……ってか、私直接パンチしてないのにどーしてぇ……??』

 

 ひときわ痛がっているメモリアルがいた。見たところ、いつものメモリアル―――――東堂さんらしい。

 さっき飛び立って、パンチを放った中には、本物のメモリアルはいなかった。彼女の言うとおり、直接パンチしたわけでもないのに『本物』がダメージを負っている。

 ―――――まさか、分身のダメージが全部『本物』に集中してしまうんじゃ……!?

 

 「!……ふふ~ん……♪なるほどぉ……」

 

 ジェミニさんの口角が上がるのが見えた。また何か、彼女に情報を与えてしまった……のか?

 

 『メモリア、キュアネットの中で相手をした時と、手応えが違っていたりはしませんか?』

 『た、確かに……こんなにガッチガチじゃなかったハズだけど……ぐぇっ!?』

 

 不意に現れた1体のプロトセーブが、メモリアと思しき分身メモリアルを突き飛ばすように、後ろから激突した。

 それをきっかけにしてか、70体のプロトセーブが10人のメモリアルとひとりの僕に、ヒッチコック映画さながらに一斉に群がってくる。

 

 『ふぇぇぇ~!?!!?取り囲まれたぁ~~!!』

 『カタいし多いし手が付けられません~!!』

 『ばとるできな~~い!』

 

 なし崩しで11人で応戦するけど、10人のメモリアルは追い払うだけで精一杯のようだ。展開が一方的すぎる……!?

 満を持して繰り出したはずの技が、どうして……!?

 

 「ウェヒヒヒヒ!!先程からエネルギー総量を計測させていただいておりますが……アナタたち、何とも律儀でヒーローらしい……♪」

 『……何を言って……?』

 

 きらり、と、ジェミニさんのメガネが光る。

 

 「10人に増えたキュアメモリアル……おひとりあたりのエネルギー総量……キュアデーティアの10分の1ほどしかございませんねぇ」

 『え……!?』

 「先程、『1の力を10分割しただけ』と仰っておりましたけど、まさか有言実行してくださっていたとは!ありがたい10姉妹(シスターズ)ですねぇ♪」

 『今年は酉年じゃないけどね……!』

 《ツッコミ返してる場合かよッ!?》

 

 思わず特撮ネタにツッコんでしまったけど、僕の危惧は当たっていたことになる。

 今10人いるメモリアルは、本来の10分の1しか実力が出せない。その状態でプロトセーブ1体ですら勝負にならないのなら、結果は目に見えている。

 このままじゃ、物量に圧し潰されるのは時間の問題……!どうする……!?

 

 「初見ではビビッちゃいましたけどぉ、これで11人まとめてハイエースしやすくなったということですねぇぇぇ~~~↑↑↑!!!」

 

 合図とともに、プロトセーブの機関銃が一斉に火を噴いた。

 

 『!辻畳ッッ!!』

 

 反射的に、僕は拳を地面にたたきつけ、板状に隆起させる。

 

 『みんなは後ろに!……僕が…………守るッ!!』

 『デーティア……』

 

 すぐ後ろに回った、本物と思しきメモリアルの視線に頷いた僕は、隆起させた岩盤の盾を飛び越え、70体のプロトセーブの『矢面』に立つ。まるで無数のロケット花火が僕に向かって飛んできているような、そんな視界だ。

 1発、また2発と、腕、足、頬―――――弾丸がかすっていく。でも不思議と、ほとんど痛みを感じない。文字通り、『(サツイ)』の無い攻撃だから、だろうか。

 でも、10分の1の力しかないメモリアルとその分身たちにとっては、この弾丸の1発でさえ、当たればどうなるか知れない。そう思えば―――――

 

 

 ―――――……退けない!

 

 

 僕はもはや光線に見える銃撃の嵐の中、ただ一点を見て歩き出す。

 防御は―――――(おそ)れだ。

 この"鉄火嵐"の中―――――僕は"無防(フセガズ)"で征く―――――!!

 

 「ほほぉ……この弾幕の中をノーガードで悠然と歩いてくるとは……キュアメモリアル『ではない方』がどうやら本命みたいですねぇ……いい()()です……アナタの作戦目的とIDは!?」

 

 無数の銃声の中、何故かジェミニさんの声がハッキリと耳に入った。僕は考えるまでもなくこう応じた。

 

 

 

キ ュ ア デ ー テ ィ ア

 

 

 「やはりそう答えますかぁ♪アナタを先程から観察してましたけど……ミョ~に(をとこ)らしいと言いますか、割とお言葉が男性寄りと言いますか……アナタ、もしかして―――――」

 

 調子に乗りすぎたか―――――?思わず生唾を飲み込んだ。その動揺がデータにも伝わったのか、

 

 《誘導尋問(ネタフリ)に引っかかったからだろッ》

 

 ……というお叱りの言葉を心中に直接打ち込まれた。……もっともで返す言葉も無い。

 しかしジェミニさんは自嘲気味に笑んで、首を横に振る。

 

 「―――――……なぁんて冗談ですよ♪アナタ方を先程から解析させていただいている段階で、アナタが正真正銘の女性であることは承知済みですので」

 

 ……正直、フクザツだ。バレなかったことにホッとするべきか、頭の中は解析出来てないじゃないかとツッコみ、嘆くべきか。

 プログラムクイーンが施した"仕掛け(マトリクスインストール)"は、最新の分析機器すら欺くほどに、僕の身体を作り替えてしまっているらしい……

 

 『……関係ない』

 「……?」

 『僕が()()()だとしても、キミを止めることには変わらないから』

 「たぁしかにぃそぉですねぇ……♪アナタ方が男性だろうと女性だろうと、ワタシが連れ帰ることに変わりないですからねぇ♪」

 『甘いね』

 「はいぃ?」

 

 僕は猛進してきたプロトセーブを振り払うように殴り飛ばすと、まだ覚悟も何も知らない、殺意さえ機械に込められない、年齢以上に『小さく』見える少女に言い放った。

 

 『ツクリモノの十や百……サツイのない千や万で……覚悟を砕けるとは思わないで』

 

 殴り飛ばされたプロトセーブが爆ぜたのか、爆発音が響き、橙色の光が視界の隅に映った。

 

 「―――――……!!!」

 『自分のためにしか戦えない……ましてや自分で『痛み』を知ろうとしないキミには、僕たちを倒すことは不可能だ。断言できる』

 「な、なかなかのハクリョクですけれど……人間、トーゼンじゃないですか!!『痛い』のはイヤなんです!!これ以上、ワタシは『痛み』を受け入れられませんので!!」

 『…………今、殴ったこの手……僕は……痛いよ』

 

 僕は、手に残るかすかな痛み、そしてそこからわかる確かな『真実』を、言葉に乗せてジェミニさんにぶつける。

 

 『戦いに痛みは必然……相手を傷つける度に、確実に自分も傷つくんだ……体と心、両方が。それを恐れて、自分自身は手を下さないキミに、僕たちを止めることはできないよ』

 「何をおっしゃいますか……この70体のプロトセーブ、すべてがワタシの手足同然!ワタシの情熱全てを注いだ子供たちなんですよ!!」

 『―――――……そうか。それが"手足"か』

 

 僕は静かに構え直して、ジェミニさんを見据えた。

 

 『なら、"70体のキミの手足"を全て()ぐ。あぁ、そういえば言い忘れていた……キミは僕たちを『高度情報化生命体』って言ったけど……実は僕、機械オンチでね。パソコンを触ると5分で壊れるんだ……だからそのプロトセーブも"触ったら"壊れるかどうか……"実"際に"験(ため)"してみるいい機会だ』

 

 自然とこの時、僕は笑っていた。

 怒りか、決意か。心の中の烈火が僕の背中を押す―――――

 

さぁ、実験を始めようか。

 

 「さ、さっき1体壊しましたよねぇ!?実験台にされるのはたまりません!"少し本気モード"でかかりなさぁぁぁい↑↑↑!!!」

 

 69体のプロトセーブの『目』に、赤、青、黄、緑―――――様々な色の光が灯る。そして一斉に僕に向き直ると、獲物を捕食する肉食動物のように『口』を開け、躍りかかる。

 全方位から襲い来るプロトセーブが顔のそばを通過するたび、ギュイイィィィィィ、というモーター音が耳につく。歯の部分がチェーンソーか何かになっているのか―――――

 ―――――そうとて!

 

 ―――――斬ッ―――――!!

 

 斬り上げ手刀一閃、1体を裂く。これで残り68体か。……多いな。

 今度は2体のプロトセーブがくっついて、その間に稲妻じみたフィールドを張った。確かに―――――さっきより殺意は増したか。

 何時までも避けてはいられないし、メモリアルたちの分身がいつまでもつかわからない。なるべく一気に数を減らしたいけど―――――

 

 《燃えてるねぇ、男の子♪》

 

 いきなり脳裏に声が響く。この声は、さっき助けたばかりの―――――

 

 『キュアマリン……!?』

 《またかよ!?》

 《またかよとは心外ねぇ。せっかくこのアタシが悩める後輩にピンチを切り抜ける必勝法を授けてあげようってのに》

 

 さすがは伝説の戦士だ。この状況を逆転できる策があるのか。容易に頼るのは良くないと思うけど、今は猫の手も借りたい。『それって!?』と声を張ると―――――

 

 《…………お~あばれ!!》

 『………………え(・ ・;)』

 《考えるな!感じろ!!昂るハートをパンチに乗せて、その手で勝利をつかみ取れ!!……ってヤツ?》

 《必勝法でもなんでもねーじゃねーかッ!!》

 『いや……そうでもないよ』

 

 僕は―――――理解した。

 つまり、"心"だ。

 この状況を切り抜けたい、誰かを守りたい―――――

 そんな僕の"心"を、そのまま"力"に換えて戦うこと―――――

 そして、それができるのは―――――

 

 『キミの力を借りるよ、マリン!!』

 《……大正解!》

 

 僕は左手のキュアットサモナーから水色のキュアチップを呼び出し、ネットコミューンのスロットに差し込んだ。

 

 『キュアチップ、『キュアマリン』!!』

 《海風に揺れる一輪の花!キュアマリン!!》

 

心火(シンカ)を燃やして―――――キュアっと……変身!!

 

   〈KAMEN RIDER CROSS-Z〉

 ⇒ 〈KAMEN RIDER GREASE〉

   〈KAMEN RIDER ROGUE〉

 

 《BURN THE HEART FIRE!! SCRASH DISCHARGER!!》

 

 《潰れる!流れる!!溢れ出ぇる!!ROBOT IN GREASE!! BURRRAAHHH(ぶるぁぁぁぁ)!!!!》

 

 《CURE-MARINE! INSTALL TO DATEAR!!》

 

 水色の光が、無数の水しぶきとともに、花弁のように舞い散って、僕の纏うコスチュームを彩る。

 

 《INSTALL COMPLETE!!》

 

(シン)()(ゼン)(カイ)

 

キュアデーティア―――――"マリンスタイル"!!

 

 ―――――滾る……!

 心の中に、青白い炎が灯り、燃え上がる!!

 『こころの力』を使うキュアマリンと、『心火』を燃やして戦う仮面ライダーグリス―――――

 果たしてこれが―――――ベストマッチ足り得るか―――――

 

 「今までに見たコトの無い姿ですねぇ……♪いやぁ、出し惜しみしないというのはありがたいコトですよぉ♪ヒトから進化したそのチカラ、もっともっと見せてくださぁい……♪」

 『いいよ。存分に。……でもね、キミに見せるのはヒトの『進化』じゃない―――――"僕の"――――――――――『心火』だ』

 

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 ――――――――――

 

 ここまで、ほくとの『熱』が直接伝わるのは―――――初めてだ。

 ただ、ひたすらに―――――

 (アツ)い―――――

 

 《見た時以上に……『中』はアッツアツだねぇ♪》

 

 アタシの隣に水色の光の球体が浮かび上がって、その中にキュアマリンが現れる。

 

 《ついてこれっか?何から何まで"規格外"なコイツによ》

 《今更何言ってんのさ。世間じゃ『プリキュア一の問題児』だとか、『全然萌えない』とか言われてるアタシだよ?むしろ大歓迎!》

 《どんな世間だよ……》(汗)

 《ほくと、聞こえる~?さっき言った通りだよ!『ハートキャッチプリキュア』のチカラは、『こころの力』!ハートがアツけりゃアツいほど、どんどんパワーアップするよ!完全燃焼してみなよ、男の子!!》

 『……わかった!行くよ!!』

 

 ほくとは駆け出し、直近に浮いていたプロトセーブに右の拳を叩き込んだ。インパクトの瞬間、拳の甲から青白く光る杭のようなエネルギーが突き出し、プロトセーブの顔面を貫く。

 

 『……"ツインブレイカー"か!』

 《さっそく見覚えない技!》

 《ほくとはこーゆーのが得意なんだぜ♪》

 

 のっけからトバしてるなぁ……でもこれなら、1体を一撃で倒せる。一撃必殺としては理に適ってる。

 

 『直撃ィ!』

 

 ―――――2体目。

 

 『吶喊ンン!!』

 

 ―――――3体目。

 

 『裂帛ゥッ!!!』

 

 ―――――4体目!

 

 プロトセーブの胴体や顔面を穿って砕く、その度に、心の中が熱く、熱く燃え上がる―――――

 

 

 心火(シンカ)を燃やして―――――心花(シンカ)を咲かせるッッ!!』

 

 

 《どーよ?ありえねーだろ?アタシでさえ知らない引き出しをコイツは持ってんだ…………って、どした?》

 

 さっきから、マリンがやけにおとなしい。全然喋らねーマリンなんざ、違和感ありまくりで背筋がゾゾッとする。アタシが隣の『部屋』のマリンに目を向けると―――――

 

 《はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……》

 

 息を弾ませ、うつむいているマリンは―――――笑っていた。

 

 《……、イイね……!ここまでアツいと、アタシも力の貸し甲斐があるってもんよ……!!》

 《確かにな……いつもよりクソ(アツ)いぜ、ほくとのハート……!感じるぜ……"心火"をよ……!ガッとキやがる……!!》

 

 ほくとの胸のイーネドライブ、その中が熱を帯びるのを、ほくとの感覚を通して感じる。ほくとは迷わず、"それ"をしっかりとつかんだ。

 

(あつ)まれ―――――心花(ハナ)の力!マリンタクト!!

 

 中心部に回転円筒(シリンダー)が備えられた、長さ40cmほどの得物。ハートマークと金色の装飾で彩られたそれが、今日は妙に力強く見える。

 ほくとは右後方から近づいてきたプロトセーブをタクトで薙ぎ払うと、そのさらに後方に控えていた3体を立て続けにタクトからの光弾で撃ち落とす。

 撃ちかけられる機関銃の集中砲火には連続バック転でかわして、高く跳ぶ!左手が円を描いて、『こころの力』が集束する―――――

 

海 花 大 車 併(マリン、シューーート) ! ! !

 

 解き放たれた『こころの力』が流体状に圧縮されて、四方八方に拡散し、さながら意志を持つかのようにプロトセーブを追いかけ、炸裂する。

 しかし今度は、着地したほくとの前方から、不意に別のプロトセーブが迫る。

 

 『ッ……!!』

 

 ほくとはマリンタクトのシリンダーに手をかけ、勢い良く回転させる。そして、その回転部分を―――――

 

 『だぁぁぁぁぁ!!!』

 

 プロトセーブの胴体に強引に押し付ける!!

 

 ―――――ギャリギャリギャリギャリギャリ!!!!

 

 金属が削れる喧騒な音と、橙色の火花が、うるさいほどに迸る―――――!

 そのプロトセーブがただの鉄屑と化すのに、10秒と掛からなかった。

 そうそう、コレだ!!

 撃つ、斬る、弾く―――――そんな常識の範疇に囚われない道具(ツール)の使い方!これが無いとほくとじゃ……"キュアデーティア"じゃねェ!!

 

 《うわ……流石のアタシでもここまではしないわぁ~……》

 《掃除道具に使おうとしたその口が何言ってんだ……ほくとは基本、道具をトリセツ通りには使わねぇ男なんだよ♪》

 《それって絶対コワすじゃん……でもま―――――》

 

 マリンは呆れ顔をニヤリと笑ませた。

 

 《そういうの、アタシも嫌いじゃないよ♪》

 

 不思議なほどに、ほくととマリンの心がシンクロしていくのがわかる。

 アタシと、ほくとと、キュアマリン―――――

 3人の鼓動が、熱を帯び、高鳴り、重なっていく―――――

 そしてほくとは再度、大地を蹴って空に舞う。

 

 

 守りたい―――――

 

 

 その一心が、五体に浸透して、燃え上がり、力に換わる―――――!!

 

 『データ!マリン!!行くよ!!』

 《おっしゃぁ!燃えろ、ほくと!!》

 《やるっしゅ~~~!!》

 

SCRAP FINISH!!!

 

 『スクラッシュドライバー』の、力の入った電子音声がネットコミューンから響き渡り、そして―――――

 

心 火 海 煌 烈 花 槍(スクラップマリンダァァァァァァイヴ) ! ! !

 

 ―――――ドゴォォァァァァァァ!!!!!

 

 "こころの激流"を纏った、渾身のライダーキック―――――!

 "こころの力"が大地に炸裂して、青白い閃光と大爆発を巻き起こし、数十体のプロトセーブを"心衝の波濤"に飲み込み、四方八方に吹っ飛ばす―――――

 

 「ウェヒイィィイィィイィィイイイイイィィィイッィ↑↓↑↓↑↓↑↓!?!?!?!?!?!?!?」

 

 ドクターが仰け反るように奇声を上げた。

 

 「喜ぶべきか憂うべきかワケわかりませんよぉ……♪♭ワタシの"手足"が、"子供たち"がこうも蹂躙されているのに、それでもアナタたちにこれっぽっちも怒りや憎しみを抱かないのはどーしてなんでしょお……」

 《知るかよ……!》

 「それは!!東堂博士が望んだ存在たるアナタたちのご活躍にぃ、東堂博士へのワタシの想いが"きゅんきゅん❤"してるからなんですぅ……❤❤これはまさに、ワタシと東堂博士が望んだジャスティ~~~ス!!!」

 《うっわぁ~……》(汗)

 

 さしものマリンもドン引きするか。ウン、アタシもドン引く。

 

 『果たしてそれが……"正義"と言えるの?』

 

 心中とは逆に、かなり感情を抑えた声でほくとは訊ねる。

 

 「あ・た・り・ま・えですぅ~!東堂博士のためになるなら、ワタシの一挙手一投足はす・べ・て正義!!それなのに正義のヒーローたるアナタたちは、どーしてワタシたちを攻撃しちゃうんです?正義のヒーローが正義の一般人相手に蛮行を働くなどあってはいけませんよねぇ~?」

 『………………………………』

 「いいですかぁ?正義の反対は『悪』ではないのです……正義の反対は『別の正義』!『悪』などというのは、その『別の正義』が気に食わない時に使う、『主観的な方便』に過ぎないのです!それってこれ以上ないほど身勝手ですよねぇ~?『悪』と決めつけられるワタシにとっては、たまらないほどの理不尽ンン~!!よってアナタたちは正義のヒーローでも、プリキュアでもないのです~!!アナタたちは高度情報化生命体!!東堂博士が待ち望んだ新・人・類なのですぅぅぅ~~!ウェヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!」

 《ほくと……!》

 《む~~!!言い方がなんかムカつく~!!》

 『……いいんだ、マリン』

 

 ほくとは動じていなかった。マリンを抑えるようにイーネドライブにそっと手を当てると、改めてドクターをまっすぐに見た。

 

 『……確かにキミの言う通りかもしれない』

 《ンな!?》

 《ほくとぉっ!?》

 

 ほくとの返答があまりにも予想外で、アタシもマリンも目を飛び出させて驚いた。でも―――――

 やっぱりほくとは、ほくとだった。

 

 『ヒトにはそれぞれ自分なりの『正義』がある……ヒトによって、『良いコト』と『悪いコト』の境界線が違ってて、自分が『良いコト』だと思っても、それが他のヒトには『悪いコト』として認識されることも、良くあることだ……それが時に誤解を生んで、諍いや戦いの(モト)となる……『正義』って言葉は、どこまでも曖昧で、どこまでも脆くて……少しのきっかけで、容易く変わってしまう―――――』

 

 そういえば……"お師さん"も同じようなコトを言っていた気がする。

 自分の考えていることが、時にうまく伝わらないこともあるって。

 でも―――――

 

 『でも―――――自分の『正義』と、他人の『正義』が重なった時……それはもう、『自分だけの正義』じゃない……!それが、みんなとともに分かち合える、本当に信じるに値する『真の正義』なんだ!』

 「それがどーしたというのです!?ワタシだって、東堂博士とともに分かち合っている『正義』なんですよ!!ワタシだって『ワタシだけ』が持っている『正義』ではないのですよ!!」

 『確かにね……でも、ひとつだけ言えることがあるよ。他人の命や自由を縛って、自分の都合のいいように使うこと……それに『正義』があるの?』

 「??なんのことですぅ?」

 『何の罪もない人、ささやかに幸せを謳歌する人たちの平和を守るために、プリキュアたちは戦っていた……そんな彼女達の自由を、キミは縛り、利用している……!誰にも、他人の『(じゆう)』を身勝手に奪う権利なんてないんだ!!』

 「ですからなんのことですかぁ!?」

 『まだ一人前のヒーローになれてない僕が言えたことじゃないかも知れないけど―――――僕は……人間の自由と平和のために、この力を使う!!ローズとフェリーチェを、『キミ』という鎖から解き放つために!』

 

―――――()()()()()()!!

 

〈SOUL-SYMPARATE〉

 

〈HOKUTO   120%〉〈DATA    120%〉

 

〈ERIKA    120%〉

 

《CURE-DATEAR! CURE-MARINE!!》

 

HEARTCATCH! LEGENDRIVE!!!

 

 突然、『心の部屋』全体が、強烈な青白い光に包まれた。

 同時に、ほくとの全身がキュアマリンを象徴する水色の光に包まれて、うなじのハードディスクが展開して、イーネルギーをこれまでにない勢いで噴き出し始めた。

 

 《海より広いアタシの心が……今にもフットー(沸騰)寸前だぁぁぁ~~~―――――!!!!!》

 

 マリンの絶叫が、『心の部屋』にこだまする。いきなり叫ぶもんだから、アタシはビビッてしまっていた。心臓に悪いぜ……

 

 《な、なんだ……!?》

 《はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……――――――――――ねぇ、データ…………アタシ―――――ホレたわ♪》

 《―――――――――――――――へ!?》

 

 出し抜けに放たれたマリンの言葉に、アタシは一瞬思考停止してしまった。

 

 《そーゆー意味じゃないんだけどさ、どうしてなのかな……アタシのハートがココまでアツくなったの……久々かも……"すんごいまっすぐ"……突き刺さってくるみたいな……!!》

 

 この笑顔を見たコトがある。"プリキュアーツ"で、勝利を確信した時の、"あのカオ"だ。

 

 《ほくと―――――聞こえる!?》

 『マリン!?……これって、いったい……!?』

 《ここまでアタシをアツくしてくれたほくとに、アタシからのプレゼント!》

 

 マリンは、ニカッと笑って、Vサインを向けながら叫んだ。

 

 《アンタに伝授してあげる!アタシが16年かけて編み出した―――――"最終奥義"を!!》

 

 ――――――――――

 

    EX PLAYER CHANGE

 

    CURE-MEMORIAL

 ⇒  CURE-DATEAR

    ??????

    ??????

 

 ――――――――――

 

 『最終……奥義……!?』

 

 それって、いったい……!?

 そう思った瞬間、僕の纏っている『マリンスタイル』のコスチュームに変化が起きた。

 ブーツやグローブ、ワンピーススカートのいろいろな部分がスライドするように『変形』して、その隙間に隠されていた、仮面ライダーファイズのフォトンストリームさながらに張り巡らされているイーネルギーの伝達ラインが、青白い閃光を発する。

 そして、今はウェーブががったロングヘアーになっている髪の毛の1本1本までも、水色の光を放ち始め、水色に染まったイーネドライブから青色の光のリボンが伸びる。

 その時、両目に強烈な『熱さ』を感じた。目が眩んだり、見えなくなったりするわけじゃなく、むしろ周りが昼間のように、はっきりと見えるようになった。

 

 「こ……これわ!!全身がさらにカタチを変えています!!髪も目も服もガンガン光ってます!!な……なんですか!?いったい何が始まるんですぅ~~!?!?」

 

 それは僕にもわからない。『最終奥義』の全容を、僕も知らないんだから。

 

 《やるよ、ほくと、データ!!》

 『う……うん!!』

 《こうなりゃ(はら)ァくくるぜ!!》

 

 いつもとは違って、マリンから僕とデータに発破をかける。すると、《僕は何もしていない》のに、右手にマリンタクトを呼び出すと、空間に螺旋を描いて、思いッ切りヒロイックに振り回した後、ダン!と天へと掲げた。

 

 『行くよ!!"こころの大樹"の名のもとに!!!』

 

 この言葉も、僕がしゃべったわけじゃない。僕の―――――キュアデーティアの身体を、キュアマリンが動かしてる、の……!?

 そう思案を巡らす暇もなく、マリンタクトの先端に、青白い光の球体が現れ、風船のようにみるみる膨張していく。タクトを通して、身体全体から『チカラ』が注ぎ込まれていくのがはっきりとわかる。

 同時に、大地が激しく揺れ、光の球体に引き寄せられるように、土煙や石礫が舞い上がる。何らかの力場……のようなモノが形成されているの……か?

 そうしてあっという間に、直径10mほどの、超巨大なエネルギーの球体へと成長すると、マリンタクトが球体に吸い込まれるように消えていった。

 

 《こ……こんな隠し球があったのかよ!?》

 《この間のサーバー王国の時は、色々あって使えなかったんだけど……でも、今なら……!ほくととデータと、3人でなら!》

 『僕たちで……なら……?』

 《……さ、レクチャーはここまで!後は思い切り!!ほくとに任せるよ!!》

 

 僕はマリンに促され、わらわらと浮遊するプロトセーブを睨むと、両腕を大きく振りかぶって、エネルギー球を思い切り投げつけた。

 

 

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(ヴァ)

 

 

 周囲の空気を震わせながら驀進したエネルギー球が、ゴゥッ!という重々しい轟音とともに炸裂した。

 まるで朝陽が昇ったかと錯覚するほどの鋭く眩い閃光が、一瞬周囲の空気を掻き込むように吸い込んだ次の刹那、一気にそれらを斥力のまま、衝撃波とともに吐き出した。

 撃った僕自身も思わずひるんで、よろけて尻餅をついてしまった。そこへ激しい爆風が押し寄せたものだから、土塊が、小石が、草が、視界に映るありとあらゆるモノが、僕への無思慮で無遠慮な飛び道具へと変貌して襲い来る。

 僕は―――――肝が冷えていた。

 この威力―――――さながら小型の核兵器じゃないか。

 こんなモノを解き放ってしまった以上、プロトセーブは全部まとめて跡形なく消し飛ぶどころか、ジェミニさんや、メモリアルもどうなっているか―――――

 背筋が一際冷えたその瞬間、データが"そう"したのか、それとも僕の恐怖が本能に呼び掛けたのか、視界の中のレーダーが大映しになって、9つの光点が灯った。

 そのうち8つは、一か所にまとまっている。メモリアルの気配をはっきりと感じて安堵すると、残ったもう一つの光点の場所へと視線を移す。

 ちょうど爆風が吹き止んだ先に―――――ぺたりと座り込んで放心状態になっていたジェミニさんの姿があった。

 

 『よ……よかった……みんな無事で……』

 《見た目ド派手だけど、『マリンダイナマイト』の応用だからね。『傷つけたくない相手』には効かないんだよねぇ♪》

 『ジェミニさん!ジェミニさん、大丈―――――』

 

 ―――――ガシュウゥゥゥゥゥゥ――――――――――……………………

 

 ジェミニさんに駆け寄ろうとして一歩を踏み出したその時、全身に鉛のカタマリのような感覚がのしかかり、重さに両ひざをついて、跪いてしまった。

 全身の光が消え、コスチュームが元の状態へと順繰りに戻っていく。

 

 『なん、だ………………!?』

 《おい!?どーなってんだマリン!!アンタ―――――》

 

 『心の部屋』の中、データが横にいるマリンに振り向くと―――――

 さっきまで普通に立ってしゃべっていたマリンが、仰向け大の字になって倒れていた―――――

 

 《…………!!マリン!!大丈夫かよ!?おい!!?》

 

 データは顔を真っ青にしてマリンを揺り起こし、その顔をのぞき込んだ―――――けど。

 

 《………………だいじょ~~~ぶ……♪チカラ全部出し尽くして、今日のところはもーダメだわ、アタシ……どーやら『最終奥義』、体力ヤバいくらい削るみたい……あとは、お願い……寝かせてぇ……》

 

 マリンはかすれ声を出しながら、力なく笑っていた。光に包まれて『心の部屋』からマリンが消えると、ネットコミューンからマリンのチップが強制排出され、レジェンドインストールが解除されてしまった。

 

 『キュアマリ……ン……!?』

 

 ―――――…………!!!

 くそ、さっきからこの倦怠感は……ッ!?

 身に纏っているコスチュームが、鉄塊のように重い……!!

 まともに立ち上がれないほどの()()は……

 

 ―――――な・ん・だ……!?

 

 視界の隅に〈NOW FORCED COOLING PLEASE WAIT AT 2:30〉と表示され、最初の一桁の数字がカウントダウンしていることに気付く。

 

 《くっそ……どうやら強制冷却に入っちまったようだ……!あと2分半は、マトモに動けねぇ……!!》

 

 この状況で2分半!?長すぎる!!

 僕がメモリアルを……東堂さんを守るって決めたのに……それなのに……!!

 

 「……………………どーやら」

 

 ジェミニさんの声が降って来て、どうにか顔を上げると、そこには―――――

 

 「最後に笑うのはワタシのよぉですねぇ……❤」

 

 『冷や汗を流しながらもどうにか作ったのがありありとわかる』ドヤ顔のジェミニさんと、その後方に浮遊する2体のプロトセーブ―――――

 

 「まさかアナタひとりに、68体用意した量産型ドローンをすべてオシャカに……それもチリも残さず消滅させられてしまうとは思いもしませんでしたよぉ……」

 『ニセモノ……とはいえ……プリキュア達の『命を縛る』モノを…………野放しには、できないからね……!螺子(ネジ)一本たりとも……灰すら残すまいと決めた……!!』

 「………………ウェヒッ❤」

 『!?』

 

 彼女は口角をニタリと上げたかと思うと、身体全体を仰け反らせ、天を仰いで―――――

 

 「ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!!❤❤❤❤❤❤❤」

 

 ―――――狂い笑っていた。

 

 「どこまでも!どこまでも!!ど・こ・ま・で・も!!!ワタシの心を躍らせてくださるんですか、アナタがたはぁぁぁ~~!!!!↑↑↑↑❤❤❤❤❤❤窮地に追い込まれれば追い込まれる度、さらに強力な戦闘能力を発揮して窮地を脱する!まるでどこかの戦闘民族のよぉですねぇ~~!!でぇもぉ!!ワタシが着目しているのは()()ではないのですぅ……現在の情報を瞬時に解析し、適宜適切に処理するその能力は、人間の頭脳やコンピュータですら成しえなかったコト!アナタがたの真価は、戦闘の埒外にあるのですぅ……で・す・か・ら」

 

 残った2体のプロトセーブが空中に並び、2体の間に目に見えるスパークが走った。

 

 「どうか抵抗せずぅ、ワタシにス・ベ・テを委ねてくださいネぇ❤❤コレがワタシがアナタに贈る、愛のしゅ・く・ふ・く(祝福)❤100万ボルトのビリビリ高圧電流ですぅぅぅぅ~~~!!!!!!↑↑↑↑❤❤❤❤❤ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!!」

 

 ―――――そんなモノが愛であってたまるかッ……!!

 でももはや、そんな言葉を返す事すら出来なくなっていた。この冷却時間が、恨めしくてならない……!!

 要はハイリスク・ハイリターンか……これから先は、『この力』の使いどころを考えなきゃ……!

 そして、そんな思考を巡らせる間に、目の前には『死の電撃』が迫る―――――

 

 ―――――ヤバいな……本当に……死ぬかもしれない―――――

 

 どんなバグッチャーの攻撃よりも現実的な恐怖感が、僕の1m前方にまで詰めてきていた。

 

 ―――――!!!!!!―――――

 

 不意に、2体のプロトセーブに、光り輝く巨大な四葉のクローバー型のバリアが飛来して―――――激突した。

 

 「ん゛なッ!?」

 

 瞠目するジェミニさんをヨソにスパークし、2体のプロトセーブは空中で堰き止められた。

 これは―――――"護葉反鏡陣(ロゼッタリフレクション)"だ。

 でも、普段のメモリアルや僕が使うモノよりも巨大で、何より全体が眩い"太陽色"に輝いている……

 これほどまでの技、どうやったら―――――

 そう思って、ふとメモリアルがいる方向を見た時―――――

 メモリアルは―――――いなかった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 そして、もう一度2体のプロトセーブに向き直った僕は―――――

 

 未だかつて見たコトの無い―――――どんなヒーローも見せたことのない―――――

 

 

 その『蹴り姿』に―――――僕は恋した。

 

 

 わかりやすく表現するなら、仮面ライダー電王・ロッドフォームの『ソリッドアタック』に、仮面ライダーアギト・シャイニングフォームの『シャイニングライダーキック』で蹴り込んだ―――――そんなカタチだ。

 太陽の輝きを全身に纏い、四葉の障壁へと一直線に突き刺さった"それ"は、愚直なまでに―――――

 否、それを"愚か"と表現することこそ"愚かしい"。

 

 鋭利に、剛美に、健実に―――――

 

 ただひとつの、唯一無二の "直" へと収斂された―――――

 迷いも、陰りも、躊躇いといった、心身ともにあらゆる "雑" を取り去って―――――

 五体のすべてを、この一瞬だけ "貫" の一字"そのもの"へと昇華した―――――

 

人 即 武 具 也

 

 ―――――空現流拳法の基礎概念を、そのまま"体現"したような―――――

 肉体そのものを質実剛健たる "槍" へと洗練し、鋳鍛し、敵へと突き刺さる―――――

 

 極限まで精緻、かつ剛毅にカタチ作られた芸術作品を見たような―――――

 そんな感覚だった。

 

 かくて僕の脳裏に―――――陽々色(ヒヒイロ)で彩られた神槍の銘が刻まれた―――――

 

 

 

プ  リ  キ  ュ  ア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……SAVE POINT




 設定解説

 プリキュア・サイバーイリュージョン

 分身を生成、制御する技。メモリアが使用したものと異なり、『虚像』ではなく、完全な実体である。
 それ故相手を撹乱することよりも、手数を増やし、多数の相手を制圧するための『攻撃的分身戦術』といえる。
 しかし、2人に分身すれば能力は半分に、3人になれば3分の1に……といった具合に、ひとり当たりの能力が分割されてしまうのが欠点。
 なお、分身体の半数はキュアメモリアが制御を担当、人格や声もメモリアのものになる。
 分身体は各々が異なる人格を持っており、それぞれが独自の判断で行動する。
 これらの人格はりんくとメモリアの深層に潜んでいる内面意識=ペルソナを抽出したものであるらしく、本人とは似ても似つかぬ性格をしていて、かつ千差万別なのはそのため。

 ※分身体の人格

 キュアメモリアル(ほんわか)

 天真爛漫な性格のメモリアル。
 『みんなのために戦う』ことを至上の喜びと感じ、本人よりもプリキュアとしての使命感が強い。
 なお、事あるごとに自分を『お姉ちゃん』と称するが理由は不明。
 モチーフは『ご注文はうさぎですか?』の『ココア』。

 キュアメモリアル(てんねん)

 ちょっと不思議ちゃんな性格のメモリアル。
 思ったことをすぐ口に出すが、考えてることはそんなに黒くないため悪意はほとんどない。
 語尾に『ぴゅる』をつけて喋ったりする謎多き存在。
 モチーフは『SHOW BY ROCK!!』の『モア』。

 キュアメモリアル(きらきら)

 某歌劇団の男役のような性格のメモリアル。
 自分に絶対の自信を持ち、時には荒々しく戦う、どこか男らしい面も。
 モチーフは『魔法少女育成計画』の『ラ・ピュセル』。

 キュアメモリアル(つんつん)

 いつも無表情、感情を表に出さないメモリアル。
 常に冷静で、丁寧な口調で話す『ちょっと近寄りがたい』印象。
 モチーフは『Charlotte』の『友利奈緒』。

 キュアメモリアル(メモリア)

 キュアメモリアが制御を担当する、キュアメモリアルの分身体。
 言うまでもないが人格はメモリアのまま。
 『本当の意味で』リアルワールドに来られたことに感激している様子。

 キュアメモリアル(わくわく)

 メモリアが制御を担当する分身のうちの一体。
 メモリア以上に幼い、小さな子供のような性格。
 無邪気だが好戦的で、『ばとる』がとても大好き。
 モチーフは『selector infected WIXOSS』の『タマ』。

 キュアメモリアル(おっとり)

 メモリアが制御を担当する分身のうちの一体。
 ちょっと引っ込み思案で、おっとりとした性格。
 世話好きな面もあり、他人への気配りを忘れない。
 モチーフは『ログ・ホライズン』の『セララ』。

 キュアメモリアル(ぶつぶつ)

 メモリアが制御を担当する分身のうちの一体。
 思ったことをぶつぶつと口にしてしまう、良く言えば正直、悪く言えば他人を傷つけやすい性格。
 しかし根は真面目で、やる時はやるが、調子に乗って失敗してしまうことも。
 モチーフは『ひそねとまそたん』の『甘粕ひそね』。

 キュアメモリアル(おおくち)

 メモリアが制御を担当する分身のうちの一体。
 男口調でさも自分を大物のように語る、根拠のない自信に満ちた性格。
 しかしながら他の分身がわりと破天荒なため、ツッコミ役に回ることもしばしば。
 モチーフは『七つの大罪』の『ホーク』。

 ――――――――――

 いつの間にやらメモリアルも『レジェンドライブ』を発動!!
 いったい何がどーなってこーなったのか、そして電調編の真の結末は、また次回で!

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