インストール@プリキュア!   作:稚拙

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 キャラクター紹介

 プリキュアシスターズ

 八手 ののか

 プリキュアハマり度:★★★★★★★★★★
 好きなプリキュア:キュアデーティア!

 リーダー格。紫キュア担当。
 演劇『プリキュアシスターズ』では、星のプリキュア『キュアスターライト』を担当。
 詳細は『連続スマホ突然発火事件』後書き参照。

 川村 さち

 プリキュアハマり度:★★★★★
 好きなプリキュア:キュアロゼッタ

 サブリーダー格。黄キュア担当。
 演劇『プリキュアシスターズ』では、光のプリキュア『キュアシャイニング』を担当。
 詳細は『蒼い閃光』前書き参照。

 時田 いいこ(クインシィ)

 プリキュアハマり度:★★★★★★★
 好きなプリキュア:キュアミント・キュアダイヤモンド

 緑キュア担当。
 演劇『プリキュアシスターズ』では、大地のプリキュア『キュアグラン』を担当。
 詳細は『蒼い閃光』前書き参照。

 佐藤 らんか

 プリキュアハマり度:★★★☆☆
 好きなプリキュア:キュアソード・キュアハニーなど『歌キュア』

 桃キュア担当。
 電調増子班・佐藤慈愛の娘。
 パパっ子で、カッコいいパパが大好き!と宣言してはばからない。
 引っ込み思案で歌が好き。そのため綺麗な歌声を響かせる『歌キュア』がお気に入り。
 普段は大人しいが、いざというときは大胆な行動を見せることも。
 演劇『プリキュアシスターズ』では、歌のプリキュア『キュアディーヴァ』を担当。

 高橋 こころ

 プリキュアハマり度:★★★☆☆
 好きなプリキュア:キュアマーメイド・キュアアクアなど『水キュア』

 青キュア担当。
 りんくのクラスメート・高橋おとの妹。
 物静かな雰囲気のメガネっ子。しかし語り出すと淡々とした口調で延々と語り続けるため、本当はおしゃべり好き。
 読書好きで、その知識量はいささか年齢離れしている。
 カナヅチで泳げないことがコンプレックスになっていて、その反動か自由自在に水を操る『水キュア』に憧れている。
 演劇『プリキュアシスターズ』では、水のプリキュア『キュアウンディーネ』を担当。

 香川 ぷらむ

 プリキュアハマり度:★★★★☆
 好きなプリキュア:キュアルージュ・キュアサニーなど『炎キュア』 

 赤キュア担当。
 りんくのクラスメートでほくとと同じ空手部の男子・香川桃太郎の妹。
 活発で小生意気な元気っ子。自称『ばーにんぐぷらむ!!』。早くも中二病に目覚めているのか、なにかと言動が芝居がかっていて、カッコつけたがる。
 トゥインクルバグッチャーの襲撃で両脚を負傷し、現在は車椅子での生活を強いられているが、
 それすらも自らの個性を引き立てる材料として考える超ポジティブ思考の持ち主。
 それを証明するかのように、車椅子に『しるばーぼんばー』と銘を付け、1ヶ月にも満たないうちに、自分の体の一部のように扱えるまでになった。
 『炎使い=カッコイイ!!』というシンプルな脳内等式から『炎キュア』が大好き。
 演劇『プリキュアシスターズ』では、炎のプリキュア『キュアフランマ』を担当。

 ――――――――――

 先日の『はぐプリ』……皆さんもうご覧になりましたよね!?
 まさかの『せんせい』&『お師さん』降臨!
 事前情報全く無しでのこのサプライズ……やるな、東アニ!

 ……それにしてもはぐたん……もしかしてご親戚の方に、コートを着た『おのれディケイドォォォォ』とかいつものたまってるプリキュア大好きオジサンがいるのでは……(汗

 オーロラ開いてプリキュア召喚とかまんまあの人なもんでつい思いだしちゃいました……(^^;)

 さて今回からは電調編最終章!新キャラも登場し、多くの謎が明かされる超重要回となります!お見逃しなく……!!


第13話 Dr.Gふたたび!プリキュアの正体は@ワタシが暴く!
見つめるその先


 澄みわたる海のプリンセス!キュアマーメイドよ。

 

 誰かを守りたいと想う心―――――

 人に優しくしたいという気持ち―――――

 

 それはそのまま、『プリキュアの強さ』に変わるの―――――

 

 『思い出も簡単に壊せる』コトが『強さ』だっていうのなら……そんな『強さ』なんか、私はいらない!!』

 『みんなを……ののかを怖がらせ、悲しませ、恐怖を植え付け、涙の一滴でも落とさせたキサマだけは絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛ッ!!!』

 『『プリキュアとしての一番カッコいい姿』……それで戦う』

 『お前は誰だッ!?』

 『"僕"の中の"わたし"』

 『『カッコいい』のは―――――『カッコいいから』なの!』

 

 こども園のみんなのために、一生懸命戦ったあなた達は、『強く、優しく、美しく』を体現した存在―――――

 これから先の戦いの中で、この経験は間違いなく、あなた達の力になる……

 自分の心の力と、信じてくれるみんなの力―――――それをひとつにできれば、きっと―――――

 

 『インストール@プリキュア!』―――――

 

 覚えてて。

 探してたまぶしさは、どんなときも自分の中にあることを―――――

 

 ――――――――――

 

 NPC ???????????

 

 ――――――――――

 

 

 "システマスゲート"が映し出す、とある世界のかつての情景……

 

 観測日付座標は―――――『2018年6月17日』―――――

 そう―――――この日は『育みの世界』で『新たな伝説』が目覚めた日。

 

 ―――――『真紅の"友気(ゆうき)"』と、『紫紺の"心機(しんき)"』―――――

 

 ふたりの"愛"が、奇跡を起こした日―――――

 

 《次元観測に精が出るみたいだね》

 「!……」

 

 まるで幽霊か人魂のように空間に浮かび上がるその姿―――――

 

 《薄暗いこの部屋で見ることができるのは;あの"門"だけだからね:退屈しのぎくらいにはなるだろうから》

 「……貴方は……!」

 《我々も;観察をさせてもらった:そして;"確信"もした》

 「……!」

 

 いずれは、彼が気付く日が来ると思っていた。もっとも、ああいった"奇跡"は、プリキュアたちの世界では"必ずいずれは起こりうる"。

 単純に、それが彼の目前で起きただけのこと。だけど―――――

 

 《やはり;我々の推測は正しかった:『プリキュアの意思』は;並行世界や時間軸すら;いとも簡単に超越する:"あの端末"があの場に出現したのは;奇跡でも何でもなく;むしろ必然と云うべきだろうね:彼女達は"意思の力"で;並行世界もしくは他時間軸の"あの端末"を;あの場に呼び寄せたんだ》

 「……だから……だから何だと言うのです……!?」

 《"間違っていなかった"ということだよ:我々も;そして;貴女も》

 

 私の判断は……"間違っていた"とでもいうの……?

 16年前、システマスゲートの向こう側に見えた世界の、戦う力を持った女の子たちに、救いを求めたことは―――――

 

 《バグッチャーの稼働ログも順調に採取されている:もうすぐだ;もうすぐだよ:貴女のいた世界に;我々も往ける》

 「……その時は来ません。貴方は稼働ログを得ると同時にキュアチップも失っています。得るモノよりも、失うモノが大きい物事に、成功はあり得ませんから」

 《その心配はいらないよ:何故なら》

 

 彼の周囲に、3枚のキュアチップがふわりと浮かんだ。

 

 《こうして;"補充"されているからね》

 「…………!!」

 

 そのチップを見て、私の"心臓"が早鐘を打った。

 そう―――――それは、『存在し得ない筈の』チップだったのだから―――――

 

 〈P52 CURE-YELL〉

 〈P53 CURE-ANGE〉

 〈P54 CURE-ETOILE〉

 

 「…………それ……は……!」

 《"あの時";サーバー王国に来なかった;否;『"彼の世界"で認識されていなかった』故に;"門"が認識しなかったプリキュア達だよ》

 「そんな!?」

 《それだけではない》

 

 さらに、2枚のチップが浮かび上がってきた―――――

 

 〈P55 CURE-MACHERIE〉

 〈P56 CURE-AMOUR〉

 

 「どうして!?そのふたりまで……!?」

 

 私が……あの時メッセージを送信するよう指定"できた"のは、『12の世界』だけだというのに……

 どうして、『13番目以降』の世界から、プリキュアたちが召喚されているの……!?

 それに、すでにキュアチップにされている理由も……!!

 

 《貴女は大きな勘違いをしていたんだ》

 「…………………………え?」

 《貴女は16年前;"門"で観測した世界のプリキュアたちに救いを求めた:でも;"門"は全てのプリキュアたちの世界を認識できなかった:その理由を貴女は知らないけど、我々は知っている》

 

 確かに―――――

 私が観測したプリキュアたちの世界は、明らかに『30以上』あった。それなのにどうして、『12』の世界にしかメッセージ送信が指定できなかったの?

 

 《我々の干渉により;"門"が"プリキュアの世界"とは異なる"とある世界"に接続されていたからだよ:故に;"彼の世界"で未だ認識されていないプリキュアは;そもそもメッセージを受信してすらいない》

 「……でも、システマスゲートは今も『認識』を続けています。こうして、『育みの世界』で()()()起きた出来事も―――――」

 《かつてではない:『現在進行形』で『認識』されていることだ》

 「現在………………!?」

 《貴女は16年前の時点で"門"が破損し;それ以降は観測しか出来なくなったと思っているようだけど;それは違う:我々の手にかかれば;"門"を修復し;調整することはそう難しくはなかったよ》

 「ゲートを……復元したというのですか……!?16年間、私達が修復できなかったのに……!?」

 《"我々"が;『個』にして『群』であるが故さ:"門"を修復する上での知識も;"この我々"に無くとも;"別の我々"に存在していただけのこと》

 

 ……やはり、そうだ。

 "彼"はもう、"彼"ではなくなっている。

 私は、"彼"の持つたくさんの顔を知っている。

 私とともに研究を重ねた、ネットワーク工学者としての"彼"。

 心優しく、誇り高い為政者としての"彼"。

 そして―――――そのふたりがひとつとなった、"彼"。

 キュアネットの中のワルイネルギーを過剰に取り込み、『カイザランチュラ』という存在に変容し、"彼"はサーバー王国へと『逆襲』を始めた。

 その時の"彼"も常軌を逸していたけれど―――――今、目の前にいる"彼"は、その"誰"でもなくなってしまっている―――――

 そう、まるで―――――

 

 ―――――私の知らない"彼"ではない"誰か"が、"彼"の口ぶりを真似て、目の前にいるかのよう―――――

 

 《さっきも言ったけど;現在の"門"は;"プリキュアの世界"とは接続されていない:けれども;現在接続されているのは;"プリキュアの世界"を含めた『ありとあらゆる世界』と接続され;観測が可能となっている夢のような世界だよ:現在"門"が観測しているのは;"その世界"を介して;"現在その世界がリアルタイムで認識しているプリキュアの世界"なんだ》

 「そんな……そんな世界が存在するというのですか!?世界そのものが『ターミナル化』されているような、そんな……!!」

 《僥倖だった:我々がこの世界を認識できたのは:もっとも;『時の速度』が一定である以上;これ以上未来で認識されるであろうプリキュアを現時点で認識できないことは惜しいけどね:けれど;それによって;労せずキュアチップが手に入る:"彼の世界"でプリキュアが新たに認識される度;強制リンク召喚プログラムによって;"彼の世界"を経由して"プリキュアの世界"からプリキュアたちを"この世界"の『滅亡直後の時間軸のサーバー王国』に呼び出し;高濃度ワルイネルギーによってキュアチップ化すればいいのだからね:故に;『プリキュアがキュアチップにされ;我々の手に落ちた』という結果だけが今この時に残る:過去に干渉しない限り;この手段は誰にも止められない:この世界においては;時間制御技術は確立されていないからね》

 「では……"その世界"が新たなプリキュアを認識するたびに……貴方は労せずしてキュアチップを手に入れる……!」

 《素晴らしいだろう:こうして解析したキュアチップの;プリキュアの『並行世界を渡る力』を解析し;我々は世界の壁を超える:ヒトの生活圏域を拡げ;果てしなく進化(アップデート)させるために:それにはまず;『世界の壁』は邪魔な存在だ:現実とキュアネットも;『世界』の此彼(しひ)も区別なく;ヒトが子を成し;育み;次代を残す環境を整えねば:そして我々は;その認識を"彼の世界"へと向ける:より良くヒトをアップデートさせるためには;『この世界』の有する情報は少なすぎる故に》

 「貴方は……貴方は、何を考えているのです……!?リアルワールドへと侵略することが目的ではなかったのですか……!?」

 

 "彼"は―――――『どこか』を見ていた。

 

 《我々は;"彼の世界"へと赴く:あらゆる世界と接続され;あらゆる世界を創造し続けている;"彼の世界"へと:この世界を『No.108564』と定義づける『笛吹ノ書庫』の存在する世界―――――》

 

 

 

 

真の第四の壁(トゥルーフォースウォール)』の向こう:『現実(ホンモノ)の世界』へ

 

 

 

 

 ――――――――――

 

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    CURE-MEMORIA

    HOKUTO HATTE

    CURE-DATA

 

 ――――――――――

 

 中間テストまで、あと1週間。今日から部活休止期間に入って、みんなが連れ立って学校を後にしている。

 私はほくとくんと、今後のことを話そうといっしょに帰ってたんだけど……

 

 《プリキュアが増えてるぅぅぅぅ!?!?》

 「ちょっ!?声が大きいよ、データ……」

 

 昨日の夜にメモリアがやったリアクションと全く同じ反応だった。

 あわててほくとくんが辺りを見回したけど、幸い今の声に気付いた人はいないみたい。

 そう、すべては昨日の夜、寝る前のことだった。いきなりメモリアが素っ頓狂な声を上げた。

 

 ―――――また増えてるぅぅぅぅ!?!?!?!?

 

 何事かと思ってキュアットタブを見てみると―――――

 

【挿絵表示】

 

 ……増えてたorz……予想はしてたけど。

 エールとアンジュとエトワールまで来てるのに、キュアマシェリとキュアアムールが来てないわけないですよねぇ……

 レジェンドプリキュアのみんなはまたも目を輝かせて、私にふたりのことを聞いてくる。マシェリ―――――愛崎えみるちゃんが小学生のプリキュアだって教えてあげると、《仲良くなれそうな方ですわね♪》と、エースが頬を緩めていた。

 でもって、アムール―――――ルールー・アムールちゃんのことを教えてあげたら……

 

 ―――――アンドロイド~~~!?!?!?

 

 みんなが一様に、驚きの声を上げていた。 

 ってゆーか、男の子がプリキュアになってることより、ロボットの女の子(アンドロイド)がプリキュアになってることの方がオドロキなのだろーか……

 中でもピース……やよいちゃんの目の輝きようはスゴかった。その場でスケッチブックを取り出して、まったく似てない想像図まで描いたほどだもん。どことなく『スマプリ』の35話に出てきた『ハッピーロボ』に似ていた。特にバケツをひっくり返したような頭のあたりが……

 そんなみんなには『はぐプリ』のブルーレイを見てもらって、ストーリーを追体験してもらうことでナットクしてもらおうっと……

 ともあれ、助けないといけないプリキュアたちは2人増えて、残り46人になってしまったとさ……

 

 「助けては増え、助けては増え……(さい)の河原で石を積んでも、鬼の金棒でホームランされる気分……」

 《なにそれ?》

 「あとでビューティかマーメイドに聞いて~……」

 「でも、確かに変だよね……サーバー王国に来ていたプリキュアたちは全部で51人なのに、その後も増え続けるなんて……」

 《プリキュア達が出てきたシステマスゲートは、16年前の戦いでブッ壊されてそのままだし……いったいどーゆーカラクリだ?》

 《ってゆーか、ホントーにこの世界に来てるのかもわかんないんだよねぇ~》

 「実際に、そのプリキュアたちのキュアチップを取り込んだバグッチャーが出てこない限り、証明にはならないね……」

 

 ほくとくんとメモリアの言うとおりだ。キュアネットの中で本人たちに出会ったわけでもなし、今までキュアチップをゲットしたわけでもなしで、私達からどうアクションを起こしても、『はぐプリ』のみんなの『存在証明』が出来ない現状―――――

 

 「どうにか、こっちからチップを取り戻しに行けないのかなぁ……」

 

 かといって、ジャークウェブの本拠地がどこにいるのかわかんないし、そもそも現実世界にはまず存在していないだろう。何しろ、プログラム生命体の軍団なんだから。

 

 「はぁ~……どうしたものかなぁ……」

 「おやおや、何かお悩み?」

 「ふぇ!?」

 

 ぼーっとして歩いていた私の顔を、むぎぽんがのぞき込んできた。

 

 「りんくちゃんって、考えとること顔に出やすいしなぁ。ため込むんはよくないえ?」

 

 いつの間にか私の横に、いつも目を細めてニコニコしているそらりんが並んで歩いていた。

 

 「……そんな深刻なコトじゃないって♪今度のテストで赤点取ったら、お小遣い減額なんだよ~……これだと今度出る新作のフィギュアが買えなくて……」

 

 言い訳っぽいけど、コレは本当。最近何かと金欠で……

 このふたりと話をするの、すごく久しぶりな気がする。メモリアのユーザーになって、プリキュアになってからは、ほくとくんといっしょだったり、こども園に行ったりしてて、むぎぽんとそらりんのこと、ちょっとないがしろにしちゃってたのかもしれない。

 でも、ふたりがいっしょにいるこの時が、私がいちばん、私のままでいられる時間なのかもしれない。プリキュアのことを忘れて、『普通の中学2年生』でいられる。

 世界がヤバいとか、プリキュアを全員取り戻すとか、そんなことに比べれば全然深刻じゃないことだけど―――――

 

 「深刻じゃんっ!!」

 

 次の瞬間私が見たのは、モノスゴい形相のむぎぽんのドアップだった。

 

 「ちょー深刻じゃん、お小遣い減額!!こーなったら週末テス勉やるわよ!」

 「ふぁ!?」

 「ええなぁ、それぇ♪わぁ、ちょっと英語苦手なん。りんくちゃん、教えてくれん?」

 「い、いいけど……ってかもうやること前提?」

 「ったり前でしょ!アタシ達3人から赤点出たら、我々"プリキュア大好き同盟"の恥ってもんよ!『プリキュアに熱中しすぎて勉強がおろそかになった』なんて、言われたくないし!」

 「そやねぇ♪どっちにしろ、来年わぁ達受験やしぃ。お勉強しといて損はないんやない?」

 

 大切なことを―――――ううん、大切で、当たり前のことを忘れかけてたのかもしれない。

 プリキュアになってのしかかった運命は確かに深刻だ。でも―――――

 むぎぽんやそらりんにとっては、テストで赤点取ったり、お小遣いを減らされることの方が、ずっとずっと"深刻"なんだ―――――

 

 「……そう、だね」

 「?なんかりんくちゃん、しんみりしとんねぇ」

 「そう?」

 

 ―――――こうして、『当たり前』のことに一喜一憂して、みんなで泣いたり笑ったりする日常。

 それを、『当たり前にする』こともしなきゃいけない。これはみんなに限らず、自分のためでもある。

 ホントーは、世界を守って戦うことなんて、中学生のやることじゃない。そこだけは増子美津秋さんに同意だ。

 4月にメモリアと出会わなければ、こんな会話も何気ない青春の1ページに過ぎなかっただろうけど……今は……

 

 「がんばらなきゃ……!」

 

 ヒーローと中学生の両立―――――『どちらか』を完遂するまでは、終われない。

 レジェンドプリキュアたちを見習って、キチンとこなさなきゃね!

 

 「……とゆーわけだから……ほくと!週末道場借りるわよ!あそこ、空いてるでしょ?」

 「な、なんでそうなるんだよ!?」

 

 いきなり話題の矛先を向けられて、ほくとくんが動揺する。

 

 「ウチはパン屋で日中もバタバタしてるし、そらん()はアパートだし!」

 「じゃ……じゃぁ、東堂さんの家は……?」

 「あんなプリキュアグッズやブルーレイで埋め尽くされた"痛部屋"で、アタシら3人が集中して勉強できると思う!?」

 「絶対途中で脱線するわなぁ~♪」

 「痛部屋……地味にヒドい……」

 「……わかったよ。予定もないしさ。……その、僕も……勉強会、いいかな?数学と社会、ちょっと不安だし……」

 「…………ま、場所提供してくれるんだしね。いいわよ。教えられるトコなら、教えてあげてやっても……いいし……

 

 むぎぽんは、何故かほくとくんの視線を逸らしながら、どんどん小声になっていった。

 

 「そういえばりんくちゃん、最近八手くんといっしょにおること多いなぁ♪いつの間に仲良くなったん?」

 

 そ、そらりん!?藪から棒にいきなり何言いだすんです!?

 

 「何故か今日もアタシたちについてきてるし、さっきもなんかいい感じのフンイキだったし……4月からこっち、急に仲良くなってどーしちゃったのよ~?」

 「えっ!?……そ、それわ……」

 「…………"勉強"っ!」

 

 私達の後ろにいたほくとくんが、絞り出すように言った。

 

 「勉強だよ。……その、妹がプリキュア好きでさ……プリキュアごっこで、悪者役やるんだけど……その時に、イカデビルやシオマネキングとかじゃ……ライダーの怪人じゃダメって思ってさ……それで、東堂さんに教えてもらってるんだ。プリキュアの悪者のこと……」

 「ふ~ん……」

 

 腕組みをしながら、むぎぽんがジト目でほくとくんを見据えてくる。かなり苦しい言い訳……に聞こえるけど、半分はホントだと思う。何しろ、のんちゃんのためならどこまでも強くなれる、最高のお兄さんだもん。

 

 「もしかして、放課後ふたりでパソコンルームに入り浸ってんのも、お勉強の一環なん?」

 「そ、そらりん知ってたの!?」

 「わぁだけやないえ?クラスのほとんどのみんながもぉ知っとぉけん♪」

 「ナイショでやってたつもりなら、まだまだ甘いヨ、おふたりさん♪」

 「……マヂですか」

 

 そりゃ、堂々と職員室にパソコンルームの鍵を借りに来てれば見てる子も多いか……でも、まさかパソコンルームが『インストール@プリキュア』の作戦会議室だとはだれも思うまい……フフフ。

 とりあえず、『ほくとくんにプリキュア講座をしている』という隠れミノが出来てる現状なら、私達のコトがバレる心配は当分無いか……

 さて、もうすぐ我が家だ。レジェンドプリキュアのみんな、マシェリとアムールを見てどう思ったかなぁ……?

 

 「……!?」

 

 ここを右に曲がれば我が家が道路の左側に見える、と言う所で―――――私達は思わず足を止めた。

 というのも―――――

 

 「また……また来てしまいました……東堂博士のご自宅……今ここに先生がいらっしゃらないとわかっていても、ついついここに来てしまうのはどーしてでしょーか……!!解せません……ワタシ自身が実に解せません!!ああでもしかし……ニッポンに来たからには必ず寄っておかなきゃいけない最・重・要スポット!!あぁそうです、ここで記念に一枚……」

 

 真っ赤なベレー帽をかぶって、()()()()リュックサックを背負った小柄なヒトが、電柱の陰に隠れながら独り言をブツブツ言いながら、懐からスマホを取り出して、私の家にカメラのレンズを向けていた。

 思わず私はギョッとして、ちょっとヒイてしまっていた。不審人物なのは確定的に明らか……!!

 え?これって通報モノ……なのかな……??知らないヒトが私んちを監視してるんですけど……!!??

 しかしどうしたもんでしょぉ……私、ここを通らなければおうちに帰れないわけで……しかもこのヒトが見てるおうちに住んでるわけで……

 オロオロしている私の横を、誰かがつかつかと通っていくのが見えた。次の瞬間―――――

 

 「そこで何をしている!!」

 

 あからさまな不審者に鋭い声を浴びせたのは、ほくとくんだった。

 

 「……うぇひっ!?」

 

 妙な声を上げて振り返ったその顔には、見覚えはない。私も初めて見る人……っていうか、小柄な女の子だった。

 髪はプラチナブロンドで、ダークプリキュアみたいな前髪ぱっつんのおかっぱ頭。でも何よりも目を引いたのは、そのメガネ。

 まさしく、一昔前のマンガやアニメで見るような、ガリ勉キャラがかけてるような瓶底メガネだ。『ぐるぐるメガネ』と言ったらわかる人もいるかも。

 ってか、日本語通じるんだろーか……見た目カンペキに外国(あっち)の人だし……でもさっき、日本語で独り言を言ってたような……

 

 「見慣れない顔だけど……東堂さんの家に用があるなら、堂々と玄関から訪ねて行ったらどうなんだ?」

 「あ!?いや、その、あの、ワタシはですね、ええっと……」

 

 しかしほくとくんはそんなこともお構いなしに、当たり前のように日本語で詰問した。

 気圧されて、あたふたしだした女の子は、明確に日本語を返した。つまりは日本語は通じるらしい。それにしてもこの声、『ヒーリングっど❤プリキュア』のキュアグレース―――――花寺のどかちゃんの声によく似てる。のどかちゃんよりちょっと低めのトーン、だけど。

 自分がスマホを持っていたのを思い出したのか、とっさにスマホをポケットにしまおうとしたけど、あわてたせいか取り落としそうになった。

 

 「あっ!」

 

 そのスマホを、誰かがひょいとキャッチした。女の子も私も、思わずその『誰か』を見ると―――――

 

 「相変わらず、りんくのおばあちゃんのことが大好きなのねぇ。ってか、来るなら来るって言ってから来てよね―――――ジェミニ」

 

 むぎぽんはあきれ顔でそう言って、女の子にスマホを返した。

 

 「む……む……ムギィ~~……(泣)」

 

 涙声で、女の子はむぎぽんにHUGっと抱きついた。呆気に取られる私とほくとくん。しかしそらりんは全く動じてないようで、

 

 「こむぎちゃんの知り合いだったんねぇ♪」

 

 と、ニコニコしながら言った。ホント、そらりんのこの『泰然自若』っぷりは尊敬に値します……

 

 「む、ムギ!!なんなんですかこのオトコは!?こんな……こんな、実にコワイオトコ、前に来た時はいなかったじゃないですかぁ!!」

 「お向かいのほくとよ。メッセで言ってたでしょ?拳法やっててチョー強いって」

 「な、なるほど、"アイアンフィスト"の彼ですか……」

 「えぇっと……むぎぽん、そちら、どちらさま?」

 「あぁ、ゴメンゴメン。このコ、アメリカに住んでるアタシのいとこなの。……ほら、みんなとは初対面でしょ?」

 

 むぎぽんにうながされて、女の子はメガネを指で直して、私達に向き直った。心なしか、さっきからしおらしくも見える。背中のリュックサックがモノスゴく主張してるけど。

 

 「ジェミニ……ジェミニ・ノーサップ……です」

 

 瓶底メガネの隙間から、ブラウンの瞳が上目遣いに私を見上げてくる。よく見ると、顔だちの雰囲気がむぎぽんに似ている。あと、そばかすがちょっと目立つかな。

 それにしてもアメリカに親戚がいるとわ……むぎぽんっちって意外とワールドワイドなんだねぇ……

 

 「へぇ~……アメリカに親戚がおるなんて初耳ぃねぇ♪」

 「アタシのおばあさんが、お母さんが生まれた後にアメリカに行ってね。そこで叔母さんが生まれて、アメリカ人の伯父さんと結婚して、そんでジェミニが生まれたってワケ。……それで?アタシに何の連絡も寄越さずに急に日本に来るなんて、何があったの?」

 「連絡なら、伯母さまにしましたよ?てっきりムギには伯母さまづてに伝わってるものかと思ってましたが……」

 「さてはお母さんワザと言わなかったわね……」

 「それで、ジェミニ……ちゃん?どうしてりんくちゃんちを隠し撮りしょうとしてたん?」

 

 そう、肝心なのはそこだ。アメリカからはるばるやってきて、わざわざ私の家を盗撮しようとしたワケって……??

 そらりんに笑いかけられたジェミニちゃんは途端に顔を赤くして力説する。

 

 「か、隠し撮りとは失礼ですねっ!?ニッポンに来た時には必ずここに立ち寄って、写真を撮るのが一番の楽しみなんですっ!!"キュアネットの母"と言われている東堂博士が生まれ育ったこの家……今すぐに世界文化遺産に登録してもいいくらいの重要文化財ですっ!!」

 「……え~っと……ウチが世界遺産になっちゃったらそれはそれでメンドーなコトになりそうな気が……( ̄▽ ̄;)」

 「ジェミニはりんくのおばあちゃん……東堂博士の大ファンなのよ。早く博士といっしょに研究とかをしたいからって、去年飛び級で大学卒業しちゃったくらいだもん。確か……"えむあいてー"だっけ?」

 「「大学~~~!?!?!?」」

 「あらまぁ~♪」

 

 なんと!この子、もう大学を卒業しちゃってるってことですか!?て、天才です!!マジモンの天才!!

 確かに見た目からはインテリ感がするというか……主にメガネが。

 

 「"好きなコト"を突き詰めていっていたら……いつの間にか大学を出てただけですよ。……まぁ、"やりたいコト"への近道にはなりましたけどね」

 「やりたいコト?」

 「ええ―――――」

 

 ジェミニちゃんのメガネが、キラリと光るのが見えた。

 

 「"未知"を―――――"倒す"ことです」

 「…………へ?(・ ・;)」

 「"知らない"コト―――――"未知"は、ワタシにとっては"敵"なんです。だから"倒さなければ"なりません。"未知"を"倒して"、"知らない"を"知っている"に、"未知"を"既知"に変えること……"知る"こと……"真実を明らかにする"ことこそ、ワタシが今、一番やりたいコト、なんですよ……♪」

 

 この時、ジェミニちゃんの表情が―――――

 ヤケに凶悪に見えたのは、気のせいだっただろうか。

 "知る"ということを"倒す"と表現するあたりから、なんだかちょっと語気も変わったようにも感じた。

 

 「そーいや最近、なんか仕事始めたってメッセに書いてたけど……」

 「まぁ、雇われですけどね。今回はいつもの"メンテ"もありますけど、お仕事絡みでお会いしたい方々もいらっしゃって、その挨拶にも、と……少し長めにお世話になるかもしれませんが、よろしくお願いします」

 「毎度のことじゃん♪でもウチにいる間は……」

 「わかってますよ♪パン作りも、実にいい気分転換になりますから♪」

 

 ということはジェミニちゃん、むぎぽんの家にしばらくいることになるワケね。でも、大学卒業してるわけだし、ウチの中学に転校してくるわけじゃなさそう。

 おばあちゃんの大ファンって言うから、おばあちゃんのお話いっぱいしてあげようかなって思ったんだけど……

 そうだ!それならメッセのアドレスを交換すれば―――――と思ったその時、宅配便のトラックが私達の横を通り過ぎていくのが見えた。

 それを見たジェミニちゃんが、「コレはマズいです……!」と小さくつぶやいた。

 

 「恐らくあのトラックにワタシの荷物が……!トンデモない量なんですよ!!今お店に横付けされたら実にヤバいことになります!!ムギ、急ぎましょう!!それでは皆さん、また今度っ!!」

 「ええ~~!?もぉ、わかったわよぉ!……ごめん!また明日ね!」

 

 ジェミニちゃんを追って、むぎぽんもダッシュで走り去る。曲がり角の向こうに、ふたりの姿が消えていった。

 

 「な……なんか、あわただしい子だったね……」

 「僕のことを"アイアンフィスト"って呼んでたけど……どういうことだろう……?」

 「それじゃ、わぁはこっちだけん、また明日なぁ♪おふたりとも、ごゆっくりぃ♪うふふ……♪♪」

 

 そらりんは何故か意味深に笑いながら―――――というか、いつも通りの細目のままで、T字路の向こう側へとご機嫌な様子で歩いて行った。

 でもどうして『ごゆっくり』……??

 なんかそらりん、時々よくわかんないコト言ったりするんだよねぇ……特にほくとくん絡みのことになると……

 時折、私とむぎぽんに注がれる『全てをわかってる』ような視線っていったい……?

 

 「じゃ、じゃぁ、僕もここで……また明日!」

 「……うん、また明日!」

 

 私の家の前で、ほくとくんと別れて、我が家に入る。

 ふと、靴箱の上のデジタルフォトフレームに視線が止まった。ちょっと前のおばあちゃんが、私に笑いかけている。

 

 「おばあちゃん……おばあちゃんが好きって子が、アメリカから来てくれたよ―――――」

 

 ジェミニちゃんのことを思い出して、ちょっとうれしくなって、思わず語りかけちゃった。

 おばあちゃんを目標にして、勉強して大学まで卒業して、いっしょにお仕事したいって子が、はるばる訪ねてきてくれたんだもん。

 なのにおばあちゃん、今どこで何してるのやら……最後に連絡貰ったのが今年の年賀状で、私の13歳の誕生日にはプレゼントも何もなかったし……せめてひと声でもいいから、おばあちゃんの声が聞きたいなぁ……

 …………それにしても、おばあちゃんって…………

 

 

 「…………(わっか)……」

 

 

 ……SAVE POINT




 実は今回からちょっと思う所がありまして、過去投稿分も含めてそらりんの一人称を変更してます(わたし⇒わぁ)。
 さらに方言女子度がアップ……してますかねぇ?

 それにしてもジェミニちゃん、一体何者なんだ……??

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