インストール@プリキュア!   作:稚拙

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 バグッチャー大図鑑

 ロゼッタバグッチャー

 身長:現実空間換算4m
 属性:太陽
 実体化所要時間:2時間

 第1話『はじめまして!スマホの中の@プリキュア!』と第2話『エンゲージ!記憶の戦士@キュアメモリア』に登場。
 アラシーザーが、東栄市のネットワーク管理プログラムと、キュアロゼッタのキュアチップを使って生み出したバグッチャーで、人目に触れるキュアネット上に初めて出現した最初のバグッチャーである。
 キュアネット上の情報伝達ネットワークに『壁』となるバリアを仕掛けて情報伝達を阻害、その結果キュアネットに接続している機器に障害をもたらし、東栄市、特に大泉町全域に大小の被害をもたらした。
 キュアメモリアとの戦闘においては、キュアロゼッタの技であるロゼッタウォールを使った攻防一体の布陣でメモリアを苦戦させたが、キュアネット上の応援コメントを受け取りパワーアップしたメモリアのメモリア・ライジングサンダーを喰らい、デリートされた。
 ユナイテーションワードは『陽だまりの四葉よ、その楯を以って電子の流れを堰き止めよ』。


 マーチバグッチャー

 身長:現実空間換算3m
 属性:風
 実体化所要時間:50分

 第3話『旋風の刺客!曲がった@直球勝負!?』に登場。
 アラシーザーが、大泉風力発電所の発電用プログラムと、キュアマーチのキュアチップを使って生み出したバグッチャー。
 風力発電機に手足が生えたような外見であり、頭部のファンはもちろん、両腕もファンに変形させ、合計3つのファンから強烈な暴風を発生させることが出来る。これによって現実空間の風力発電機を暴走させ、『風の公園』一帯に局地的な嵐を巻き起こした。
 キュアメモリアと戦ったが、ロゼッタウォールで嵐を押しとどめられ、最後はメモリア・ライジングサンダーフォールで鉄拳粉砕された。
 ユナイテーションワードは『勇気ある風よ、勇敢を蛮勇に変え、破壊の嵐を齎せ』。

 ――――――――――

 今川焼きwwwビルドは今川焼きですかwww
 す、スミマセン……アメトーークの仮面ライダー芸人で大爆笑してしまった稚拙ですww

 さて今回はかなりネタに走らせていただきました……
 エースバグッチャーの攻撃とキュアデーティアの発奮にご期待を!
 それでは久々に、送信!
 


電撃!ネイルガスの恐怖!!

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 ――――――――――

 

 NPC MITSUAKI MASUKO

 

 ――――――――――

 

 

 「おい!しっかりしろ!」

 「すみませんッ……」

 《弾が足りねぇぇぇ!!》

 《つーか弾効いてねーんじゃねーかこいつら!?》

 《柴田班第4隊、第1隊のサポートに回ってください!》

 《…………あ~……それ、神木班に回してやってくんない?……あそこ、特攻野郎多すぎだし》

 

 無数の銃声に雑じって、あらゆる方向、そして通信機の奥―――――

 『声』が鼓膜を掻き毟るようだ。

 怒号、諦め、恐怖、統制、焦燥―――――人間の感情の坩堝にブチ込まれたような錯覚―――――

 挙句に視界には、黒光りした着ぐるみ集団が、得物を手に迫りくる。

 

 ―――――どこのB級パニックムービーだ。

 

 こいつらの殆どが、今まで『裏のネット犯罪者』を相手に大立ち回りを繰り広げてきた猛者共だが、やはり"こいつら"相手には分が悪いか……。

 こんなフザケた外見で、尚且つ『撃っても死なない』連中なんざ、フィクションにも程がある。人間の想像力の及ばぬ存在―――――

 

 「―――――基本、飛び道具は効かないようですね」

 「!……長谷川!?お前向こうのエリアのハズ……」

 「―――――神木主任から此方に回るよう要請されましたので。……体良く厄介払いされた、とも取れますが」

 

 長谷川清海(はせがわせいかい)―――――俺とは別のチーム、長谷川班の主任だ。

 電調の実行部隊の主任の中でも最年少・21歳で班を率いる『天才』―――――

 

 「―――――連中の動きですが……どうも―――――」

 

 長谷川が視線を促す先には、メインサーバーの存在する中央管理棟があった。

 

 「―――――あそこを目指しているようですね」

 「勘か?」

 「―――――客観的・且つ論理的に分析したまでですよ」

 

 流石は『天才』と言うべきか。この短時間で奴等の"目的"の場所を割り出すとはな。伊達にオペレーターを立てずに、自分で戦いながらオペレートしてる訳じゃないらしい。

 あの中央管理棟の10階―――――メインサーバールームには、テテが"P"から横取りした、"XV"の中から出現した"モノ"がある。

 つまり奴等は既に、あのメモリーカードの詳細な場所を知っている……!ここにいる着ぐるみ連中は全員、俺達を足止めするための"捨て駒"か……!

 もっとも捨て駒と言えど、こちらの攻撃はほとんど通じず、俺や佐藤が持ってる"AXV弾"しか通用しない、『不死の捨て駒』―――――つまり―――――

 

 ―――――詰んでるじゃねぇか……!!

 

 電調で"AXV弾"を持ってるのは、俺と佐藤の2人だけ。しかもその数にも限度がある。

 それに、他の連中が奴等を確実に仕留められる手段を持っているハズが無い。

 こうなったら、あの"敵性C-ORG"だけでも潰すか……?

 俺は巨大なミサイル砲台型"XV"に乗り、仁王立つ"奴"を睨め上げた。だが、奴の姿は少しずつだが遠ざかり、俺と奴の間には、夥しい数の着ぐるみ軍団―――――

 どうすりゃいいんだ……!!

 

 「―――――あぁ、そういえば」

 

 何かを思い出したように、隣にいる長谷川がそう言うと、右腕のスーツの袖口からスッとダガーが飛び出し、右手に握られた。そしてそのダガーを、背後から迫った肥えた"着ぐるみ"に突き刺した。

 立て続けに、左右から迫る3人の"着ぐるみ"に、何処から出したのか連続でナイフを投げ放った。それらは一本も外れず、胴体や腕に命中した。

 しかし、銃が効かない相手に刃物なんざ―――――と思った矢先、懐から黒い箱を取り出し、そこの蝶番式のスイッチを倒した―――――

 

 

エレクトリシーダ・バイレ

 

 長谷川が呟くと同時に、ナイフが命中した4人の"着ぐるみ"が、不自然に四肢を躍らせ、地面へと頽れ、ビクンビクンと体を痙攣させた。

 見ると、ナイフの石突に、肉眼でギリギリ見えるほどの極細のワイヤーが繋がれ、それが長谷川が持つ黒い箱へと接続されていた。その黒い箱には―――――『⚠危険取扱注意 携帯式高圧電流発生装置⚠』と、これ見よがしに書かれたラベルが貼ってあった。

 

 「……コイツは……!」

 「―――――そういう事です。これで2度目、確信が持てました。……実体化したところで、所詮はコンピューターウィルス……つまりは電気信号で動作するプログラムに過ぎません。高圧電流によってプログラムを強制的にビジー状態に陥らせることで、ある程度は動きを封じられます。もっとも―――――」

 「!?」

 

 電流を受けた"着ぐるみ"が、30秒ほどしてすっくと起き上がってくるのを見て、俺は慌てて"ソイツ"に"AXV弾"を発砲した。胴体部に命中し、着ぐるみは霧散するように消滅した。

 

 「―――――自己修復(セルフリブート)を行うようで、2~30秒で復帰します。つまりは足止め程度にしかなりません。完全消滅させるには、やはり"それ"が必須なようですね」

 「でかした……!!長谷川、全員に伝えろ!『高圧電流が効く』ってな!スタンガンやテーザー持ってる奴なら、ある程度はあいつ等に対抗できるだろうよ……!」

 

 倒す事が出来ずとも、少しでも効果のある手段があるに越したことはないだろう。長谷川が通信を行う中、俺は遠くを悠然と往く"敵性C-ORG"を見た。

 奴の狙いは"例のブツ"だけじゃない。この俺への意趣返しもあるだろう。"たったそれだけ"のコトのためにこれだけの大部隊を動員するとは―――――

 異常なまでにプライドが高く、それでいてそれを傷つける奴は徹底的に痛い目に遭わせなきゃ気が収まらない性分―――――

 

 ―――――傍迷惑な野郎だな。

 

 『ッ!見つけたぞ、"()スコ・ミ()アキ"ッ!!』 

 

 ……どうやら邪念が伝わっちまったらしい。巨大な"XV"がドカドカと足音を立てて方向転換し、巨大な口紅(ミサイル)を此方へと向けてくる。

 

 『疼くッ……疼くぞッ!貴官を思い出す度に左肩が疼くッ!!今こうして視界に収めて更に疼くッッ!!!"貴官へ借りを返せ"となッ!!!!』

 「……要は仕返ししたいってだけじゃねーか、大袈裟な野郎だ。左腕の経過は()調()みたいで何より……つーか、ご大層な腕に取ッ換えて来たみたいじゃァねぇか」

 『クククッ、流石に元通りとは行かずッ、義手と交換する羽目になったがなッ!だァがッ!!この鋼鉄の左腕(さわん)こそッ、如何に傷つこうともジャー()ウェブの、ひいては御大将カイザランチュ()の御為に粉骨砕身の覚悟を以って戦う小官の決意の表れッ!!小官の新たなる誇りであぁるッ!!!』

 「ジャークだかタランチュラだが知らんが……生憎とテロリストと長々と立ち話する趣味は無いんでな」

 

 一々些事を大仰に言う奴―――――俺は躊躇なく奴の眉間に銃口を向けた。

 

 「最早俺に言えるのはこれだけだ―――――消えろ」

 

 まったくもって日本の公務員が言うセリフじゃないな―――――

 引鉄に右の人差し指を掛けたその時―――――耳元から井野が叫んだ。

 

 《主任!後方より高エネルギー、急速接近します!!》

 

 

フレプリ見よう見まねっ!!プリキュアキィィィィィィック!!!!

 

 「ッ!?」

 

 後方からだった。ピンク色の光が"着ぐるみ軍団"の中へと突っ込み、"着ぐるみ軍団"が四方八方へと、土煙と、衝撃で砕けたアスファルト片とともに飛び爆ぜるのを見た。

 この光の色―――――そしてこの声―――――

 "それ"が、昨日俺が遭遇した、もうひとつの"人智を超越した存在"であることに気付くのに言葉も何もいらず―――――

 俺は叫んでいた。

 

 「どうして来たァッ!!…………"P1"!!!」

 

 ――――――――――

 

    EX PLAYER CHANGE

 

 ⇒  CURE-MEMORIAL

    CURE-DATEAR

    ??????

    ??????

 

 ――――――――――

 

 

 私が、遠くを行く巨大なシルエットに気付いてジャンプして、少し後にメモリアが言ってきた。

 

 《待ってりんく!ほくととデータ、ついてきてないよ!?》

 『え……!?』

 

 別の建物の屋上で足を止めた私は、喧騒の中を見渡すけれど、デーティアの姿が無い。

 

 《……あ!デーティアの気配、向こうの方!りんくから見て、左後ろ!》

 

 メモリアの声に振り返ると、その方向の真正面、大分遠くの建物の屋上で、土煙が舞った。鼓膜に響く重低音の向こう側に、私は水色の輝きを見た。

 

 《あたし達も行かなきゃ!》

 『……大丈夫、あっちはデーティアに任せよ?……デーティアのコトだもん、きっと、困ってるヒトがいたんだよ。こんな状況だし、臨機応変に、ね?』

 

 この混乱の中で、私ひとりが出来るコトは限られてる。この場にいる人全員を助けるなんて大それたことはできないかもしれない。

 それでも、そんな中で出来るコトをやるために、デーティアは―――――ほくとくんとデータは、あえて"ふたり"で行ったに違いない。

 

 『後でメッセ送る!……私たちは―――――"こっち"だよ!』

 《うん!》

 

 私も―――――私たちも、出来るコトをやらなきゃ―――――

 全員助けられなくても―――――全員助ける、そのつもりで、全力で!

 黒服の人達は、ここの人達で……それから、『ハトプリ』のスナッキーか『ハピプリ』のチョイアークみたいな"着ぐるみっぽい軍団"で溢れかえる様を眼下に見ながら、もう一度私は跳ぶ。見据えるはただ一点―――――

 あの巨大なミサイルっぽいヤツ―――――どこからどう見てもバグッチャー!

 でも、まずは―――――

 その足元、黒服の人達に対峙している、着ぐるみ軍団にロックオン!

 私は空中でひねりを加えて回転して勢いをつけると、一直線に―――――!!

 

 

フレプリ見よう見まねっ!!プリキュアキィィィィィィック!!!!

 

 着ぐるみ軍団のド真ん中に蹴り込んだ。イーネルギーを足先に集中させて蹴り込んだから、その衝撃波で着ぐるみ軍団が弾けるように、四方八方に吹っ飛んだ。

 相手は見渡す限りの大軍団―――――ってか、今までバグッチャー1体ずつしか出てこなかったのに、今になってこんなに出てくるなんて、どうして―――――

 

 「どうして来たァッ!!…………"P1"!!!」

 

 喧騒に雑じって聞こえた声。振り向くと、キックの飛び散る瓦礫と着ぐるみ軍団のスキマから、見覚えのある顔がのぞいた。

 

 『……昨日のオジサン!?』

 

 そーだろーなぁとは思ってたけど、やっぱりココって、オジサンたちに関係してる場所―――――

 

 『役者が揃ったかッ……!貴官まで参戦するとはなッ!これぞ天恵ッ!!』

 

 ミサイルっぽいバグッチャーの上から、腕組みして見下ろしながら大声でがなり立てるのは―――――

 

 『スパムソン!何なのよ、この"謎のザコ敵軍団"は!?こんなに大勢で押しかけて、みんな大メーワクしてるじゃない!!』

 『貴官ッ!!言うに事欠いて雑魚とはなんだッ!!ついでに謎でもなぁいッ!!!この軍勢こそッ、我等()ャーク()ブの叡智の(ひとつ)ッ、()グッチャー"Ver.2.5"!!さらなる改良を加えた実用量産型バグッチャーであるッ!!!』

 

 つまりは、ここにいる着ぐるみ軍団も、全員がバグッチャーなんだ。でも、さっきの私のキック一発で吹っ飛んで、粒子化して消し飛んだヤツもいた。ってことは、やっぱり―――――

 

 『ザコっぽいバグッチャー……略して"ザコッチャー"ってトコね』

 『雑魚ではないと言っているッ!勝手に命名するなッ!!貴官に命名権(ネーミングライツ)は認可されておらァんッッ!!!』

 「公務員の立場から言わせてもらうがな……ココで勝手にドンパチやる権利もテメーらには認可されてないぜ。この場所は俺達―――――"内閣電脳調査室"の"公有地"でな」

 

 オジサンがスパムソンに向けて、手にした拳銃の銃口を向けた。

 

 「出ていかねぇんなら、強制執行だ。公務員ナメんじゃねーぞ」

 『言ってくれるなッ。ならばこちらも遠慮はせんッ!!掛かれィッ!!』

 『『『『『『バグバグ~~~~!!!!』』』』』』

 

 スパムソンの号令で、ザコッチャーの集団が私達に押し寄せた。来るなら来てみなさい!!

 私は先頭で突っ込んできたザコッチャーの胸板に右ストレートを叩き込んで吹っ飛ばし、次に左脚を軸にして後回し蹴りを放った。瞬間、右脚ブーツの『噴射口』からイーネルギーが噴き出して、ピンク色の軌跡が私の視界を横切り、ザコッチャーが消し飛ぶのが見えた。

 2体倒しても、さらに10体ほどに取り囲まれる。キリがない!

 ―――――だったら、こないだ見た"アレ"で!

 

 『オジサンたちは下がって!』

 

 巻き込んじゃったら大変なことになる。私はオジサンたちに叫んでから、手近なザコッチャーの首筋に右のラリアットを喰らわせて押し倒すと、すかさず両足首を抱え込むようにつかんで―――――

 

 

 『メモリアル!!爆裂大回転スイングーーーーーーッッ!!!!』

 

 

 『回転』のイメージを走らせて、腰回りの『噴射口』からイーネルギーを噴き出させて強引に勢いをつけて、時計回りにぶん回す!

 プロレス動画と、日曜8時からやってるけれど、もうすぐ終わっちゃう(2017年11月現在)バラエティー番組の某コーナーを参考にさせていただきました!ありがとう『お父さん』!!

 

 『どぉぉりゃあああぁぁぁーーーーーー!!!!!!!』

 

 気持ちいいくらいにザコッチャーが吹っ飛ぶ吹っ飛ぶ!このままどんどん数を減らすぞ~!

 

 『バグッ、バグバグッ……!(な……なんてヤツだ……!)』

 『バグゥ……(今突撃したら確実にヤバい……)』

 『バグ!!バググッ!!(ま、負けるもんか……!!オレ、帰ったら結婚するんだ……!!)』

 『バ、バグッ!?(フラグ建てんなバカヤロウ!?俺まだやられたくねぇよ……)』

 『バグバグゥ……!!(よぉし、だったらおれが行く!独り身のおれだ、失うものは何もない!!』

 『バグバグ!(じゃぁオレが行っちゃるぜ!!)』

 『バグググッ!!(いや、ここはボクが!!)』

 『バ……バグ……(じゃ、じゃぁ……俺、行こうかな……)』

 『『『バ~グバ~グ(どうぞどうぞ)』』』

 『バグッ!?(ヲイッ!?)』

 

 むむっ!?あそこにイイ感じにザコッチャーが固まってる!そこに今つかんでるこのザコッチャー、プレゼントしてあげる!!

 

 『そぉい!!』

 

 ―――――カッコォォォォン!!!!

 

 『『『『『『バグ~~~~~!!!!!!!!』』』』』』

 

 まるでボウリングだ。勢いのまま投げ込んだザコッチャーがイーネルギーの光で爆発して、その爆発で固まっていたザコッチャーが四方八方に吹っ飛んでいくのが見えた。

 ―――――爽・快・感……!!

 

 『ッつえぇいッ!!我が兵士達ながら不甲斐ないッ!!こうなれば……ッ!バ()ッチャーッ、発射準備ッッ!!!』

 『ベ、ベツニアナタノタメジャナインデスカラネッ!!』

 

 スパムソンの指令に、巨大ミサイル型のバグッチャーがツンデレっぽくそう答えた瞬間、ラブキッスルージュの先っぽが、天高く向いた。

 

 『()ェェェッッッ!!』

 『トキメキナサイ、バキューーーーーーーーン❤!!!!』

 

 ルージュから、天空へ向けて真っ赤な光が打ち上げられた。きらりと空で光ったと思うと、無数の赤い光の雨になって降ってきた!?

 

 『やばッ……!!』

 

 反射的に私はキュアチップをコミューンにセットした。

 

 『キュアチップ、『キュアビート』!キュアット、イン!!』

 《爪弾くは魂の調べ!キュアビート!!》

 

 《CURE-BEAT! INSTALL TO MEMORIAL!! INSTALL COMPLETE!!》

 

 

 『キュアメモリアル、"ビートスタイル"よ!』

 

 

 サイドテールと満載フリル!手にする得物はラブギター!

 バリアが使えるビートの力なら、あの攻撃をサバけるかも……!

 

 『ビートバリア、フル!パワーーーーーー!!!!』

 

 ありったけの力を込めて、私はラブギターロッドをかき鳴らした。ギターのけたたましい音色が響き渡り、光のドームが広がっていく。

 瞬間―――――赤い光が降り注ぎ、私達のすぐ頭上で花火のような破裂音が鼓膜を揺らす。私は思わずぎゅっと目を瞑った。

 

 「………………炸裂弾の類じゃなかったようだな」

 

 すぐ後ろから、オジサンの声がした。おそるおそる目を開けて辺りを見回すと、私が展開したバリアの中に、オジサンを含めて4~5人ほどの男の人がいた。

 でも、バリアに入れなかった人は―――――

 バリアの外を見ると―――――真っ白な煙が立ち込めているように見える。バグッチャーの姿も、何も見えない。

 

 《……!主任!周囲の空気から、未知の物質が検出されてます!これって……!?》

 

 女のヒトの声が聞こえる。……誰だろう?っていうか、オジサンを見た時、急にこんな声がした。この『何かを通したような声』……これってもしかして、ココの無線を拾ってるってこと……!?

 ネットにこのまま出入り出来ちゃったりするし、ますますもってマトリクスインストールのスゴさがわかったかも……

 

 「ガス弾か!……ちッ、流石にガスマスクは準備してねぇか……」

 『それなら、私が!』

 

 ガスを一発で吹っ飛ばすなら、迷わずコレで!

 

 『キュアチップ、『キュアマーチ』!キュアット、イン!!』

 《勇気リンリン!直球勝負!!キュアマーチ!!》

 

 《CURE-MARCH! INSTALL TO MEMORIAL!! INSTALL COMPLETE!!》

 

 

 『キュアメモリアル、"マーチスタイル"だよ!!はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』

 

 

 気合一閃、私は咆哮とともに、体の中の"力"を一気に放散した。強烈な風が巻き起こって、辺りの煙を一気に吹き飛ばした。同時に、ビートバリアがぱちんと消えた。

 

 「!長谷川!!」

 

 オジサンが、バリアの外に立っていた若い男の人に駆け寄った。その男の人は、うつろな目をして、口を半開きにして、ぼーっとして突っ立っているように見えた。

 

 「オイ!しっかりしろ!長谷川!!」

 

 オジサンは声を掛けながら、肩を掴んで激しく揺らした。すると男の人は、首をかしげるようにオジサンを見た。

 

 「――――――――――――――――――――く」

 

 

 ―――――くぎゅううううううううう~~~~~~~~~~…………………… 

 

 

 男の人はいきなり奇声を発したと思うと、全身から力が抜けたようにだらりと体勢を崩し、地面にへたり込んでしまった。

 

 「くぎゅううううううう~~~……」

 「ど、どうした!?何gくぎゅうううううう!!……」

 「オイしっかりしろ!!く、く、くぎゅうぅうううう…………」

 

 長谷川と呼ばれた男の人が倒れたのが合図だったみたいに、さっきバリアの外にいた屈強そうな男の人達が、次々と『くぎゅうううううう』とヘンな声を上げて、脱力して倒れていった―――――!?

 

 『フハハハハハッ!!効果覿面だなッ!!』

 

 得意げな顔をしたスパムソンが、勝ち誇ったような笑い声を浴びせてくる。

 

 『一体何したのよ!?』

 『今しがた散布したのはッ、さる軍事大国が極秘裏に開発した暴徒無力化用神経性筋弛緩ガスッ……その名も"ネイル()ガス"よッ!!これを吸引したならばッ、2時間は立ち上がれまいッ!!本来ならば貴官と"マス()・ミツ()キ"に浴びせたかったのだがなッ……!!』

 

 まさかのガス攻撃……でも、毒ガスじゃなかったのは不幸中の幸い……って言っていいのかな……

 でも、悶絶して倒れている男の人達に、今がチャンスとばかりに迫ってくるザコッチャーの集団を見た時、そんな安堵は吹っ飛んでいた。

 

 『"アイハアタエルモノ"……コレガ、"アイ"……!』

 『……!!』

 

 ミサイル型バグッチャーが高らかに、そして悦に入ったように叫ぶのを聞いて、私はその時悟った。

 あの巨大な"ラブキッスルージュ"と、この言葉から想起できる、このバグッチャーの"正体"を―――――

 

 『―――――キュアエース……』

 

 間違いない。このバグッチャーに囚われているのは、キュアエース―――――円亜久里ちゃんだ。

 

 《『ドキドキ!プリキュア』のひとり、"紅導(こうどう)のエース"……》

 

 やっぱり、メモリアも気付いたみたい。もっとも今回は言葉以前に、バグッチャーの外見、そのほとんどがまんまビッグサイズのラブキッスルージュだから、プリキュアファンなら誰でもわかる……かも。

 

 《エースの……"プリキュア5つの誓い"は……こんな風に誰かを苦しめるためのものじゃないのに……!プリキュアとして、みんなを……世界を守るために大事なことを教えてくれた誓いを……》

 『―――――捻じ曲げるなんて、許せない!』

 

 キュアエースの説いた"プリキュア5つの誓い"は、プリキュアとしてあるべき理想と気構えを、厳しく、優しく、わかりやすく教えてくれたもの。

 でも、このバグッチャーは、狙ってなのか、それとも無自覚なのかはわからないけれど、その"誓い"を、自分勝手に解釈してる。

 脱力して倒れた男の人達―――――"それ"が、コイツが解釈する"愛を与える"コト、その結果だというのなら―――――

 

 『《こんなの、間違ってる!》』

 

 私は知ってる。エースが教えてくれたこと。

 女の子が、心に刻み持つべき必要なこと。

 困難を乗り切るために、大切なこと、守るべき誓い。

 "愛"の本当の意味―――――

 

 『……待ってて、エース』

 

 私が……私達が、絶対に取り戻す。

 

 本当の"誓い"を。

 

 本物の"愛"を―――――

 

 ――――――――――

 

    EX PLAYER CHANGE

 

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    ??????

    ??????

 

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―――――空現流閃剣術―――――

 

 

(イチ)    

 

(シキ)    

 

(ダイ)    

 

(ザン)    

 

(トウ)    

 

 

    椿(ツバキ)

 

    (ヒメ)

 

 ―――――ドゴォォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!

 

 右の手刀に最大限の"氣"を集中させ、巨大な刃と成し、真っ向から振り下ろす。

 

 『『『『バァグゥゥゥゥゥ~~~~!!!!!!』』』』

 

 眼前に群れ成す"戦闘員"の集団を、僕はまとめて叩き斬った。遠目に、機を窺っていた別の集団を見据えた僕は―――――

 

 『でぇえぁぁぁぁぁぁぁーーーッッ!!!』

 

 "氣の刃"を、返す刀で()ち放つ。この『椿姫』は、直接斬るだけでなく、こうして斬撃を『射る』こともできる!

 残心で見据えるその先で、5~6体の"戦闘員"が仰け反り吹っ飛ぶのが見えて―――――

 その余波で廊下の突き当りにあったガラス窓を、フレームごと粉々に粉砕してしまった……。

 

 『……あ( ゚Д゚)』

 

 ……やっちゃった……背筋がサーッと冷えた。

 

 「こぉらぁ~~!!何やってるッスか!!コレで16回目ッスよ!?」

 『ご、ごめんなさい……加減が効かなくて……』

 

 ―――――未だ僕達は、ビルの中にいた。

 緊急事態のためかエレベーターは使えず、僕と電調の狙撃部隊の人達は、階段をひた下るハメになっていた。

 直接制限なく"戦闘員"を倒せる僕を先頭に、命中させれば"戦闘員"を倒せる弾を込めた銃を持っている佐藤さんが後に続き、その後ろから梅澤さんたちが続く、というフォーメーションだ。

 ビルの中は意外と入り組んでいて、階段から階段へ廊下を渡らないといけない場所もあって、そこかしこで"戦闘員"がゲリラ戦を挑んできた。

 梅澤さんや佐藤さんの助力を受けながら、僕は次々と現れる"戦闘員"たちを倒していったけれど―――――

 僕の攻撃の余波でビルの施設が壊れてしまって、佐藤さんがそのたびに怒声を飛ばしてきたのだった……。

 

 「……嬢ちゃん、"プリキュア"とかいったか?"それ"になってから、どれだけ経つ?」

 

 おもむろに、梅澤さんが僕に尋ねる。

 

 『え?……初めて戦ったのが4月の中頃だったので……1ヶ月ちょっと、です』

 「そうか……おい佐藤、お前が(ハジキ)で仕事を始めて1ヶ月……どうだった?」

 「どうだったって……先輩についてくのが精一杯で、毎日が勉強、ほとんど仕事にならなかったッス……」

 「そうだろ?……嬢ちゃんだって、"プリキュア"始めて1ヶ月……駆け出しの新人だ。それがお前、一番前で戦ってくれてんだぜ?しかも相手は普通の(ハジキ)が効かねェ得体の知れん連中だ……なのに佐藤よォ、モノ壊したくらいで一々なんだ?ちったぁ褒めてやれ」

 「す、すんませんッス」

 「そーゆーわけだから嬢ちゃん、まだまだ荒事にゃ慣れてないんだろ?周りのモノに気を配るのは、慣れてからでいいさ。今はモノがブッ壊れるのは気にすんな。モノは壊れても直せるが、人の命ってのは直したくとも直せねェ。降りかかる火の粉を払うことだけに集中しな」

 『は、はい……!』

 「ついでに言っとくが、嬢ちゃんも無理すんじゃねぇぞ。いくら連中とまともにやりあえるのが嬢ちゃんだけだからって、全部背負(しょ)わせるつもりは毛頭無ェ。……取り敢えず後ろは気にすんな。前だけ向いて、出てきた奴だけノシてやれ」

 『!……了解!』

 「フ……いい返事だ」

 

 このチームのリーダーの梅澤さんの取り成しもあって、僕はあっさりと彼ら―――――『内閣電脳調査室』の人達と、即席ながらも共闘することが出来た。

 それにしても、内閣か……やっぱりこの事件、僕や東堂さんが思っている以上に大事(おおごと)になっていってる気がする。

 しかも、Dr.Gのように、ジャークウェブではなく僕達プリキュアに狙いを絞っている人もいるみたいだ。

 ここにいる人たちは信用できると思う。でも、この人達の属する『組織』そのものが信用できるかと問われれば、そこには間違いなく疑問符が付く。

 全貌がまったく掴めず、信用するにも心底からは信用できない―――――『仮面ライダーカブト』の『ZECT』や、『仮面ライダー鎧武』の『ユグドラシル・コーポレーション』を思い出す。……結局ユグドラシルは『スマートブレイン』や『幻夢コーポレーション』みたいな『ブラック企業』だったけど。

 ともあれ、ジャークウェブの出現とそれにまつわる事件は、僕達の予期せぬ方向へと向かって行っているんじゃないか―――――

 

 「!こいつァ……!」

 

 梅澤さんの声で、僕は思案と足を止めた。

 ようやくたどり着いたのは、1階のエントランスロビー。向こう側に見えるあの自動ドアをくぐれば、外に出られる。

 でも、僕達の眼前には、フロアを埋め尽くさんばかりの"戦闘員"が蠢いていたのだった。

 

 「ハハッ……ある意味理想的な待ち伏せじゃねェか。こいつ等のリーダー殿はよく出来た戦略を練ると見えるぜ」

 「"AXV弾"、もう2発だけしかないッス……どーするんスか、コレ……!?」

 「どーするったって……なぁ?」

 「お……おぅ……」

 

 途端に弱気を見せる佐藤さんたちに、僕は発破をかける。

 

 『大丈夫ですよ!こういう時のためのぼ……ワタシたちプリキュアです!ヒーローは、こういう逆境でこそ燃えるんですから……!』

 

 その時、耳元からここにいない男の人の声が聞こえてきた。

 

 《―――――こちら長谷川。各位、この軍勢には高圧電流が有効と判明。スタンガン・およびテーザー銃を所持している班員は積極的に応戦してください》

 

 このくぐもった声の感じ……これって電話か、それとも通信?……通信機器を身に着けているわけでもないのに、どうして僕は―――――

 

 「お前等聞いたか?」

 「聞きましたけど……おれ達スタンガンなんざ持っちゃませんぜ?」

 「一撃必殺のスナイパーが、スタンガンなんざまどろっこしいモンをもってるわけねぇよなぁ」

 「……やれやれ」

 

 呆れた表情を浮かべる梅澤さんを見た時、僕の頭の中にふわりと考えが浮かんだ。

 

 『……高圧電流……ねぇ、データ……』

 《!……そうか、それならあんぜ!それも、ついさっき"取り返したて"、ホヤホヤが!》

 

 やっぱり、そうか。前回戦ったバグッチャーが得意としていた攻撃が電撃攻撃だったから、もしやと思ってデータに訊いて正解だった!

 それに、"電気"といえば、"あの仮面ライダー"の技も使える、きっと!

 

 『電気なら―――――できます!!』

 「へ……!?」

 

 呆気に取られるような顔の佐藤さんに笑顔で頷くと、僕は黄色で彩られたキュアチップを、ネットコミューンにセットした。

 

 『キュアチップ、『キュアピース』!!』

 《ピカピカぴかりん!じゃん、けん、ポン♪キュアピースっ♪!》

 

 同時に、僕の心の中のデータベース―――――『正義ノ系譜』を触発する。

 

   〈MASKED RIDER AMAZON〉

 ⇒ 〈MASKED RIDER STRONGER〉

   〈SKYRIDER〉

 

 《BEHOLD! CHARGE UP STRONGER!!》

 

 指先を揃え、斜めに据えて、力強く(さけ)びを上げた―――――

 

 

キュアっと、変ンンンン身ッ!ストロンガァァァァァァァァァッ!!!!!!

 

 《CURE-PEACE! INSTALL TO DATEAR!!》

 

 火花が弾け、稲妻が迸り、雷光が瞬く。僕の視界を細切れに切り裂きながら、僕の身体を雷のエネルギーが包み込む。

 そして僕は―――――暗雲を劈く黄金色の迅雷を身に纏った。

 

 《INSTALL COMPLETE!!》

 

 一歩、そして二歩歩くたび、歩いたそばから稲妻が迸る。身体の至る所から、スパークが奔る。

 たじろぐ"戦闘員"たちを真っ直ぐに見据えて、僕は高らかに言い放つ―――――

 

 

天が呼ぶ!       

 

 

       地が呼ぶ!!

 

 

人が呼ぶ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞けェッ、悪人共ッ!!

 

僕は正義の戦士!!

 

 

(フン)(ジン)(ライ)()

 

キュアデーティア!"ピーススタイル"ッ!!

 

 

 力強く天を指差し、僕は己の存在を示し、介した。

 

 「か、変わった……!」

 「マジで変身してんのかよ……!!」

 「ほぉ……俺がガキの頃に見てた『仮面ライダーストロンガー』の前口上じゃねェか。嬢ちゃん、なかなか通だねェ」

 「し、知ってるんスか梅澤主任!?」

 「ってか……『僕』って言わなかったか……?」

 

 梅澤さんを含めて、対応は様々だ。でも、明らかに戸惑っている人が多い。

 というか梅澤さん、ストロンガーをリアルタイムで見てたとは……機会があったら語り合いたいなぁ……できたら、変身前の姿で。

 

 《か……カッコいい……!!(☆ ☆)》

 《……アンタならそう言うと思ったぜ、ピース》

 

 心の中で苦笑いを浮かべるデータの隣に、黄金色に輝く『部屋』。

 昨日助け出した時と同じ、キュアピースの姿。

 ロビーの一角に、鏡のように反射する壁があって、僕自身の姿が映る。さながらバナナのような髪型、なんと表現していいのか……

 一瞬苦笑いしたけれど、今の状況を思い出すと同時に、写し見の中の『女の子(ぼく)』は凛々しく表情を変えた。

 

 『まずはコイツで―――――痺れろッ』

 

 僕は両腕を擦り合わせ、高圧電流を触発する。黄金色に輝き、弾ける稲妻をまとった右の拳を強く握り―――――

 

 

エレクトロファイヤァァァァァ!!!!!

 

 思い切り地面に叩きつけた。電流が火花を上げながら地面をまっすぐ迸り、"戦闘員"の集団に命中、途端にスパークして小規模な爆発を起こし、5~6体の"戦闘員"をまとめて吹っ飛ばした。

 

 『できた……!』

 

 この技は仮面ライダーストロンガーの代名詞と言ってもいい。映画の客演でもよく使っているから、まだストロンガーのDVDを見たことが無かった頃の僕でも、強く印象に残っていた。

 それだけに、この技を自分の手で再現し、目の前で電流がスパークした瞬間―――――

 

 僕の心は―――――歓喜に震えた。

 

 《感動は家に帰ってからにしな!》

 《ほくとくん、右、右~!!》

 

 今にも泣きだしそうなピースの必死の形相に、反射的に僕は右へと振り返りながら―――――

 

 

電パァァァンチッッ!!!

 

 ボディブローのように、電流を帯びた左拳を繰り出した。躍りかかってきていた"戦闘員"の鳩尾に吸い込まれるように捩り込まれた左拳から、黄金色の光を伴って強烈に放電し、瞬時に"戦闘員"を粉塵に帰した。

 入口からは、次々と"戦闘員"が押し寄せる。その中に銃らしき得物を両手で構えたヤツが数人雑じっているのを見て、ぞくりと背筋が冷えた。

 

 『!……子供番組に似つかわしくないね』

 《だったら"没収"だ……なぁ、ほくと!》

 《ぼっしゅー?》

 『そうか、アレなら!』

 

 僕は右腕に意識を集中させ、電気の流れを制御する―――――

 

 

電気マグネット!

 

 これは電流制御によって、自分自身を電磁石と化す技だ。銃や、それに使われる銃弾に金属が使われている以上、磁力から逃れることは絶対に不可能―――――!

 目論見通り、ヤツらの銃や警棒みたいな武器が、吸い込まれるように、高く掲げた僕の右腕へと張り付いてきた。だけでなく―――――

 

 「おい嬢ちゃん!?俺達の銃まで引き寄せてどーすんだ!?」

 「完全に丸腰ッスよ~!!」

 

 し、しまった……磁力を一定方向だけに及ぼすなんて不可能だから、当然磁力は全方位に及ぶ。電調の皆さんの銃まで、僕は『没収』してしまっていた……

 

 『ご、ごめんなさい!……ここは、僕が切り拓きますから!』

 

 目の前にはまだ、30人ほどの"戦闘員"が、こちらの機を窺うように、そして入り口を塞ぐように立ちはだかっている。

 こいつら全員を、一気に片付けられる技は―――――

 

 《ほくとくん、ピースサンダーを使って!》

 

 心の中のピースが、グッと拳を握ってこう言った。

 

 《キメてよ!"未来のヒーロー"、でしょ?》

 

 ヒーロー―――――そう言われると僕は―――――

 

 『OK!』

 

 ……割と弱い。

 ピースのアドバイスに頷いて、僕は右腕に張り付いた銃の数々を、電調の皆さんがいる方向に滑らせた。

 再度、右腕を天に掲げる。その名と同じピースサインを形作って、"悪人共"を見据えて呟く。

 

(ショウ) (ライ)

 

 瞬間、黄金色の雷光が天から降り注ぎ、僕の全身を激烈な衝撃と電流が駆け巡る。

 この感覚はさながら―――――『龍』だ。

 そして、左手もピースサインに変えると、指と指の間にスパークが走り、増幅して荒れ狂う。

 今、悪を貫き希望を照らす雷撃を、解き放つ―――――!!

 

(ライ) (メイ) (セン) (コウ)

 

"凱 龍 電 雷 巴(ピースサンダァァァァァ)"!!!!!!

 

 目の前にかざした2つのピースサインから、凄まじい雷撃が放たれ、並み居る"戦闘員"が瞬く間に消し飛ぶ。

 ……自分で使っておいてなんだけど、すごい威力だ……

 

 『バ、バグ……!!』

 

 残るは最後方にいた1体。しかし最後のひとりになろうとも、コイツは闘志を失っていないようで、技の後の隙をついたのか、一直線に突撃してくる。

 

 『まだ挑むか……ならば!』

 

 僕はその覚悟に―――――最強の技を以って応える!!

 

 『とぉッ!!』

 

 僕は前方に宙返りしながらジャンプし、エネルギーを右脚に集中した。雷の力がスパークし、右脚が黄金色の輝きを纏っていく。

 その勢いのままの、10万ワットの超高圧電流を帯びた、仮面ライダーストロンガーの切り札、その名は―――――!!

 

 

ストロンガァァァァ!電!!キィィィィックッッ!!!!

 

 触発され、空気中に放電された電流が、空間を眩い黄金色に染め上げる―――――

 "戦闘員"の真正面にキックがヒットし、戦闘員は仰け反り吹っ飛び、叩き込まれた高圧電流が全身から火花を上げて放電した刹那、炎を噴き上げ、大爆発した。

 同時に、乾いた音が響いて、天井や入口ドアのガラスが、一枚たりとも残すことなく粉砕されるのが見えた……。

 

 『《《……あ( ゚Д゚)( ゚Д゚)( ゚Д゚)》》』

 

 ……僕もデータもピースも、かなり昂ってしまっていた。

 冷静に考えてみれば、"戦闘員"ひとりに、全力の必殺技を叩き込むことも無かったろうに……

 

 「……若いねェ」

 

 梅澤さんが静かに笑みを浮かべるのが見えた。

 確かに僕は―――――まだまだ"未熟"なようだ。

 

 ……SAVE POINT




 キャラクター紹介

 梅澤 十三

 内閣電脳調査室実行部隊・梅澤班の主任調査員。54歳。
 オリンピックへの出場経験もある元射撃選手であり、その腕前から電調にスカウトされた。
 電調の中でもかなりの古株であり、上層部へも顔が利く。
 そのダンディな性格から班員たち全員に慕われており、班員以外にも彼を慕う者は多い。
 表向きでは射撃選手のコーチも行っていて、佐藤とは彼が高校時代にコーチをしていたころからの縁。そのため佐藤は別チームながら、彼の直弟子とも云える存在。
 ちなみに未婚。仕事上、女性に縁が無かったと彼は語るが……。

 ――――――――――

 いやぁ、ネタを詰め込んでいたら文字数が増えてしまって……(^^;)
 次回で第11話は完結となります!今年中に投稿出来たら……いいなぁ……

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