『跳び蹴り』にカテゴライズされる『貫槍術』のひとつで、空現流本来の技『甲技』。
大跳躍、もしくは相手よりも高所を取ったところから、一直線に飛び蹴りを放つ。
氣の流れを制御することで単純な跳び蹴りよりも破壊力を増しており、キュアデーティアは氣の流れの制御をイーネルギーの噴射で代用している。
元々は『徹甲』の名が示す通り、敵陣の強固な障壁や櫓といった耐久力の高い相手を想定して編み出されたとされる。
『手刀』にカテゴライズされる『閃剣術』のひとつで、空現流本来の技『甲技』。
神速の踏み込みから、相手の急所目掛けて居合のように手刀を一閃する。
この際、両足に氣を集中させることで一時的に瞬発力を高めている。この状態でさらに手の外側へと氣を集中させて手刀の威力を増すことになるのだが、既に両足に氣を集中させているため、手への氣の集中は最低限の箇所に留めることとなる。故に相手に命中させる部位が少しでもズレてしまうと本来の威力を発揮しない欠点がある。
常人はおろかプリキュアレベルの動体視力でも命中した瞬間を視認することは困難であり、命中してから数秒経過してようやく傷口が開くという超速の手刀である。
この技を編み出したのは、空現流を暗殺業に用いていたとされる、江戸時代の伝承者であるらしいが詳細は不明。
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11月中と申し上げましたが、かなり早く書けちゃいました!
……といっても、実は書いてるうちに今話がかなり文量が多くなっちゃいそうで……
とりあえず1万字ほど書いて区切りが良かったので、ここで投稿しちゃいます!
『増子班』以外の電調メンバーも登場し、物語を盛り上げます!
『電調VSジャークウェブ』、ついに開戦です……!!
2017.11.7 技名の一部を修正。ちょっとしたコトですが……
NOW LOADING……
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NPC MITSUAKI MASUKO
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その時―――――
俺は佐藤の仕事の様子を見た後、社食でうどんを啜っていたんだが―――――
―――――ドゴォォォォォォォォォォォン!!!
「ヴーーーーーーーッッッッ!!!!」
爆音に驚き、俺は思わずうどんを噴き出してしまった。
《本部エリアB-9ニ未識別動体感知。不法侵入者ノ可能性アリ。職員ハ慌テズニ、最寄リノ非常口カラ避難シテ下サイ。実行部隊ハ至急対応ヲ―――――》
自動放送を耳に入れた瞬間、俺は反射的にスマホを手に取っていた。
「佐藤ッ!井野ッ!!今どこだッ!?」
《自分は別棟ッス!合流できるかは微妙ッスけど……》
「無理に合流しなくていい……!近場の連中と連携しろ!井野!お前はオペレータールームに直行だ、いいな!?」
《え~!?今カシコ、ランチタイムで―――――》
「俺だってそうだったよ!!終わった後でいくらでも食えばいいだろーが!!緊張感持ちやがれッ!!」
―――――ったく、これだから実戦経験の少ない奴は……
この本部施設、こういう時のために、イヤホン型の双方向通信機と防弾チョッキが収納されている隠しボックスが至る所に備えられている。一々、自分の部署の部屋まで取りに行かなくてもいいわけだ。
銃は―――――ある。弾も満タンまで仕込んである。
防弾チョッキも身に着けた。見渡すと、他の班の連中も、通信機と防弾チョッキをきびきびと身に着けている。
まさか、訓練以外でこの光景を見る日が来ようとはな……―――――
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他の部署の連中と、俺は慎重にエリアB-9へと入った。
ちょうど本棟と別棟との間にあるエリア。この『電調本室』の裏口にあたる場所だが……
「!……止まれ」
何かの気配を感じて、俺は建物の隙間で仲間を止めた。
足音が―――――それも一人分じゃなく、複数―――――それもかなりの大人数だ。
一体どれだけの数が―――――そう思って慎重に様子を窺うと―――――
「ッ!?なんだ……あの"着ぐるみ軍団"は……!?」
ざっと8~90人……いや、それ以上の数、100人以上いるだろうか。頭に"XV"のような単眼を付けた人型―――――着ぐるみを着ているように見える集団。
体型は……痩せ型、中肉中背、肥満体型……様々だ。特撮ヒーロー番組に出てくるようなノリだ。
その集団が、ずらりと横一直線に並び立っている。
そして―――――その軍団に守られるように中心にいる、移動式ミサイル砲台に見えるのは―――――"XV"だろう。
見覚えのある単眼がへばりついていて、手足が生えている。そして、砲身には『P33』とナンバリングがされている。
ったく……あからさまに兵器感バリバリのヤツを持ち出してきやがって……ちったぁ国民感情にも配慮しろってんだ―――――
と、そう思ってからよくよく見ると、砲身になっているのはミサイルではなく―――――巨大な口紅だった。
……どんなデザインセンスしてやがる。
『この偉容ッ、この一糸乱れぬ行軍ッ!!遂に我が理想の軍隊が完成したッ!!"彼奴"への意趣返しとしては聊か豪華すぎるがなッ!!』
聞き覚えのある声だった。見やると、『巨大口紅砲台』の先端に、"昨日の実体化C-ORG"が、腕組みをして立っていた。
俺は無意識に舌を打っていた。
……そういう事か!なんてこった……
まさか"奴等"に、1日2日で俺達の本室の場所がバレるなんてな……
それにしても―――――
昨日のヤツとの交戦で、俺は確かにヤツの左肩を『
普通の人間なら悪くて入院、良くても戦闘行為なんざ出来ねぇ重傷……それでもこうして"出てくる"たぁ大した生命力じゃないか、"C-ORG"ってのはよ……!
よく見ると、左肩から先の腕は、金属めいた光沢を放っている。義手にでも換えたのか……?
やがて一団が行軍を止め、拡声機を持った"ヤツ"が声を張り上げた。
『小官はッ!!ジャークウェブ第壱大隊長・スパムソンッ!!この施設の指揮官に要求を告げるッ!!!』
周りの連中がその行動にザワつき始めたが、俺は落ち着くように無言で右手を振り上げた。"ヤツ"はなおも続ける。
『一つッ!この施設に
整然と並んだ人型が、警棒のような武器を一斉に構えた。
『この施設を全面的ッ、且つ徹底的に破壊し尽くしッ、残骸と累々たる屍の山から我が目的の
なるほどな―――――
テテが掻っ攫ったミュ、ミュア……??ともかく"アレ"は、奴等に逆探知されていたということか。そして、それを狙って奴らは現れた……。
そして、俺も一緒にいることも見越しての要求か。つーか、矢張り俺に目をつけてたか。…………名前、盛大に間違えてるがな。
奴等にとっては"AXV弾"もまた脅威らしい。もっとも、"ヤツ"の"演説"から察するに、俺を生かすつもりはこれっぽっちも無いらしいが。
《……内閣電脳調査室室長―――――青山雅明だ》
「……室長ッ!?」
館内放送の声に、思わず俺は天を仰いだ。あんな無茶苦茶な要求に、室長は何を答えるつもりだ!?
《スパムソンと言ったか。一つずつ答えよう―――――最初の要求に関してだが、貴官の言う"ミュアピック"なるモノは当施設には存在しない。そして二つ目の要求……"マスオ・ミクアキ"という職員にも、心当たりはない》
……まぁ、当たり前の"粛々とした"回答だ。こんなヤツらに真面目に答えることはない。
《こちらからも貴官に警告を行う。……貴官等は当施設に正当な理由なく武装火器を持ち込み、それらの武力を以って理不尽至極な要求を通そうとしている……これは我々内閣電脳調査室、ひいては日本国国家に対する恫喝・侵略行為と見做す―――――よって》
周囲の棟の屋上から、狙撃部隊が一斉に姿を現し、"敵集団"に向けて整然とその銃口を向けた。
《それ以上の侵攻を目論むのであれば―――――内閣電脳調査室215名の精鋭が、存分にその腕を揮うこととなる》
その言葉を合図に、俺もまた仲間達とともに表に出て、銃を構えた。俺とともに出てきたのは、夥しい数の『同僚』達。
……正直、俺は自分の班のメンバーや上司にあたる人間以外の『同僚』の顔と名前が殆ど一致しない。それほどまでに"電調"の構成人員は多く、それでいて"横"の繋がりが少ないのだ。
もっとも、今回のような事態のために図上演習や訓練は度々やっている。その過程で親しくなったヤツも何人かいるから、まったく連携が取れないわけではない。室長もそれを見越してか、職員同士のプライベートな接触には全く干渉しない姿勢を貫いている。そういった人間関係から生まれる信頼を仕事に活かすことを、室長は期待してるってことだ。
《……貴官みたく御託の通じん輩に、国民の血税から捻出した銃弾をわざわざ割きたくないのでね。互いの為にも撤退を勧告する》
流石は嘗て、『ソロブレイカー』と呼ばれて恐れられた男だ。言葉に全く迷いが無い。こう言えば相手はこう言う、という結果を見越しての言葉選びは決して素人には真似できん。
さぁ、どう出る?この威容に果たして立ち向かう勇敢さ……否、無謀さがコイツにあるのか。
『……フッ……クククククッ……!
なかなかに学のあるヤツだ。もっとも、室長の名前もまた間違えてるが。賢いのかバカか、どっちだコイツ?
『だがッ!!その返答が詭弁であることはッ、自明の理であるッ!小官にッ、そして我々には退けぬ理由があるのだッ!!』
同時に、得物を構えた奴等の『兵士』達が、ザッと前に出た。
《やはり相容れぬようだ―――――敵対の意志有りと見做す》
その一言を切っ掛けに、俺を含めた実行部隊のメンバーがずらりと躍り出た。
この光景―――――まるで戦国時代の合戦場だな……
300人を超える人数がいるにもかかわらず、その場が冷たい空気で張り詰め、しんと静まり返る―――――
瞬間―――――
見慣れた俺の職場は―――――
戦場と化した。
――――――――――
EX PLAYER CHANGE
CURE-MEMORIAL
⇒ CURE-DATEAR
??????
??????
――――――――――
―――――その時、物凄い騒声が僕の鼓膜を震わせた。
そう、ヒトの声。でも、ひとりやふたり、5人や10人の声じゃない。
もっと大人数だ。それほどのたくさんの人の声―――――
『メモリアル―――――!』
『うん……!』
すぐ近くにあった10階建てくらいの建物の屋上に着地して、屋上の隅まで行って"それ"を見た時―――――
僕は無意識のうちに口にしていた。
『…………"レジェンド大戦"………………』
似つかわしくないとはわかってる。でも、そうとしか形容できない状況が、僕達の眼下に広がっていた。
数えきれないほどのたくさんの黒服のヒトと、ショッカー戦闘員を思わせる着ぐるみ集団が、まさしく『合戦』を繰り広げていた……。
『これって……どういうこと……?』
《ジャークウェブの連中が来てることはわかってたけどよ……なんなんだあの数は……!今まで"小出し"だった連中がいきなり……!》
心の中でデータが表情を苦くする。
『でも、イーネルギーをぶつけないと、バグッチャーは倒せないわけだし……どうにかして―――――あ!』
『メモリアル!?』
メモリアルが何かに気付いて、屋上から飛び立った。僕もそれを追いかけようとしたその時、視界の隅に入ったのは―――――
『あれは……!?』
別の建物の屋上だった。5~6人の黒服のヒトたちが長銃身のライフルを構えて地面を狙っていたところに、"戦闘員"の集団が大挙して殺到するのが見えた。
黒服は何度も銃を撃ちかけるも、真ん中にいるヒトの銃以外、効いている様子がない。
僕は両脚に力を込め、高々と跳躍した。
『助けないと!』
《おいほくと!?りんくとメモリアどーするよ!?"ひとり"で突っ込んじまったぞ!?》
『定期的に連絡を取り合うから……!目に入った以上、放っとけない!』
今この状況、ジャークウェブの軍勢と戦う、ということだけでも危ない事だ。何しろ、対抗手段が限られているのだから。
昨日の戦いで、増子美津秋と名乗ったあの人の拳銃―――――あれが大量にあれば別、なんだろうけど―――――
そう簡単に、
――――――――――
NPC JIAI SATO
――――――――――
まさかこんなにも早く、
下の
着ぐるみ集団が屋上の扉を破って突入してきてから2~3分……自分も含めて10人いる狙撃メンバーでも、"AXV弾"を持ってるのは自分一人……
後のメンツは全員通常弾で、前情報通り効果が全くない。しかし衝撃は通じるのか、命中すると怯むようなリアクションを見せる。
そこで自分たちがとった作戦は―――――相手の足元目掛けて撃って転倒させ、そこへ自分が"AXV弾"を撃ち込んで撃破する―――――ひたすらその繰り返しだ。
でも、数が減るよりも奴等の進撃の方が圧倒的に早く、数も全く減らない―――――!"圧し潰される"のも時間の問題か……!?
「狙撃用の大口径だぞ!?ドタマブチ抜かれて死なねぇってバケモンかよ!!??」
「バイハザじゃねぇんだよ!!とっとと死んどけやオ゛ラァッッ!!」
「おい佐藤!その特殊弾、予備は無いのか!?ジリ貧もいいトコだぞ!?」
「昨日今日で量産できるシロモンじゃないッス!」
「無駄口叩くなッ!!佐藤、お前は俺達が転ばせたヤツをブチ抜くだけに専念しろ!!」
「ちッくしょォがァ!!コンピューターウィルスごときが人間様ナメんじゃねェェェェ!!!!」
「こんなんだったら……昼飯のカツカレー全部食っとくんだった……」
他のメンツも、精神的に参ってきている。無理もないよな……あんなバケモノ目の当たりにして、普通でいる方がどうかしている。
昨日の自分だって、
四方八方に電撃を放つ昨日の"あれ"は―――――まさしく、"テレビから出てきたプリキュアの怪物"だ。
娘と一緒に、テレビのプリキュアは見ているし、映画も何回か見た。その中では、怪物はいくらかコミカルに描かれているけど、実際に"そうしたモノ"と相対してみると、その恐ろしさが身に沁みて実感する。
やっぱり、アレはアニメの存在だからこそ可愛げがあったんだ。目の前に顕現した"それ"は―――――
通常弾では、たとえ頭部や心臓を撃ち抜いたとて平然と立ち上がってくる、"それ"は―――――
ゾンビ映画のゾンビよりも怖ろしい―――――
―――――主任……自分、ここまでみたいッス……
プリキュアの正体がわかるかもってハシャいでた自分が情けないッスよ……
―――――
尻に敷かれっぱなしの旦那で……情けないパパで、本当にごめん……
結局、家族の大黒柱っぽい事、満足にしてやれなかったなぁ……
今度の日曜、遊園地にプリキュアショー見に行く約束してたけど、守れそうにないな……
絶望感から、ふと空を見上げた。命の瀬戸際とは無縁に見える、雲一つない透き通った青空。
こんな晴天の下であの世逝きとは―――――勿体なくも感じるな―――――
ガラにもなく妙な思考に支配されていた自分の視界の中の青空に、その時、青白い光がきらりと輝くのが見えた。次いで、
精悍な女の子の声が、唐突にひびいた―――――
さっき見た蒼い閃光が、天から一直線に"それ"の大群の中心に突き刺さった、次の刹那―――――
黒々とした2~30の
大勢の人間が―――――いや、『人間のカタチをしたモノ』が、こんな風に
生じた爆風に、思わず自分は怯んだ。でも、目を逸らすことだけは絶対にしてはいけないと心で言い聞かせながら、自分はさっきの爆発の『爆心』を睨み返した。
「何……が……」
起こった?それに、さっきの女の子の声は―――――
《残り15!》
『それなら……!』
また、女の子の声が響く。土煙の間隙から僅かに見えたのは、水色の輝き―――――
あの子は……!
彼女は右脚をするりと弧を描くように後方へと流した。両脚のブーツの足首、そこにある銀色の部分が開き、水色の光り輝く粒子が解き放たれるのが見えた。
あれは、一体―――――……?
先ほどの爆発で舞い上がり、今落下してきた無数の瓦礫。それを―――――
『だだだだだだだだだだだだだだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!』
―――――上空に舞った"奴等"目掛けて、女の子は飛び道具代わりに立て続けに蹴り放ったのだ。蹴り飛ばされたコンクリート片が、水色の光を纏い、さながらレーザーのように飛び、受け身の取れない"奴等"に突き刺さり、貫通し、粉塵に帰していく。
《ラスト1匹!!》
『これで―――――
最後の1体が落ちてきた。女の子は両の手を強く握り、目を閉じ、仁王立つ。
そう呟くと同時に、全身から水色の粒子が沸き立ち、それが瞬時に右の拳に集約される様を見た。
"奴等"最後の1体―――――それが女の子の真上に落ちてくる、その瞬間―――――
カッと目を見開き、歯を食い縛り、落下してきた"ヤツ"の土手ッ腹に、渾身の直上正拳突きを見舞った。
打ち込まれたその瞬間、衝撃波が"ヤツ"を貫通する―――――その様がハッキリと見て取れた。
拳の先で、"ヤツ"は光の粒子になって分解消滅する。それを見て取ったかのように、女の子の両手両足、腰の左右から真っ白な蒸気が噴き出した。
「……おれ達があれだけ苦戦した"あの連中"を、一瞬で……!」
「ネットで見たことがある……!あれは、まさか……!」
瞠目し、驚愕する仲間たちの中で自分は立ち上がり、おもむろに訊ねた。
「……君は……」
蒸気が放散する中、水色の女の子はゆっくりとこちらに振り向いて、これでもかというくらいの眩しい笑顔でこう言った。
『通りすがりの、プリキュアです!』
そう都合良くプリキュアが通りすがってたまるかとツッコむべきかと一瞬頭をよぎったものの、結果的に自分たちは助かった。
結果が良ければOK!ということにしよう。ここは素直に喜ぶべきだ……
「た、助かったッス……」
……というわけで、どっと力が抜けた。
さっき、走馬燈さえ見てしまうほどに切迫していた自分の脳ミソが解放されたのか、ヤケに清々しい気分で青空を見上げることが出来た。
『大丈夫ですか?お怪我は無いですか?』
「え、ええ、うん、まぁ……」
「す、スゲェ……銃が効かないヤツらを
「ッてか最初……空から降ってきたよな……?」
「ドラゴンボールの
やっぱり、初見のインパクトは抜群だ。自分も昨日見た時は、思わず頬を抓っていた。案の定、痛かった。今一度、この場で抓ってみる。言わずもがなだが、痛かった。
「ホント、面目ないッスね……自力で何とかしようとして、結局助けられちゃうンスから……現実、気張ってみても、カッコよくはキマらないもんスねぇ……」
家でも仕事でも、カッコいい存在でいようとしても、空回ってばかりの自分。主任にも言われたけど、妻と娘がいるとは到底見えないらしい。まぁ、まだ26の若輩者ッスから……
『そんなコト、ないです!』
水色のプリキュアが、真剣に自分を見つめてこう言った。
「え……?」
『今皆さんが戦っているのは、皆さんが"戦える"から、ですよね?この敷地の中には、戦えない人たちもたくさんいて、その人たちを守るために戦ってる……そうじゃないですか?』
「ま、まぁ……そりゃそうッスけど……」
『ぼ……わたし、それだけでもカッコいいって思います!"出来るコト"を、"躊躇わずに"、見て見ぬふりをせずに、やってるんですから!』
「それが……仕事ッスから。君みたいなコの方が、よっぽどカッコいいっすよ?」
『!カッコいい……そう言ってもらえると、嬉しいです♪』
この子、女の子なのに『カッコいい』って言ってもらえることが嬉しいみたいだ。女の子なら『カワイイ』の方がウケがいいんじゃ―――――
『"変身"できることだけが、カッコいいヒーローの条件じゃないんです。"変身"出来なくてもカッコいい人、わたし、たくさん知ってますから』
そう言って、水色のプリキュアは屋上の出入り口を見据えた。さっきの"ヤツら"が、大挙して押し寄せる。その数、ざっと30―――――
『それとも―――――"変身"出来なきゃ、ヒーローじゃない……カッコよくないとでも?』
まるで、自分たちにハッパを掛けるようにこう言葉をつづる"プリキュア"。
"変身"出来なくても、カッコいい人になれる、か……変身ヒロインに言われても、ちょっとピンと来ないンスけどね……
でも、自分たちには自分たちの意地ってモンがある。そうだ、ここで絶望して諦めて死んでしまったら、この先―――――
家族に、カッコいいところを見せるチャンスも、無くなっちゃうじゃないか―――――
「……言ってくれるじゃないッスか―――――」
不思議と、彼女の言葉に闘志が湧いてきた。さっきまでは絶望の使者に見えた"ヤツら"が、まったくもって雑兵に見える。
「これでも自分、所帯持ちなんスよ。娘にカッコいいトコ見せてやりたいって、欲はあるんスから」
愛用のライフルを抱えて、自分はもう一度―――――奮い立つ。
「ヘッ、佐藤よォ、イイ感じにハイになってんじゃねーか」
「まったくだ。
「先輩方……」
「"変身"出来なくてもカッコいい、か……女子中学生にそう言ってもらっちゃ、オジサン達ガンバっちゃうぜェ……?」
「へぇ、梅澤主任がヤル気出すなんて何年ぶりですかねぇ」
「うっせぇ」
自分以外の各班の『狙撃担当』メンバーも、強気な
中でも、自分の狙撃の『師匠』ともいえる、梅澤十三主任が言う。
「嬢ちゃん……男って生きモンはよォ……ロマンやメンツ、外ッ面ってのに、女以上に入れ込んじまう生きモンでな……しかもこうして
梅澤主任が、先陣を切ってくる"ヤツら"の一人、その膝元に銃撃を加え、転ばせた。
「"カッコいい大人"の仕事場―――――たっぷり見学していきな」
―――――ホント……どうしてこんなにダンディなのに、このヒト未だに独身なんスか?
そんな彼の言葉に、プリキュアは何故か目を輝かせながら聞き入っていた。そして―――――
『…………カッコいい…………』
そんな言葉が彼女の口から洩れるのも聞き逃さなかった。なんかこの子、女の子なのにヤケに感性がボーイッシュな気がする……
しかしプリキュアはごほんと咳払いをすると、
『……見学だけじゃ物足りませんから、"体験学習"させてもらう、というのは?』
不敵にも聞こえる言葉を口走り、"ヤツら"を見据えて、身構える。
「……フッ……上等だ」
自分たちは、確かに"変身"なんて出来やしない。
この子みたいに、人間を超えた力なんて無い。
それでも―――――
―――――"意地"ってモンがある。
「嬢ちゃんは好きに暴れな。―――――背中は俺達に任せろ」
「プリキュアの背中を守れるなんて、光栄ッス!」
『……はい!』
ここからは―――――自分達も"ヒーロー"だ。
再始動の銃声が、天高く響いた―――――
……SAVE POINT
用語解説
電調梅澤班
佐藤が『師匠』と仰ぐ電調のトップスナイパー・
狙撃担当が梅澤を含めて3人おり、主に要人警護や長距離狙撃を任務とする。
班員は荒っぽい性格の者が多いが、梅澤の"侠気"に惹かれて集っており、抜群の団結力とチームワークを誇る。
――――――――――
文量が多くなりそうな理由、それは―――――
『個性豊か電調メンバーがキョーレツな自己主張を始めちゃった』からなんです!!
特に今回の梅澤主任、昨日まで稚拙の脳内に存在しなかったヒトなんですよ!?
次回以降も電調各班の個性豊かなメンバーが、メモリアルとデーティアの前に姿を現します!
……それと、縦文字読みづらかったらゴメンナサイ。