インストール@プリキュア!   作:稚拙

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 前回投稿からまたしても1ヶ月経過……
 お待たせしました!

 いやぁ、特撮どころか近年のサブカル界隈でも見かけない『ビルド』の『世界観』が凄まじい……
 しかしながら稚拙的には敵幹部のナイトローグやブラッドスタークのデザインのダークヒーロー的なカッコ良さにシビれております!アレですな、魔進チェイサーを初めて見た時の衝撃を思い出させます……
 年齢を経てから改めて、『敵役のカッコよさ』に気付くことが出来ました……

 さて今回のインプリは、りんくとほくとのキュアネットへの初ダイブ、そしてその後の戦闘―――――
 ……まで書こうと思ったのですが、キリが良く、かつ少しでも早く読者の皆様に続きをお届けしたいと思い、予定の半分くらいで一旦区切りをつけました。

 3次元の存在である現実世界の人間が2次元世界に入ったらどーなるの?……その答えを送信!


キュアネットダイバー

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 ――――――――――

 

 NPC TIMOTHY FRANCIS

 

 ――――――――――

 

 《ん゛~~~~~!?!?!!?!!?!?!?!!?》

 

 何やこのタコ焼き、タコ小さッ!邪道や邪道!!

 せっかく500円はたいてこんなんって詐欺やないかい!!

 

 《こ……これわ……ッ!!!!!!》

 

 しゃーないなぁ……ココのキッチン借りて、今夜はみっつーとサトー君とカシコちゃん誘って『タコパー』でもしよか。

 Gやんの代わりに昨日のお詫びも兼ねて、パーッと……

 あ、しもたなぁ……青ノリとマヨネーズ切らしとるんやった……タコもついでに帰りに近所のスーパーで……

 

 《いったい何が起きているんですかッ!?》

 「あ゛~もぉ、さっきからうっさいなぁ!?何やねん!?」

 

 ヒトがせっかくオヤツ食うとるのに茶々入れんなや、と思ってイラッとしてパソコンに向き直ると―――――

 画面が真っ青になってた。

 

 「……何やコレ」

 

 って、言うまでもないやん。ブルスクや、ブルスク!!ブルースクリーン!!!

 まさかこのパソコン、逝ってもーたん!?

 う、ウチやない!ウチやないで!?……そらまぁ、2滴くらいキーボードにタコ焼きのソース垂らしてもーたけど……

 そ、そんなんでパソコンってイカレてまうもんなん!?何で精密機械すぐ死んでしまうん!?

 

 「じ、Gやん!!これはそのッ、あの……」

 《ご安心を……そちらのパソコンには異常はないようです。リモートでチェックしておりますので》

 「そ、そか……そらよかった……」

 《そちらと同じく、ワタシの方のディスプレイもイカれてしまってますから。ディスプレイと本体の接続が、何らかの原因で一時的に寸断されているのでしょう。通常のブルースクリーンと違って、文字すら表示されていませんからね》

 

 心臓止まる思ったやんか……一応このパソコンかて政府(おえらがた)備品(モン)やから、壊したらしこたま修理費取られるんやないかと……

 

 《……って、そうなんですよ!!ディスプレイが突然異常を……!これではサーバー内で何が起きているのかわかりません……!早急に復旧を―――――》

 

 そん時、サイレンか警告音にも聞こえるヤな感じの音が、部屋ン中のスピーカーから響き渡った。

 次いで、女のヒトの合成音声があくまでも淡々と語り掛ける。

 

 《本部エリアB-9ニ未識別動体感知。不法侵入者ノ可能性アリ。職員ハ慌テズニ、最寄リノ非常口カラ避難シテ下サイ。実行部隊ハ至急対応ヲ―――――》

 

 なんか、モノモノしいフンイキになってきた……そう思った次の瞬間、重々しい振動が腹の底に伝わってきた。

 こん感じ―――――外国の紛争地帯で『感じ慣れた』、この振動は―――――

 ウチは反射的に窓を開けてた。

 少し遠くの方、『この施設』の敷地内から、炎と煙が上がるのが見えた。

 

 「現実とネットで……一体何が起きてるんや……!?」

 

 ――――――――――

 

    PLAYER CHANGE

 

 ⇒  LINK TOUDOH

    CURE-MEMORIA

    HOKUTO HATTE

    CURE-DATA

 

 ――――――――――

 

 ……私……どーなったの……?

 たしか、『キュアネットに入る』って、ジョーシキじゃありえないコトにチャレンジしようとして……

 や、やっぱりマズかったのかなぁ……いくらプリキュアだからって、人間がキュアネットの中に入っちゃうなんてムボーにも程があったよね……

 巻き込んじゃったほくとくんにも悪いコトしたなぁ……

 

 『りんく!りんく!』

 

 メモリアの声が聞こえる……ごめん、メモリア……私、たぶんもう―――――

 

 『またうわごと言ってる~……しっかりしてよぉ』

 『なんだったら、アタシが一発闘魂注入してやろーか?』

 

 うぇ!?ビンタはご勘弁っ!データはじょーだんキツいんだから―――――

 ……って、あれ?

 

 「……………………あ」

 

 ようやく正気に戻ってこれた。ここって、いつも変身する時の、"光のタマゴ"の中だ。

 つまり―――――

 

 「うまく……いったの!?」

 『うん!ここ、りんく達がいた公園じゃないよ!キュアネットの中!』

 

 "光のタマゴ"の中からは外は見えないけど、なんとなく"いつもと違う"ことはわかる。

 なんていうか……私の手が、"現実感が無い"見た目になってるから。

 まるで、3Dアニメのような質感……これって……?

 

 『行くよ、りんく!』

 「う、うん!」

 

 言われるままに、私は差し出されたメモリアの手のひらにタッチした。目の前の光景が、ピンク色の光に被われて、メモリアが私の中に入ってくる、いつもの感覚―――――

 

 《CURE-MEMORIAL! INSTALL COMPLETE!!!》

 

 "光のタマゴ"が砕けて、私の視界が開けた。

 

 『ここが…………キュアネットの中……』

 

 こうして実際に見て、感じて、音で聞いて―――――

 ようやく、実感できた。

 まるで流れ星のように空を流れていくのは、回線の中でやり取りされる『情報』や『プログラム』。

 きりきり、かりかり、ぴぴぴぴ…………小さく細やかな、機械の稼働音。

 とても清潔な―――――"自然"をほとんど感じない、『なにもない』匂い―――――

 

 静かで、綺麗で、冷たいけれど、確かに『ヒトの意志』を感じる世界―――――

 

 『まるでグリッドマンみたいだ……!』

 

 この声、デーティア!

 よかったぁ……ほくとくんもこっちの世界に―――――

 

 『え…………えええ~~~~!?!!?!?』

 

 デーティアの姿を見て、私は思わず叫んでしまっていた。

 

 『メモリアル……!?だよね……!?』

 

 反対にデーティアも、私を見て驚いていた。 

 なぜなら―――――

 

 『デーティア……アニメみたいになってる……』

 『メモリアルも……』

 

 言われて初めて、私は自分の姿を確認してみた。

 ……す……すっごーい!!まるでアニメのプリキュアのエンディングみたいな、CGアニメそのものの姿になってる!!

 普段はコスプレって言われても仕方ない感じだけど、今はアニメーターさんが描いたような『それっぽい』感じ!

 ネットコミューンもデザインは変わらないけど、アニメっぽい質感になってるし……まるでVRかそれ以上!

 動画で自撮りをしてみた。最初に変身した時もやったっけ……

 

 をををををを~~~~!?なにこれなにこれ~~!?!?

 最初に自撮りした時以上に、もはや『私じゃなかった』!!

 完全にアニメじゃん、私!!

 足(ほっそ)!!腕も細っっ!!!顔のパーツは小顔で小鼻、ちょっと目が大きめな感じで、『ハピプリ』か『プリアラ』のデザインに近い、そんな感じ。

 ためしに変顔を……、おぉぉ……す、スゴすぎる…………顔の輪郭やら目元やら、アニメっぽく変わっちゃう……!!

 

 変なこと言うけれど、あえて言わせてください!

 

 ―――――私ことキュアメモリアル、"アニメ化"しちゃいました!!

 

 『これってもしかして……キュアネットの中だから……かな?』

 

 首をかしげて、デーティアは私と同じように自分の体をまじまじと見て、自撮りを始めて、そして―――――N〇Kのどー〇くんみたいな顔になって……真っ白になって、がくりと首を垂れた。

 

 『……デーティア?』

 『…………いや、ちょっと……(|||_ _)しばらくは自撮りを控えよーかなー……って……』

 

 たぶんほくとくん、アニメ顔になった自分にショックを受けてるんじゃないかなぁ……ほくとくんが好きなの、特撮モノだし……

 

 《感動してるヒマも落ち込んでるヒマもねぇみたいだぜ、おふたりさん……!》

 《なんか、様子がヘンだよ!》

 

 データとメモリアの声に、私は耳を澄ませた。小さく、何かが震えるような音が、空間に響いている。

 

 《本部エリアB-9ニ未識別動体感知。不法侵入者ノ可能性アリ。職員ハ慌テズニ、最寄リノ非常口カラ避難シテ下サイ。実行部隊ハ至急対応ヲ―――――》

 

 いきなり、女のヒトの合成音声が流れてきた。不法侵入?まさか、今更ながらに私達を捕まえようっていうんじゃ……

 

 《なんかコレ、マズくない……?》

 《だな。キナ臭くなってきやがった。早々にずらかった方がいいぜ》

 『それなら、まずは―――――』

 

 私はすぐ目の前に浮かんでいる、虹色に輝くボール状の物体に手をかざした。

 

 『ピースを助け出してから、だよ』

 

 ――――――――――

 

 NPC TIMOTHY FRANCIS

 

 ――――――――――

 

 「ど、どないしよ……!?言われた通りに避難した方がええんか……!?」

 

 何が起きとんのか、まったくわからん……

 外国の紛争やったら安全確保して逃げるんが定石なんやけど……メインサーバーの中のメモリーカード、放っといてトンズラこくわけにもいかんし……

 ここのパソコン自体がブッ壊れてもーたら、中の"プリキュア"たちがどーなるかもわからへんし……

 あ~~……もぉ……Gやんもさっきからダンマリやし、どないしたら……

 

 ―――――ピピッ、カチャッ

 

 「―――――……!?」

 

 そん時、部屋の奥のサーバールームのドアから音がした。普段は赤いランプが、緑に変わっとった。

 つまり、ロックが解除された―――――っちゅーことは……!?

 ウチは思わずパソコンの画面に向き直った―――――

 そん時―――――ウチは思わず凍りついとった。

 

 パソコン画面から―――――『顔』がぬぅっと飛び出してきとった。

 

 こ……これって、アレ!?リングやら貞子やら、『きっと来る』アレなん!?ウチ、呪われて死んでまうん!?

 せ、せや!このビデオ?を他のヒトに見せれば大丈夫って聞いたことがあるよーなないよーな―――――

 …………でもこの顔……この女の子の顔、どっかで見たことあるよーな……

 

 「おぉぉうわぁぁぁぁ~~~!?!?!?!?(|||▽ □ ▽)」

 『ヴェエエアアアアアアアアアーーーーッッッッ!!!??(`0言0́ )』

 

 ウチと女の子はほぼ同時に絶叫した。って、いやいやいや、この場合叫ぶんはウチだけちゃう!?怖がらす方が絶叫するんってそれって―――――

 

 『どーしてテテさんがいるの!?』

 「そりゃ……って、なしてウチの名前知っとんの!?アンタどっかで会ったことあるん!?」

 『……!( ゚Д゚)……ふふふ、プリキュアにわからないコトはないのです……よっと!』

 

 そう言って、ピンクの髪のコはパソコンの画面から"すぽっ!"と飛び出してきよった。ウチの言葉に答えるとき、ちょっと『間』があったのは気のせいやろーか。

 

 『をを!出られた~!ってか、出られちゃったぁ!』

 《大丈夫?メモリアル?》

 『大丈夫大丈夫!デーティアも出てきなって!』

 

 パソコン画面から今度は別の女の子の声がして、パソコン画面の『枠』に、がし!!と、画面の『中側』から手が掛けられた。こらまたホラーな絵面やなぁ……

 ……と、そこから誰かが出てくると思ったんやけど……

 

 《…………ご、ごめんメモリアル……悪いけど、手を引っ張って……》

 『??どしたの?』

 《……そ、その……………………む、ムネがつっかえた……///》

 『ええ~~!?!?もぉ、しょーがないなぁ~……』

 

 最初に出てきたピンクのコが、パソコン画面の枠の手を両手で掴んで、『ほっ!』と引っ張り出すと、水色のサイドテールの、別の女の子が『うわぁっ!?』と声を上げながら飛び出してきた。

 

 『いたた……"入る"だけじゃなくて"出る"こともできるのか……こうなるとグリッドマンっていうより、『仮面ライダー龍騎』のミラーライダーみたいだ……』

 

 水色の子が、今しがた出てきたパソコン画面をまじまじと見ながら言った。

 それにしても、仮面ライダー引き合いに出すやなんて、なんっちゅーか、プリキュア『らしく』ない感じするなぁ。でもこーゆーのが好きなら、カシコちゃんと話が合うかも……

 

 『テテさん!サーバールームの入口ってどこ!?』

 「そ、そんならすぐソコや……キュアピースがラベルに描いてあったカードもそこに……」

 『わかった!デーティアはそこでテテさん見張ってて!すぐ戻るから!』

 

 ピンクのコはウチが指差した先、サーバールームにすぐさま入っていって、部屋にはウチと水色の子だけが残された。

 ……ウチもやっぱ、『一味』認定されとるんか……見張りにこの子残していくくらいやし、何やするんかと思われとるなぁ……

 と、水色のコがじろりとウチを見てきた。

 

 「あ……いやぁ……ははは、降参や、降参。もう何かしらせぇへんからぁ」

 『それなら、いいんですけど……』

 

 き、気マズい……ウチ、めっちゃ危険人物(アブないヒト)扱いされとるなぁ……

 ピンクのコ、持ってくモン持って、早よ戻ってきてくれへんかなぁ……

 

 『……どうして、キュアチップを横取りしたんです……?』

 

 二人きりの部屋、ふと水色のコが訊ねてきた。

 アレ、キュアチップいうんか。プリキュアが描いてあるチップ、せやから『キュアチップ』。まんまやなぁ。

 

 「まぁ……その、やな……ウチらにとって、キミらのこと、知らんことだらけなんや……Gやんの場合、前々からキミらに目ェ付けてたようやし……せやから、少しでも知りとぅなって、Gやんの口車に乗ってもうた……。金輪際、もうあんなコトはせぇへんし、させへんようにするから……」

 『……それなら、いいんですけど』

 「ウチからも……ひとつ訊いてええ?」

 『何です?』

 「…………怖ないん?」

 

 外国の紛争地帯―――――戦場で戦っとった少年兵に、ウチはこうした質問を何度も投げかけた。

 そして―――――決まってこう返す―――――『怖くない』……と。

 『誰かが死ぬこと』が日常になってもうた世界っちゅうんは、『ヒト』から『ヒト』を奪っていく。それがたとえ、どんなに小さな命だろうと。無思慮に、無遠慮に、分け隔てなく。

 そうして『ヒト』を奪われた末に残るんは、死ぬことを恐れない、死んだところで誰にも悲しまれない、ココロを殺された『ヒトのカタチをしたナニカ』。

 ……もし、このコらもそうなら、みっつーが血眼になって止めようっちゅうんもわかる気がする―――――

 でも―――――この水色のコは、今まで聞いたことのない、そして、ある意味『当然』とも云える答えを返してきた―――――

 

 『……怖いですよ』

 

 ふっと、力の抜けた笑顔を、そのコは浮かべた。

 

 『戦う中で、怖くないなんて思ったことはありません……でも、怖いからって逃げてしまったら、大勢の人が、今……、わたしたちが感じる以上の怖い思いを……悲しい思いをすることになります……だから―――――みんなを……世界を守るために……戦うんです。そして、わたしたちが戦う姿を見てもらうことで、みんなが、心に希望を持ってくれるなら―――――』

 

 このコの瞳は、輝いてた。

 戦場で見慣れた、『生気を失った目』とは違う、『確たる意志』を感じる、輝く瞳―――――

 ……あれ?なんやろ……この生き生きとした目……アレや。

 『好きなモノ』や『好きなコト』―――――所謂『ロマン』を嬉々として語る―――――

 

 

 『男のコ』の目―――――

 

 

 …………いやいやいやいや、ないないないない。

 そんなワケあるかいな……!?このコ、どっからどー見ても女の子やん!?お世辞抜きに美少女やし……おっぱい割とおっきいし……

 ま、まぁ、ボーイッシュなコなんやろ、このコは。キャピキャピしとっていかにもプリキュア!って感じのピンクのコとは好対照っちゅうか……

 

 『でも、まだ"プリキュア見習い"、なんですけどね♪いつかは……みんなにとっての、ホンモノの希望(ヒーロー)になりたくて……』

 「ヒーローかぁ……漠然とし過ぎちゃう?」

 『そうかもしれませんけど……この世界には、ホンモノのヒーローはいませんから……だから、わたしたちがならなきゃ、って思いもあります』

 

 そん時、ピンクのコが奥の部屋から戻ってくるのが見えた。

 

 『……ほとんど彼女の受け売りなんですけどね……でも、今は同じ思いで戦ってます』

 

 そう言うと、水色のコはピンクのコに駆け寄った。

 

 『あったよ!ピースのチップ!ようやくレスキューだよ~!』

 『よかった……これで任務完了だね』

 

 笑いあう二人の女の子。アニメん中から飛び出して、現実の世界に出てきた『プリキュア』―――――

 こんなコたちには、なるべく『大人の世界』っちゅうモンは見せとぉないなぁって、今のウチは率直に思えてた。

 出来るコト、やるべきコトをはっきりと自覚して、自分のため以上に、地球のため、みんなのためにがんばろうとしてるんやなぁ……

 思わずウチは、自然とカメラを構えて、シャッターを切っとった。

 

 『あ!テテさん、撮影と取材はNGですよっ!』

 「あぁ、いやいや(ちゃ)うって、これはあくまでプライベート用や。どっかに売りつけるとかそんな気はあらへんから―――――」

 《ようやくモニターが復旧しました……!?って、"P1"と"P2"!?どうやってサーバールームに?!ネットの中には……いない!?》

 

 ウチのスマホからGやんの声が出てきた。今までダンマリだったのはカメラいじっとったからか。

 

 「おぉGやん、ウチらの負けや。このコら、パソコンの中から出てきてぇなぁ。どんなリクツかは知らんけど」

 《なんと……!キュアネットに生身で出入り可能とは!!ますますもって興味が湧きましたよ……!》

 

 アカン、この子全然懲りてへんわ。

 このまんまやと、またプリキュアのコたちにちょっかい掛けるかもなぁ―――――

 

 『ねぇ、ドクターさん……プリキュアのこと、もっと知りたい?』

 

 出し抜けに、ピンクのコがウチのスマホのカメラをのぞき込みながら言った。

 

 《!……それはもう!!》

 『それなら―――――直接、会いに来てよ!』

 

 な……!?

 このコ、いきなり何言いだすんッ!?

 

 『な~んとなくなんだけど、イメージできるんだよね。クラ~い部屋の中で、6つくらいディスプレイが並んでるパソコンの前で、スナックぼりぼり食べながらマウスカチカチやってるのが』

 《……………………スナックは食べてません……。ベタついた指でマウスやキーボードを触れませんから…………》

 

 Gやんは少し沈黙してから、それだけ反論した。

 さっきの"間"―――――これは……"相当"やな……。

 

 『実を言うと、私もオタクなの。だから、ひとつのコトが好きで、まわりのモノが見えなくなっちゃうその気持ち、よくわかるよ。でも、『それだけ』見てたら、逆に世界が『狭く』なっちゃうんじゃないかな……『画面越し』に世界を見ても、やっぱり知りたい事って、『ホンモノ』を見て聞いて、確かめなきゃ、『ホントに知った』ことにはならないんじゃないかなって……そう思うの。『それ』だけじゃなくって、『それ』を取り巻くいろんなモノゴト……それもいっしょに見なきゃ、100%『わかった』ことにはならないよ?』

 

 確かに、このコの言う通りや。

 ウチかて、『その場所』で起きてる『本当のコト』を、この目で見て、耳で聞いて、体全体で感じて、その感動と衝撃を出来るだけぎょうさんの人に伝えたい思ったから、ジャーナリストになったんや。

 『百聞は一見に如かず』―――――まったくもって、真理やな。

 

 『流石にホントの名前や住所とかは教えられないけど……私、キュアメモリアル!で、この子はキュアデーティア!』

 『わ!////』

 

 おわ、両手で"恋人つなぎ"やないか……❤……ま、まさかこのふたり、女のコ同士でそんなカンケイなん!?

 いや、まさかなァ……でも水色のコ……キュアデーティアちゃん、なんや顔赤くしとぉし、まんざらじゃなさげやし……

 

 『ふたりあわせて『インストール@プリキュア』だよ!ドクターさん、会えるのを楽しみにしてるね!』

 『よ、よろしく…………///』

 《…………………………………………》

 

 なんや……さっきからGやん、ダンマリやないか。

 感動のあまり言葉も出ん、ってゆーのかいな?それとも―――――

 

 ―――――ドォォォォォ……ン……!!

 

 そん時、鳴り止んでいた地響きがぶり返してきたみたいに再開した。

 

 『なに……!?』

 「それがさっきからなんや……避難せぇって放送もあったし、タダ事やあらへん……!」

 『…………この感じ……』

 

 ピンクのコ―――――キュアメモリアルちゃんが、小さく呟いた。見ると、胸元のハート型ブローチが、赤く光っていた。

 

 『行こう、デーティア!ジャークウェブがこの場所を見つけたみたい……!』

 『考えることは向こうも同じ……ってことか……』

 

 まさかこのコたち、"XV"を探知もできるん……!?ますますもって人間離れしとるな……

 それに『ジャークウェブ』って……!?

 そうこう考えてる内に、メモリアルちゃんは部屋の窓をガラッと開けた。

 

 『ごめんなさいテテさん!私達、行きます!窓からだけど失礼します!』

 「え!?ちょ、ここ10階―――――」

 

 止める間もあらへんかった。窓のへりから、メモリアルちゃんはピンク色の軌跡を残しながら『飛び立った』。

 

 『それじゃ……どこかで会うことがあったら』

 

 デーティアちゃんも軽く会釈をすると、メモリアルちゃんを追ってジャンプしていってもうた……

 アカン、見るのは2度目なんやけど、今まで見てきたどんな絵面も霞んでまうわ……アニメやマンガでやるようなことを平然とやるんやから、このコらは…… 

 

 「……って、ポカンとしとる間はないわ……ウチもそろそろ……!」

 

 『避難せい』って放送で言うとるけど、ウチの本業はジャーナリスト。ありのままの場面を撮影(きりと)って、記事にすんのがお仕事や。

 ちょっと体張らせてもらおうやないか―――――

 

 《ふ、ふふふ……ふふふふふふ…………………………》

 

 サーバールームから出よ思ったそん時、スマホからブキミな笑い声が洩れてきよった……。

 

 《ふ、ふはは……ッふふぃひひ……ウェヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!!》

 「!?」

 

 な、何や……??こんなイカレた笑い声を出すキャラやったっけ、Gやんって……!?

 

 《そうです!!その通りです!!実に!実に実にその通りですよ!!いやぁ、忘れかけていたことを思い出させてくださった『彼女』には感謝しなければなりませんねぇ……!》

 「な、何なん……?急にヘンな笑い声出しおってからに……」

 《実際にこの目で見て!この耳で聞いて!!この手で触って確かめる!!!研究者としての基本中の基本…………フィールドワークというコトがなってなかったというワケですか!!いやぁ、実に実に!じ・つ・に手厳しいぃ!!…………テテ!!》

 「な……何や……?」

 《決めました!!ちょうど"メンテナンス"の時期も近い事ですし、近日中にワタシも()()()に行くことにします……!電調の皆さんに、顔見せもしたいですから……!何より―――――この目で『彼女達』を見てみたくなりましたしねぇ……!》

 

 なんと……こんな展開になるやなんて……

 どうやらメモリアルちゃんの言葉が、『強いきっかけ』になったみたいやな。

 せやけど―――――

 

 《旅支度です!!パスポートの準備……あぁ、それから就労ビザも申請しなきゃ!日本の親類にも連絡を……ウェヒヒ、ウェヒヒヒヒッ、これから実に忙しくなりますよぉ……!!》

 

 ちょ~っとキョーレツやったなぁ、メモリアルちゃん……

 こらアカン……ヘンな方向にスイッチ入ってもーたかも知れへんなぁ……。

 

 ……SAVE POINT




 ……Dr.Gの脳内再生ボイスがバレたやも。
 でもってDr.Gの『年齢層』もバレちゃったかも。
 『きっかけ』をもらったDr.Gの今後に注目を……!
 そして、外ではいったい何が起きているのか……!?

 次回、11月中に投稿できるようにガンバリます……

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