インストール@プリキュア!   作:稚拙

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 用語解説

 イーネルギー

 キュアネット上に存在する、楽しみや喜びといった『正の感情』が元となるエネルギー。
 インストール@プリキュアの4人は、イーネドライブによってそれらを取り込み、力に変えることができる。
 また、キメ技の際に放出されるのもこのイーネルギーであり、バグッチャーをデリートするためには、大量のイーネルギーをバグッチャーに撃ち込む以外に方法はない。

 ――――――――――

 仮面ライダークロノスに年甲斐もなく戦慄した稚拙です……
 えっと……11年前、仮面ライダーカブトはどーやってカッシスワームを攻略したんだっけ……?
 時間停止能力って反則級ですよねー(棒

 さて、今回は予告通り、"アレ"なバグッチャーが大暴れします!!
 最初に謝っておきます……『このすば』ファンの皆様、誠に申し訳ございませんッ!!


この素晴らしい中古スマホに爆焔を!

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 ――――――――――

 

 《ぬぅぅッ……!!おのれッ!!なぜ小官の狙いがわかったのだッ!?》

 

 コミューンのディスプレイの中で拳を握って体を震わせているのは、『ハピプリ』のオレスキーのコスプレをした、『フレプリ』のウェスターっぽい男のヒトだった。ジャークウェブ、3人目の幹部ね!

 でも私たちが仕掛けた『トラップ』に見事に引っかかっちゃうなんて、見た目に反してわかりやすいヒトみたい♪

 それではご要望にお応えして、私達がどうやってこのヒトを『ココ』に追い込んだのかを分かりやすくご説明してしんぜよう。

 

 「その答えは……これよっ!」

 《ひだまりポカポカ!キュアロゼッタ!♪》

 

 私がロゼッタのチップをセットすると、得意げな顔のメモリアの隣に、ロゼッタウォールがふわりと浮かぶ。

 

 《障壁だとッ……!?そういえば斯様な形のファイ()()ールに何度も道を阻まれた……ッ》

 「このロゼッタウォールを、町中のキュアネット回線に仕掛けさせてもらったの。ジャークウェブの疑いのあるプログラム"だけ"を検知して、何事もなく通すよう、細工をしてね」

 

 キュアデータが、戦ったバグッチャーの"ログ"を『覚えて』くれていたのが功を奏した。彼女によると、『独特のチリチリした感じのログ』が残るらしい。

 で、その"ログ"に似たプログラムを感知するように、ロゼッタウォールを細工して仕掛けておいた、というワケ。

 でも、みんなが使っている回線までふさいじゃったらいけないから、最初は"ジャークウェブの疑いのあるプログラム"も含めて、全部透過するようにしておいた。ここまでの応用ができるロゼッタウォールも恐れ入るモノですよ。

 

 「あとは定期的に"ジャークウェブの疑いのあるプログラム"が通った場所を絞り込んでいって、そのエリアを取り囲むようにロゼッタウォールの"質"を変えるの。今度は"疑わしいプログラム"を通れなくするようにね。それを繰り返してどんどんエリアを狭めていって、最終的にあなたをこのスマホに囲い込んだ、ってワケ!」

 「ちなみにそのスマホ……本来お前が忍び込もうとしていたスマホと……()()()()()()()()()()!」

 

 ほくとくん、ノリノリでこのセリフを言った。左手を腰に当てて、右手を突き出してスマホを指差しながら。また何かの特撮ヒーローのネタなのかな……? 

 ただ、ほくとくんの言ったことは本当で、このヒトが潜り込んできたのは、もう必要ない中古のスマホ。私がおばあちゃんからプレゼントされたスマホ(現・ネットコミューン)に機種変する前に使っていた、少し前の古いモノで、いつか中古品として処分しようかと思っていたけれど、思わぬ使い道があった。

 これなら、万が一発火させられても問題ないし、なによりここは―――――

 

 大 泉 海 水 浴 場 ! !(開業前)

 

 ゴールデンウィーク明けの今の時期、近づいてくる人と言えば犬の散歩をするおじーさんやおばーさんくらい!何かあっても一切合切絶対安全!!!―――――たぶん。

 

 「名付けて……"ジャークウェブホイホイ"大作戦よっ!!!」

 

 こうやって誘い出されたこの幹部っぽいヒトは、まさに足を取られたゴ〇ブリ!!……なんかその、ごめんなさい……表現がプリキュアっぽくなくて……

 ちなみにこの作戦、実は私のオリジナルじゃなかったりする。

 キュアネット中にロゼッタウォールをばらまいて街の情報網を寸断したあの作戦―――――ジャークウェブが最初に大泉町に仕掛けてきたとき、アラシーザーがやった悪事の応用だったりするんだよね……

 

 《まんまだね(- -)》

 《すこぶるまんまだね(- -)》

 「ショッカーやデストロンの作戦名みたいだね(・_・)」

 「なぜか冷たい視線~っ!」

 

 『スマプリ』6話のあかねちゃんとなおちゃんのような視線が、メモリアとデータから突き刺さってくる……そうなればこう返さざるを得ない!!

 ……となりにいたほくとくんが目を点にしてたけど……

 

 《くッ……クッククククッ……なるほどッ……小官は貴官等の策に乗せられッ、まんまとホイホイされてしまったというわけかッ……!しかしッ!!》

 

 と、幹部っぽいヒトは懐から何かを取り出し、地面に叩きつけた。瞬間、閃光が放たれ、ボワンと煙が噴き出し、私達の視界をふさいだ。

 

 《わぁっ!?なになに~!?》

 《く!ケムリ玉か!!》

 「まずい……これじゃ何も見えない……」

 「逃げられちゃう……!?」

 《―――――フフフッ……安心しろッ。小官としてもこの状況は都合が良いッ。逃げ出す算段など考えておらぬッ》

 

 煙の奥から、幹部っぽいヒトが堂々と姿を現した。

 

 「ネンチャックと違って、堂々としてるね……まるでゾル大佐だ」

 

 ほくとくんはそう言ったけど、本当にそうか、まだ知れない。どんな隠し玉を持っているんだか……―――――

 それと……えっと、"ぞるたいさ"ってどちら様?仮面ライダーにも似たようなヒトがいたのかな……?

 

 ―――――ダンッッ!!

 

 幹部っぽいヒトは叩きつけるように両足をそろえ、敬礼した。同時に、立ち込めていた煙がぶわっと発散した。

 

 《小官はッ!!ジャークウェブ第壱大隊長・スパムソンッ!!よくぞこの小官を罠に嵌めたッ!!貴官等とその指揮官ッ、敵ながら見事な辣腕ぶりッ!!小官も部隊を預かる軍人としてッ、敬服に値するッ!!!》

 

 仰々しくまくしたてる姿は、オレスキーと似てるようで違う。なんというか―――――()()()

 液晶越しに感じるこの威圧感―――――ハンパない……!アラシーザーとは別のプレッシャーを感じる。

 そして、手にした指揮棒をメモリアとデータに向けて宣言した。

 

 《貴官等の奮闘に応えッ、小官が相手になろうッ!!"インス()()()()()()キュア"ッッ!!》

 

 ……………………(;゚Д゚)

 

 さっきまでカッコよかったのに、最後の最後で力が抜けた……ような気がした。

 噛んだの?それとも……ワザと間違えたの……?

 

 《ちがうよ~!あたし達は"インストール@プリキュア"!ちゃんと覚えなさいよ~!!》

 《ご丁寧に間のマークも間違えてやがんな……"@"だ、"@"!!》

 

 メモリアとデータは間髪入れずに抗議。データ、聞いただけでそこまでわかるんだ……

 

 《小官の言語機能不全に関しての抗弁は許可せんッ!!貴官等は此処でッ―――――"爆滅"せしめるッ!!》

 

 スパムソンは懐からキュアチップを取り出し、高々と掲げて叫ぶ。

 

 《理を超越せし奇跡よッ!!四つの輝きを以ってッ、好奇を穿ち爆裂させよッ!!()グッチャー、ユナイテーションッッッ!!!》

 

 ワルイネルギーが渦を巻いてキュアチップを包み込むと、その中から大柄なボディのバグッチャーが出現した。

 胴体に真っ赤な宝石のようなモノがくっついていて、ローブを羽織って、とんがり帽子をかぶってた。顔の部分の左目に、『+』マークが入った眼帯を付けて、大きな杖を持っている。今までに見たことのない趣味的な見た目のバグッチャーだ。

 もしかして―――――私はこのバグッチャーの見た目だけで、取り込まれているプリキュアが『誰』なのか、『3人』にまで絞り込めた。私の予想が正しければ、『あのチーム』の誰か、それ以外に考えられないんだけど……

 

 《………………………………》

 「あれ……?」

 

 しかしこのバグッチャー、現れたはいいけどダンマリ。『バグッチャ~~!!』って叫ぶのがフツーのハズ。なのにコイツ、微動だにしていない。ただ……

 ―――――右手で左目を覆い隠した、キメッキメのポーズをとったまま立ち尽くしている……??

 

 《ンだこいつ……?スカしてんのか?》

 「油断できないよ、データ……これがコイツの"構え"、なのかも……」

 

 ほくとくんがそう言って警戒した次の瞬間、ずん!!とバグッチャーは一歩前に出て、ポーズをとりながらこう叫んだ。

 

 《ワガナハバグッチャー!!ジャークウェブノヘーシヲナリワイトシ、サイキョーノコウゲキマホウ!バクレツマホウヲアヤツリシモノ!!!!》

 

 ……はっきりと、意味のある言葉をバグッチャーがしゃべるのを聞いたのは、これが初めてだった。

 まさか名乗りを上げてくるとは。予想外の行動に私はもとより、メモリアとデータも一歩ヒイた。

 しかしこの『名乗り』で、このバグッチャーに取り込まれているプリキュアの予想が、まったくわからなくなっちゃった……!!

 こんな風に名乗りを上げていて、かつ、イメージカラーが『赤』のプリキュアが、『別のチーム』にひとりだけいるから……

 これってどういうコトなの……!?

 

 《元々は爆破工作用に"調整"したがッ、十二分に戦闘に転用可能ッ!思い知れプリキュ()ッ、科学を超越せしモノの威力をッ!!》

 

 スパムソンがそう叫ぶと、バグッチャーは手にした杖を両手で持って、集中するように目を閉じた。そして―――――

 

 《ヒカリニオオワレシシッコクヨ、ヨルヲマトイシバクエンヨ、コウマノナノモトニゲンショノホウカイヲケンゲンス―――――》

 

 瞬間、けたたましい警告音がコミューンから鳴り響く。メモリアとデータのいる中古スマホのキュアネット空間内に、とてつもない高エネルギーが集中している……!?

 予想攻撃範囲は―――――広い!?安全地帯なんてほとんどないじゃん!!

 この一発で、全部終わらせるつもり!?出オチなんてサイテー!!

 

 《な、なんかヤバい感じのが来るよ~~!!》

 《どーするほくと!?ここで攻撃して一気に終わらせるか!?》

 

 データの言葉に、ほくとくんはあわてて首を振る。

 

 「ダメだ、近づくにしてもリスクが大きすぎる!どうにかしてしのぐしかない……!東堂さん、何か使える手はない!?」

 

 防御するにしても、"アレ"で防御しきれるか―――――

 でも、諦めるよりやってみなくちゃ、やらずに後悔するより、やって後悔する方が、いい!!

 

 「だったらぁ―――――っ!!」

 

 私とほくとくんが、キュアチップをセットした、刹那―――――

 

 《シュウエンノオウコクノチニ、チカラノコンゲンヲイントクセシモノ、ワガマエニスベヨ―――――》

 

 

 

キュアップ・ラパパ!!
 

 

エクスプロォォォォォジョンッッッッ!!!!

 ―――――ドゴゴオオオオオオオンンンンンンンンン!!!!!!!!!

 

 

 バグッチャーが杖を掲げると、轟音と閃光が、コミューンのディスプレイから噴き出した。

 実際にメモリアとデータがいるのは中古スマホの中のはずなのに、コミューンにも振動が伝わってくる。比喩じゃなく、本当に……!!

 

 「メモリア!メモリアっ!!大丈夫!?無事!?生きてる!?!?ねぇ!?メモリアぁっっ!!」

 

 コミューンの液晶には、黒々とした煙が立ち込めるばかり。何も見えないし、誰の声も聞こえない……

 

 「データ!……まさか……」

 《―――――……"死んでんじゃない?"って思ったか?……ご期待通り生きてんよ》

 

 データの姿が見えた。片膝をついていたけど、ほとんど傷もない。データの周りには、光り輝くドーム状のバリアが張り巡らされている。

 

 《ビートのバリアが役に立ったみたいだな……ナイス判断だぜ、ほくと》

 《ロゼッタウォール……4枚重ねでどーにか……》

 

 メモリアも無事でいた。ロゼッタウォールが、4枚重ねで浮遊していた。私がセットしたロゼッタのチップ、役に立ってよかった……

 でも、そのロゼッタウォールも、ひびが入っている。一発でこれだけロゼッタウォールが傷つくなんて、すごい威力……メモリアやデータが直撃を受けていたらと思うとぞっとする。

 

 「どうにか凌げたけれど……これって―――――……"運"だ」

 

 無意識に、私はこうつぶやいていた。

 

 仮の話―――――

 

 もし、最初に倒したバグッチャーにキュアロゼッタ"以外"のプリキュアがとらわれていたとしたら。

 

 もし、今までにキュアロゼッタを助け出せていなかったとしたら。

 

 もし、ほくとくんとデータがキュアビートを助け出していなかったとしたら―――――

 

 もし、このバグッチャーの攻撃を防ぐ手段を持っていなかったとしたら――――― 

 

 

 考えるまでもない。今ので、『終わってた』。

 

 

 今までの私とメモリア、ほくとくんとデータ、それぞれが戦ってきた『軌跡』が少しでも『ずれ』ていたら、この時点で私達は負けていたんだ―――――

 たったの一撃、それを防ぐだけでも、薄氷の上に成り立っている―――――それがこの戦いなんだ……

 

 「……それでも、それは僕とキミ、データとメモリアが得てきた力だよ。言うでしょ?"運も実力の内"ってね」

 「ほくとくん……」

 「今まで戦ってきたこと……得てきたモノ……全部を力に戦い抜く……それが……僕達にできることだよ」

 

 ほくとくんの言葉が、不思議と心の中に響く。

 そう、今までのことを振り返ってもしょうがない。大事なのは『今』、そして、これから先の『未来』なんだから―――――

 

 《バックレツバックレツランララン♪バックレツバックレツランララン♪♪》

 

 キュアネット空間の中の煙が晴れると、バグッチャーは楽しそうにスキップしながらぐるぐるとその場を回っていた。

 それにしても―――――このバグッチャーの中のプリキュア―――――

 

 ―――――誰!?

 

 こんなキャラのプリキュア、少なくとも私の脳内フォルダの中のプリキュアデータベースに載ってないんですけど!?

 今までのバグッチャーは、捕えているプリキュアの決め台詞や名台詞を、断片的に口に出していた。私には、その声は囚われているプリキュアが、助けを求める声にも聞こえた。少しでも、自分が『何者』なのかを、私達に伝えるための―――――

 でも、このバグッチャーは、『誰か』を特定するヒントどころか、全く無関係のセリフを口走っている。まるで、『アニメのプリキュアを演じた声優さんが演じている、別のアニメのキャラクター』のよう―――――

 それでも―――――やっぱりコイツは、"バグッチャー"だった。

 少なくともさっきので手掛かりはゲット……!空間を爆発させる前の"呪文"を、私は聞き逃さなかった。

 

 「……あのバグッチャー……"キュアップ・ラパパ"って唱えた……」

 

 『まほプリ』に登場する異世界・『魔法界』の魔法使いたちが唱える、魔法の呪文。

 となると、やっぱりこのバグッチャーに囚われてるのは、『魔法つかいプリキュア』の誰かということになる。

 でも、いったい誰……?ミラクル、マジカル、それともフェリーチェ……??

 

 「あの爆発を使って、スマホのバッテリーを発火させていたのか……!」

 

 ほくとくんがコミューンのディスプレイを見ながら歯噛みする。

 確かに、あれでバッテリーの制御プログラムを爆破すれば、一発でスマホが発火してもおかしくない。

 

 ―――――あれ?

 

 私は砂の上に置かれた中古スマホを見た。でも、スマホは無事だった。どうして―――――?

 

 《第一射を凌ぐかッ!上等であるッ!!しかしここからは容赦はせんッ!!第二射、装填開始ッッ!!》

 《ナントユーゼッコーノシチュエーション!!ウッテイーンデスカ!!??ウチマスカラネッ!!》

 

 バグッチャーはなんだかウキウキした様子で、再度エネルギーのチャージを始める。

 

 《アカキコクイン、バンカイノオウ、テンチノホウヲフエンスレド―――――》

 「ま、また来る!」

 《なぁに、心配はいらねぇよ……!》

 

 データが何かを確信したように言う。

 

 《あれだけハデにドカンとブッ放してんだ……残りエネルギーに頓着してるハズがねぇ。じきにガス欠、そん時が逆転のチャンスだぜ》

 

 ……―――――でも……―――――

 

 

エクスプローーーージョン!!!!

 ―――――バッゴォオォオォオオオオオーーーーーーーンンン!!!!!!!

 

 

プローージョンッッ!!!!

 ―――――ヴァッガアアァァァァァァァァァッァアン!!!!!!!

 

 

ローーージョンッッ!!!!

 ―――――どっか~~~~~~~~~~~~~~~~んんんん!!!!!!!

 

 

ジョンッッッッ!!!!!!

 ―――――ドッギャァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!!

 

 

ン゛ッッ!!!!!!!!!

 ―――――ちゅどーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!

 

 

 《どーなんっての、データぁ……ガス欠なんて全然起こさないじゃ~ん…………(T T)》

 

 今までの爆発をどうにか避け切ったメモリアが、ヘロヘロになりながらも起き上がってきた。

 ……しかし、ものの見事なアフロ頭だ。なんか、昔ながらのコントにしか見えない。

 

 《ちっくしょ~……なんなんだ、コイツ……!》

 

 口元の煤をぬぐうデータが、バグッチャーを睨む。

 

 「ここまでやって、どうして息一つ切らさないんだ……!?」

 

 相手は攻撃一辺倒、全力の爆発攻撃を今まで5~6回は撃ってきた。

 でも、バグッチャーはぴんぴんしている。体力100%、元気ハツラツ状態……どうなってるの……!?

 

 「これっておかしい……絶対おかしい!」

 

 思わず疑惑と不満を口にしてしまった。これってまさかチートか何か!?

 と、その時―――――

 

 《!…………イマ……》

 

 バグッチャーがぼそりと呟いた。

 

 《イマ、"アタマガオカシイ"ッテイイマシタ~~~!?!?!?》

 「いや、『頭が』なんて言ってないし!?」

 

 私は反射的にツッコみ返した。余計な接頭語がくっついているのはどーして!?

 ……あれ??

 

 「今―――――」

 

 このバグッチャー、こう言った……

 

 「今、"言いました"、って、言いました……!?」

 

 バグッチャーと同じ言葉を繰り返してしまっていた。

 同時に、私の中で急速に"情報"が組み上げられていく。"魔法"、"キュアップ・ラパパ"、"言いました"―――――

 ほんのわずかな手がかりから、私の『脳内検索エンジン』は、ひとりのプリキュアを導き出す―――――

 

 「わかった―――――キュアミラクル……朝日奈みらいちゃんだ……!!」

 《マジかよ!?》

 《って、全然キャラ違うじゃん!?》

 

 メモリアがバグッチャーを指差しながらツッコミを入れてくる。確かに"キャラが違う"理由はわかんないけど……

 

 「爆発……炎の力は、ルビースタイルだから、じゃないかな……カラフルスタイルのひとつの……」

 「スタイル……つまりフォームチェンジするプリキュアってこと?」

 

 なぜか『フォームチェンジ』という言葉に、ほくとくんが食いついてきた。

 

 《『魔法つかいプリキュア』のリーダー……"輝石(きせき)のミラクル"……》

 「……奇跡のミラクルって、まんまだね」

 《漢字の書き方がちげーんだよ。輝く石、って書いてキセキって読むんだ》

 「輝く石……つまり宝石か。宝石をモチーフにした魔法使い、それにフォームチェンジ……!……仮面ライダーウィザードそのものじゃないか……!」

 

 たしか"ウィザード"って、『魔法使い』って意味だっけ……そのまんまな仮面ライダーがいるんだ……

 

 《何をゴチャゴチャと雑談に興じているッ!?バグッ()ャー、次の一撃で終わりにしろッ!!》

 《ダイジョービ、ワタシハツヲイ!!》

 

 どこをどうすれば、こんなキャラに変わっちゃうのか全然わかんない……でも、この中に囚われてるキュアミラクルは、きっと苦しんでる……!

 こんなに『自分』を歪められて、『力』だけを無理やり搾り取られてるんだから……!

 

 《アタシに考えがあるぜ……それに……アイツがフルパワーを出してもガス欠しないカラクリもなんとなくは感づいた……アタシの予想が当たってりゃ……"一発"でカタがつくぜ》

 「ほ、ホント……?」

 《フラグじゃねぇから安心しな。実はさっきな―――――》

 

 データは小声で私達に作戦を伝える。ふむふむ、確かにそれなら、エネルギー切れを起こさない理由にもナットクが……

 

 《フフフッ、策を練るかッ。しかしその策ごと捻じ伏せてくれるッ!!エネルギーチャージは完了しているッ!!今すぐに消し飛ばせッ!!》

 《そいつは無理だな!!》

 

 データはそう叫ぶと―――――バグッチャーに向かって一直線に突撃した!

 

 《"お師さん"が言ってたぜ……!"自分だけが喰らわない無差別攻撃"ってのは存在しないってさ!!巻き込まれりゃタダじゃすまないあの爆発、テメェの近くでできっかよ!?》

 《ぬぐッ……!!》

 

 つまり、バグッチャーは自分を巻き込まないように範囲を設定して、爆裂させていたというコト。さっき、データから教えてもらった通り!

 

 《でもって!》

 

 相手側からの死角、データの真後ろから飛び出したメモリアが、バグッチャーの股下をスライディングでくぐった。

 

 《これが!エネルギー切れを起こさない仕掛けだよ~~~~っっ!!》

 

 メモリアががっちりと抱え込むようにつかんだのは―――――バグッチャーの"シッポ"。

 その"シッポ"が伸びる先には―――――巨大な『電池残量マーク』が描かれたビルのような、スマホのバッテリー管理プログラムにつながっていた!

 そう―――――これがこのバグッチャーがエネルギー切れを起こさない仕掛け。カンタンな話、"コンセント"からエネルギーを受け取っていただけ―――――

 爆裂魔法を撃つそばから充電してるわけだから、エネルギー切れを起こすわけがない。

 

 《ぬぅッ、バレていたかッ!!》

 《気づいてないとでも思ってたのかよ!!》

 「さっきからこのバグッチャーはこの場をほとんど動いていなかった……ケーブルでつながれてる分、行動範囲が限られるのは当然だからね……!何かあるとは思っていたさ!」

 

 データだけじゃなく、ほくとくんも気づいていたみたい。さすが!

 

 「やっちゃって!メモリア!!」

 《よっしゃ~~!メモリア、ちょ~~~っぷ!!》

 

 ―――――ぶちっ!!

 

 メモリアはイーネルギーを纏わせたチョップを振り下ろして、バグッチャーのシッポをスパッと切断した。

 

 《!!!!!!!!!!!》

 

 バグッチャーの動きがぴたりと―――――止まった。

 一拍おいて、両ひざをついて、そのままバグッチャーは地面にへたり込んで―――――ダウンした。

 

 《…………ヤバイデス。クワレマス。スイマセン、チョットタスケテ………………》

 

 そんな弱々しい言葉が、バグッチャーの口から洩れた。

 ……なんというか……攻撃力だけパワーアップさせた結果、それ以外はむしろパワーダウンさせたような……なんてバランスの悪い……

 やっぱりこのバグッチャー、キュアミラクルと声がそっくりな別の誰かなんじゃ……少なくとも、みらいちゃんはこんなキャラじゃないし……

 

 《ぬぅぅッ……こうも呆気なく攻略されるとは情けないッ!!貴官はそれでもジャークウェブの兵士かッ!?》

 《何言ってんだお前。そもそもはテメーが招いた結果だぜ?》

 

 データは勝気にスパムソンを見た。

 

 《最初……テメーはスマホごとアタシ達を吹っ飛ばそうとした。そのバグッチャーを使ってな。そもそもは"それだけ"を使い道にしてんだ、大方一発ドカンとやって、ガス欠したら引っ込めてたんだろ。だから今まではそれで事が足りていた……だがアタシ達に見つかって、テメーはこのバグッチャーが倒されるのを恐れた……そこでテメーは、アタシ達をこのスマホの中で倒すか撃退するかして、どうにか切り抜けようとした……そこでバグッチャーとバッテリー管理プログラムを接続して、そいつを臨時の『拠点防衛用バグッチャー』に仕立て上げたんだ……バッテリー管理プログラムを吹っ飛ばさなかったのは、ソイツ自身のエネルギー源に使うため、壊すに壊せなくなったから……逃げ場のない今ソイツを壊せばスマホはドカン、テメー自身もゴーゴーヘヴン……つまり……―――――》

 

 データはこう長々と語って、びしりとスパムソンを指差し、ドヤ顔で言った。

 

 《テメーがこのスマホにノコノコ入ってきた時点で……勝負は決まってたんだよ!!》

 《データ、カッコイイ!!》

 《ぬ゛ううぅぅぅぅぅ………………ッッッッッッッッ!!!!》

 

 をを、なんかスゴいよ、データちゃん!推理モノの主人公みたい!!

 確かデータは『辞書』のアプリアンで、元々はとっても賢い子だって、メモリアも言っていた。

 ……最初に会った時脳筋だと思ってごめん……

 

 「どうする?これ以上は戦っても無駄よ!大人しくそのバグッチャーから、キュアミラクルを解放して!」

 

 でろ~んとダウンしたバグッチャーの姿は、見ていて不憫になってくる。無駄な戦いはしたくないし、このまま―――――

 

 《……見事ッ!!!》

 

 しかしスパムソンは大ゲサに胸を反った。

 

 《小官を戦略的にもッ、そして戦術的にも出し抜いた貴官等と指揮官には感服の極みッ!!なれどもッ、降伏勧告には応じられぬッ!!―――――戦場を変えるぞッ!!》

 

 スパムソンはそう言うと、バグッチャーとともに瞬時に姿を消した。そして―――――

 

 《BE ON GUARD!!! BUGUCCHER REALIZE!!!》

 

 今度は現実の、私とほくとくんの目の前に、スパムソンとバグッチャーが実体化してきた。

 

 『直々に相手をしてもらおうかッ、指揮官殿ッ!!』

 

 切り替えが早い。精神的にヘコむタイプじゃないみたい。その点は似たような恰好をしているオレスキーとそっくりかも。

 

 「……ほくとくん、変身よっ!!」

 

 一度言ってみたかったんだよね、このセリフ♪ほくとくんもノッてくれたようで、「うん!」とうなづいた。

 

 《《START UP! MATRIX INSTALL!!!》》

 「「プリキュア!マトリクスインストーーール!!」」

 《CURE-MEMORIA! INSTALL TO LINK!!》

 《CURE-DATA! INSTALL TO HOKUTO!!》

 《INSTALL COMPLETE!!!》

 

 『記し、念じる、無限の未来!キュアメモリアル!!』

 

 『渾然一体……涙祓一心!キュアデーティア!!』

 

 

未来へつながる電子の輝き!

 

 

キラメくふたりは!

 

 

インストール@プリキュア!!

 

 

 メモリアとデータが頑張ってくれた分、今度は私とデーティアが頑張る!

 しかも相手のパターンはわかってるし、今回は充電できるような場所もないし、楽勝―――――

 

 『クククッ、このバ()ッチャーの真の力を見せてやるッ!!攻撃方陣ッ、"四輝砕(シキサイ)"ッッ!!!』

 

 スパムソンが指揮棒をふるったその時、バグッチャーはむくりと立ち上がり、そして―――――

 一瞬光ったと思うと、背後から新たに3体のバグッチャーが姿を見せてきた……!!

 

 『バグバグモンダァ~~~!!!』

 『ワガナハバグッチャ~~~!!!』

 『アナァ~タノオミミニプラグイ~ン♪』

 『バ~グリモノ~!!』

 

 それぞれが、白・赤・青・黄色の宝石を胸に抱く4体のバグッチャー―――――

 その威容を前に―――――私は思わず呟いていた。

 

 『バグッチャーが………………分身した…………!?』

 

 ……SAVE POINT




 中 の 人 が 増 え た ぞ ! 
 (変な奴がいるぞ!!のノリで)
 これぞ情報子汚染"コードV・A"タイプ"R・T"の恐怖!!
 4体の"ミラクルバグッチャー"相手に勝機はあるのか!!??
 今回以上にカオスになるかもしれない次回、もうちょっと待っててください……

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