イーネルギー
キュアネット上に存在する、楽しみや喜びといった『正の感情』が元となるエネルギー。
インストール@プリキュアの4人は、イーネドライブによってそれらを取り込み、力に変えることができる。
また、キメ技の際に放出されるのもこのイーネルギーであり、バグッチャーをデリートするためには、大量のイーネルギーをバグッチャーに撃ち込む以外に方法はない。
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仮面ライダークロノスに年甲斐もなく戦慄した稚拙です……
えっと……11年前、仮面ライダーカブトはどーやってカッシスワームを攻略したんだっけ……?
時間停止能力って反則級ですよねー(棒
さて、今回は予告通り、"アレ"なバグッチャーが大暴れします!!
最初に謝っておきます……『このすば』ファンの皆様、誠に申し訳ございませんッ!!
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《ぬぅぅッ……!!おのれッ!!なぜ小官の狙いがわかったのだッ!?》
コミューンのディスプレイの中で拳を握って体を震わせているのは、『ハピプリ』のオレスキーのコスプレをした、『フレプリ』のウェスターっぽい男のヒトだった。ジャークウェブ、3人目の幹部ね!
でも私たちが仕掛けた『トラップ』に見事に引っかかっちゃうなんて、見た目に反してわかりやすいヒトみたい♪
それではご要望にお応えして、私達がどうやってこのヒトを『ココ』に追い込んだのかを分かりやすくご説明してしんぜよう。
「その答えは……これよっ!」
《ひだまりポカポカ!キュアロゼッタ!♪》
私がロゼッタのチップをセットすると、得意げな顔のメモリアの隣に、ロゼッタウォールがふわりと浮かぶ。
《障壁だとッ……!?そういえば斯様な形のファイ
「このロゼッタウォールを、町中のキュアネット回線に仕掛けさせてもらったの。ジャークウェブの疑いのあるプログラム"だけ"を検知して、何事もなく通すよう、細工をしてね」
キュアデータが、戦ったバグッチャーの"ログ"を『覚えて』くれていたのが功を奏した。彼女によると、『独特のチリチリした感じのログ』が残るらしい。
で、その"ログ"に似たプログラムを感知するように、ロゼッタウォールを細工して仕掛けておいた、というワケ。
でも、みんなが使っている回線までふさいじゃったらいけないから、最初は"ジャークウェブの疑いのあるプログラム"も含めて、全部透過するようにしておいた。ここまでの応用ができるロゼッタウォールも恐れ入るモノですよ。
「あとは定期的に"ジャークウェブの疑いのあるプログラム"が通った場所を絞り込んでいって、そのエリアを取り囲むようにロゼッタウォールの"質"を変えるの。今度は"疑わしいプログラム"を通れなくするようにね。それを繰り返してどんどんエリアを狭めていって、最終的にあなたをこのスマホに囲い込んだ、ってワケ!」
「ちなみにそのスマホ……本来お前が忍び込もうとしていたスマホと……
ほくとくん、ノリノリでこのセリフを言った。左手を腰に当てて、右手を突き出してスマホを指差しながら。また何かの特撮ヒーローのネタなのかな……?
ただ、ほくとくんの言ったことは本当で、このヒトが潜り込んできたのは、もう必要ない中古のスマホ。私がおばあちゃんからプレゼントされたスマホ(現・ネットコミューン)に機種変する前に使っていた、少し前の古いモノで、いつか中古品として処分しようかと思っていたけれど、思わぬ使い道があった。
これなら、万が一発火させられても問題ないし、なによりここは―――――
大 泉 海 水 浴 場 ! !(開業前)
ゴールデンウィーク明けの今の時期、近づいてくる人と言えば犬の散歩をするおじーさんやおばーさんくらい!何かあっても一切合切絶対安全!!!―――――たぶん。
「名付けて……"ジャークウェブホイホイ"大作戦よっ!!!」
こうやって誘い出されたこの幹部っぽいヒトは、まさに足を取られたゴ〇ブリ!!……なんかその、ごめんなさい……表現がプリキュアっぽくなくて……
ちなみにこの作戦、実は私のオリジナルじゃなかったりする。
キュアネット中にロゼッタウォールをばらまいて街の情報網を寸断したあの作戦―――――ジャークウェブが最初に大泉町に仕掛けてきたとき、アラシーザーがやった悪事の応用だったりするんだよね……
《まんまだね(- -)》
《すこぶるまんまだね(- -)》
「ショッカーやデストロンの作戦名みたいだね(・_・)」
「なぜか冷たい視線~っ!」
『スマプリ』6話のあかねちゃんとなおちゃんのような視線が、メモリアとデータから突き刺さってくる……そうなればこう返さざるを得ない!!
……となりにいたほくとくんが目を点にしてたけど……
《くッ……クッククククッ……なるほどッ……小官は貴官等の策に乗せられッ、まんまとホイホイされてしまったというわけかッ……!しかしッ!!》
と、幹部っぽいヒトは懐から何かを取り出し、地面に叩きつけた。瞬間、閃光が放たれ、ボワンと煙が噴き出し、私達の視界をふさいだ。
《わぁっ!?なになに~!?》
《く!ケムリ玉か!!》
「まずい……これじゃ何も見えない……」
「逃げられちゃう……!?」
《―――――フフフッ……安心しろッ。小官としてもこの状況は都合が良いッ。逃げ出す算段など考えておらぬッ》
煙の奥から、幹部っぽいヒトが堂々と姿を現した。
「ネンチャックと違って、堂々としてるね……まるでゾル大佐だ」
ほくとくんはそう言ったけど、本当にそうか、まだ知れない。どんな隠し玉を持っているんだか……―――――
それと……えっと、"ぞるたいさ"ってどちら様?仮面ライダーにも似たようなヒトがいたのかな……?
―――――ダンッッ!!
幹部っぽいヒトは叩きつけるように両足をそろえ、敬礼した。同時に、立ち込めていた煙がぶわっと発散した。
《小官はッ!!ジャークウェブ第壱大隊長・スパムソンッ!!よくぞこの小官を罠に嵌めたッ!!貴官等とその指揮官ッ、敵ながら見事な辣腕ぶりッ!!小官も部隊を預かる軍人としてッ、敬服に値するッ!!!》
仰々しくまくしたてる姿は、オレスキーと似てるようで違う。なんというか―――――
液晶越しに感じるこの威圧感―――――ハンパない……!アラシーザーとは別のプレッシャーを感じる。
そして、手にした指揮棒をメモリアとデータに向けて宣言した。
《貴官等の奮闘に応えッ、小官が相手になろうッ!!"インス
……………………(;゚Д゚)
さっきまでカッコよかったのに、最後の最後で力が抜けた……ような気がした。
噛んだの?それとも……ワザと間違えたの……?
《ちがうよ~!あたし達は"インストール@プリキュア"!ちゃんと覚えなさいよ~!!》
《ご丁寧に間のマークも間違えてやがんな……"@"だ、"@"!!》
メモリアとデータは間髪入れずに抗議。データ、聞いただけでそこまでわかるんだ……
《小官の言語機能不全に関しての抗弁は許可せんッ!!貴官等は此処でッ―――――"爆滅"せしめるッ!!》
スパムソンは懐からキュアチップを取り出し、高々と掲げて叫ぶ。
《理を超越せし奇跡よッ!!四つの輝きを以ってッ、好奇を穿ち爆裂させよッ!!
ワルイネルギーが渦を巻いてキュアチップを包み込むと、その中から大柄なボディのバグッチャーが出現した。
胴体に真っ赤な宝石のようなモノがくっついていて、ローブを羽織って、とんがり帽子をかぶってた。顔の部分の左目に、『+』マークが入った眼帯を付けて、大きな杖を持っている。今までに見たことのない趣味的な見た目のバグッチャーだ。
もしかして―――――私はこのバグッチャーの見た目だけで、取り込まれているプリキュアが『誰』なのか、『3人』にまで絞り込めた。私の予想が正しければ、『あのチーム』の誰か、それ以外に考えられないんだけど……
《………………………………》
「あれ……?」
しかしこのバグッチャー、現れたはいいけどダンマリ。『バグッチャ~~!!』って叫ぶのがフツーのハズ。なのにコイツ、微動だにしていない。ただ……
―――――右手で左目を覆い隠した、キメッキメのポーズをとったまま立ち尽くしている……??
《ンだこいつ……?スカしてんのか?》
「油断できないよ、データ……これがコイツの"構え"、なのかも……」
ほくとくんがそう言って警戒した次の瞬間、ずん!!とバグッチャーは一歩前に出て、ポーズをとりながらこう叫んだ。
《ワガナハバグッチャー!!ジャークウェブノヘーシヲナリワイトシ、サイキョーノコウゲキマホウ!バクレツマホウヲアヤツリシモノ!!!!》
……はっきりと、意味のある言葉をバグッチャーがしゃべるのを聞いたのは、これが初めてだった。
まさか名乗りを上げてくるとは。予想外の行動に私はもとより、メモリアとデータも一歩ヒイた。
しかしこの『名乗り』で、このバグッチャーに取り込まれているプリキュアの予想が、まったくわからなくなっちゃった……!!
こんな風に名乗りを上げていて、かつ、イメージカラーが『赤』のプリキュアが、『別のチーム』にひとりだけいるから……
これってどういうコトなの……!?
《元々は爆破工作用に"調整"したがッ、十二分に戦闘に転用可能ッ!思い知れプリキュ
スパムソンがそう叫ぶと、バグッチャーは手にした杖を両手で持って、集中するように目を閉じた。そして―――――
《ヒカリニオオワレシシッコクヨ、ヨルヲマトイシバクエンヨ、コウマノナノモトニゲンショノホウカイヲケンゲンス―――――》
瞬間、けたたましい警告音がコミューンから鳴り響く。メモリアとデータのいる中古スマホのキュアネット空間内に、とてつもない高エネルギーが集中している……!?
予想攻撃範囲は―――――広い!?安全地帯なんてほとんどないじゃん!!
この一発で、全部終わらせるつもり!?出オチなんてサイテー!!
《な、なんかヤバい感じのが来るよ~~!!》
《どーするほくと!?ここで攻撃して一気に終わらせるか!?》
データの言葉に、ほくとくんはあわてて首を振る。
「ダメだ、近づくにしてもリスクが大きすぎる!どうにかしてしのぐしかない……!東堂さん、何か使える手はない!?」
防御するにしても、"アレ"で防御しきれるか―――――
でも、諦めるよりやってみなくちゃ、やらずに後悔するより、やって後悔する方が、いい!!
「だったらぁ―――――っ!!」
私とほくとくんが、キュアチップをセットした、刹那―――――
《シュウエンノオウコクノチニ、チカラノコンゲンヲイントクセシモノ、ワガマエニスベヨ―――――》
―――――ドゴゴオオオオオオオンンンンンンンンン!!!!!!!!!
バグッチャーが杖を掲げると、轟音と閃光が、コミューンのディスプレイから噴き出した。
実際にメモリアとデータがいるのは中古スマホの中のはずなのに、コミューンにも振動が伝わってくる。比喩じゃなく、本当に……!!
「メモリア!メモリアっ!!大丈夫!?無事!?生きてる!?!?ねぇ!?メモリアぁっっ!!」
コミューンの液晶には、黒々とした煙が立ち込めるばかり。何も見えないし、誰の声も聞こえない……
「データ!……まさか……」
《―――――……"死んでんじゃない?"って思ったか?……ご期待通り生きてんよ》
データの姿が見えた。片膝をついていたけど、ほとんど傷もない。データの周りには、光り輝くドーム状のバリアが張り巡らされている。
《ビートのバリアが役に立ったみたいだな……ナイス判断だぜ、ほくと》
《ロゼッタウォール……4枚重ねでどーにか……》
メモリアも無事でいた。ロゼッタウォールが、4枚重ねで浮遊していた。私がセットしたロゼッタのチップ、役に立ってよかった……
でも、そのロゼッタウォールも、ひびが入っている。一発でこれだけロゼッタウォールが傷つくなんて、すごい威力……メモリアやデータが直撃を受けていたらと思うとぞっとする。
「どうにか凌げたけれど……これって―――――……"運"だ」
無意識に、私はこうつぶやいていた。
仮の話―――――
もし、最初に倒したバグッチャーにキュアロゼッタ"以外"のプリキュアがとらわれていたとしたら。
もし、今までにキュアロゼッタを助け出せていなかったとしたら。
もし、ほくとくんとデータがキュアビートを助け出していなかったとしたら―――――
もし、このバグッチャーの攻撃を防ぐ手段を持っていなかったとしたら―――――
考えるまでもない。今ので、『終わってた』。
今までの私とメモリア、ほくとくんとデータ、それぞれが戦ってきた『軌跡』が少しでも『ずれ』ていたら、この時点で私達は負けていたんだ―――――
たったの一撃、それを防ぐだけでも、薄氷の上に成り立っている―――――それがこの戦いなんだ……
「……それでも、それは僕とキミ、データとメモリアが得てきた力だよ。言うでしょ?"運も実力の内"ってね」
「ほくとくん……」
「今まで戦ってきたこと……得てきたモノ……全部を力に戦い抜く……それが……僕達にできることだよ」
ほくとくんの言葉が、不思議と心の中に響く。
そう、今までのことを振り返ってもしょうがない。大事なのは『今』、そして、これから先の『未来』なんだから―――――
《バックレツバックレツランララン♪バックレツバックレツランララン♪♪》
キュアネット空間の中の煙が晴れると、バグッチャーは楽しそうにスキップしながらぐるぐるとその場を回っていた。
それにしても―――――このバグッチャーの中のプリキュア―――――
―――――誰!?
こんなキャラのプリキュア、少なくとも私の脳内フォルダの中のプリキュアデータベースに載ってないんですけど!?
今までのバグッチャーは、捕えているプリキュアの決め台詞や名台詞を、断片的に口に出していた。私には、その声は囚われているプリキュアが、助けを求める声にも聞こえた。少しでも、自分が『何者』なのかを、私達に伝えるための―――――
でも、このバグッチャーは、『誰か』を特定するヒントどころか、全く無関係のセリフを口走っている。まるで、『アニメのプリキュアを演じた声優さんが演じている、別のアニメのキャラクター』のよう―――――
それでも―――――やっぱりコイツは、"バグッチャー"だった。
少なくともさっきので手掛かりはゲット……!空間を爆発させる前の"呪文"を、私は聞き逃さなかった。
「……あのバグッチャー……"キュアップ・ラパパ"って唱えた……」
『まほプリ』に登場する異世界・『魔法界』の魔法使いたちが唱える、魔法の呪文。
となると、やっぱりこのバグッチャーに囚われてるのは、『魔法つかいプリキュア』の誰かということになる。
でも、いったい誰……?ミラクル、マジカル、それともフェリーチェ……??
「あの爆発を使って、スマホのバッテリーを発火させていたのか……!」
ほくとくんがコミューンのディスプレイを見ながら歯噛みする。
確かに、あれでバッテリーの制御プログラムを爆破すれば、一発でスマホが発火してもおかしくない。
―――――あれ?
私は砂の上に置かれた中古スマホを見た。でも、スマホは無事だった。どうして―――――?
《第一射を凌ぐかッ!上等であるッ!!しかしここからは容赦はせんッ!!第二射、装填開始ッッ!!》
《ナントユーゼッコーノシチュエーション!!ウッテイーンデスカ!!??ウチマスカラネッ!!》
バグッチャーはなんだかウキウキした様子で、再度エネルギーのチャージを始める。
《アカキコクイン、バンカイノオウ、テンチノホウヲフエンスレド―――――》
「ま、また来る!」
《なぁに、心配はいらねぇよ……!》
データが何かを確信したように言う。
《あれだけハデにドカンとブッ放してんだ……残りエネルギーに頓着してるハズがねぇ。じきにガス欠、そん時が逆転のチャンスだぜ》
……―――――でも……―――――
―――――バッゴォオォオォオオオオオーーーーーーーンンン!!!!!!!
―――――ヴァッガアアァァァァァァァァァッァアン!!!!!!!
―――――どっか~~~~~~~~~~~~~~~~んんんん!!!!!!!
―――――ドッギャァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!!
―――――ちゅどーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!
《どーなんっての、データぁ……ガス欠なんて全然起こさないじゃ~ん…………(T T)》
今までの爆発をどうにか避け切ったメモリアが、ヘロヘロになりながらも起き上がってきた。
……しかし、ものの見事なアフロ頭だ。なんか、昔ながらのコントにしか見えない。
《ちっくしょ~……なんなんだ、コイツ……!》
口元の煤をぬぐうデータが、バグッチャーを睨む。
「ここまでやって、どうして息一つ切らさないんだ……!?」
相手は攻撃一辺倒、全力の爆発攻撃を今まで5~6回は撃ってきた。
でも、バグッチャーはぴんぴんしている。体力100%、元気ハツラツ状態……どうなってるの……!?
「これっておかしい……絶対おかしい!」
思わず疑惑と不満を口にしてしまった。これってまさかチートか何か!?
と、その時―――――
《!…………イマ……》
バグッチャーがぼそりと呟いた。
《イマ、"アタマガオカシイ"ッテイイマシタ~~~!?!?!?》
「いや、『頭が』なんて言ってないし!?」
私は反射的にツッコみ返した。余計な接頭語がくっついているのはどーして!?
……あれ??
「今―――――」
このバグッチャー、こう言った……
「今、"言いました"、って、言いました……!?」
バグッチャーと同じ言葉を繰り返してしまっていた。
同時に、私の中で急速に"情報"が組み上げられていく。"魔法"、"キュアップ・ラパパ"、"言いました"―――――
ほんのわずかな手がかりから、私の『脳内検索エンジン』は、ひとりのプリキュアを導き出す―――――
「わかった―――――キュアミラクル……朝日奈みらいちゃんだ……!!」
《マジかよ!?》
《って、全然キャラ違うじゃん!?》
メモリアがバグッチャーを指差しながらツッコミを入れてくる。確かに"キャラが違う"理由はわかんないけど……
「爆発……炎の力は、ルビースタイルだから、じゃないかな……カラフルスタイルのひとつの……」
「スタイル……つまりフォームチェンジするプリキュアってこと?」
なぜか『フォームチェンジ』という言葉に、ほくとくんが食いついてきた。
《『魔法つかいプリキュア』のリーダー……"
「……奇跡のミラクルって、まんまだね」
《漢字の書き方がちげーんだよ。輝く石、って書いてキセキって読むんだ》
「輝く石……つまり宝石か。宝石をモチーフにした魔法使い、それにフォームチェンジ……!……仮面ライダーウィザードそのものじゃないか……!」
たしか"ウィザード"って、『魔法使い』って意味だっけ……そのまんまな仮面ライダーがいるんだ……
《何をゴチャゴチャと雑談に興じているッ!?バグッ
《ダイジョービ、ワタシハツヲイ!!》
どこをどうすれば、こんなキャラに変わっちゃうのか全然わかんない……でも、この中に囚われてるキュアミラクルは、きっと苦しんでる……!
こんなに『自分』を歪められて、『力』だけを無理やり搾り取られてるんだから……!
《アタシに考えがあるぜ……それに……アイツがフルパワーを出してもガス欠しないカラクリもなんとなくは感づいた……アタシの予想が当たってりゃ……"一発"でカタがつくぜ》
「ほ、ホント……?」
《フラグじゃねぇから安心しな。実はさっきな―――――》
データは小声で私達に作戦を伝える。ふむふむ、確かにそれなら、エネルギー切れを起こさない理由にもナットクが……
《フフフッ、策を練るかッ。しかしその策ごと捻じ伏せてくれるッ!!エネルギーチャージは完了しているッ!!今すぐに消し飛ばせッ!!》
《そいつは無理だな!!》
データはそう叫ぶと―――――バグッチャーに向かって一直線に突撃した!
《"お師さん"が言ってたぜ……!"自分だけが喰らわない無差別攻撃"ってのは存在しないってさ!!巻き込まれりゃタダじゃすまないあの爆発、テメェの近くでできっかよ!?》
《ぬぐッ……!!》
つまり、バグッチャーは自分を巻き込まないように範囲を設定して、爆裂させていたというコト。さっき、データから教えてもらった通り!
《でもって!》
相手側からの死角、データの真後ろから飛び出したメモリアが、バグッチャーの股下をスライディングでくぐった。
《これが!エネルギー切れを起こさない仕掛けだよ~~~~っっ!!》
メモリアががっちりと抱え込むようにつかんだのは―――――バグッチャーの"シッポ"。
その"シッポ"が伸びる先には―――――巨大な『電池残量マーク』が描かれたビルのような、スマホのバッテリー管理プログラムにつながっていた!
そう―――――これがこのバグッチャーがエネルギー切れを起こさない仕掛け。カンタンな話、"コンセント"からエネルギーを受け取っていただけ―――――
爆裂魔法を撃つそばから充電してるわけだから、エネルギー切れを起こすわけがない。
《ぬぅッ、バレていたかッ!!》
《気づいてないとでも思ってたのかよ!!》
「さっきからこのバグッチャーはこの場をほとんど動いていなかった……ケーブルでつながれてる分、行動範囲が限られるのは当然だからね……!何かあるとは思っていたさ!」
データだけじゃなく、ほくとくんも気づいていたみたい。さすが!
「やっちゃって!メモリア!!」
《よっしゃ~~!メモリア、ちょ~~~っぷ!!》
―――――ぶちっ!!
メモリアはイーネルギーを纏わせたチョップを振り下ろして、バグッチャーのシッポをスパッと切断した。
《!!!!!!!!!!!》
バグッチャーの動きがぴたりと―――――止まった。
一拍おいて、両ひざをついて、そのままバグッチャーは地面にへたり込んで―――――ダウンした。
《…………ヤバイデス。クワレマス。スイマセン、チョットタスケテ………………》
そんな弱々しい言葉が、バグッチャーの口から洩れた。
……なんというか……攻撃力だけパワーアップさせた結果、それ以外はむしろパワーダウンさせたような……なんてバランスの悪い……
やっぱりこのバグッチャー、キュアミラクルと声がそっくりな別の誰かなんじゃ……少なくとも、みらいちゃんはこんなキャラじゃないし……
《ぬぅぅッ……こうも呆気なく攻略されるとは情けないッ!!貴官はそれでもジャークウェブの兵士かッ!?》
《何言ってんだお前。そもそもはテメーが招いた結果だぜ?》
データは勝気にスパムソンを見た。
《最初……テメーはスマホごとアタシ達を吹っ飛ばそうとした。そのバグッチャーを使ってな。そもそもは"それだけ"を使い道にしてんだ、大方一発ドカンとやって、ガス欠したら引っ込めてたんだろ。だから今まではそれで事が足りていた……だがアタシ達に見つかって、テメーはこのバグッチャーが倒されるのを恐れた……そこでテメーは、アタシ達をこのスマホの中で倒すか撃退するかして、どうにか切り抜けようとした……そこでバグッチャーとバッテリー管理プログラムを接続して、そいつを臨時の『拠点防衛用バグッチャー』に仕立て上げたんだ……バッテリー管理プログラムを吹っ飛ばさなかったのは、ソイツ自身のエネルギー源に使うため、壊すに壊せなくなったから……逃げ場のない今ソイツを壊せばスマホはドカン、テメー自身もゴーゴーヘヴン……つまり……―――――》
データはこう長々と語って、びしりとスパムソンを指差し、ドヤ顔で言った。
《テメーがこのスマホにノコノコ入ってきた時点で……勝負は決まってたんだよ!!》
《データ、カッコイイ!!》
《ぬ゛ううぅぅぅぅぅ………………ッッッッッッッッ!!!!》
をを、なんかスゴいよ、データちゃん!推理モノの主人公みたい!!
確かデータは『辞書』のアプリアンで、元々はとっても賢い子だって、メモリアも言っていた。
……最初に会った時脳筋だと思ってごめん……
「どうする?これ以上は戦っても無駄よ!大人しくそのバグッチャーから、キュアミラクルを解放して!」
でろ~んとダウンしたバグッチャーの姿は、見ていて不憫になってくる。無駄な戦いはしたくないし、このまま―――――
《……見事ッ!!!》
しかしスパムソンは大ゲサに胸を反った。
《小官を戦略的にもッ、そして戦術的にも出し抜いた貴官等と指揮官には感服の極みッ!!なれどもッ、降伏勧告には応じられぬッ!!―――――戦場を変えるぞッ!!》
スパムソンはそう言うと、バグッチャーとともに瞬時に姿を消した。そして―――――
《BE ON GUARD!!! BUGUCCHER REALIZE!!!》
今度は現実の、私とほくとくんの目の前に、スパムソンとバグッチャーが実体化してきた。
『直々に相手をしてもらおうかッ、指揮官殿ッ!!』
切り替えが早い。精神的にヘコむタイプじゃないみたい。その点は似たような恰好をしているオレスキーとそっくりかも。
「……ほくとくん、変身よっ!!」
一度言ってみたかったんだよね、このセリフ♪ほくとくんもノッてくれたようで、「うん!」とうなづいた。
《《START UP! MATRIX INSTALL!!!》》
「「プリキュア!マトリクスインストーーール!!」」
《CURE-MEMORIA! INSTALL TO LINK!!》
《CURE-DATA! INSTALL TO HOKUTO!!》
《INSTALL COMPLETE!!!》
『記し、念じる、無限の未来!キュアメモリアル!!』
『渾然一体……涙祓一心!キュアデーティア!!』
メモリアとデータが頑張ってくれた分、今度は私とデーティアが頑張る!
しかも相手のパターンはわかってるし、今回は充電できるような場所もないし、楽勝―――――
『クククッ、このバ
スパムソンが指揮棒をふるったその時、バグッチャーはむくりと立ち上がり、そして―――――
一瞬光ったと思うと、背後から新たに3体のバグッチャーが姿を見せてきた……!!
『バグバグモンダァ~~~!!!』
『ワガナハバグッチャ~~~!!!』
『アナァ~タノオミミニプラグイ~ン♪』
『バ~グリモノ~!!』
それぞれが、白・赤・青・黄色の宝石を胸に抱く4体のバグッチャー―――――
その威容を前に―――――私は思わず呟いていた。
『バグッチャーが………………分身した…………!?』
……SAVE POINT
中 の 人 が 増 え た ぞ !
(変な奴がいるぞ!!のノリで)
これぞ情報子汚染"コードV・A"タイプ"R・T"の恐怖!!
4体の"ミラクルバグッチャー"相手に勝機はあるのか!!??
今回以上にカオスになるかもしれない次回、もうちょっと待っててください……