インストール@プリキュア!   作:稚拙

22 / 70
 さて1日ほどお待たせしました!
 キュアチップの行く先に待ち受けていたのは果たして……!?
 キュアデータ編、堂々完結です!!


僕だけのプリキュア道

 NOW LOADING……

 

 ――――――――――

 

    EX PLAYER CHANGE

 

    CURE-MEMORIAL

 ⇒  CURE-DATEAR

    ??????

    ??????

 

 ――――――――――

 

 機をうかがっていた僕の足元に、2枚のキュアチップが転がってきた。

 

 『これって……!?』

 《トゥインクルとマーチのキュアチップだ……!!》

 

 東堂さん―――――キュアメモリアルが、今まで助けたプリキュアのキュアチップ。

 思わず僕はそれを拾い上げる。そこへ―――――

 

 『デーティア!それ、使って!!』

 

 メモリアルが僕に叫ぶ。ハッとして、僕はメモリアルを見た。

 

 『きっとデーティアなら使いこなせる!詳しい使い方は、データに聞いて!』

 

 プリキュアのことを、僕―――――ほくとは全く知らないけれど―――――

 僕の心の中にいる、データなら知っている……

 未知なる、他の世界の伝説の戦士の力―――――使いこなせるかはわからない―――――

 

 ―――――……でも!

 

 『躊躇している場合じゃない……!!』

 

 メモリアルが―――――東堂さんが危ない……!!

 僕は黄色いチップのラベルに描かれている、『P40』の、黄色いプリキュアに賭けた。

 

 ―――――僕に、彼女を助ける力を……!!

 

 『データ……この子の……このプリキュアの力は、どんな力……?』

 《キュアトゥインクルの力は、"星の力"を自由に使える力だな。素早さもなかなかだぜ?》

 『"星"…………か―――――』

 

 プリキュアの、『オリジナルの技』は、僕にはわからないけれど―――――

 でも、『僕ができる技』を駆使して―――――

 

 僕は―――――戦う!!

 

 意を決して、キュアチップを、スマホのスロットに挿し込んだ。

 

 『キュアチップ、『キュアトゥインクル』!!』

 《きらめく星のプリンセス!キュアトゥインクル♪!》

 《START UP! "LEGEND INSTALL"!!》

 

 右手を握って腰だめに構え、スマホを持った左手をガッツポーズに似せて構える―――――

 『星の力』から連想したこれこそが、僕の初めてのレジェンドインストール―――――!!

 

 

 ―――――(THREE)―――――

 

 ―――――(TWO)―――――

 

 ―――――(ONE)―――――

 

 

 『―――――キュアっと、変身ッ!!』

 

 

 スマホから、電子音声のカウントダウンが鳴り響き、次いで―――――

 

 《CURE-TWINKLE! INSTALL TO DATEAR!!》

 

 右腕を天に掲げた僕のインナーを残して、コスチュームが粒子状に分解して、黄金色のイーネルギーが僕の全身を包み込み、新たなコスチュームを形成した。それに、髪型も2本に枝分かれした大ボリュームに変わった。

 

 《INSTALL COMPLETE!!》

 

 体に流れる星のチカラ―――――

 そう、それは、紛れもない宇宙のチカラ―――――

 Space on my hand―――――

 

 この手で―――――宇宙を掴む―――――!!

 

   〈KAMEN RIDER BIRTH〉

 ⇒ 〈KAMEN RIDER FOURZE〉

   〈KAMEN RIDER METEOR〉

 

 《SPACE YOUTH! SWITCH ON!!》

 

 『宇宙…………キタアアアァァァァァ――――――――――――――――――…………………………(゚∀゚)…………………………――――――――――――――――――――ァァァアアアア!!!!』

 

 

 体中を駆け巡る銀河の輝きを解き放つように、僕は体を大の字に広げて叫ぶ。

 そして、氷のリングの真ん中にいるバグッチャーに、真正面から宣言した。

 

 『キュアデーティア、"トゥインクルスタイル"!!冷たい檻に閉ざされた"清き心"、返していただきますわ……!タイマン張らせてもらうから―――――』

 

 胸元を2度右の拳でたたいて、すっとその右手を差し伸べて―――――

 

 『お覚悟は……よろしくて?』

 

 ―――――………………

 

 な、なんだ、今の……!?

 女の子みたいな口調になってたし、なにかいろいろごちゃ混ぜになった口上を勝手に口走っていた……!!??

 

 『……………………(゚Д゚)』

 

 メ、メモリアルがこっちをみてこんな顔↑をしてるし……

 

 『ん?ボクが知ってるキュアトゥインクルの口上と違うねぇ。うろ覚えかい?』

 

 ネンチャックがおちょくってくるし……

 僕、なんかすごく―――――……

 

 『は……はずかしい……///』

 

 思わずマフラーで口元を覆ってしまった。どうなってるの、コレ……

 それにしても……あの口上の一部に組み込まれていたのは、仮面ライダーフォーゼの前口上だ。でも、ほとんどはこの間の戦いでメモリアルがこのチップでレジェンドインストールをした時の口上にそっくりだった。

 これって―――――僕の中の『ライダーの情報』と、キュアチップの『プリキュアの記憶』が、僕の中で入り混じっている影響なのだろうか……。

 

 《キュアデーティアと、ユナイトします!……な~んてネ☆》

 

 イーネドライブが黄金色に輝いたかと思うと、心の中のデータの部屋、その隣に新しい『部屋』があらわれて、チップに描かれていた女の子が出現した。

 

 《ほくと、だっけ?りんりんから話は聞いてるよ!……アタシたちのことをほとんど知らないらしいけど……大丈夫?》

 『ありがとう……キミの『本来の』技は知らないから、無茶な力の使い方をするかもしれないけど……』

 《……それならOK!いつも『同じ』って、つまんないじゃん》

 

 キュアトゥインクル―――――なんか、ノリのいい子だ。

 これなら、僕の考えている『戦法』にも、ついてきてくれるハズ!

 

 『……まずはメモリアルを助ける……突っ込むよ!』

 《どうするの?》

 『"ロケット"だ!』

 《ロケット!?》

 

 僕は右手の先に力を込めた。すると、星形の回転するエネルギーの円盤が輝きとともに現れた。そして―――――

 

 《ROCKET ON》

 

 スマホが、仮面ライダーフォーゼの変身ベルト『フォーゼドライバー』の電子音声を発した。

 同時に、星型エネルギーがまるでコーンのように変形して、僕の右腕全体に"装着"される。

 

 《これがロケット!?》

 『さすがに星の海までは行けないけれどね』

 《でもすごいじゃん!こんなの思いつかないよ!》

 

 これぞ、トゥインクルの星の力を応用して、仮面ライダーフォーゼのモジュールを再現した、名付けて『トゥインクルモジュール』!!

 その第一作目、『星型ロケットモジュール』を構えると、後部からきらきらと瞬く無数の煌めく粒子が、ジェット噴射のように放出されて―――――

 

 《ROCKET LIMIT BREAK!!》

 

 

ライダァァァロケットパアアァァァァンチ!!!!!!

 

 一直線に、敵陣へと突っ込む!並び立つ氷の兵士をあっという間に貫通し、粉砕して―――――

 

 『メモリアルーーー!!』

 『!』

 

 メモリアルは、僕の右腕に装着しているモジュールにつかまった。

 

 《やったぜィ!!》

 

 データの快哉の声が心地よく響く。

 

 『良かった……!』

 『デーティア、前!前~!!』

 『ぇ!?』

 

 あわてて前をうながすメモリアル。見ると、巨大な氷柱と化した校舎の壁が目の前に迫る!

 

 『うわぁぁ!?』

 

 寸前で直角に曲がると、校舎よりも高く飛び、校舎どころか大泉町を見渡せるほどの高度まで到達した。

 ここまで飛ぶなんて、予想外だ……

 と、そこでモジュールが星屑になって消えた。ということは―――――

 

 『きゃ!?』

 『危ない?!』

 

 落ちそうになるところでメモリアルの右手をつかんだ。でも今度はふたりで落ちてく!?

 

 『お、落ちちゃう~~!?』

 『大丈夫ッ……!!』

 

 そう、『モジュール』には、こんなのもある―――――

 

 《PARACHUTE ON》

 

 左手から3つの星型円盤を繰り出して、左腕と光のワイヤーでつないで、パラシュートを構成した。 

 アストロスイッチ7番、『パラシュートモジュール』。高高度からの降下用のモジュールだ。

 

 『助かったぁ……ありがと、デーティア』

 『ううん……キミが無事で、よかった』

 

 キュアトゥインクルの力と、仮面ライダーフォーゼの記憶―――――

 この2つの組み合わせの相性が良かったからこそ、彼女を助けることができた。

 ありがとう、トゥインクル、そして、フォーゼ―――――

 

 『……くしゅん!』

 

 なんだか冷えると思ったら、このトゥインクルスタイル、両肩の肌が完全に出てる。背中もワリと開いてるから、なんかやっぱりはずかしい……

 改めて、僕が『プリキュア』になっていることを思い知らされる。

 

 『私のトゥインクルスタイルと、ちょっと違う……』

 

 そういえばこの姿、デザインはこの間メモリアルが変身したトゥインクルスタイルと同じだけど、細部が微妙に違う。

 同じキュアチップで変身しているのに、この違いっていったい……?

 

 『でもすっごく似合ってる!とってもカワイイよ♪』

 『カワッ―――――……///』

 

 やっぱり、そういう反応だよね……プリキュアの第一印象って、『カッコいい』よりも『カワイイ』が圧倒的優勢だろうし……

 

 『で、でもでも!さっきの技、ちょーカッコよかった!あれって、仮面ライダーの技!?それをプリキュアの力で再現できるって、すごいよ!』

 『……そう、かな』

 

 メモリアルが―――――東堂さんが―――――

 カッコいいって―――――

 言ってくれた……?

 

 『デーティア、なれるよ!ホンモノに!子供たちを熱狂させられる、世界を守るプリキュアに!』

 

 僕が―――――『ホンモノ』になれる―――――?

 子供たちを熱狂させられて、世界を守れる―――――??

 カッコよく、子供たちを熱狂させられる、世界を守れる―――――

 プリキュアに―――――

 

 僕が……

 

 自分が―――――

 

 

 『()()()が……。なれるの……?』

 『…………?デーティア?』

 

 なんだか―――――うれしい……!

 パラシュートで大泉中学のグラウンドに降り立った時、わたしの心はもう一度宙に浮きそうだった……

 

 『メモリアル―――――わたし、わかった気がするの……わたしがプリキュアになった意味……わたしが……どんな『存在』になりたいのかが―――――』

 

 イーネドライブにそっと手を当てる。この中に内包されて、わたしのこの姿を形作っている『チカラ』を感じる。

 その『チカラ』で、わたしができること、するべきこと―――――その末にわたしがたどり着くヴィジョンが―――――

 

 "なりたいわたし"が―――――見えた気がして―――――

 

 『わたしだけにしかなれない―――――プリキュアに、なりたい!女の子だけじゃない……男の子も夢中にさせられるような―――――そんな、『ヒーローみたいなプリキュア』に、わたし、なりたい!』

 

 "仮面ライダーの技を使うプリキュア"―――――女の子も、男の子も、子供たちみんなのヒーローとして、この世界に流れる涙を祓う―――――

 ―――――そんな『ヒーロープリキュア』に、わたしはなりたい!!

 

 思わずわたしは、メモリアルの両手を取った。

 

 『メモリアル!わたし、がんばる!この世界に暮らすみんなのために!子供たちのために!』

 『デーティア……』

 

 ひとりだったらできないことでも、ふたりなら必ずできるよ―――――

 だって、わたしとアナタ―――――"ふたりはプリキュア"なんだから!

 

 《おいほくと!!また"引っ張られ"てんぞ!?お前は男だ!しっかりしろ~!!》

 

 ――――――――――!!!

 

 『………………あ……』

 

 データの声が、僕を『僕』に引き戻した。

 はっとして手元を見ると、メモリアルの両手をぎゅっと握っている僕の手が―――――

 

 『ごっ、ごめんっ!!///』

 

 あわてて手を放して、視線をそらす。

 顔が熱い……たぶん、真っ赤だ……

 なにやってんだ、僕……!?メモリアルの―――――東堂さんの言葉に舞い上がって、テンションが上がって……

 心までも『女の子』になってしまった僕を、メモリアルに見られてしまった……!!

 

 『ちが、ちがうんだ、その……さっきまでの僕は、僕だけど、あの、僕じゃなくって……ど、どう説明すればいいかわからなくって……』

 《どう、って、『変身してる時にハイになったら女っぽくなっちまう』だろ?簡単な話じゃねーか》

 『で、データぁっ!?』

 

 その通りなんだけど、こんなバカげたコト、一回聞いただけで受け入れてもらえるはずがないよ……

 ところが、僕がおそるおそる視線を向けたメモリアルは、なぜかニコニコしてて―――――

 

 『め……メモリアル……?』

 『うふふ……なんか、ちょっと面白いかな、って♪』

 『お、面白いって……大問題だよ、コレ!?無我夢中で戦ってたら身も心も女の子になっちゃうって―――――』

 『……でも、わかるんでしょ?自分が『男の子』だってコト』

 『!……それ、は……』

 

 確かに、覚えてる。

 記憶が飛んだりはしていない。口調や思考が『女の子』になっていても、自分が『八手ほくと』だという自覚はあるし、僕が男だということも忘れちゃいない。

 単純に、話し方や思考が変わってしまうだけに過ぎない。

 

 『だったら、こうしてプリキュアやってる時くらいは―――――"なりきっちゃっても"、いいんじゃないの?せっかく、プリキュアやってるんだし、さ』

 『……なりきる……』

 

 男のまま、女になりきる―――――

 それを聞いて、ふと思い出したことがある。スーツアクターの中には、女性が変身したヒーローや、着ぐるみ造形の悪の女幹部を演じる男性アクター―――――『女形』もいることを。

 "スーツアクターは『素顔』を出さない"ということを最大限に活かして、アクションに不慣れな女性をフォローすることができる利点がある。

 しかし、単純なアクターよりも演技の繊細さが求められる、より難易度の高い仕事だということも知っている。

 特に、数多くのヒロインや悪の女幹部を演じ、変身前のとある女優さんから『私よりも女らしい』とも言わしめた『双子の女形スーツアクター兄弟』は、今でも特撮ファンの語り草になっている。

 そんな高みに達するためには、僕もまたたくさんの経験を積み、男性的な動作、女性的な動作、その両方を研究して、会得する必要があるとも思う。

 

 ……これって、実はチャンスなのかもしれない……?

 男でありながら、女の子のヒロイン―――――『プリキュア』に変身する機会を得た僕は、考え方によっては『女の子らしさ』をより深く会得できると、云えなくもないはず……

 それなら―――――

 

 『『女の子の僕』を頭ごなしに否定するのも……よくないかもしれないな……』

 

 変に気張らなくてもいいのなら、戦う上では楽になる。

 この力で、世界を守り、人々の涙を祓って、子供たちの『夢』になる―――――

 そしてそれは、僕自身の『夢』にもつながっていくんだ―――――

 自然と僕は、マフラーで作った覆面を下ろした。『自分を偽る』ことも、しなくてもいい―――――

 

 『……やれやれ、まだ戦いは終わっちゃいないよ?ボクを差し置いて二人っきりで何話してんのサ』

 

 粘着質な声に振り返ると、氷の兵士を3~40体ほど引き連れたバグッチャー、そしてその横に立つネンチャックがいた。

 

 『ボクを無視すんなよ』

 『……そういえばそうだった……まず、お前たちをどうにかしなければいけないね……それなら―――――』

 

 僕は、もう1枚の緑色のキュアチップを手に取った。

 

 『正義の"風"が、悪を砕く』

 《わかんのか、ほくと……それって……》

 『公園で、メモリアが助けたプリキュア……でしょ?……風の力を持つプリキュアだってことは、わかるよ』

 

 風―――――それなら、"彼"の技を―――――否、"秘密の一つ"を、解き放つこともできるはず。

 そうすれば、この『氷のフィールド』を、根こそぎ破壊することだって可能だ。

 

 『キミの風の力……貸してくれ!』

 

 僕はスマホに、緑色のキュアチップをセットした。

 

 『キュアチップ、『キュアマーチ』!!』

 《勇気リンリン!直球勝負!!キュアマーチ!!》

 

 ネンチャックとバグッチャーを真正面に見据えて、僕はびしりとポーズを決めた。

 

 『キュアっと……変身!!V3(ブイッスリャアァァァァーーー)!!!!』

 

 《CURE-MARCH! INSTALL TO DATEAR!! INSTALL COMPLETE!!》

 

   〈MASKED RIDER 2〉

 ⇒ 〈MASKED RIDER V3〉

   〈RIDERMAN〉

 

 《POWER AND TECHNIC! DOUBLE TYPHOON!!》

 

 緑色の、所々に鳥の羽根のような意匠が施されたコスチュームに、僕は身を包んでいた。

 そして、両手にVサインを作り、右腕を縦に、左手の指を右腕の肘に突き立てた『逆L字』ポーズを取り、堂々と宣言した。

 

 

 『キュアデーティア!"マーチスタイル"ッ!!』

 

 

 "第3の男"―――――仮面ライダーV3を象徴するポーズ。

 ちょうどこの間、DVDで見たライダーだ。

 

 《お!こないだ見たV3か!!》

 

 ちなみに『仮面ライダーV3』のDVDは、データと一緒に見ていたので、データもV3のことを知っている。食い入るように見ていたのが、僕の脳裏にやけに残っている。

 ちょうどその時、データの『隣の部屋』のプリキュアが、トゥインクルからキュアマーチに入れ替わった。

 

 《データ、知ってるの?》

 《ああ!ほくとに仮面ライダーのことを教えてもらってな、DVDとかいっしょに見てんだぜ!》

 《ヒーローかぁ……ピースが見たら気に入るかもね》

 

 まだ助け出していない、仲間のプリキュアのことを思い出していたのかもしれない。マーチは少し、遠い目をした。

 ヒーロー好きなプリキュアもいるのか……早く会ってみたいな……

 でもそれはその時になってから考えないといけない。今は、まず―――――

 

 『マーチ……これからやる技は、僕とデータだけじゃない……キミにもかなりの負担を強いることになる……それでも、いいかな?』

 

 まさしく、最初からエンジン全開のフルスロットルで、エネルギーを絞り出すことになる"あの秘密"。まずは確認する必要があると思って訊ねたけれど。

 

 《もちろん!ほくとがやりたいようにやってみなよ!あたしはただ、手伝うだけだよ!》

 『……ありがとう』

 

 そう言ってくれるとありがたい。心置きなく、全力が出せる!

 

 『メモリアル、下がって』

 

 巻き込まれたら大変なことになる。僕はメモリアルを後ろに促した。そして。

 

 『この後のことは、頼むよ』

 

 後事を託した。

 そう、これは諸刃の剣―――――

 僕自身をも切り裂きかねない、荒ぶる暴風―――――

 

 『デーティア……?』

 『大丈夫。僕を……僕たちを、信じて』

 《ま……まさかアレをやるってのか……!?》

 『ああ……あれほどの大軍を一掃するには、これしかない!』

 《……わかった……!アタシも腹ァくくるぜ!!》

 

 僕は全身に流れる力を、両の掌に集中した。すると、両掌の上に緑色に輝く光球があらわれ、そこを中心に『風』が集まっていく。

 

 『風のうなりに血が叫びッ!!』

 《力の限りぶち当たるッ!!》

 『力と!!』

 《技の!!》

 

 『《風車が回るッッ!!!》』

 

 僕とデータの言葉とともに"風の輝き"が増し、二つの"暴風球"が気流の嵐を巻き起こし始める。

 

 『力と、技を……レッツ・ラ・まぜまぜ……!?』

 

 そんなメモリアルのセリフが聞こえた。今のって……?まぜまぜ……??

 と、ともかくだ!僕は僕の中のすべての"(エネルギー)"を、両の掌を繰り出すとともに、暴れ狂う嵐として吹き荒れさせる!!

 

 ―――――受けてみろ!!

 これぞ、仮面ライダーV3・26の秘密、其ノ十三―――――

 すべてを巻き込み粉砕する、力と技の大嵐!!

 

 『消し飛べ……!!』

 

 

逆ダブルタイフゥゥゥゥゥゥゥーーーンッッッ!!!!

 

 ――――――――――

 

    EX PLAYER CHANGE

 

 ⇒  CURE-MEMORIAL

    CURE-DATEAR

    ??????

    ??????

 

 ――――――――――

 

 デーティアが前にかざした両掌から、目にも見えるほどの激烈な嵐が解き放たれた。

 私はデーティアの後ろにいたけれど、それでもそのすさまじさが見て取れる。

 渦を巻く二条の緑色の暴風が、居並ぶ氷の兵士たちを薙ぎ払い、粉微塵に砕き、空へと還していく―――――

 それだけじゃない、氷の兵士が生み出されている『凍った地面』ごと、はぎ取るように破壊してる……!!

 プリキュアの力を使って、仮面ライダーの技を再現する―――――

 それが、ここまでの力を発揮するなんて……!!

 

 『ぐぅぅぅうぅ…………ッッ……!!』

 

 ぐら、と、デーティアがよろめいたように見えた。思わず私はその体を支えた。

 

 『大丈夫!?』

 『まだ……まだだ……!!全部……終わらせる、までは……!!』

 《マーチシュートを一度に何十発も撃つようなキツさ……だけど……!!》

 《ああ……相手はあのビューティだ……全力以上の全力……最後の一滴までパワーを絞り出さねぇと勝てねぇぜ……!!》

 

 マーチとデータのこらえるような声が、デーティアのイーネドライブから輝きとともに響いてくる。

 

 《(おやじ)よ……(おふくろ)よ……(レコ)よ……!!ほくとに……アタシたちに……力を貸してくれぇぇぇぇぇ!!!!》

 

 データの絶叫とともに、『暴風』は『爆風』へと転じた。

 ボォン!!という重々しい轟音とともに、2発の『衝撃波の砲弾』が螺旋状に回転しながら、グラウンド全体を抉った。

 土煙と、砕けた氷の粒が雑ざって舞った。暴れる風と土埃に、私は思わず怯んで、目を腕でかばった。

 

 風が凪ぎ、30秒ほどの沈黙―――――

 折からの吹き返しが土煙を払ったそこに広がっていたのは―――――

 

 まるで爆撃にでも遭ったかのように、砂利がひっくり返されて荒れ果てた、大泉中学のグラウンドがあった―――――……!!

 もちろん、氷の兵士も、それを生み出す凍った大地も、跡形もなく消滅していて、残っていたのはネンチャックと"ビューティバグッチャー"だけだった。

 

 『はぁ……はぁ……はぁ……ッ』

 

 デーティアは片膝をついて、息を弾ませながら肩を揺らしていた。額や顔に、ものすごい量の汗がにじんでる。

 

 『バ・バカな……ボクの美しい氷の兵士たちが…………!!』

 

 ネンチャックは頭を抱えて戦慄していた。

 それを見たデーティアは、息を切らせながらも見据えて―――――

 

 『だが、その美しさ…………日本じゃぁ、二番目、だ……―――――』

 

 こう切れ切れに言うと、デーティアは前のめりに倒れた。瞬間、レジェンドインストールが解けて、元の姿に戻った途端、全身から蒸気が放出される。

 ど、どうして日本じゃ二番目なの!?一番は!?

 って、そんなことツッコんでる場合じゃない!

 

 『で、デーティアぁっ!!??』

 

 血の気が失せていくのを感じて、私はデーティアの顔をのぞき込んだ。苦しげながら、この子は笑っていた。

 

 『ごめん、ちょっと無理、しちゃったかな……あとはお願い、できるかな……?』

 『お、おk!お願いされちゃいますっ!』

 

 デーティアの命がけの頑張りに、私の心も熱くなっていた。

 "ビューティバグッチャー"も、傷つきながらもどうにか立っている、そんな状態だった。見ていて、痛々しく思えるくらいに―――――

 

 『……優しくって、まじめで……何事にも一生懸命で……こんな『お姉さん』になれたらな、って……昔から思ってた……』

 

 ―――――一人っ子の私にとって、『青木れいかちゃん』は、憧れのお姉さんだった。

 もっとも、実際に同い年になった今でも、彼女には追い付けないな、って思うくらいの、届かない高嶺の花。

 でも、追い付けなくても、近づくことならできた。『一つの夢』に、まっすぐに―――――

 

 『私、迷わないよ。だって、私には夢があるから―――――『ホンモノのプリキュア』になるって夢が……!』

 

 辛いこともあるかもしれない。現に、こうして戦うことだって、正直キツいって思う。

 でも、夢は降って湧いて手に入る、そんなモノじゃない。プリキュアのみんなの物語を知っていればこそ、尚の事わかる。

 悪いやつらが、どんなに暗い闇や絶望を突き付けてきても―――――

 

 『私は……歩くことをやめない……!迷ってもつま先は前を向いてる……!千里の旅路も、一歩から始まる……!それに―――――』

 

 私は、デーティアをちらと見て、そっと笑った。

 

 『仲間が、そばにいるから』

 『……メモリアル……』

 

 そう、この心と体の痛みは無駄じゃない―――――

 

 『痛みは強さへと結晶する……!だから私は……ううん、私たちは、この『道』を進んでく!明日へ……未来へつづくこの『道』を!!』

 

 その瞬間、全身からイーネルギーが沸き立って―――――

 

 《CURE-MEMORIAL!! FULL DRIVE!!!》

 『タッピンスティック!メモリアル、ロッド!!』

 

 私の武器が、顕現する。

 でも、ここからが違った―――――

 

 《RELEASE FUNCTION RESTRICTION! "Ver.2.0"!!》

 『ふぇっ!?』

 

 髪飾りにあしらわれていた、キュアデコル。それが光を放って飛んできて、タッピンスティック・メモリアルロッドのコアにセットされた。

 そして今度は、キュアットサモナーから、呼んでもないのにキュアハッピーのキュアチップが呼び出されて―――――

 

 《PRECURE! SMILE CHARGE!!》

 

 ロッドのコアの下側のスロットから、吸い込まれるように入っていった。

 とたん、強烈なピンク色の輝きがあたりを照らす。

 

 『なに……なんなの~!?』

 

 光の粒子が、私のすぐとなりに集まっていって、人型のシルエットを形作ったと思うと、それが弾けた。

 その中から現れたのは―――――

 

 『キラキラ輝く、未来の光!キュアハッピー!』

 

 え……ええええええぇぇえーーーー!?!?!?!?

 なんか、素でオドロきました!!

 私のすぐそばに、今までチップの中やスマホやタブの画面の向こうにしかいなかったキュアハッピーが、アニメそのまんまの姿で出てきちゃったんだから!!

 

 『……あ、あれ!?どーなってるの!?』

 『ハッピー!ど、どーやって出てきたの!?!?』

 『そ、それがわたしも何が何だかさっぱり……』

 

 と、ともかく、何の意味もなくハッピーが実体化したとは思えないし、ふたりで協力して―――――

 と思ったら、私の頭の中に『情報』が走っていく。それはハッピーも同じだったみたいで。

 

 『りんくちゃん……ううん、メモリアル!』

 『おっけー!やろう!!』

 

 目を合わせてうなづくと、私の持つロッドにハッピーが手を添えて、ふたりでロッドを持つ形になった。

 それを天高く掲げて、私達は叫ぶ。

 

 『"電子のヒカリ"と!』

 『"未来の光"!』

 

 ピンク色の、二条の輝きが螺旋状に絡まって、ロッドの先端に集まっていき、それは巨大な光の剣と化した。それはどこまでも伸びていって、空の雲さえも突き破る―――――

 

 『『つなげて、導く、"無限の輝き"!!』』

 

 ふたりで同時に踏み込みながら、私達は長大な"光の剣"を、"ビューティバグッチャー"目掛けて振り下ろす―――――!!

 

 

プリキュア!!ハッピーメモリアル!!!

 

 天を貫く光の柱が、"ビューティバグッチャー"の脳天へと直撃した。

 立ち尽くしたまま、ピンク色の輝きの奔流に呑まれていくバグッチャー―――――

 

 ―――――その時、私は見た。

 イメージだったのかもしれない。でも、輝きの中に、確かにその光景はあった。

 

 ―――――バグッチャーの中に囚われているキュアビューティに、笑顔のキュアハッピーが手を伸ばすのを。

 

 

 『―――――助けに来たよ!……待たせちゃって、ごめんね……行こう、れいかちゃん!』

 『…………みゆきさん――――――――――』

 

 

 沈んだ表情のビューティの手をハッピーが握ると、ビューティの顔に笑顔が戻った。そして、ハッピーがビューティを連れ出すように、ふたりの姿は蒸発するかのようにかき消えた。

 その瞬間―――――

 

 『…………デリート……―――――。』

 

 根元から、バグッチャーの全身が消散していった。

 

 『く……くそぉ……出会う度に強くなって……このままじゃボクの立場も危ういな……!!』

 

 悔しげな表情を浮かべて、ネンチャックは自身を闇色の光に包んで消えていった。とたん、校舎を覆っていた分厚い氷が、粉々に砕け散るのが見えた。

 

 『スゴい!スゴいよさっきの!!まさかハッピーといっしょに技が出せるなんて……もうサイッコーにキュアっキュアだよ~!……って、ハッピー……!?』

 

 私の隣にいたハッピーの姿が、輝くイーネルギーの粒子に包まれていた。

 

 『あはは……わたしがこうしていっしょに戦えるの、この時だけみたい……でも……ありがとう』

 

 ハッピーは、その手に握っていたモノを私の手の中に、大切に渡してくれた。

 青色のキュアチップ―――――《P-28 CURE-BEAUTY》と書いてある、ビューティのチップだった。

 

 『わたしに、ビューティを……れいかちゃんを助ける、お手伝いをさせてくれて……うれしかったよ』

 『え?う、ううん……私も、どーしてこんなコトができたのか、ぜんぜんわかんなくって……』

 

 たしか、ハッピーを助けた時、私の髪飾りにくっついたキュアデコルが、メモリアルロッドにセットされて、ハッピーのキュアチップもロッドに……

 こんなこと、今までなかったのに。それに、他のプリキュアを助けた時には、こんなのくっついてこなかった。

 何か、秘密があるのかな……?

 

 『それじゃ、わたしはチップに戻るね……―――――』

 

 ハッピーの姿が消えて、残されたのはピンク色のキュアチップ。私は、それを拾い上げた。

 

 『私も……大感激だよぉ……』

 

 お礼を言いたいのは私の方。こんな夢のような時間が過ごせるのも、メモリアと、レジェンドプリキュアのみんなのおかげ。本当にありがとう―――――

 

 『やっぱり、すごいよ』

 『……デーティア……』

 

 にっこりと笑いかけるデーティアからは、さっきまでのキツそうな感じは見えない。

 

 『"プリキュア"って、こんな感じなんだなって……見ててわかった気がするよ』

 『いやいや~そんなぁ~♪』

 

 そんなふうに言われちゃうと、私、テレちゃいますよぉ~♪

 

 『デーティアこそ、カッコよかったよ!きっと、男の子も大好きになってくれる、カッコいい『ヒーロープリキュア』になれるよ!』

 『そう、かな……"この男、ヒーローで、プリキュア!"って、なんかヘンな感じだけど……』

 《いーんじゃねーの?そーゆー仮面ライダーもいるんだろ?ドライブだっけ?》

 《そーなの!?その"どらいぶ"って"かめんらいだー"、プリキュアなの!?》

 

 なんか、データやメモリアも会話にまじって収拾がつかなくなってきているような……

 

 『……おふたりの"道"……ひとつにつながったようですね♪』

 

 と、私が手にしていたキュアチップから、青色のイーネルギーがきらめいて、幻影のようなビューティの姿が浮かび上がっていた。

 

 『れいかちゃん!』

 『この子が……キュアビューティ……』

 『はじめまして、りんくさん、ほくとさん……見せてもらいました……おふたりの戦いぶり、お見事でしたよ♪』

 

 スマプリでも最強クラスのビューティに褒められて、ますます私、キュアっキュアになっちゃいます……♪

 

 『これから、どんな困難が待ち受けているか、わかりません……困難極まるこの"道"の途中、躓くことがあるかもしれませんが……決して諦めないでください。私の氷の力も、困難を打ち破る一助になると思います……どうか、プリキュアの皆さんのこと、サーバー王国のこと……よろしくお願いします』

 

 真剣な表情で懇願するビューティに、心身ともに引き締まる思いがした。デーティアも思いは同じだったのか、神妙な面持ちで聞いていた。

 幻影のビューティが消えて、手元に残ったキュアチップ。今までで一番大変だったかもしれない分、感慨もひとしお。思いっきり、私はキュアチップを天に掲げた。

 

 『キュアビューティ、キュアっと!レスキュー!!』

 

 これで、8人目。

 そして―――――

 ようやく私達が、"ふたり"で通じ合って戦って、初めて手に入れることができた、記念すべきキュアチップ。

 千里の"道"の―――――第一歩目なんだ―――――

 

 ――――――――――

 

    PLAYER CHANGE

 

    LINK TOUDOH

    CURE-MEMORIA

 ⇒  HOKUTO HATTE

    CURE-DATA

 

 ――――――――――

 

 授業は途中で打ち切りになって、みんながぞろぞろと学校を後にする中、僕はドサクサ紛れに東堂さんに校舎裏に呼び出された。

 こうして、改まって対面すると―――――なんだかテレる。

 でも、今日、僕は彼女から大切なことを教えてもらったんだ―――――

 

 「今日は……本当にありがとう……私、とってもうれしかった!だって、八手くんといっしょに戦えて……本当の意味で、"ふたりはプリキュア"になれたんだもん……!」

 「僕こそ……その……『僕がプリキュアでいい』って言ってくれて……」

 

 彼女となら、僕はいっしょに戦える。

 互いの背を預けて、互いを信頼して、互いを認め合って―――――

 『好きなコト』に一生懸命になれる彼女は、まるで僕の写し身。

 

 僕は―――――この子を好きになって―――――本当によかった―――――

 

 「これから、どんなコトが起きるか……どんな敵が現れるかわからない……でも、あなたとなら、私、キュアっキュアでいられる!これからもよろしくね―――――」

 

 彼女は、僕に手を差し伸べながら言った。

 

 「"ほくとくん"!」

 

 ―――――!!!!

 

 一瞬、幻聴でも聞いたんじゃないかと錯覚してしまった。

 い、今、僕―――――

 

 ()()()()()って、呼ばれた―――――!?

 

 「……どしたの?」

 「い……いや……ちょっと、びっくりして……いきなり名前で呼ぶって……その……」

 「だ、ダメ……?これからふたりでがんばるんだから、ちょっとでも距離感近い方がいいかなーって……ほくとくんも、私のこと"りんく"って呼んでよ?」

 「そ、それはダメ!まだ、ダメ!!……そ、それよりも早く下校しないと……先生に怪しまれるよ!!行こう、東堂さん!!」

 「ちょ!?ちょっと待ってよぉ!?ほくとく~ん!!??」

 

 あぁ―――――この日は間違いなく、僕の記憶に一生残る日だ―――――

 僕の好きな人のいろんな一面―――――僕の脳裏に焼き付けられる、鮮烈な思い出。

 まだ―――――僕はキミのことを名前で呼ぶほど、近づけたとは思えないけれど―――――

 でも―――――

 

 僕のことを、受け入れてくれたキミに、少しでも応えられるよう―――――

 みんなにとっての『ヒーロー』に、少しでも近づけられるように―――――

 僕は戦う―――――

 

 この世界を守る―――――プリキュアとして―――――

 

 

 ―――――STAGE CLEAR!!

 

 RESULT:CURE CHIP No.28『CURE-BEAUTY』

 プリキュア全員救出まで:あと43人

 

【挿絵表示】

 

 TO BE NEXT STAGE……!

 

 !!!WARNING!!!

 NEXT INTERCEPT IS LEADER PRECURE!!!

 

 『ふたりの奇跡!』

 

 『魔法つかい!プリキュア!!』

 

 

 ――――――――――

 

    PLAYER CHANGE

 

 ⇒  LINK TOUDOH

    CURE-MEMORIA

    HOKUTO HATTE

    CURE-DATA

 

 ――――――――――

 

 「さ~てと……寝る前にプリキュア板、チェックしなきゃ♪」

 

 今日は私にとっての新たなる記念日になった……♪

 ワケだけど、それでも寝る前にこれだけは欠かせない掲示板チェック。

 タブからキュアネットのブラウザを開いて、ブックマークからリンクを開いた。

 

 「………………え」

 

 いつものプリキュア板を開いた私は、目が点になった。

 ディスプレイにはこう表示されていた―――――

 

 〈404 Not Found〉

 

 つまり、『このページは存在しません』ということ。

 でも、どうして!?昨日までは確かにアクセスできたのに……

 

 《ページ、なくなっちゃってるね……》

 

 メモリアが首をかしげながら、ディスプレイの隅で言った。

 

 「う~ん……どーしてだろう?」

 

 管理人さん、何かあったのかなぁ?

 それとも、HDDか何かが壊れちゃったとか……?

 

 《ふぁぁ~あ……ねぇりんくぅ……あたし、もうネムネム~……(~_~)》

 

 大きなあくびをするメモリアを見て、私も眠くなってきた。戦いがあった日の夜はいつもこう、疲れが身に染みるんだよね……

 

 「そうだねぇ……寝よっか。おやすみ、メモリア、みんな……」

 《おやすみなさぁ~い……》

 

 メモリアが手を振って、タブの電源を切ってくれた。

 そして私もベッドに潜ったわけだけど―――――

 

 このとき、私は予想だにしていなかった。

 この『プリキュア板の消失』こそが、私達の戦いに変化をもたらす兆しだったことを―――――

 

 そして、気づいてもいなかった―――――

 

 『この戦い』が、『プリキュアVSジャークウェブ』という単純な構図なんかじゃ、なかったことさえも―――――




 ―――――りんくの『今回のプリキュア!』

 りんく「今回のプリキュアはだ~れだ?」

 『しんしんと降り積もる……清き心……!キュアビューティ……!』

 データ「『スマイルプリキュア』のサブリーダー、"冷綺(れいき)のビューティ"!属性はひえっひえの『氷』!」

 りんく「まじめでおしとやかな七色ヶ丘中学校の生徒会長、青木れいかちゃんが変身した、氷の力を操るプリキュアだよ!」

 データ「そんなビューティのキメ技はコレだぁ!!」

 『プリキュア……ビューティブリザーーーード!!』

 データ「氷の力を吹雪にして撃ち出すビューティブリザード!マグマさえも凍らせる絶対零度の技だ!!」

 りんく「今日は『最強のプリキュア』を目指してるデータが来てくれてるんだけど……当然、これからビューティと戦うかもしれないんだよね?何か攻略法あるの?」

 データ「トーゼン!!ビューティだって女の子なんだから、甘いモノには目がねぇと思うんだ。そこでだ、まずは甘いモノでおびき出す!!例えば……プリンとか……」

 ビューティ「プリン!!!(☆ ☆)」

 りんく「このコーナー始まって以来初!!まさかのご本人登場っ!?!?」

 データ「ビ、ビューティ!?どーしてここに!?」

 ビューティ「プリンと聞いて、いてもたってもいられず……嗚呼、プリン……なんと甘美な響きなんでしょう……」

 りんく「れいかちゃん、なんかキャラが違うような……」

 ビューティ「ところでデータ……前にお城の冷蔵庫に置いておいた、キラキラパティスリーの『りすプリン』……いつの間にかなくなっていたのですが……あれはいったいどちらに……?」

 データ「あ!……あ~……そうだ!アタシ、ほくとと仮面ライダーのDVD見る約束してんだよ、じゃ、じゃぁ……」

 ビューティ「お・待・ち・な・さ・い」

 データ「に、逃げられねぇ……!!背筋も凍るこの感覚、これが氷の力かッ……!?」

 りんく「あ……ダメだこりゃ。データがビューティに勝てるのはいつになることやら……それじゃ、ほくとくん、ヨロシク!」

 データ「出来心だったんだよぉぉぉぉぉぉ~~!!」


 ―――――ほくとの『レッツゴーライダーキック!!』

 ほくと「つまみ食いはダメ、ゼッタイ!そんなわけで、今回はこの技からだ!!」

 フォーゼ『ライダーロケットパアアァァァァンチ!!!』

 ほくと「仮面ライダーフォーゼが、ロケットモジュールを装備して繰り出す『ライダーロケットパンチ』!攻撃だけでなく、移動手段に使える便利な技だ!」

 メモリア「"ふぉーぜ"って、変わった名前だね」

 ほくと「『仮面ライダーフォーゼ』は、仮面ライダーシリーズ生誕40周年記念作品なんだ。だから、『変身』を意味する『メタモル"フォーゼ"』と、『40("フォー・ゼ"ロ)』から名前が採られているんだ。彼が使うツール"アストロスイッチ"の数も40個……とことん『40』にこだわったライダーなんだ」

 メモリア「トゥインクルも『40人目』のプリキュアなんだよね。偶然ってすごい!」

 ほくと「その40人目のプリキュアが『星の力』の使い手だったことにも、運命を感じるよ……次はこれだ!」

 V3『逆ダブルタイフーン!!!!』

 ほくと「仮面ライダーV3、『26の秘密』、その13……それがこの『逆ダブルタイフーン』だ!変身ベルト『ダブルタイフーン』を逆回転させることで、全エネルギーを放出して敵を粉砕するV3の切り札なんだ!」

 メモリア「デーティアが使ったのもすごかったよね!それなら、あればっかり使ってればラクショーなんじゃないの?」

 ほくと「ところがそうもいかない……V3がこの機能を使うと、向こう3時間、変身できなくなってしまうという弱点もある……初めてこれを使った風見志郎さんは、次に怪人と遭遇した時に変身できず、ピンチに陥ったこともある……まさしく諸刃の剣だ」

 メモリア「データって、"ぶいすりー"のことが好きなのかな?とっても熱心に見てるみたいだったけど……」

 ほくと「それは……データが、風見さんと自分を重ねて見てるからだと思う……風見さんも、デストロンの怪人・ハサミジャガーに両親と妹さんを殺されてしまった……僕も、データの話を聞いたとき、真っ先に思い出したのはV3……風見さんだった。データにとっては、画面の中のV3は、他人とは思えないんだろうね……」

 メモリア「マーチも、お父さんとお母さんや、弟や妹のことを話してくれたことがあるんだ」

 ほくと「そっか……あの時のマーチも、両親や兄弟たちから、力を貸してもらっていたのかもしれないね……」

 メモリア「みんなが早く、サーバー王国や元の世界に戻れるように、あたしもがんばらなきゃ……!」

 ほくと「それじゃ最後に僕達との約束!よい子のみんなは、仮面ライダーの必殺技を絶対にマネしちゃいけないよ!」

 メモリア「は~い!……あれ?なんかマネできそうな気もするけど……」

 ほくと「それじゃ次回も、お楽しみにっ!!」

 ――――――――――

 『レジェンドインストール+仮面ライダー』という組み合わせによって、キュアデーティアは無限に強くなれる!!……たぶん。

 さて、今回は次回予告がございません。というのも、次回から新章突入ということで、近日中に『新章予告編』を投稿し、そこで次回予告を載せようとも思っておりますので、しばらくお待ちを……

 『本家様』ではまず出てこないようなヒトたちが、ついに表舞台に姿を見せます……!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。