というのも、キュアデータの回想を書いてたら、思った以上にデータに感情移入して書いたばかりに文字数が大増量しちゃいまして、3部作の予定でしたが、間に1本はさむことにしました。
というワケで今回は、データがどうしてプリキュアになろうと思ったのか……そして『第二次ジャークウェブ侵攻』の際、データは何を見たのか……―――――
『もう一つのプロローグ』を、緊急送信します―――――
2017.4.22 前回と今回の展開上でトンでもない矛盾点を見つけてしまったのでちょっとだけ修正。
NOW LOADING……
はじけるレモンの香り!キュアレモネードです!
バグッチャーに囚われていたわたしを助け出してくれたキュアデータ。
おどろきました……まさかデータのユーザーになってくれたヒトが、男の子だったなんて……
「
《なるほど……スーパー戦隊みたいだね》
《心無き単なる『力』に、心ある『プリキュア』であるキミが、負ける道理は無いってことさ》
絶対記憶の力を持つデータと、相手の技の見切りに長けるほくとさん―――――
おふたりの相性はバツグンですね!
でもこの先どうなるか……それに、おふたりが"あのこと"を知った時も考えると……なんだかフクザツです……
気をつけてください……!ネンチャックは卑怯な手で、おふたりを狙ってきます!
わたしは……少ししか力を貸すことができませんけど……それでもわたしは信じます……!
運命のその先が、奇跡に向かっていることを―――――
もう一度"その日"が来るまで―――――わたしもがんばります……
のぞみさん、りんさん、こまちさん、かれんさん、くるみさん―――――
おふたりとわたしに、ほんの少しでもいいですから……"想い"を、貸してください―――――!
『インストール@プリキュア!』―――――
勇気のドアが、今、開きます―――――!
――――――――――
BACK LOG HOKUTO HATTE
――――――――――
帰りの車の中で、助け出したキュアレモネードさんが僕に
データはスマホの画面の隅で、体育座りをしてうつむいていた。
LEMONADE〈……データがプリキュアになった理由……ほくとさんは聞いていなかったんですね……
HOKUTO〈うん。きゅあれもねーどさんはしってるの?
LEMONADE〈ええ……あ、それと、わたしのことは『レモネード』か、『うらら』でいいですよ♪
うらら……あぁ、そうか。ライダーや戦隊のメンバーといっしょで、彼女は普通の女の子がプリキュアに変身しているんだ。だから、彼女にも本当の名前があって、それが『うらら』、というわけか。
HOKUTO〈それで、れもねーど、でーたがぷりきゅあになったりゆうって?……それと、いいの?でーたじゃなくて、れもねーどがはなしてしまって……
本来、これはデータ本人から聞くべきことだ。僕だって、『彼女から話してくれるまでは詳しく訊かない』と、データに話していたから。
LEMONADE〈いいんですか?データ……
データは画面の中でちら、と僕の方を見て、ひとことだけこう書いてきた。
DATA〈……今は、ちょっとひとりにしてくれ……あのコト話すなら、話していいぜ
神妙な面持ちでレモネードはうなづくと、僕を見上げた。
LEMONADE〈データがプリキュアになった理由は……妹さんのため、なんです……―――――
――――――――――
それからレモネードは、データがどうしてプリキュアになろうとしたのか、その理由を教えてくれた。
データの妹・レコは、生まれつき体が弱く、それが原因でいじめられていて、データがそれをかばっていた。
でも、その時はデータも腕っぷしが強い方ではなく、力の強い年上のアプリアンに叩きのめされていたらしい。
―――――アタシが強くなれば、レコもいじめられなくなる―――――
そう考えたデータは、プリキュアになりたいから、一緒に頼み込みに行こうと誘ってきたメモリアに乗る形で、メインサーバーキャッスルへと赴いたという。
データがプリキュアになるべく修行を始めたという報せが国中に広まると、レコに対するいじめも無くなった。
この時点で、データがプリキュアになる上での目標が達せられたことになるのだけれど―――――
データを指導したキュアホワイトからレモネードが伝聞したことだけれど、その当時のデータはこう言っていたらしい。
―――――今さら途中辞め……なんざ出来ねぇよ。"お師さん"もそうだけど、アタシを信じて送り出してくれた親父やお袋……それから、レコ……みんなの想いを、ないがしろにゃできねぇんだよ―――――
最初は、妹のために強くなろうと思ったデータ。でもそれは、修行の中で別の目標に変わっていったんだ。
―――――エコーが言ってたんだ。『女の子は誰でもプリキュアになれる』んだってさ。こんなヒネたアタシでも、プリキュアになれるって……だったらさ……アタシみたいにヒネてるこの国のガキ連中に、ちょっとでもイイとこ見せてもいいかなって……そう思ってる―――――
ちなみにこの言葉を言った後、データはたいそう顔を真っ赤にしていたとか。
新しい目標ができたデータは一人前のプリキュアになるための修行をやめることはなく、キュアホワイトが課した2年間の修行を、見事完遂したのだった―――――
――――――――――
帰宅した後、部屋に戻って、その後の話をあらためてレモネードに聞こうとしたときだった。
《こうしてプリキュア見習いになったデータですけど……でも……あの日……》
《そこからは……アタシが話すよ》
いつの間にか、データがレモネードの隣に立っていた。
「……その……ごめん、データ……」
思い出してショックを受けていたようだったから、"それ"をデータに思い出させてしまったうえ、本人の口から言わせてしまうことに、僕は抵抗があった。でも、データはまっすぐ僕を見上げてきた。
《いいさ……いずれ……話すつもりだったからな……いい機会だって思っただけさ……ココロの整理もついたしよ》
《データ……》
申し訳なさそうに視線を下げるレモネードに、力なくもデータは笑いかけた。
《……そんなカオすんなよ、レモネード……アンタ達のせいじゃない……》
データはレモネードに気遣う言葉をかけた後、遠くを見つめて話し始めた。
《……アタシは―――――》
――――――――――
BACK LOG CURE-DATA
――――――――――
前の日、アタシは"お師さん"の家に泊まって、早朝にランニングがてら、走って村へと戻ろうとしてた。
もうすぐ村が見えると思ったその時、急に村の方向が明るくなった。日の出かと思ったけれど、時間が早すぎるし、何より方角も全く逆だった。
早鐘を打つ胸の鼓動に急かされるように、急いで村の入り口にたどり着いた時には―――――
―――――アタシの村が、燃えていた。
「…………みんな……!!」
アタシは逃げ惑うアプリアンのひとりを呼び止め、何が起きてるかと訊ねた。
「ジャークウェブが、また攻めてきたんだ!!」
「プリキュアのみんなが戦ってくれてるけど……押されてるみたいで……!」
ジャークウェブ…………!!
その言葉を聞いて、アタシは
親父やお袋からの話や、学校の授業でしか聞いたことが無かった、アタシが生まれる前に、この国を侵略しようとした闇の軍勢。
そいつらが今頃になって、どうして……!?
また、向こうの家で火の手が上がる。アタシは「早く逃げろ!!」と急かすと、その家へと駆けだした。
そこにいたのは―――――
「…………バグッチャー……!!」
写真や映像でしか見たことのなかった、ジャークウェブの使いッ走りウィルス。それが3体、火の手が上がる家をメチャクチャに破壊しているのを見た。
「コイツ……ら……!!」
アタシは拳を握り、目の前の炎にも負けないくらいの怒りを込めて、間近にいたバグッチャーに踏み込みながらのパンチを叩き込んで、立て続けにイーネルギーを込めた廻し蹴りで蹴り飛ばした。光とともに消滅するバグッチャーだったけど、今度は残った2体がアタシになだれ込んできた。
「ッ……!!」
こういう時、"お師さん"なら……プリキュアなら、どうするんだ……!?逃げるわけにはいかない、でも……!!
判断が遅れたアタシに、2体のバグッチャーの同時パンチ。片腕ずつでどうにか止めるけど―――――押される……!!
背中に迫る、燃え盛る家。激しい熱が、アタシの背中を撫でてくる―――――
「ちくしょォ……!!何が起きてんのかわからねえまま…………!!」
やられて、死ぬのは、ごめん、だ…………ッ……
「プリキュアッ!ファイヤーストラァァァァイク!!!」
「プリキュア!サファイアアローーーッ!!!」
凛々しい吶喊が降ってきた刹那、紅蓮の火球と高水圧の矢が、2体のバグッチャーの脳天を射抜いて、蒸滅せしめた。
唖然とするアタシの前に降り立ったのは、真紅と紺碧の戦士だった―――――
「……キュアルージュ……キュアアクア…………!」
思わずその名を呼んでいた。レジェンドプリキュア―――――プリキュア5のメンバーのふたり―――――
「データ、無事!?」
ルージュの問いに、アタシは気を取り直しながら、「お、おう……!」と、何とか返事をした。
「ここは私達が食い止めるわ。貴女は村の人たちの避難をお願い……!」
アクアが言葉を飛ばしてくる。見ると、そのアクアも、ルージュも、全身に大小の傷を負っている。アタシは無事だけど、2人は無事には……とても見えない。
「アンタ達は……!」
駆け出そうとするふたりに、アタシは思わず叫んでいた。
「アンタ達は大丈夫、なのかよ……!?その傷……どうして……!」
振り返ったルージュは、ニカッと笑うと、アタシのアタマをくしゃくしゃっと、乱暴に撫でて、こう言った。
「アタシ達の心配よりも、まずあんたは、村の人たちの心配をしてあげなよ!……こんなの、かすり傷よ!」
「気を遣ってくれるのは嬉しいわ。でもまずは、プリキュアとして……守るべきモノのために、貴女の力を使いなさい……いいわね?」
優しい視線を向けながら、プリキュアとして何をするべきかを説くアクアに、心打たれるとともに、アタシは少し気圧された。
「……ルージュ……アクア……」
その時、また爆発音がした。そしてその方角は―――――
「ウチの方だ……!」
反射的に、アタシは駆け出していた。
「データ!」
「待ちなさい!データっ!!」
ルージュとアクアが止めるのも、アタシには聞こえなかった。
――――――――――
アタシが"そこ"に辿り着いた時には、もう、アタシの家は原形をとどめていなかった。振り返るバグッチャーが、アタシを捉える―――――
「―――――――――――――――」
怒りが、アタシの中に浸透する。
家々が燃える熱が、アタシの怒りを増幅する―――――
見慣れた光景、住み慣れた家、聞き慣れた声―――――
それらがすべて、"暴力"で奪われる理不尽に―――――
「おおおううあああああああああああアアアアアアア!!!!!!!!」
五体全てが怒りで爆発しそうだった。アタシはバグッチャーに容赦のない拳と蹴りの乱打を浴びせ、最後に仰向けに倒れた相手の心臓部に、まっすぐに貫手を突き刺した。プログラムの残滓が、噴水のようにバグッチャーから噴き出た。
「……親父……お袋……レコ…………!!」
アタシは燃え盛る家の跡に取って返して、初めて"それ"を―――――
「…………ッッ―――――」
目にしてしまった―――――
親父とお袋は燃える瓦礫の間に挟まって、ピクリとも動いていなかった。レコは―――――その親父とお袋の間で守られるように、大好きだったぬいぐるみを抱いて、まるで眠るように―――――
「……………………ただいま」
一歩、そして一歩。アタシは『家』へと帰っていく。
「親父…………お袋…………帰ってきたよ…………レコ…………お土産あるんだぜ……?イーグレットが、マスコット作ってくれたんだ…………ほら…………」
レコがこういうのが好きなのを知ったキュアイーグレットが、わざわざ手作りしてくれたマスコット。懐から取り出して、『見せて』やる。
―――――そんなところで寝てるなよ。"あの"イーグレットの手作りだぜ?絶対喜ぶに決まってる…………
「データっ!ダメぇっ!!」
その叫び声とともに、後ろから羽交い絞めにされて、アタシは―――――"戻った"。
アタシは、その羽交い絞めにしたヤツに、殺気を投げつけながら振り返った。力が抜けた。
ぽとりと落ちたマスコットに火の粉が落ちて、炎に燃えた。
「…………キュア、レモネード…………?」
両目に涙を溜めたレモネードが、"行きかけた"アタシを、止めてくれていた。そして、それとほぼ同時に―――――
アタシの生まれ育った家が―――――炎とともに崩れおちた。その瞬間、アタシは確かに見た――――――――――
親父とお袋―――――そして、レコが、炎と瓦礫に呑まれるのを―――――
「…………あ…………あ…………あぁ…………ァ…………あぁ……ぅ………………あ、あぁ………………」
無力と怒りと悔恨に―――――
「 」
アタシは、声にならない叫びをあげていた。叫び終わると同時に、地面に崩れ落ちた。
「ごめんなさい…………本当にごめんなさい……わたし……守れませんでした……データの家族も、この村も…………」
「……………………ッッ!!」
ナニかもわからない衝動に駆られ、アタシは右手でレモネードの襟元を掴んでいた。
「……それは……違うんじゃないかしら―――――」
その声に向かって、振り向きざまにアタシは左ストレートを放っていた。でもそれは、"指一本"で止められた。そこでアタシは、ハッとした。全身に傷を負い、土と煤にまみれ、コスチュームのところどころを血に染め、炎に焦がした、緑色のシルエットを見た―――――
「キュア…………ミント」
この時のミントの顔は、未だに頭から離れない。ミントは、凛とした表情のまま―――――両の目から涙を流していたのだから。
「無力に悔しさを感じているのは、貴女だけじゃないの……ワタシも、レモネードも、みんなも同じ……」
「けど……けどアタシは……何もできなかった…………あげくの果てに親父もお袋も……レコも守れずに……!!」
八つ当たりをしてるわけじゃない。誰のせいでもなく、これはジャークウェブのせいだというのはよくわかってた。でも、アタシは訊かずにはいられなかった。
「ドリームは……―――――?」
「え……?」
「ドリームはどこ行ったんだよ……?アンタ達の……プリキュア5のリーダーの、キュアドリームはどこ行ったんだよ!!」
村の中に、キュアドリームの姿が無い。今まで出会った4人のプリキュアたちを指揮するべきリーダープリキュアがいないことに、アタシは合点がいかなかった。
「ドリームは、クイーンをお守りするために、メインサーバーキャッスルに行ったわ」
炎に染まる空から降り立ち、そう言ったのは、紫色の髪の戦士―――――
「ミルキィローズ……!そりゃどういうことだ……!?」
「メインサーバーキャッスルに、敵の軍勢が押し寄せてるの……!他のリーダープリキュアたちも、お城に集まってるわ」
プログラムクイーンの身に何かある時―――――それは、この国の終わりだ。
プリキュアは、クイーンを守ることも重要な使命なんだって、"お師さん"から教わっていた。
「ローズ……ミント……レモネード…………アタシ、行くぜ」
「行くって……まさかあなた……!!」
このまま終わらせて、たまるか―――――
大切なモノ、大切な人、大切な家族―――――
そして、大切な、絆――――――――――
全部を奪ったヤツに―――――このアタシが、落とし前をつけさせてやる…………!!
そうしなきゃ…………親父も、お袋も、レコも、死んだみんなも、浮かばれやしない…………!!!
怒りと哀しみだけじゃない。いろんな
行 け
「村を守ってくれたこと、感謝するぜ……プリキュア5に守ってもらえて、みんな、うれしかったろうよ…………あとは、頼むぜ」
「データっっ!!!」
レモネードの声が、切なく胸にひびいてきた。それを振り切るように、アタシは駆け出した。
故郷に後ろ髪を引かれないよう、全力で―――――
炎と熱を、振り切るように―――――
――――――――――
BACK LOG HOKUTO HATTE
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《あとは前に言った通りさ……城でアタシはバグキュアってふたり組にボコにされて、プリキュアたちも全員キュアチップにされちまって……アタシはメモリアといっしょに、命からがら国を出て……―――――》
―――――ぽた、ぽた……
《って、ほくとお前、また泣いてんのかよ……》
今まで知らなかったデータの過去。それもこの出来事は、わずか数ヶ月前の出来事―――――
また―――――僕は泣いていた。涙のしずくが、スマホの液晶に落ちる。
「ごめん……僕は……何も知らなくって……それなのに、軽い気持ちで、ユーザーになる、なんて言って……僕は……」
《それぐらいでいいのさ……ヘンに同情されんのも願い下げだし。……でも、悪いって思ってる……お前にも、いろいろ背負わせちまうみたいでさ……》
僕は涙をぬぐって、首を横に振った。
「悪いなんて、そんなことないよ……!その気持ちは……今だから、痛いほどわかる……!キミは……家族のために……!」
《それもある……親父とお袋……レコの仇を討ちたいことに変わりはない……けど、でも、そんな個人的なコトよりも、大事なコトがあんだよ。"お師さん"とキュアブラックに、託されちまったからな……サーバー王国と、この世界のコト……アタシは……プリキュアなんだからさ》
「データ……」
《よかったぜ♪お前のお袋さんと妹が無事でさ……もう、アタシのような思いを誰かにさせるのは、ゴメンだかんな……》
ジャークウェブに、この子はすべてを奪われた。
愛する人も、帰るべき場所も―――――今まで彼女のアイデンティティをつくった、"すべて"を―――――
そして僕も今日、家族を奪われるかもしれない恐怖を知った。だからこそ、彼女の想いに共感ができる。
でも彼女は―――――そんな怒りや悲しみや恐怖すら乗り越えて、プリキュアとしての使命を果たそうとしているんだ……
「キミは―――――本当のヒーローだよ」
《……ん?》
自然と、口から出ていた。
「怒りも、悲しみも、怖さも……すべてを力に変えて、世界を守ろうとしているキミは……本当のヒーローだ……」
《……ほくと……》
驚いたような表情を浮かべたデータは、すぐにニッと笑った。
《お前だって、そうじゃんか》
「……え……?」
《お前も、家族や街のニンゲンたちがひどい目に遭った時……怒りの炎を心で燃やした……迷わず、アタシに力を貸してくれた……お前だって、最高のヒーローだぜ?》
「……でも僕は、こんな泣き虫で、見てるだけしか出来なくて……」
《うんにゃ……お前には、お前にしか出来ないことがあるんだ……お前の見切りとアドバイスが無きゃ、アタシは勝てなかった……もっと、自信をもっていいんだぜ》
そう言ってもらえると、なんだかテレる。僕はただ、無我夢中だっただけで―――――
《おふたりを信じてもいいかも……ですね♪》
見ると、レモネードの姿が少しずつ薄くなっていっていた。
「!レモネード、姿が……!」
《時間が来てしまったようです……キュアチップの中で、ちょっとお休みさせてもらいますね》
《……もう話せないのか……?》
《いえ……キュアチップを使えば、いつでもお話できますから……―――――ほくとさん》
レモネードは、僕を見上げて言った。
《……この先どんなことが起きても……データを信じてあげてくださいね》
もちろん、そのつもりだ。でもこの時のレモネードは、どこか心配げな表情を浮かべていて―――――
やがてレモネードの姿が画面から消えて、スマホの側面、メモリーカードを入れる場所から、黄色い板のようなメモリーカードがカシャッ!と排出されてきた。これがキュアチップ……なのか。
「……データ。これから先、僕に何が、どこまで出来るかはわからない……でも―――――」
僕は、液晶画面の上に立つデータに、人さし指を差し出しながら誓った。
「キミにとっての世界一の相棒であれるように……僕は僕なりに……戦うよ」
データは勝気な笑みを僕に向けて、僕の人さし指に拳を当てながら―――――
《ああ!これからもよろしくな、アタシの、"世界一の相棒"!!》
この日、身近に迫った恐怖と脅威―――――
身をもって体験した"それ"は、僕の心を決めた。
もう誰も、悲しい思いをしないように。
もう、データが体験した悲劇を、二度と繰り返させないために―――――
―――――守ってみせる。僕の大切な人々と、みんなが暮らす、この世界を―――――
……SAVE POINT
誰かにとっての、自分にとっての、『真のヒーロー』になるために―――――
ほくととデータの戦いは、始まったばかりです。
次回、少年は"ヒーロー"として覚醒します……!