艦隊これくしょん その刀は誰が為に   作:幻在

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ついに川内がキタァァァァァァアアアアア!!!!!
そして念願の大型建造だぁぁぁぁぁあああああ!!!!!
だけど出たのが二人目の陸奥だぁぁぁぁああ!!!
畜生おおおおおおお!!!!

では本編どうぞ。

そして江ノ島また敗北したぁぁぁああ!!!!


明治の街『黒河市』

今まで、月日の概念を忘れていたが本日は、決闘の翌日、二月七日だ。

そして、時刻はマルロクマルマル――――午前六時。

指令室。

そこには、執務机に提督である天野 時打。

その正面には、川内、神通、天龍の軽巡三人に、今回の件の原因の人物である翔鶴の妹の瑞鶴。そして、記録係の大淀と秘書艦の長門、そして時打の初期艦の電だ。

「すまない。翔鶴が行方不明なのに動けなくて・・・」

「それは怪我をさせた私が悪いんだ。お前が落ち込む事は・・・」

「それでも、この鎮守府を預かる提督としては、失態だ」

重い空気が、その場に渦巻いていた。

 

 

―――昨日の夜。

翔鶴が鎮守府から消えて、一晩がたった。

時打の命令で捜索隊が結成されて、鎮守府内、そして、裏にある山も捜索した結果・・・

 

 

「誘拐された可能性が高い、と」

「はい」

神通が返事を返す。

捜索隊の班長として推薦された、川内、神通、天龍の三人の報告により、翔鶴は誘拐されたと報告。

証拠として、翔鶴の千切れた髪の毛、山へ続く複数の足跡が見つかった。

「ッ!」

「瑞鶴!」

部屋を飛び出そうとする瑞鶴。

しかし、時打が怒号を迸らせて止める。

「お前がいって何になる」

「ッ・・・・」

瑞鶴は悔しそうに歯を食いしばり、時打に向き直る。

「それで、山の方へ向かっていたという訳だが・・・・確か、この山の向こうには・・・」

「ああ、街がある」

長門が、そう答える。

そう、この黒河鎮守府は、海と山に囲まれた、殆どの場合、人が来る事は無い。

むしろ、周囲の山々には、一般人が入る事が出来ず、まずバレる事が無い。

つまりは、何かの犯罪組織が偶然にもこの山に迷い込み、この鎮守府を見つけ、翔鶴を攫ったという事になる。

「その街に行けば・・・・翔鶴が見つかる可能性が高い、という事だな?」

「あらかた間違ってねぇよ」

天龍が、肯定する。

「そうか・・・・まだ一日なら、奴らもそう簡単には動かない筈だ・・・・」

よし、と一息着いてから、時打は立ち上がり、命令を下す。

「これより、緊急作戦を実施する!

内容は救出!

俺と電が翔鶴を攫った敵本陣に殴り込み救出する!

一方で、またここから誰か攫われる可能性がある。その時は、ここにいる艦娘全員で対処する事。

異論は無いな?」

その中で、瑞鶴だけが手を挙げる。

「なんだ?」

「その作戦、私も同行する事は出来ないでしょうか?」

「ダメだ」

間を空けず、拒否される。

「何故・・・」

「天龍ならまだしも、お前は陸上じゃ戦えないだろう。それに長門の様に艤装を持ち込んでくれば、確実に相手を殺しかねない」

「ッ・・・・」

歯を食いしばる瑞鶴。

「・・・・・翔鶴姉の事・・・何も知らない癖に・・・」

小声で言ったつもりだった。

だけど・・・

「そうさ。翔鶴の事は何も知らない」

「!?」

弾かれるように顔を上げる瑞鶴。

「でも、今はそんな事関係ないだろ」

時打は、瑞鶴の元へ歩み寄り、そして、横を通り過ぎていく時に、頭をなでる。

「翔鶴の事は俺に任せろ」

そう一言、言い残した。

「長門、ここの事は任せたぞ」

「ああ。行ってこい」

「電」

「はいなのです」

そして時打は、指令室から出ようとする。

「待って」

だが、また瑞鶴に止められる。

「もしかして、街に行くのに山を越えていく気?」

「ああ、それしか道が無いだろう?」

それがどうかしたのか?、と時打が瑞鶴に聞く。

瑞鶴は、振り向いて、言う。

「街への抜け道。知ってるわよ」

 

 

その場の全員が『なぬ・・・』と呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな所があったのか・・・」

ここのは鎮守府に続いていた地下水道。

瑞鶴に連れられ、鎮守府にあったマンホールからここに入ったのだ。

ちなみに、時打は目立たない為、私服の赤いチェック柄の長袖のシャツと、少しぶかぶかなジーンズを履いている。

そして、逆刃刀は、紫色の包みに包んでいる。電も同じようにしている。

「よく、前の提督の眼を盗んで、街に行く事が多かったの。だから、こういうのはね」

瑞鶴が気まずそうに喋る。

そして、あるマンホールの下で止まる。

「ここよ。ここなら、誰にもバレず街に入る事が出来るわ」

「そうか・・・ありがとな、瑞鶴」

「・・・必ず、翔鶴姉を助けてよ」

「ああ、必ず。だから安心して鎮守府で待っていてくれ」

ぽん、と瑞鶴の頭に手を置き、そう励ます。

「・・・・うん」

瑞鶴は、そううなずく。

「お兄ちゃーん!」

先に上っていた電が呼ぶ。

「それじゃ」

片手で素早く梯子を上り、地下道から飛び出す。

 

 

 

 

 

黒河市・・・・

黒河鎮守府の背中にある山の向こう側にある大規模な街。

東京の一区域はあるんじゃないかという程に大きい街は、とある時代から、その街並みを変えていない。

京都の街が、まだ都としての風景を保っているのと、同じ様で、その規模は違う。

かつて、戊辰戦争という戦争がこの国で起き、そして、江戸幕府が落ちたその時から、この街は、その風景をほとんど変えなかった。

だから、こう呼ばれている。

 

 

――――『明治の街』と・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「ここまで街並みがこれだと、なんだか合わせたくなっちゃいますよね~」

「だからって俺までこの恰好する必要は・・・・」

時打と電は、早速その街に馴染んでしまった。

それもそうだろう。

この街に住むほとんどの人が着物や袴といった明治初期の服装をしている者ばかりなのだ。

そこで電の我儘スキルが発動し、暗い黄色羽織りに、ズボンの様な袴を着ている。中にはなんとブラ代わりにサラシである。

更に時打まで巻き添えを喰らい、黒が主な正に若い武士の恰好をさせられているのだ。一応、包みに包んだ逆刃刀は腰の帯に差している。

「っていうか、目的忘れてないよな?」

「勿論なのです!」

まるで心外だとでも言う様にぷんすか怒る電を他所に、もう昼だと気付く時打。

「そろそろ飯にするか」

「はいなのです!」

それを聞いた電が態度を変えきゃっきゃとはしゃぐ。

「さて、丁度良い食事処は・・・・・・・・・・え?」

とある店の名前が眼に止まり、絶句する時打。

「? どうしたのです?お兄ちゃん・・・・・・え?」

更に電までもが絶句する。

それもそうだろう。

そもそも、この店の名前は架空の筈。

漫画の中での話の筈だ。

そう、漫画の中での話の筈だ・・・・・

「なんでここに・・・・『赤べこ』がある・・・」

そう、あの牛鍋店『赤べこ』なのである。

 

 

 

 

 

 

 

たっぷり、三十分その場に立ちすくんで、腹の音で我に返った二人は、仕方なくそこに入る事にした。

「あ、いらっしゃいませ」

早速、若い女性の定員さんが声をかけてきた。

「二人なんですが・・・」

「では、こちらに」

女性につれられ、まるっきり赤べこと同じ内装のこの店の席に連れられる。

そして、スキヤキを一つ注文して、二人は畳の上に座った。

「お兄ちゃん・・・・私、スキヤキ初めてなのです」

「俺は久しぶりだな」

しばらくして、大きな鍋に大量の野菜や肉がのせられて持ってこられた。

「「おお・・・・」」

その香ばしい匂いに、早くも涎をたらす電。

時打も唾を飲み込む。

二人で顔を見合わせ、肉を一つとり、解いた卵が入った皿に入れてつけて、口に入れる。

 

 

 

 

瞬間、電撃が入った。

 

 

 

 

「「う、うまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああいいい!!!!!!」」

そういう絶叫が響き、物凄い勢いでスキヤキを喰らう。

「お客さん、見ない顔やなあ」

「ん?」

一分が立つころには鍋の中身は空っぽになり、時打と電は満腹といった表情になった所へ、ここの女将と思われる人が話しかけてきた。

「その服、着慣れてますが、顔はここの人のものじゃありませんねぇ。ここで育ったって顔してませんもん」

「はあ・・・まあ、遠くから来たっていうのは間違いじゃないですね。そういえば、この店の名前・・・」

「ああ、『赤べこ』の事ですか。実は『るろうに剣心』の赤べこに憧れてまして、ここで開いたんですよ」

「そうだったんですか・・・って寝るな電」

「はうあ!?」

満足そうに寝ようとしていた電のheadにDEKOPINをかます時打。

「ひ、酷いのです・・・・」

恨めしそうに時打を睨む電を他所に、時打は女将さんにある事を尋ねる。

「そうだ女将さん。この辺りで、白髪の弓道服姿の女の子見ませんでしたか?」

「はて・・・・確か・・・」

女将が何かを思い出しそうになる事に期待し始める時打。

だが・・・・

「ッ!?あぶねえ!」

「きゃ!」

突然、どこからか茶碗が飛来してきたので、時打が咄嗟に女将を引き寄せる。

「ぐはぁ!?」

だが逆に時打がその茶碗を代わりに喰らう事になり、顔面に直撃する。

「おおお・・・」

「だ、大丈夫ですか!?」

「お兄ちゃん!?」

慌てて時打の様子を確認する二人。

「テメェ!何しやがる!」

「うるせぇ!お前が先にやったんだろうが!」

見ると、どうやら酔っぱらった中年共が茶碗を投げて、その軌道に女将と時打がいたという事らしい。

ちなみに三人だ。

しかし、その三人は、腰に刀を差していた。

 

黒河市は、明治の街並みがそのまま残されており、その為に日本では、銃刀法が最も()()()()()()()街としても有名だ。

だから、おそらく極道(ヤクザ)辺りであろうそいつらは、刀を腰にさしているのだ。

ちなみに、ここの警察も、腰に刀を差している者もいるらしい。

 

「お、お客様、周りにご迷惑ですので・・・」

そこへ女性店員が止めに入る。

「あれ、この状況どこかで見た気が・・・・」

時打が頭を抑えながら起き上がり、その一部始終を眺めていて、そんな感想を呟く。

「うるせえ!」

「キャア!?」

案の定、叩き飛ばされる女性店員。

「おっと」

と、その女性を誰かが受け止める。

その人物は、男で、コートの様な白い羽織。腹の辺りにサラシを巻いており、ズボンはボロい無生地の何も変わったところのない簡易な物だ。

そして、かなり鍛えられているであろう肉体。

傍からみたら、誰もがこう呼ぶだろう。

「・・・・『相良左之助』?」

時打が、そう呟いてしまう。

「あ、響夜さん」

女将さんが安心した様に男の名前を呼ぶ。

「へ?知り合い?」

「はい。よく相良左之助って間違われるんですが、本名は『佐加野(さがの) 響夜(きょうや)』。この辺りで一番強い、喧嘩野郎なんですよ」

「へえ・・・・」

そう関心している間に、あちらでは・・・

「誰だテメェは!」

三人組は、その男の事を知らない、あるいは酔って分からないのだろうか、響夜に怒鳴る。

だが、響夜は女性を離れた所に立たさせると、堂々と名乗りを上げる。

「俺は佐加野 響夜。喧嘩なら喜んで買うぜ」

ニッと笑う響夜。

「うるせえ!お前の事なんざどうだっていいんだよ!」

「邪魔するってならまずお前から叩きのめしてやる!」

「おお良いね。表出ろや」

という訳で表で喧嘩する羽目になった。

当然、時打たちもその様子を見に行く。

野次馬の中、響夜と男三人は向かい合っていた。

「さあ、どいつからでも掛かって来い!」

ドンッと地面を踏み鳴らす響夜。

やる気は十分の様だ。

「なら、俺から行くぜ!」

人一倍大きな体格の男が右拳を振り下ろす。

「ん?あれは・・・・」

「メリケン!?」

その瞬間、時打と電は男の右手に鉄色に光るメリケンを眼に捉える。

そのままその右手は響夜の顔面に直撃する。

「なんだろう、このお約束過ぎる展開は・・・」

見覚えある光景に頭を痛める時打。

「・・・・チッ」

舌打ちが聞こえた。

「メリケン如きで、俺を倒せると思ったのかこのウスノロが」

「へ・・・ぎゃあぁぁあああ!?」

まるでなんとも無かったかのように平然としている響夜に対して、男の右腕は、へし折れていた。

 

なんとも見覚えのある光景だ。

 

「テメェなんざ指一本で十分だ」

その宣言通り、デコピンで男の顔面を弾き飛ばす響夜。

「ひ、ヒィィ!?」

「んだよ。喧嘩売るからにはちったあ度胸のある奴かと思ったらすぐこれか」

「こ、こいつッ!」

ビビっている男Bを他所に男Cは自身の腰にある刀を抜こうとする。

だが・・・・

「おい」

「!?」

だが、今度は別の場所から殺気が迫る。

その方向を見ると、時打が包みから姿を現した逆刃刀・深鳳の柄に手をかけている時打がいた。

「それを抜く気なら俺も黙ってはいないが良いのか?」

黒服の武士姿から出される、まさに()()()ともいえる雰囲気を醸し出す時打にビビった男Cはすぐさま刀から手を放す。

「次は無いぞ?良いな?」

「は、はいぃ!!」

情けない悲鳴を挙げながら、男三人はすたこらさっさと逃げていく。

そして、周りから歓声が上がる。

その中、時打は響夜に近付く。

「すまない。お前の喧嘩に手を出してしまって」

「う~ん。ここで何か奢ってくれるなら許してやる」

「現金な奴だな」

響夜の態度に苦笑する時打。

「別に手助けなんてしなくてよかったのに」

電が口を尖らせてそういう。

「悪い悪い」

「なんだなんだ?子供連れか?」

「な!?子供とはなんですか!?これでも一介の剣士なんですよー!」

またもやぷんすかと怒りだす電。

「妹なんだ」

「それにしては似てなくないか?」

確かに黒髪の時打に対して電は黄色掛かった茶髪だ。顔立ちからしても似ている所はない。

「まあ、一応お礼もかねて何か奢るよ」

「お、ありがとな」

 

 

 

 

赤べこの時打たちが食事をしていた席で、相良左之助によく似た男、佐加野 響夜はとんかつ定食を食べていた。

その向かいには時打と電。

「白髪の弓道服姿の女?」

「ああ。何か知らないか?」

響夜は一度、味噌汁を一気に飲み干すと、それを思いっきりお盆の上に叩き乗せ、カァー!と声を漏らし、時打たちに向き直る。

「良くは覚えてねぇけどよ。白髪の女を担いでいた奴なら見た事あるぞ」

「どこでだ!?」

「どこなのです!?」

ズイッと詰め寄る時打と電。

「・・・・相当切羽詰まってるみたいだな・・・」

響夜の表情が少し締まる。

「どこでっても、そこまでは知らねえな。ただ見かけたってだけで、どこに連れていかれたっていうのは分からねえ」

「そ、そうか・・・」

一気に落胆する時打と電。

「しかし、そんな奴探して何になるんだ?」

響夜はご飯を一口、口に放り込み、そういう。

時打は、俯き、答える。

「仲間なんだ・・・大切な・・・」

「・・・・」

響夜は黙って最後の一口を口に入れ、やがて、ドンッとそれをお盆の上に叩き着ける。

「よし、なら手伝ってやる!」

「は?」

響夜はニッと笑う。

「俺は『相良左之助』の様に政府がそこまで嫌いって訳じゃ無いけど、そういう仲間想いな奴は俺は好きだ。それに、そこまで大事な相手ならなおさら手伝わない訳にはいかねぇよ」

「いや、関係無い奴を巻き込む訳には・・・」

「情報売っている時点で関係あるもないも知ったことかよ」

「な、なんて自分勝手・・・」

響夜の態度に唖然とするしかない時打と電。

「それに、それなりに頼りになるぜ」

「・・・」

確かに、先ほどの喧嘩で同じように、この男は相良左之助並みの打たれ強さと筋力を兼ね備えている。

だが、それだけでは・・・

「それに、『二重の極み』も使える」

「!?」

 

『二重の極み』

物には全てがそれぞれの『抵抗』を持つ。

例えば、それを拳打で衝撃を加えるとする。

だが、その衝撃は『抵抗』によって完全には伝わり切らない。

つまり、そこに無駄な衝撃が出来てしまう訳だ。

ならばどうするか?

まず、拳を立てて物の第一撃を加える。そしてその第一撃目が物の『抵抗』とぶつかった瞬間、拳を折って第二撃を加える。すると、二撃目の衝撃は、一撃目による衝撃が既に物の『抵抗』を消している訳で、二撃目の衝撃は『抵抗』を受ける事無く完全に伝わり、粉砕する。

これが破壊の極意『二重の極み』だ。

 

 

時打は、どこからか手頃な石を取り出し、それを響夜に向かって投げる。

「ん」

それを響夜は何でもない動作で右拳を石にぶつける。

すると、石は粉々に砕け散った。

「な・・・」

それに唖然とする電。

一方で時打は冷や汗を流す。

「・・・・どうやら本当の様だな・・・」

「どうだ?」

「参った。降参だ」

時打は両手を上げ、そういう。

 

 

 

 

 

 

ヒトナナマルマル――――午後五時。

 

 

 

 

 

ヒューマンショップ・・・・奴隷売り場。

 

 

 

 

「十二万五千!」

「まだまだ、十二万六千!」

目の前で繰り広げられる白熱する競売。

賭けられているのは・・・・・自分。

手錠をかけられ、その姿を大勢の人間に見られている。

(何故・・・こんな事に・・・)

翔鶴は、心の中で、そう後悔した。

昨夜、夜、沿岸沿いの道を一人歩いていた所を、誰かの手によって気絶させられてしまった。

そして気付くと、自分は見知らぬ牢屋の中にいた。

そこには、何人もの手錠をかけられた、人間たち。

自分とは違う、陸の内で暮らしている人間たち。

だが、その表情は絶望に包まれている者がほとんどだった。

一人、親切な人が教えてくれたが、ここは、人を売る奴隷売り場。

つまり、自分はどこからか誘拐されて、奴隷にされかけているというのだ。

当然、出してくれと懇願したが、そんな思いは届かず、逆に殴られた。

それで理解した。

自分には、もう口出しの権利等ないのだと。

もう、自分にまともな人生は無いのだと・・・・

(誰か・・・・助けて・・・・)

そう、願うも、届くわけが無かった。

ふと、一人の、若干、細身の偉そうな男が不意に立ち上がった。

そして・・・・

「一億だそうじゃないか」

『!?』

「な・・・・」

一億・・・・そんな大金を自分に出すというのか?

何を考えているのだ、この男は。

男は嫌な笑みを浮かべ、更に言葉を紡ぐ。

「まだまだ足りないのか~。ならもっと出すが?」

「ッ・・・」

翔鶴は恐怖した。

この男、自分を手に入れる為なら、なんでもする気だ。

翔鶴はふと、横目で司会を見る。

だが、司会はこちらの視線に気付いていないようで、他に誰かいないかと問う。

「えー、一億出ましたが、他に誰かは・・・・?」

誰も、手を挙げようとしない。

既に、諦めている。

その男が、それほど強大な力を持っているという事を示している証拠だ。

(い・・・いや・・・・)

「他には?」

(やめて・・・)

帰りたい。今すぐあそこに帰りたい。瑞鶴のいるあの鎮守府に・・・・

 

「では、落札です!おめでとうございます!!」

 

 

 

 

(やだ・・・・提督・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒトハチマルマル――――午後六時。

「こんなに探しても手がかり一つも見つからないなんて・・・・」

暗くなった街で、電はそう呟いた。

「くそ・・・どこにいるんだよ・・・翔鶴・・・」

時打は、苛立ちのある声でそういう。

「うーん・・・・あとあるとすれば・・・」

響夜は片手を顎に当て、考え込む。

まだ半分だが、この街は京都よりも広いのだ。

「仕方ない・・・・こうなれば強行だ」

時打が逆刃刀の鍔を押し上げ、その刀身を少しだけ見せる。

「強行って・・・・まさかヤクザのアジトに押しかけるつもりですか!?」

電が心底驚いた様な声で叫ぶ。

時打はそうだとでも言うかのように頷く。

「やめて下さい!まだ学校を卒業してないとはいえ、お兄ちゃんは一介の海軍兵なんですよ!そんな事していいと思っているのですか!?理不尽ですよ!!」

「離せ電!早く翔鶴を助けないといけないんだ!」

ずかずかと行こうとする時打を全力で阻止する電。

「ん?海軍?」

そこで響夜は電が言ったワードに食いつく。

「という事は・・・・時打お前海軍なのか?」

「あ・・・」

電が冷や汗を流す。

時打は呆れた様に頭を押さえる。

「電・・・翔鶴・・・そうか、お前のいう仲間っていうのは『艦娘』の事か」

バレた。

相良左之助似のこの男の事だから分からないと思っていたが、どうやら軍艦についての知識は良く知っているようだ。

一般人にその事を知られてしまった。

どうする?口封じに叩きのめすか?

しかし、それでは・・・

「ならそうと言ってくれよ!」

「は・・・・・?」

だが、響夜はその顔を笑顔にするとバンバンと背中を叩く。

「これで政府に恩を売っておけば、いざって時に手伝ってくれるかもしれねぇだろ?」

「現金だ。現金な奴ですよこの男!?」

電がそう叫ぶ。

「さ~て、大事な事だからあの時は聞かなかったけど、これで身分がバレたからには言うしかなくなったな~?」

「ぐ・・・中々に頭の回る奴だな・・・」

苦笑する時打。

仕方なく、時打と電は、全ての事情を話した。

「なるほどな・・・・」

「はあ・・・長門に殴られる」

「ごめんなさいなのです・・・・」

響夜は腕を組んで考え込み、時打は長門に殴られるのを、電は自分の所為で身分がバレた事を申し訳なさそうに項垂れた。

「とりあえず事情は分かった。だけど、なんでこんな近くに街があるのにそんなものを作ったんだ?」

「それは上に行ってくれ、俺にもわからん」

「だけど、お前らが海軍だと分かって、一つ当てが出来た」

「本当か!?」

時打が響夜の言葉に食いつく。

「ああ。一言でいうと、『情報屋』だ」

 

 

 

 

 


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