艦隊これくしょん その刀は誰が為に   作:幻在

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つ・い・に・・・・・・

吹雪「キス島、攻略です―――――――――!!!!」

我が鎮守府の駆逐隊の一同『おおおおおおお―――――――!!!!!』

電「ここまで長かったのですぅぅぅぅぅ!!!」

雷「本当私たち頑張って来たわよねぇ・・・」

響「いままでどれほどの間宮さんや伊良湖さんが無駄になったか・・・・」

夕立「そもそも、あの羅針盤がいきなり北を向く様になったのが悪いっぽい!」

朧「その所為で空母のいるマスに行かされて・・・・・本当に辛かった・・・・」

皆!よくやってくれた!

赤城「そのままの勢いで、次の海域も攻略できましたよね」

お前もよくやった。ご褒美にボーキやるよ。

赤城「ありがとうございます!提督大好き!」

飛龍「私は中破して参加できなかったけど、代わりに蒼龍や加賀さんたちが頑張ってくれたからまあいいよね」

加賀「まあ、飛龍から借りた流星や零戦54式が役にたってくれたんだから、貴方もそれなりに誇っていいわよ」

蒼龍「そうそう!元気だしなって!」

大和「大和も活躍しました!」

山城「姉さまより活躍して良いのでしょうか・・・・?」

扶桑「良いのよ山城。その経験が貴方を強くするんだから」

伊勢「そうそう!誇りなさいよ山城!」

さ~て、テンションも高い事ですし、本編をどうぞ!


激突

マルマルマルマル―――――深夜零時。

 

 

 

「へ~え、あれが噂の」

そう呟くのは、小柄な、傍から見れば子供の様な男子、『日藤(ひとう) 弘斗(ひろと)』が、ニヤニヤと笑顔を浮かべながら視線の先にある建物に視線を向ける。

「ええ。しかし、やはりまちかまえていますね」

この人買い組合の頂点に立つ、『柴岩(しいわ) 宮城(みやぎ)』という男が、ナイトスコープ搭載の双眼鏡をのぞきながらそう言う。

「こちらの戦力は二千人、対して奴らはたったの九人・・・・舐めているのか?」

「いいや、誰も、劣らずと言った感じね。でも、あの黒い武士服の男はあの中で一番強いわね・・・・多分、彼一人で全滅出来る程じゃないかしら?」

「まさか・・・・こっちには色々と準備をしてきたんです。陽動、お願いしますよ?」

「オッケー。じゃ、始めようか、健吾」

弘斗が、無線機に向かってそう言うと、無線機から豪快な笑い声が聞こえた。

『ガハハハハ!遂に俺様の出番か!滾る、滾るぞ!俺様の血が滾って滾って、滾りまくるぞぉぉぉぉぉぉ!!』

その直後に、弘斗たちの右の方で、大きな音がしたと思った瞬間、大きな土煙を挙げて、木々がなぎ倒されていく様子が、直線状に建物に向かって入っていく。

「やーれやれ。相変わらずなんだから」

「我々の準備も出来ています。何人か同行させましょう」

「ありがと。でも、アタシの速さについてこれるかどうかは、わ・か・ら・な・い・け・ど」

そう、色っぽく言い残した弘斗は、次の瞬間、宮城の視界から消えていた。

「やれやれ、相変わらず速い事で・・・」

宮城は、そう皮肉っぽく言うと、懐からタバコの箱を取り出し、吸う。

そして、新たに、無線機の周波数を変え、指示を出す。

()()を出せ」

『アイサー』

「それと、『鎧』も持ってこい」

その直後、大きな振動音とともに、大きな何かが、木々を踏み倒しながら、現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来ました!」

翔鶴が、この夜の中、艦載機を飛ばし、鎮守府の屋上からその様に叫ぶ。

「よし!準備は良いな!?」

「はい!」

「おう!」

「ああ!」

「ええ!」

「誰もさらわせない!」

それぞれがそれぞれの返事を返し、それぞれが武器を構える。

達也は屋上で、狙撃銃ドラグノフを構えて敵を狙う。

「十時の方向から、何かがもう突進してきます!さらに、二時からもう一人、こちらはかなり速いです!」

「おっしゃあ!突進してくる方は俺に任せろ!」

「じゃあ私は速い方ね!時打たちは他に来るかもしれない敵を片付けて!」

響夜と葉子がそれぞれの方向へ入っていく。

「吹雪!峰打ちで抜刀術は禁止だ!良いな!」

「そんなの言われなくても分かってますよ!」

時打の忠告に、吹雪は怒ったように返し、影丸を抜刀、刃を返す。

「ねえ、提督さん・・・・・」

ふとそこで、瑞鶴が冷や汗をかきながら笑みを浮かべていた。

「ん?どうした瑞鶴?」

「・・・・・戦車が来たら、どうすればいいかな?」

「・・・・・」

それには黙り込む時打。

「山の方から、戦車が三台程来ます!っていうか、どこから仕入れたんですかアレ!?10(ヒトマル)式ですよあれ!?」

10(ヒトマル)式戦車。

陸上自衛隊が使っている戦車だ。

「どっから仕入れたんでしょうか・・・?」

電が怪訝そうにそう呟く。

「おそらく、深海棲艦相手に何の役にもたたないからお蔵入りしてた奴を買ったんだろう。前に金山市で、10(ヒトマル)式を使って大量殺戮しようとしてた奴を見た事がある。最も殺したけどな」

最後に物騒な事を言い、時打は深鳳を抜刀する。

「司令官!私も斬鉄は出来ますが・・・・」

「いや、お前は敵の掃討に集中しろ。それと・・・・」

すぅーっ、と息を大きく息を吸った時打は、一度息と止めて、そのすぐあと、全て吐き出すように、上空へ向かって叫ぶ。

「逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!!!」

ものすごい絶叫。

それを聞いた、翔鶴と達也はそれを聞くと、翔鶴は屋上から飛び降り、達也は屋上を横に逃げる。

その直後、鎮守府の建物に三つの爆発が起きる。

一つは屋上の一部を抉り、もう一つは鎮守府の壁を貫く。最後の一つは鎮守府の塀の一部を吹き飛ばす。だが、倒壊には至らず、達也はまた狙撃銃を構える。

一方で、飛び降りた翔鶴を時打が受け止める。

「おっと!?」

「ひゃう!?」

「以外とクレイジーな事をするよなお前」

翔鶴を下す時打。

「広い所へ行け、そこで艦載機の着艦作業をしろ」

「分かりました」

翔鶴にそう告げた時打。それを聞いた翔鶴はすぐさま鎮守府の中に入っていく。

「さて、電、お前は穴をあけられた塀の所に行け、瑞鶴と川内は正面を、吹雪と長門は遊撃を頼む」

「「「「はい!」」」」

「俺は戦車だ!」

時打は、そう告げ、走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

響夜は、月明りに照らされた森の中を走っていた。

目の前に走る、土煙の前に立ちはだかる為に。

そして、その進路上に追いつく響夜。

「おっしゃぁ!来ぉい!!!」

そう叫ぶや否や、木々を薙ぎ倒して、何やが黒い砲弾の如き勢いで突っ込んできた。

「うおぉぉぉぉぉ!!!」

「む!?俺様の前に立つか!?愚か者めぇ!!」

その何かを真正面から受け止める響夜。

「うっおおおおおおお!?」

だが、その威力と突進力故に、ずざざざざ!!と足底を擦らせながら、後退してしまう響夜。

「ワハハハハ!!無駄無駄無駄無駄ァ!この俺の筋肉の前に、何者も無意味なのだァ!!」

「なら、これでどうだぁ!!」

響夜がそう叫ぶと、押されながら片足を上げて、それをまた地面に叩き付ける。

その途端、足に大きなクレーターが出来て、砕ける!

足での二重の極みだ。

「ぬお!?」

それで足を踏み外し、態勢をくずす、なにか。否、横に幅広い、かなりのマッチョマンな男。

「うおりやぁぁあああ!!!」

そして、バックドロップの容量で投げ飛ばす。

そのまま太い木に激突、薙ぎ倒す。

「どうだぁ!」

うがー!と唸る。

「貴っ様ぁ!よくも俺の前進を止めてくれたな!」

だが、先ほど吹っ飛ばされた大男は、何事も無かったかのように立ち上がり、うがー!と唸る。

「知るかァ!!お前があそこにいる奴らを攫う気なら、いくらでも止めてやんよ!突き進めたきゃ俺を倒してからにしやがれゴラァ!!」

何故か初っ端から興奮状態の響夜。

「上等だァ!そのイカれた鳥頭をひしゃげてやる!」

大男、『次元(じげん) 健吾(けんご)』は身を低くすると、その巨体から信じられない様な突進を繰り出す。

「はえぇ!?」

そのスピードに驚く響夜だったが、そのまま突っ立ったままでは直撃する事は必至。

横に転がって、その突進を回避する。

「ぬう!」

だが、その転がって突き進んでいった健吾を見た響夜は、その顔を驚愕へと染める。

なんと、あの突進でまるでゴムボールが壁に当たって反射するように急激な方向転換をしてきたのだ。

「なぁ!?」

それにより、さらに転がって避ける響夜。

だが、またしても反射するように方向転換してきて、その勢いを止める事なく何度も突進してくる為に、響夜は何度も避けなければならなかった。

「ハッハッハー!どうした喧嘩屋!!その程度かぁ!?」

「なろ!ならこれでどうだぁ!!!」

響夜は、右腕を振り上げ、大振りに、突っ込んでくる健吾に向かって振り下ろす。

当然、二重の極みを健吾の突き出していた左肩に直撃させた。

だが。

「こざかしい!!」

「な!?」

健吾は何事もなかったかのように突進を続け、響夜は、驚愕による硬直で、その突進の直撃を喰らってしまう。

「ぐは!?」

そのまま吹っ飛ばされて、木に叩き付けられる。

「ハッハッハー!どうだ!この衝撃吸収スーツの効果は!対貴様用に今回だけ特別に用意したものだ!受けた衝撃をすべて伝導させ、反対側へ逃がす。あらゆる方向から弾丸や砲弾を受けても、全ての衝撃が後ろへ行くって訳だ!ハッハッハー!!」

「なろぉ・・・」

よろよろと立ち上がる響夜。

「どうしたどうしたぁ!その程度かぁ!」

健吾がまたもや突進する。

「チィ!」

衝撃を和らげるために後ろへ飛ぶ響夜。

だが、健吾の次の攻撃は、殴打だった。

「ぐほ!?」

右拳が顔面にクリーンヒットし、よろける響夜。

だが、持ち前の打たれ強さでなんとか持ちこたえるも、次の攻撃が響夜を襲う。

そのまま、突進する威力に加え、拳の威力も加算されて、ラッシュを喰らいまくるハメになってしまう。

「くっそ野郎が!」

だが、そのままやられてばかりいる響夜ではない。

左拳を振り上げ、アッパー気味に健吾の胸に二重の極みを叩きこむ。だが、先ほど健吾が言った通り、その衝撃は全て中に仕込まれた衝撃吸収スーツの所為で全て体外へ逃げてしまう。

「ハハハハハ!!!無駄無駄無駄ァ!!!」

「くそがぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけた」

木の枝との間を飛び移りながら、移動する葉子。

その視線の先では、子供の姿を捉えていた。

その子供がただ者ではないと一目で見抜いていた葉子は、射程に入った所で、木の枝を思いっきり蹴り、その少年に向かって飛ぶ。

そのまま空中で反転して、ライダーキックの様に片足を突き出し、少年に突っ込む。

その奇襲に気付いた少年は、普通じゃありあない程のスピードをいったん緩め、その蹴りを回避する。

「まさか、こんな子供までもが、犯罪者なんてね」

葉子が、そう少年に言う。

そこで少年の返した言葉は・・・・

「ひど~い。子供なんて。アタシはこれでも立派なレディなのよ?」

「・・・・・・」

一瞬、悪夢を見た気がした葉子。

「・・・・オカマなの?」

「違うわよ?私は男の身をもって生まれた乙女なの」

「同じよ!」

実は葉子は、体と性別が真逆な人間は嫌いなのである。

それが男であっても。

「とにかく、鎮守府(あそこ)に手を出そうってなら、容赦はしないわ」

「いや~ん、怖~い。お姉さん綺麗なんだから、もっと言葉遣いちゃんとした方が良いわよ?」

「余計なお世話よ」

御託だ、と思いながら、葉子は踏み込み、少年と距離を詰める。

「あら?やる気?」

「元からそのつもりよ」

そのまま顔面を蹴り飛ばすべく、右足で回し蹴りを繰り出す。

だが、それに対抗するかの様に、少年(オカマ)の方も回し蹴りを放つ。

そのまま、正面衝突。

「!?」

「良い蹴りねぇ」

互いに弾かれ、距離を取る。

(強い・・・)

もともと、その姿を見た時からわかっていた事だが、ここまでとなると、葉子でもてこずる。

馬坂(まさか)流には、二つの戦法がある。

長期戦と短期決戦。

長期戦は、その名の通り、長く走り続ける馬の様に粘り続ける戦い方。短期決戦は、たった短い時間で全てを出し切る戦い方。

速めに決着をつけたい葉子は、当然、短期決戦を選ぶ。

思いっきり踏み込み、距離を詰める。

そして、右足で、今度は後ろ回し蹴りを放つ

 

廻牢(かいろう)刻濤(こくとう)

 

少年はそれを頭を下げる事で回避。

「あーら残念」

「まだよ!!」

かわされた事を認識した葉子は、追撃するべく、すばやく足を引き戻し、左足で回し蹴りを放つ。

 

『廻牢・刻戟(こくげき)

 

その二撃目が、少年の胸に直撃する。

そのまま吹き飛ばされる。

「浅いッ!?」

だが、すぐに吹き飛ばされる中で態勢を立て直し、華麗に着地する少年。

「わー、すごいねお姉さん。まさか一撃もらうなんて思わなかったよ」

「よく言うわ」

少年の言葉に、葉子は、冷や汗をかきながら笑みを無理矢理作る。

刻戟が直撃する瞬間、当たったと見せかけて、後ろに大きく飛んだのだ。

ボクシングの高等技術、スリッピングという奴だ。

「でも~、アタシ的には、あの刀のお兄さんと戦いたかったな」

「悪いけど、その人は別に大事な仕事があるから無理よ。変わりに私が遊んであげるわ」

とんとん、と葉子は地面を踏みしめる。

「ふふ、じゃあ、退屈させないでよ?」

にやりと笑う少年、弘斗が態勢を低くする。

 

――――来るッ!

 

そう直感した葉子は、右足を踏み込む。

そして、互いに同時に大きく飛び、飛び蹴りを真正面から直撃させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

轟音。直後に、土煙が巻き起こる。

「全く、10(ヒトマル)式を持ち込んでくるなんて、どんだけ本気なんだよ!?」

時打は、そう吐き捨てながら、三台の10式戦車の砲弾や機関銃の攻撃をかわしていた。

「くそ!しばしっこい奴だ!」

「機関銃で逃げ道を塞げ!」

キューポラ(砲塔上部の司令塔)から、機関銃を撃ちまくっている車長たちがそう怒号を飛ばす。

「やれやれ」

時打はその男たちを一瞥し、周りを弧を描くように走っていた進路を急激に戦車の方向へ変える。

「な!?」

「バカめ!自分から死にに来やがった!」

「蜂の巣にしてやるぜ!」

それを見た三台の車長三人は、突っ込んでくる時打に向かって、機関銃を撃ちまくる。

だが、その銃弾の雨が時打に浴びせられようとした途端、まるで蜃気楼の様に時打の姿が消えた。

「な!?」

「ど、どこに行った!?」

それにうろたえる戦車。

だが、その内の二号車が、突然、がくんと車体が傾いた。

「な、なんだァ!?」

それに驚く二号車の車長。

見て見ると、そこには、履帯ごと全部まとめて着られたホイールの残骸があった。

「は・・・・?」

その光景に、茫然とする二号車の車長。

次の瞬間、さらなる金属同士の衝突音。

「!?」

慌ててそちらを向くと、そこには、大きく曲がった主砲の姿が。

これでは、砲弾を撃つ事はできない。

「な、何が・・・」

 

バキンッ!!

 

「な!?」

更に、自身が持っていた機関銃が、目の前で破壊される。

そして、顔を挙げてみると、そこには、刃が逆さまの刀をたずさえた黒い武士服の男の姿。

そして、その眼光に睨まれた車長は、腰が抜けた。

「コイツ!!」

すると、三号車の砲手が、二号車の後ろから、時打に向かって、主砲を向ける。

しかもこのままでは、二号車の車長まで巻き添えを喰らってしまう。

それを見た時打は、右足を挙げて、二号車の車長を中に踏みつけるように押し込む。

「ふぎゃ!?」

そして、逆刃刀・深鳳の刃を返し、右腕を振り上げ、背中に近付ける。

放たれる砲弾。

それを、真正面から、叩き斬る。

真っ二つにされた砲弾は、時打の左右へ通り抜け、後ろへ飛んでいく。

「は・・・?」

おそらく、その場にいた全員がその様に呟いた事だろう。

そして、その茫然としている間に、時打が三号車の履帯をホイールごと切断し走行能力を奪い、主砲を峰の方で曲げて封じ、機関銃を破壊し残る攻撃手段を殺す。

それを終えた後、すぐさま標的を一号車へ変え、たった十秒の間で、全てを片付けた。

しまいには、逃げられないように戦車に設けられた全てのハッチを叩いて歪ませ、戦車に乗っていた人間を閉じ込めた。

「これでよし」

そう言い、時打は鎮守府の方を見た。

その時だった。

 

 

ドガァァアアアン!!!

 

 

「は・・・?」

突如、鎮守府の方で起こった爆発。

時打は慌てて、服の下に隠していたスマホを取り出し、カメラアプリを起動させて、様子をさぐる。

すると、そこには、どこから侵入したのか、パンツァーファウストやらRPGやらを持ち込んでいる様で、その対処に長門が追いやられている。

その中には、達也の狙撃でもんどりうって倒れる敵もいた。

「一体どうやって・・・・まさか・・・・!」

何かの結論に至った時打は、急いで鎮守府に向かって走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ!ぬかった!」

敵がまさか、黒河への抜け道を使ってくるとは思わず、入って来た敵を殴りとばす長門。

時には背後を取られ、その敵を達也が屋上から狙撃する。

「うわぁぁああ!?」

またもや爆発。

達也がパンツァーファウストそのものを狙撃して爆発させたのだ。

その度に、人のバラバラになった体が宙を舞う光景を目撃してしまう長門。

「く・・・こんな事は、あの時ではいつもの事だろう・・・ッ!!」

長門は、過去(軍艦だった頃)の事を思いだし、歯を食いしばる。

他の艦娘は、既に海の上に逃げている。

どうやら敵は、相手が艦娘とは思ってはおらず、船が無い事を事前に調べていたのだろうが、自分たちの船を用意していなかった事はある意味では失敗といえるだろう。

だが、一人だけ、逃げていない艦娘がいた。

翔鶴だ。

「きゃあ!」

「逃げんなよ!」

足がもつれて転んでしまう翔鶴。

それをニヤニヤとした醜悪な笑みを浮かべる男がじりじりと近寄ってくる。

「い、いや・・・・」

「翔鶴ッ!!!」

艦娘は、確かに人間よりは丈夫で力は強いが、それを除けばただの女の子。

当然、恐怖は感じるのは当然事であり。

「ゴハァ!?」

怒るのも当然だ。

「大丈夫か!?」

「は、はい・・・!」

尻もちをついたまま、頷く翔鶴。

一方で屋上で、達也は膝立ちで、敵を撃ち抜いていた。

「今は非常事態だ。依頼に反するが、止むを得んぞ」

そう呟き、達也は引金を引く。

その弾丸は、的確に(人間)の頭部を撃ち抜き、絶命させる。

「次・・・・・」

ボルトアクションで再装填、引金を引く。

「次・・・・・」

再装填、発射。爆発。

「次・・・・・」

冷酷に、機械の様に敵を撃ち抜いていく達也。

「あそこだァ!」

「撃て撃て撃てぇ!!」

「!」

だが、狙撃は気付かれれば、脆くなる。

複数のパンツァーファウストやRPGがバズーカ砲などが達也に向けられる。

「ふん」

それを見た達也は、最後に一発撃ち、RPG一発を撃ち抜き、その周りにいた敵を巻き込む。

「うわぁぁあああ!?」

そして、屋上から飛び降りる。

次の瞬間、鎮守府の屋上が無数のロケット弾やらが直撃し、爆発。

幸いにも、達也は無傷だ。

そして、受け身を取りながら、地面に着地。

そのまま立ち上がって、歩きながら狙撃を続行する達也。

「うぉわ!?」

「アイツ、たったまま狙撃してるぞ!?」

それにうろたえる敵集団。

ボルトアクションを繰り返し、時には弾倉(マガジン)を交換して撃ち抜く。

だが、それは長くは続かない。

やっとの事で態勢を立て直した敵集団が、アサルトライフルを構えて、達也に向かって乱射。

すると達也は、横に大きくサイドステップし、身体の向きを変えるように左手で腰のホルスターからガバメントを抜き放ち、そのアサルトライフルを持っている男を撃ち抜く。

「ぎゃあ!?」

胸に直撃を貰い、もんどりうつ男。

その間に達也は狙撃銃を捨て、新たに右手でコートの下からガバメントを引き抜く。

そして、左の方の弾丸を全て撃ち終えたらすぐに右へ切り替え、セミオートで弾丸を放ち、敵を撃ち抜いていく。

「早くしろよ。そろそろお前のお姫様が攫われるぞ」

達也は、今こちらに全速力で走ってきているであろう男へ、そう言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、艦娘ですか」

鎮守府の海岸で、一人のピエロマスクのシルクハット男が、双眼鏡で海の上にいる少女たちの姿を捉えている。

「船をだしましょうか・・・・しかし、相手は艦娘。まともに太刀打ちできるとは思えませんし、かといって見逃す事もできない・・・八方塞がりですねぇ」

キキキ、と笑う仮面男。

「見つけたわ!」

「ん?」

ふと、そんな声が聞こえ、そちらを向くと、そこには、一人の少女が立っていた。

首にマフラーを巻いており、忍者を思わせる服装の少女。

「貴方だけ、仲間を抜けていた・・・・こういう事だったのね」

少女、川内がそう言う。

「ふむ、貴方も艦娘の様ですね。ああ、丁度良い、貴方には人質となってもらいましょうか」

「生憎、私はそう簡単に捕まる訳にはいかないわ」

「それもそうでしょう」

ピエロの男、『影間(かげま) 祐司(ゆうじ)』が両手を広げる。

「ッ!」

それに身構える川内。

「では、ここは力尽くで、降参してもらいましょう」

「ッ!!」

そこで先に動いたのは川内だった。

先手必勝とも言うべきその踏み込みは、一瞬で距離を詰め、右足を折りたたみ、そして、真っすぐに突き出す。

 

穿爪(うがちづめ)

 

基本の技、『蹴突』を昇華させた直進蹴り。

だが、裕司はそれを、半身になった川内の後ろに回り込む事で回避。

「!?」

「良い蹴りですねぇ」

そして()()()()()

「!?!?!?」

瞬間、背中近くの脇腹に物凄く強い衝撃が走り、陸の方へ吹っ飛ばされる。

「げほ、ごほ・・・!?」

腹を抑え、激しくせき込む川内。

「なかなかに良い蹴りでしたよ。しかし、まだ弱い」

「ッ!」

それを聞いた川内は、悔しさに顔を歪ませ、気合のみで無理矢理立ち上がる。

「ほう、立ち上がりますか」

「負けてられないのよ・・・・」

左足を前に、右足を後ろに出し、両手を地面について前かがみになって、腰を上げる。

一般で言う、クラウチングスタートというものだ。

だが、これは馬坂流でいう、構えの一つだ。

 

『猪突前進の構え』

 

「貴方を排除する」

「出来ますかね?」

「やるしかないでしょ!!!」

そのまま、地面を蹴り、川内は裕司に向かって突っ込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハア・・・ハア・・・・なんとか、逃げ切れた?」

目の前に広がる海を目の前に、そう呟く翔鶴。

「このまま海に出れば・・・・」

逃げ切れる。

それは口に出さず、翔鶴は、水上移動装置を展開しようとする。

だが。

「それじゃあ困るんだよ」

「!?」

すぐ後ろから声が聞こえ、慌てて振り向いた瞬間、腹に鈍痛が走り、その痛みに耐えきれず気絶する翔鶴。

その一瞬で見えたのは、白銀の機械的な鎧を身にまとった男だった。

 

 

 

 

 

 

剣を薙ぎ払い、残敵を全て倒す時打。

「これで全部か・・・」

「ああ」

時打の言葉に、若干暗い声で答える長門。

その理由は、気絶している敵の中に、血を流し、絶命している者たちの事だ。

それを察した時打は、長門を背後から撫でる。

時打の方が若干身長が高いため、自然な仕草のように見えるその光景。

「あとで、埋葬しよう」

時打はそれだけ言い、長門の元を離れる。

そして、第二派が来るか来ないかを確認する為にまた屋上に上っている達也の方へ向かって歩き始めたその時、銃声が鳴り響いた。

「達也?」

そこには、九時の方向へ狙撃をしている達也の姿があった。

時打は急いで崩れた鎮守府の建物を飛び上り、達也の元へ向かう。

「おい、達也、どうし・・・・」

そこまで言いかけてから、時打は、達也が何を狙撃しているのかを見た。

「お前のお姫様が攫われてるぞ」

若干、ジョークを交えたその達也の言葉の深い意味を、時打は否応なく直観させられた。

「翔鶴ッ!!」

謎のいかつい鎧に纏われた男に、翔鶴が担がれているのだ。

それを見た瞬間、時打の中で、何かが煮えくり返るのを感じた。

もともと翔鶴の運は、前世でもある通り、『不幸艦』として揶揄されていた程、悪かったものだ。

だから、その運の無さが今、この瞬間に反映されているのかもしれないが、そんな事を考えている暇は無い。

否、考える必要などない。

時打は、自身の出せる限界速度を出し、その男に向かって走りだす。

その時、達也が。

「出来る限り時間は稼ぐ。後は自分でやれ」

当然、時打の耳には入らなかったが、実際、あの鎧男にとっては、かなり邪魔臭いものだった。

「ええい!鬱陶しいッ!!」

忌々し気にそう叫ぶ宮城。

翔鶴を左腕に抱えながら走っているも、飛来してくる狙撃のせいでそちらに気が向いてしまう。

さらには数回、足に直撃され、態勢を崩す事もあるのだ。

それでうまくスピードが出ないのだ。

「ん・・・んん・・・?」

さらに運の悪い事にここで翔鶴が目覚めてしまった。

ものすごいスピードで走っているために、その風はかなり冷たいもの。

そして、そのスピードによって、ものすごい速さで変わっていく地面の様子に驚かずにはいられない。

だがなにより、見ず知らずの男に抱えられているのは、恐怖を抱かない事なんて無かった。

「ひ、いやぁぁあ!!」

「な!?もう起きたのか!?」

艦娘の体は丈夫だ。

だから、浅かったのだ。

「はなして!離して!」

「チッ、面倒くさい女だ」

じたばたともがく翔鶴を必死に片腕で抑えつける宮城。

だが、いきなり、自身が来ている鎧・・・・アイアンマンの様な鋼鉄の鎧の頭部に搭載された演算装置が、攻撃を知らせる警告を、メットに搭載されたモニターに映し出される。

そして、その攻撃の軌道を正確にオレンジ色の軌跡として可視化される。

慌てて右腕を胸の前に出し、その攻撃を待った。

すると、上腕に鈍い衝撃が走る。

更に、重い鎧をつけている筈の宮城の体が浮き上がり、吹っ飛ばされる。

それと同時に、左腕の翔鶴を手放してしまう。

「翔鶴!」

「提督!」

宙へ投げ出された翔鶴を、宮城を吹き飛ばした時打が左腕で受け止める。

「提督!提督!」

時打の胸に顔を埋め、服の裾を握りしめながら、彼女は安堵の涙を流す。

「ぐ・・・・」

一方で、宮城は鎧のお陰でダメージは無く、鎧が歪んだ様子もない。

なので立ち上がった。

そして、突如現れた時打(イレギュラー)に対し、演算を始める。

「・・・・」

『脅威度 5。用心すべし』

それを見た宮城は、時打を見据える。

「翔鶴、下がってろ」

「はい」

翔鶴を後ろへとおいやる時打。

そして、右手の深鳳の切っ先を向ける。

「・・・・」

その眼は、怒気をはらみ、今にも宮城に襲い掛かってきそうだった。

だが、こちらも何も戦果が無かったなんて言えない。

せめて、男の後ろにいる女だけは攫って行く。

鎧、『AFMS(アーマード・フルメタル・スーツ)』に搭載された兵装を確認し、身構える。

静寂があたりをつつみ、冬の冷たい風が吹く。

そして・・・・

 

ドゴォォォン!!!

 

どこかで大きな音が鳴り響き、二人が同時に動く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直球に突き進む者と全てを一撃の元に粉砕する者。

悪魔の様な速さを持つ者と馬の様な速さを持つ者。

妹を守る為に戦う者と愉悦を欲する者。

そして、守るべき人の為に刀を持つ者と自らの商売の為に全力を出す者。

 

この双方がぶつかり、決着がつく時、その先にどんな結末があるか、まだ誰にも分らない。

 

 

 

 




次回『明王と化せ 十重の極み』

その一撃は山をも砕かん。

お楽しみに!

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