赤城「その代わりボーキサイト無くなりますよ?」
心配するな赤城。自分の嫁はお前だけだ。
赤城「ふえぇ!?」
吹雪「なにさらっと告白してるんですか貴方はァ!?」
響「まあ、なんとなく予感はしてたけどさ・・・・」
てなわけで本編どうぞ!
地下。
「また来たんですか?」
「ああ」
そこで、五月雨はベッドの上で時打と対峙していた。
「ちょいと、外に連れ出しにな」
「なんでですか?」
時打の言葉に、五月雨は訝しむように睨む。
一方で時打は溜息をついて、隠す事無く五月雨にとっては頭をハンマーで殴られたような衝撃を与えた。
「秋村が来る」
「!?」
「だから連れ出しに来た」
五月雨は、体が強張るのを感じた。
あの男がここに来る。
「ど、どうして・・・・」
「それは俺にも分からん。ただ分かる事は、アイツはお前をどうしても取り戻したいらしくてな」
複数の足音が聞こえる。
「ほれ」
「!?」
時打が何かを投げる。
それを驚きながらも受け取る五月雨。
それは、五月雨のいつものセーラー服と靴、それとホルスター付きのコルトガバメントだった。
「扱えるだろ?」
時打はそう聞いてくる。
五月雨は感付いていた、この近付いてくる足音の正体が。
「・・・・どうして・・・」
五月雨は聞いた。
「どうしてあなたは、ここまで私を守ろうとするんですか?どうして、私を・・・・貴方の鎮守府にいるみんなを傷付けた私を、助けるんですか・・・?」
五月雨は、そう聞く。
時打は、間も置く事も与える間も無く答えた。
「お前は俺の
時打は、笑わずにそう答えた。
「どう・・・して・・・・どうして・・・・そんな事言えるんですか・・・・私は・・・ずっと・・ずっと・・・みんなを・・・傷つけてきたんですよ・・・」
「なら謝れば良い」
五月雨の言葉に、時打はそう返す。
「無様に、誠心誠意に、謝り続ける。たとえ、許されなくても、償っていけば良い。俺は、取り返しのつかない事をしでかした。だから、許されるまで、償い続けているんだ」
「え・・・・・」
五月雨は、その言葉の意味が分からなかった。
取り返しのつかない。その言葉に、どんな意味が込められているのか。
「お前も、償い続けるんだよ。そして、真正面から向き合って、謝る。俺は、そうしてきた。だから、お前も、同じ様にして欲しい。それが、俺がお前に送る、精一杯の『謝罪』だ」
そして、時打は、真っ直ぐに五月雨を見据え、頭をさげた。
「遅れて、すまなかった」
五月雨は、困惑する。
何故自分が謝られているのか。
その理由が解らなかった。
「お前が苦しんでいるのに、俺は、気付いてやれなかった。もっと早く、あの男の所業を突き留めていれば、こんな事にはならなかった。だから、すまなかった」
だけど、それで十分だ。
五月雨は、ベッドから降りる。
「五月雨?」
時打は、顔をあげる。
「着替えます。後ろを向いててください」
そう言い、五月雨は、ローブに手をかける。
「そうか」
時打は、五月雨に背を向けて左腰にある刀の柄に手をかける。
五月雨は、一分と立たぬうちに着替えを済ませ、ガバメントの安全装置を外す。
そして、後ろをむく時打の隣に立つ。
すると、部屋の開いている扉から、ぞろぞろと、黒スーツの男たちが入ってくる。
そかも、全員、アサルトライフルだとかハンドガンやショットガンを持っていた。
「・・・・一つ良いですか?」
「なんだ?」
「これが終わったら・・・私は、黒河に行ってもいいですか?」
五月雨は、そう、聞いた。
それに時打は、こう答える。
「行くんじゃないだろ?帰るんだろ?大歓迎だ」
時打は、刀を抜き放つ。
その刀は、刃と峰が逆という不思議な構造をしていたが、不思議と、その人に合っているような気がした。
「そうですか」
ふと、先頭に立っていた男が口を開く。
「天野時打。そこにいる五月雨さえ渡してくれれば、命だけは助けてやろう」
その問い時打は・・・・・
「断る」
即座に、首を横に振った。
「そうか、なら死ね」
そして、黒スーツの男たちが一斉に銃口を向けた。
「行くぞ」
「はい」
そして、時打と五月雨は一斉に駆け出した。
同時刻、横須賀水道にて・・・・・
「・・・時打くんの予想が当たったわね・・・」
足柄がそう呟く。
「ああ。全く、流石歴代主席だ」
那智も同じように頷く。
彼女たちの目の前には、夕立、および神通によって照らされた複数の影をみすえる。
「大丈夫かしら・・・・・」
「なんだ?彼の元教師だから気になるのか?」
「まさか、私が心配してるのは五月雨ちゃんの方よ」
那智の言葉に、おどけるように否定する足柄。
「さて、貴方たちにも、働いて貰うわよ、吹雪、電」
そう言い、足柄と那智は自分たちの後ろにいる吹雪と電を見据える。
吹雪の姿は、体が幾分か成長しており、その服装も白いセーラー服から黒いセーラー服へ、その上に黒いロングコートを羽織っており、その腰には、立派な黒鞘の刀。
正真正銘、黒河の吹雪だ。
その肩には、黒河の紋章があった。
当然、電にも。
「はい!先陣は任せて下さい!」
「壬生の狼の名にかけて!・・・・・は!?」
「ふふ、じゃあ、頼むわね」
「任せたぞ」
吹雪と電の返事に、笑みを零す足柄と那智。
『こちら神通!まもなく武蔵の射程距離です!』
「了解したわ。はあ・・・どうしてこんな時に限って、こっちの大和や武蔵は出撃しているのかしらね」
「まあいいじゃないか。こっちには、時打の愛弟子の電と吹雪がいるんだからな」
「そうね。さあ、行くわよ貴方たち!」
「「はい!!」」
「・・・始まったか?」
「はい、先ほど夕立ちゃんから電信が入りました」
横須賀の執務室にて、翔真の言葉に赤城が答える。
「夜じゃお前は役に立たないからな。戦況を細かく教える事だけに専念しろ」
「はい」
そう言い、翔真は窓の外を見る。
もうすっかり日が沈み、月が闇夜を照らしている。
その闇夜の中で、何が繰り広げられているのか、それは、翔真には分からなかった。
「ハァア!!」
他の男たちより、体躯の大きい男の鳩尾に、龍翔閃を撃ち込む時打。
「ッ!!」
「ぐ!?」
「な!?」
五月雨は、両手で持ったガバメントで男たちの持つ銃を撃ち落としていく。
階段を駆けあがりながら、時打と五月雨は、特に打ち合わせをした訳でもないのに、どんどん黒スーツの男たちを倒していく。
中には、体術で五月雨を抑え込もうとする奴らもいたが、五月雨のCQCの練度に敵わず返り討ちにあう者が多かった。
時打にいたっては、銃弾を全て避けている。
「五月雨、急げ!」
「分かってます!」
時打の恐ろしいスピードに、なんとかついていく五月雨。
(は、はやい!?この人、本当に人間なの!?)
その速さに目を見開く五月雨。
そう、とにかく速いのだ。
階段を飛び越えると言うショートカットをもってしても、相手も同じようにそれで跳び、引き離していくのだ。
ふと、右足を誰かに掴まれる。
「!?」
「捕まえたぞ!」
捕まえたのは、当然、黒スーツの男。
だが、五月雨は冷静に物事を考え、空いた左足で、その男の顔面を踏みつける。
「ぎゃあ!?」
人の顔面で、鼻は最も神経が集中している場所。
そこを叩かれれば強烈な痛みが走るのは当然の事だ。
だから、黒スーツの男はあまりの痛みに手を放した。
すぐさま時打をおいかける五月雨。
しばらくブランクがあったとはいえ、とにかく時打は速い。
そして気付けば、階段が終わっている所まで辿り着いていた。
時打は躊躇う事なくドアを蹴破る。
その先には当然の様にスーツの男たちが銃を持って構えていた。
そして同時に発砲。
アサルトライフル、ハンドガン、ショットガン、その他もろもろとにかく乱射してくる。
もはや避ける事は不可能。
万事休す!
「セァァアア!!!」
だが、時打は深鳳を持っていた右手を突き出すと、その手に持っていた深鳳を、まるで扇風機の様に高速回転させる。
すると、その高速回転によって生まれた円形の盾が、銃弾を全て弾き飛ばす。
『ナァ!?』
「すごい!」
それに驚く黒スーツの男たちと五月雨。
だが、それも長く続く訳が無い。
五月雨はガバメントを構える。
目の前では、全力で銃弾を迎撃している時打の姿。
自分はこれ以上、あの人たちを不幸にしてはいけない。
「てぇ!!」
引金を引く。
その銃弾は真っ直ぐ飛び、
そのまま跳ね返った銃弾は、男たちの内、一人が持っているアサルトライフルに直撃する。
全弾を撃ち尽くすまで、敵の銃器を全て破壊する。
そして、マガジンを交換するころには、敵も弾切れを起こす。
その瞬間、時打は駆け出す。
その勢いを使って、体を水平にして飛んで体を回転させる。
「我流飛天御剣流 龍巻閃『息吹』ッ!!!」
瞬間、豪風が吹き荒れ、五月雨は思わず顔を腕で庇う。
そして、豪風が吹き終わり、腕をどかすと、そこには、床に倒れ伏している黒スーツの男たちがいた。
「・・・・ッ!!」
「ふう・・・・」
その中で、時打は立ち上がる。
「急ごう、五月雨」
「はい」
振り向いた時打に、頷いて追いかける五月雨。
そうして、幾人もいる黒スーツの男たちを倒していき、港の外に出る。
そして、コンテナの多い、コンテナヤードに入る二人。
「これからどうするんですか!?」
「とにかく横須賀を出る!それで黒河だ!」
五月雨の言葉に、時打がそう答えた。
その時、コンテナの影から、何かが飛び出てくる。
「ッ!?」
時打は、その姿を目視した瞬間、すぐさま納めていた深鳳を抜刀。
その残光を弾き飛ばす。
その重さに、腕を痺れさせるも、なんとか耐える。
「木曾か!」
「悪いがアンタには死んでもらう」
木曾がサーベルを突き出す。
時打はその軌道を深鳳で逸らすことで回避する。
「後ろ!」
ふと五月雨が叫んだかと思うと、時打は木曾のサーベルを反らしたまま左半身になりつつ、深鳳の柄が上になるように背中に腕を回しながら後ろを向く。
そこには、艤装を展開した睦月が、左手のバタフライナイフを持って突っ込んて来ていたのだ。
時打は、その姿を確認すると、鞘を帯から外し、逆手に持った状態で睦月のバタフライナイフを下から弾く。
更に、その鞘で、木曾の方向を向く僅かな遠心力と膂力で木曾の右脇腹に、鞘の切っ先を叩き着ける。
「ぐぁ!?」
そのまま横に吹っ飛んでいく木曾。
そして、時打は右手の深鳳で睦月を吹き飛ばす。
「うあ!?」
瞬く間に二人を吹き飛ばした時打。
五月雨はすぐさま睦月へガバメントを向け、時打は深鳳の切っ先を木曾に向ける。
そのまま膠着状態が続く。
だが。
「おいおい何してんだお前らぁ」
「ッ!?」
「・・・・」
突如、聞こえた声。
それに、身を強張らせる五月雨。
「・・・・秋村」
「・・・・提督」
時打が低い、五月雨が掠れた声で、その声の主の名を呼ぶ。
「よぉ、久しぶりだなぁ。五月雨」
その正体は、かつて、五月雨の提督だった、秋村 禅斗だった・・・・・
次回『どちらを選ぶ?』
自分の命か他人の命。貴方ならどちらをかける?
お楽しみに!