艦隊これくしょん その刀は誰が為に   作:幻在

43 / 71
迫りくる刃

金山市実森(みのもり)区。

 

そこはこの街で唯一の緑を残す、美濃柱山の管理を任されている組織のある街。

そこにある『剛玄組』の立札のある、一つの大きなビル。

そこの組長室に、普通の成人男性の様な体格をした、スーツの男が、誰かと電話をしていた。

「そうか、清松たちがその少女を保護したんだな。なら結構。その少女の事については彼らに任せるとしよう」

男は、そう言い、電話を切る。

「とうとうそんな少女にまで噂される代物となったか」

「あの子も、当時は女の子と勘違いされていましたけどね」

ふと、背後から凛とした女性の声が聞こえた。

振り向くと、そこには、一人の綺麗な女性がたっていた。

長い黒髪を先でそろえ、その灰色のかかった黒い瞳は、なんでも見透かしていそうだった。

そして、その手に抱きかかえているもの。

それは、赤ん坊だった。しかもスヤスヤと規則正しい寝息をたてて。

「全く、あれは誰もが振るえるような代物じゃないぞ」

「それは私でも重々承知しておりますよ」

やれやれと言った感じため息をつく男と、その妻らしき女性はふふっと笑う。

「アイツがこの街を去って、もう五年。街は未だにその頃の風習が残っている。組織間での抗争は絶えず、この街で起き続けている。警察が介入して幾分か楽になったが、それでも、裏で起きていることまでは対処できていない」

「そうね。こんな事をいうのは、気が引けるけど、あの子が、この街に残っていてくれたら・・・」

「もう、子供の手を借りるのはやめようと言っただろう。彼が、自ら自分の人生を捨てたとしても、俺たちは、もうアイツの様な未来ある奴の人生を奪ってはいけないんだ」

男は、女の腕の中で眠る赤子の頬に触れる。

そして、幸せそうに、笑みを作る。

「そうね・・・」

女が、表情を曇らせる。

 

その時だった。

 

「御頭!」

バァァン!!と部屋のドアが開け放たれる。

「ちょっと、この子が起きちゃうでしょう」

「す、すみません・・・って、それどころじゃないんですよ!」

女に咎められ、一度は沈みかけた威勢を、思い出す様に、取り戻し、声を若干抑え込んだ声で御頭と呼ばれた男に向かってそう言う。

「どうしたんだ。そんなに慌てて」

「それが、駅を警備していた同僚から連絡が来て・・・戻って、戻って来たんですよ!彼が、アイツが!」

そして、彼らにとって懐かしい、完全に意表を突かれる名前を口にした。

 

「時打が、ここに戻って来たんですよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな」

金山市の駅前で、時打はそう呟く。

「ここが・・・・」

「金山市か。滅茶苦茶リッチな所じゃねえか」

「・・・」

その街並みに、驚きを隠せていない瑞鶴、響夜、長門。

都会のように、あちこちに行き交い、車が大量に道路を横切っていく。

時打は、その街を見て、何か、回想に浸っているようにボーっとしている。

その様子に気付く響夜。

そこで、響夜は時打の背中を思いっきり叩く。

「うお!?」

「さーって!早速吹雪を探しますか!ここの事はお前が一番良く知ってるだろ?何か心当たりとかねえのか?」

「心当たりねえ・・・知り合いの経営してる賭博場だとか、貧困街の住人だとか色々とあるけど・・・確実なのはあそこか・・・」

「あそこってどこなの?提督さnむぐ!?」

突如瑞鶴の口を塞ぐ時打。

「むぐぐ!?むぐぐ!?」

「バカ野郎。ここで俺の身分晒す気か?」

「ッ!?」

時打の言葉で気付いたのか、暴れるのをやめる瑞鶴。

それを確認した時打は、瑞鶴の口から手を離す。

「ごめん、てい・・・時打さん」

「それで良し。さて、じゃあ、まずは知り合いの酒屋から行く事にしようか」

「酒屋?そんな所に通ってたのか?」

「いっとくけど酒を飲み始めたのは十五の時だぞ。この時はまだ飲んですらいねえよ」

「十五で飲み始める貴方もどうかと思うぞ」

時打の言葉に疑問を持つ響夜に、時打は弁解するようにそう言い、そんな時打をジト目で見る長門。

「とにかく、早速行こうか」

「おう」

「ああ」

「はい」

そうして歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪が泊まっている賭博場『金龍(きんりゅう)』。

そこの楽屋にて、吹雪はチップから変換された大金に囲まれながら、いつものセーラー服に着替えていた。

その理由としては、金山市に来たのは昨日。

そして寝巻から着替えたかったからだ。

「ふう、これで良し!」

ぐ、と軽くガッツポーズをする吹雪。

「吹雪ちゃん、もういいかい?」

「あ、もういいですよ」

吹雪がそう返事をすると、入って来たのは清松だった。

「すみません、楽屋の一つを貰ってしまって」

「良いんだよ。困ってる子には優しくしないとね」

そう微笑む清松。

「それにしても、どうしてセーラー服?」

「え、ああと・・・ふ、服を買うとか、そういうの考えた事なかった言いますかなんと言いますか・・・」

「そうなんだ・・・じゃあ、服とか買いにいく?」

「いえ、良いですよそこまでして貰わなくても。それに、帰ってからでも、いくらでも選べる時間があります」

「そっか。早く帰らないといけないもんね」

寂しそうに言う清松。

 

吹雪は、清松に、夏休みという名目上の旅行(武者修行)という事でここにきていると言ったのだ。

 

そして、その終わりの日が近いという事で、その残りの時間を楽しもうとしている事にしている。

「この大金はどうするの?」

「それは後で考えます」

吹雪はすでに考えるのを放棄していた。

「そ、そうなんだ・・・・」

顔を引きつらせている清松を他所に、ふと、吹雪は窓の外を見た。

「・・・・」

 

―――今、彼らは来ているのか・・・・

 

もうすでに一日。

かれらがとっくにこの街に来ていても可笑しくないのだ。

(怒られちゃうかな・・・)

そう思う吹雪だった・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

ヒトヒトサンニー――――午前十一時三十二分。

 

居酒屋『ballade(バラード)

そこに努めるのは一人。

元々長い髪を、丸めるようにして首のあたりで結った髪型をした女性が一人経営していた。

「♪~」

鼻歌を歌いながら、誰もいないカウンター席を台拭きで拭くその女性。

名前は『宮川(みやがわ) 真由美(まゆみ)』。

あまり人気の無い飲酒店で働く独り身の女性だ。

カウンター席を全て吹き終わった頃、扉が開く。

「あ、いらっしゃいませ・・・」

そこで絶句する。

その人物が、どうにも見覚えのある人物だったからだ。

ただそれだけだったら良かった。

本当なら、その人物は、ここには戻ってこない筈だからだ。

「ど、どうも、真由美さん・・・」

「時打くん・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか貴方が戻ってくるなんて」

「まず寄る所といったらここしかないからな」

と、時打は出されたウーロン茶を飲む。

「それに、結構楽しくやってそうじゃない。提督業」

「あはは・・・・」

真由美の言葉に、視線を右に動かす時打。

そこには、静かにお茶を飲む長門と瑞鶴と響夜の姿があった。

そこでふと、長門は真由美にたずねた。

「て、天野さんと貴方は、以前はどのような関係だったのですか?」

「関係、ねえ・・・・」

「特に大きな事は無い。ただこの人が元反乱軍だったって事だ」

「そうなのか?」

その答えに意外そうに答える響夜。

「まあな」

「この子、あの時は本当に受け答えが上手でね」

「会話は苦手だった筈だったんが・・・」

「貴方が知らないだけよ」

ジト目で見る時打を他所に真由美がそう言う。

「しっかし、結構成長したわね」

「もともと成長期には入ってなかったからな」

真由美の言葉に、そう返してウーロン茶を飲む。

「それで、ここに来たのは、何か理由があるんでしょ?」

「ああ」

時打は、グレーのパーカーのポケットから、二枚の写真を取り出す。

そこには、黒髪で、ポニーテール。服装はセーラー服の少女の正面からの写真と、横から取った写真だ。

「この女の子を見かけなかったか?」

「いえ・・・昨日も今日もここで働いてたから、外に出る事なんてなかったから・・・・」

「そうか、ありがとう」

そう言って

写真をしまう時打。

「・・・・その子、貴方の妹?」

「まさか、コイツのだよ」

「ハァ!?」

真由美の疑問に、何故か長門を指さしながらそういう時打。

当然、長門は意表を突かれたので驚くのは当然。

「ななななにいってるんだ貴方はァ!?」

「だって、その方が都合がいいだろ?」

「都合がいいとかの問題じゃなぁぁぁあい!!!!」

大声を張り上げる長門。

「そういえば、貴方たちの名前聞いてなかったわね」

「「う」」

そこでうめき声を出す長門と瑞鶴。

彼女たちは艦娘。

本来ならこんな所にいてはいけないのだ。

だから、ここで彼女たちの身分をさらす訳には・・・

「ああ、この黒髪ロングの奴は相良(さがら) 長門で、こっちのツインテールの方は四乃森(しのもり) 瑞鶴だ」

と、さらりと偽名を述べる時打。

「「ごっほえっほごっほ!?」」

それに驚いて、飲んでいたお茶が肺に入って咳き込んでしまう長門と瑞鶴。

「あら、そうなの?よろしくね、相良さん、四乃森さん」

「え、ええ。あはは・・・」

「どうも・・・・」

苦笑する二人。

まさかの偽名に困惑し、かつそれで通ったから混乱せずにはいられない。

「一体いつ考えてたんだ?」

「え?出発する時にはもうとっくにおもいついてたが?」

響夜の言葉になんでもないとでもいう様に言う。

「ふふ、良い仲間ができたわね」

真由美が、その様に呟く。

「・・・ああ」

それに、頷く時打。

その時だった。

不意にがちゃりと、部屋のドアが開け放たれる。

そこへ視線を向ける一同。

すると、ぞろぞろと入ってくる黒スーツの男たち。定番の如く、サングラスをかけている。

思わず立ち上がって警戒する四人。

瑞鶴は、ショルダーバックから出ている二本の紫の包みに包まれている棒に、それぞれに両手を触れる数センチ手前で止め、響夜と長門はいつでも拳を撃ち出せるように身構え、時打は背に背負っていた逆刃刀を腰のあたりに持つ。

たった数秒で一触即発。

だが、真由美だけは違った。

そして、黒スーツの男たちに続いて入って来た男によって、その均衡は崩れる事になった。

「貴方は・・・・」

その人物を見て、眼を見開く時打。

「え?」

「知り合いなのか?」

瑞鶴と響夜がそう意外そうに言う。

「・・・久しぶりだな、時打」

「随分と立派になられたもので、剛玄さん」

警戒を解く時打。

「なに、こんなもの。お前がいた時に比べれば、楽な立場だ」

ふ、と笑う剛玄と呼ばれた男。

「なあ時打・・・・この人だれ?」

「かつて、反乱軍のリーダーを務めていた人だよ。名前は剛玄(ごうげん) 勝義(かつよし)

時打が響夜に向かってそう言う。

「そ、それじゃあ、ていと・・・時打さんの元上司?」

「いや、上司っていう程でもない。単なる友人としての関係だ」

瑞鶴の疑問に、剛玄は、そう答える。

そこで、時打は剛玄に歩み寄る。

ボディーガードらしき人物は、躊躇いなく時打に道をあける。

時打が前にたつと、その人物が、かなりの長身だという事が見て取れる。

「丁度良かった。頼みたい事があったんだ」

「そうか。ただ、その前に・・・」

剛玄はそう言い、入り口の方に視線を向ける。

すると、扉の方から勢いよく飛びついてくる人物が一人。

「時打くーん!」

「うわ!?」

黒い髪をなびかせて時打に飛びついてくる女性。

「「「な!?」」」

思わず声をあげてしまう三人。

「会いたかったよ~!」

「ちょ!?冴さん!?頭をそんなわしゃわしゃかきまわさないで・・・・うおおお!?」

その豊富な胸に顔を埋められながら、頭をわしゃわしゃとかき回される時打。

「い、いい加減にしろ!」

「あ」

なんとか持ち前の腕力で冴と呼んだ女性を引き離す。

「全く、会ってそうそうこれとは、全く変わってないな冴さんは!」

「あ~ら~。誰かしら?その冴さんって人」

「え・・・・だって・・・・」

冴と呼ばされた女性の思わぬ反応に口をぱくぱくと茫然とする時打。

その女性の反応には、まるでイタズラをしている子供の様な笑みがあった。

そこで、ある可能性に辿り着く時打。

「ま、まさか・・・・結婚したの?」

「そうなのよ~。だから、今の私は剛玄よ」

ふふ、とイタズラっぽく笑う女性。

「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええぇぇぇえええぇぇええええ!?!?!?!?!?!?」

物凄い絶叫がその場に響く。

「み、耳が、耳がぁぁぁあああ!?」

「て、提督がここまで大声を張り上げるなんて初めてだ・・・」

「こんなでかい声だせるんだな」

耳を抑えて悶えまくる瑞鶴。半ば耳をキンキンと痛めながら顔をしかめる長門。そして持ち前の打たれ強さが関係しているのか平然としている響夜。

「じゃ、じゃあ美織さんって呼んだ方がいいのか?」

「ええ。その方がわかりやすくていいわ」

女性、『剛玄(旧名『冴』) 美織(みおり)』がそう承諾する。

そこで、全員が店のカウンター席に座り、お茶を飲む。

「それで、お前の言っていた女の子の事だが」

勝義が、時打の出した写真についての事を話し始める。

「昨日。お前の刀が保管されている美濃柱山に入ろうとしていたが、清松に引き留められて、今、奴が経営している金龍に泊まっている」

「それだけ分かれば十分だ。早速行こう」

「代金は払っていきなさいよ。食い逃げなんて許さないんだから」

「分かってますよ」

そう言う真由美に苦笑する時打。

 

 

―――だが。

 

 

「大変です組長!!」

突然、先ほどドアの外で待機していたボディーガードの一人が慌てて入ってくる。

「どうしたんだ?」

「本部から連絡が入って、刀を以上に多く持った男と、双子らしき巨漢の男二人に黒マントを纏った男、そして長刀を持った男に襲撃されて・・・・」

そして、次の一言で、その顔は絶望に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その報告がくる数分前。

剛玄組本部のビルにて。

「ウオオオオオオオオオ―――――!!」

『うわぁぁぁああああ!?』

「シャアアアアアアアアア――――――!!」

『ぎゃぁぁぁぁあああ!?』

二人のガトリングガンを持った男二人の斉射により、遮蔽物に隠れていた組員たちがやられていく。

「くっそ!あんなもん持ち上げられるなんて、どんだけの腕力だよ!」

組員の一人が、ハンドガンを撃ちながらをそう吐き捨てる。

「おい!アイツがこっちに来たぞ!」

「!?」

組員の一人が遮蔽物の右側からくる、黒マントの男が一人。

「クソ!撃て!撃て!」

一人がそう言うと、その場にいる全員がドカドカとハンドガンから弾を撃ち続ける。

「無駄」

一方で、黒マントの男がそう呟いたかと思うと、懐から銃剣を抜き出し、それをかなりの精度で連射する。

「ぐあ!?」

「ぎゃぁ!?」

次々に倒れていく。

「くそ!引くんだ!」

勝てないと踏んだのか、後退していく組員たち。

「ふん」

「おーおー流石だな、沙影(しゃえい)

背後から、ガトリングガンを持った双子の巨漢の男。その肌は褐色で、外国人だという事が丸分かりだ。

だが、その言語は完璧な日本語だった。

唯一見分ける手段としては、兄の『ジョン・ウィーカー』が右腕に赤いバンダナを巻いており、弟の『ウィルソン・ウィーカー』が左腕に青いバンダナを巻いているという事以外にない。

そして、黒マントの男、『仙波(せんば) 沙影(しゃえい)』は銃剣を持った手をマントの下に隠す。

「そろそろ、七火(しちか)破道(はどう)()()を捉える頃だ」

沙影がそう呟くと、身をひるがえして、このビルを出ていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあぁぁあ!?」

胴体を切断されて絶命する組員。

「ぐ、くっそ・・・」

その後ろでは、血まみれで地面を這いづる男、『鞍馬(くらま) 英一(えいいち)』がいた。

その目の前には、黒スーツに、冷徹な眼差しで長刀を持つ男が一人。

「おーおー、粘るねえ」

その後ろでは、確実に銃刀法を無視しているかのように、刀を体中に装備している男が一人いた。

そのうち、一本、鞘に納めたままの刀の先に、一つ籠がぶら下がっていた。

「ゆ、優香・・・ちゃん・・を・・かえ・・・せ」

「黙れ」

「ぐあぁああ!?」

腕を刺され、うめき声を出す英一。

刺したのは、長刀を持つ男だった。

「おーい、それぐらいにしとけよ破道。これ以上はマズイぜ」

「・・・・チッ」

破道と呼ばれた男は血を払い、鞘に長刀を納める。

「ま、まて・・・」

英一は、立ち去っていく二人の男に向かって、刺されていない手を伸ばすも、抵抗虚しく、赤子の泣き声を聞きながら、意識を急速に遠のかせていく。

「すみません・・・組長・・・ごめんよ・・・時打くん・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

賭博場『金龍』。

そこで、吹雪は与えられた楽屋にて、荷物の確認をしていた。

そこには、清松の姿もあった。

「これで全部だね」

「はい。ありがとうございます」

全ての荷物をリュックの中に入れて、そう確認する吹雪。

「短い間でしたが、ありがとうございました」

ぺこりと礼儀正しくお辞儀をする吹雪。

「いや、いいんだよこれぐらい」

清松は、そう返す。

その時だった。

「清松!大変だ!」

そこへ重信が慌てて部屋に入ってくる。

「どうしたんですか重松さん?」

「どうもこうしたも、剛玄組の本部が襲撃されたんだ!今、死人や怪我人の手当に人手が足りないらしいんだ!」

「ええ!?」

重信の言葉に驚く清松。

(剛玄って確か・・・司令官の元上司だった人?)

吹雪は、ただ事じゃないと理解しながら、そう考える。

「それだけじゃねえんだ!優香ちゃんがその襲撃された奴らに連れていかれたんだ!」

「そんな!?」

「あ、あの・・・・」

更に驚く清松に、吹雪がある事を問う。

「その、優香ちゃんっていうのは誰なんですか?」

「ああ、この辺りを支配してる剛玄組組長の剛玄 勝義さんの娘さんで、また赤ん坊なんだ」

「!?」

吹雪の顔が驚愕に染まる。

「でも、どうして襲撃なんか・・・・」

清松がそう頭をかかえる。

だが、何故か吹雪だけが、その答えを見つけられた。

「・・・・・刀」

「え?」

「刀です!あらかじめ上を潰して動けない所で山に侵入して刀を奪おうとしてるんですよ!」

最も、吹雪にとってはその部分は()()()()()()()

「その為に優香ちゃんを攫ったのか!?」

「くそ、なんて奴らだ・・・!」

清松と重信が悔しそうに顔を歪める。

「二人はその剛玄組の本部へ行って下さい!」

だが、そんな二人を他所に、吹雪が()()()()()

「な!?」

「吹雪ちゃん!?」

二人の声を聞かず、吹雪は窓から外に出る。今が二階、隣の建物がここよりも低かった事が幸いしたのか、飛び移る事に成功する。

「吹雪ちゃん!」

清松が叫ぶも、吹雪は振り返らず走り出す。

だが、目の前にはの天井から6メートル程も高い建物が立ちはだかっていた。

窓もないためによじ登る事もできない。

だが、吹雪はスピードを緩めない。

「無理だ!」

思わずそう叫んでしまう清松。

だが、その瞬間、彼は見た。

 

吹雪の服が霞み、かすかに黒いコートが浮かび上がる瞬間を。

 

そして、吹雪が、その足からあり得ない程の脚力で、その建物を飛び越えた!

「「な・・・・!?」」

あの様な芸当ができる存在を、清松と重信は一人しかしらない。

「・・・アイツ、本当に時打の弟子かなんかじゃないのか?」

飛び越えた吹雪の姿は、もとのセーラー服に戻っており、だがその速力は凄まじいものだった。




次回『取り戻せ 儚き命の為に』


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。