艦隊これくしょん その刀は誰が為に   作:幻在

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やってきました!吹雪編!

吹雪「今回は天野司令官が飛天童子としての活動の地、金山市が舞台になります!」

どうぞご照覧あれ!


吹雪編
我欲するは闇夜の力


とある海域にて、激しい砲撃戦が繰り広げられていた。

「く!羽黒、そっちは任せたぞ!」

「は、はい!」

「瑞鳳、攻撃隊は出せるか!?」

「な、なんとか!」

「よし、初霜、時雨、吹雪!雷撃の用意だ!」

長門が、その様に命令をする。

「はい!」

「分かった!」

「いきます!」

それに答えるように、初霜、時雨、吹雪が雷撃の準備に入る。

「魚雷装填!って―――――!!」

吹雪の号令で、三人は一斉に魚雷を放つ。

その魚雷は、一斉に敵深海棲艦の艦隊に真っすぐに突っ込んでいき、軽巡、駆逐艦に一隻づつ直撃する。

だが、当たったのが一発か二発だけだったらしく、轟沈にまでは追い込めなかった。

「瑞鳳!」

「はい!」

瑞鳳が弓を引き絞り、放つ。

その矢が無数に分裂し、艦攻『流星』へと変貌する。

そして、敵艦隊に真っすぐに飛んでいき、魚雷を海に投下。

すると魚雷は真っ直ぐに敵に突っ込んでいき、敵の空母のヌ級に直撃する。

ヌ級は大破して、艦載機の発艦が出来なくなる。

「よし、これで・・・」

吹雪がそう声を漏らした途端、突然の砲撃音。

「!?」

ル級が砲撃してきたのだ。

その砲弾の射線には吹雪がいた。

「しまった!?」

確実に当たる距離、避ける事も叶わない。

「吹雪!!」

「あ・・・・」

だが、長門が吹雪と砲弾の間に入る。

そして、轟音が轟く。

「長門さあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああん!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時雨小破、羽黒中破、他は無傷で、長門は轟沈寸前の大破か・・・・」

時打は、出された報告書を見て、そう呟く。

目の前には、長門を除く、今回の指令出撃(ミッション)に参加した艦娘たち。

「長門は入渠させてるから時期に回復するだろう。誰も沈まなかった事が、なによりも嬉しい事だな」

時打は、そういうも、目の前の艦娘たちは浮かない顔をしていた。

特に、吹雪が。

「とりあえず、全員入渠して来い。ダメージ追ってない奴も、硝煙を落としてこい」

それを聞いた全員が、入渠に向かう。

「ふう・・・」

「どう思いますの?」

傍らの熊野がそう聞く。

「今回はなんとかクリアしたが、それでも、毎回のように、長門が吹雪をかばって大破する事が多くなったな・・・」

「長門さん必殺の二重の極みも、接近しなければ成功しない代物ですしね・・・」

長門は、響夜から、破壊の極意である二重の極みを伝授してもらっている。

そのお陰で、例え接近戦に持ち込まれたとしても、その必殺の一撃が敵を文字通り玉砕する。

電も、牙突も使えるため、白兵戦についてはここではスペシャリストといえるだろう。

そして、瑞鶴だが、思想改装によって、四乃森蒼紫をイメージとして、超高速の連撃を得意とする『御庭番式小太刀二刀流』を習得しているだけでなく、空母としての能力を損なわずに済んでいるのだ。

陰陽系空母などが使っている巻物のようなもので、艦載機を飛ばせるようにしているのだ。

これはこれで頼もしい。

ふと、熊野が勝手にお茶を用意しながらある事を時打に聞いてきた。

「そういえば、これは、答えなくていいのですけど・・・」

「ん?なんだ?」

「貴方が、飛天童子の時に使っていた刀って、今、どこにあるんですの?」

 

 

瞬間、場の空気が凍った。

 

 

「~~~~~~ッッッ!?!?!?!?」

背筋におぞましく這いまわる蛇を連想する熊野。

質問を間違えた。

それは間違いない。

(こ、殺される!)

だらだらと冷や汗を流し、後ろを振り向く事を断固として拒否する。

後ろを向いた瞬間、一瞬にしてその意識を刈り取られてしまうかもしれない。

だが、その空気はすぐに熱を取り戻した。

「いや、すまない」

「ほ・・・・」

思わず安堵の息を吐く熊野。

「俺が飛天童子の頃に使っていた刀、『影丸』は、金山市にある山にある無人の神社に納めてるんだ」

「そうなんですの?」

冷や汗を拭いながら、熊野がそう聞き返す。

「だけど、取りに行こうと思うなよ?あれは血を吸い過ぎてる。もうあれは、『妖刀』と呼んでも可笑しくない程の怨念を溜め込んでる」

「・・・・」

持った本人である時打が言うと、妙に説得力がある。

「心得ましたわ」

「頼んだぞ・・・・・そして、そこで聞いている川内」

 

ビックゥ!?

 

もし現実で効果音がつく事があったなら、この様な音がついていただろう。

「絶対にいうなよ?

「い、イエッサー!」

扉の向こうから、川内がその様に言った声が聞こえ、次にドタドタとした音が遠くに行ってしまう。

「全く・・・」

「誰かに言いふらしたりしそうだなアイツ」

「それは祈るしかないでしょう」

と、熊野は時打の座る執務机の上にお茶を入れた湯呑を置く。

「お、悪いな」

それを手にとり、一服する時打。

「それにしても・・・・」

ふと、時打はある資料を一つ手に取る。

「これは一体なんなんだ・・・・」

 

 

 

 

 

 

駆逐艦『吹雪』、思想改装の可能性有り。

 

心意に、淀みを発見せり。

 

改装に、願望に見合った武器が必要である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ・・・・」

ぼすん、と自分のベッドに落ちるように倒れる吹雪。

「まただ・・・・」

そう呟く吹雪。

長門が大破するのは、今日に限った事では無かった。

前回の単独出撃(クエスト)の時もそうだった。

吹雪に被弾しそうな砲弾を、全て長門が受け止めているのだ。

そのせいで、長門が轟沈寸前のダメージを負ったり、艤装をやられて戦闘能力を失ったり、そんな事が続いているのだ。

「これじゃあダメだ」

あの日約束した事。

自分が貴方を護るから。

あの日、長門が陸奥を失い、自暴自棄になっていた時に、吹雪が長門に向かっていった、あの言葉。

これでは、その逆ではないか。

「駆逐艦の私じゃ・・・限界がある・・・・」

仰向けの状態からむくりとおきあがる吹雪。

駆逐艦は、その機動力(スピード)を生かして敵を撹乱する事が得意であり、敵艦に肉薄して雷撃を撃ち込む事にかなりの利点を持つ。

だが、小型艦というだけあって、装甲は薄い。

戦艦などに砲撃されればあっという間に大破に追い込まれる。

それを避ける為の機動力なのだが、敵の射撃にはかなり見栄の張る能力がある。

とにかく避ける先を読まれてそこを攻撃されるのがオチとなってきているのだ。

 

ならどうすれば良い?

 

方法なら、この鎮守府に存在する。

白兵戦だ。

現在では、電、長門、瑞鶴の三人のみが可能。天龍も、そこそこ鍛えれば可能となるが、白兵戦による効果は高いといえるだろう。

とにかく、接近してしまえばあとはこっちのもの。

一撃で仕留める、あるいは短期で連撃を食らわせればそれで終わる。

幸い、一撃の破壊力は電と長門が、短期的に連撃を与えられるのが瑞鶴だ。

だが、自分にその様な力を手に入れられるのだろうか?

電の天野流、あるいは牙突は、長い年月をかけれ磨き上げられたものであり、その成果を自分が短期間で手に入れらるのは無理だろう。もとより、力を欲する事に短気な吹雪はそこまで待っていられない。

ならば長門の二重の極みは?これは殴る事に特化していて、もともと高い膂力が存在しなければならない技だ。

連発すれば骨が軋む様な技に、果たして自分が耐えられるか。

ならば残されているのは瑞鶴と同じ心意改装だろう。

 

憧れなら存在する。

 

時打だ。

あらゆる『速さ』を追求した飛天御剣流の使い手であり、今自分が思う、最強の存在だろう。

そして、暁から聞いた、彼の正体。

それは、四年前まで栄えていた、無法地帯金山市を支配していた、黄金連合を壊滅させ、反乱軍(レジスタンス)の頂点にたった存在。

その名は飛天童子。

子供にして三千人という黄金連合傘下の人間を殺し尽くし、そして、天下分け目の決戦の日『革命の日』にて、反乱軍の勝利と共に姿を消した人物。

それが彼だ。

・・・・・なお、これは吹雪の解釈なので、一部ずれている所があります。ご了承下さい。

 

カッコいいと思った。

闇に生きるダークヒーロー的な存在。

それでいて最強の存在。

誰にも、正体を見破られる事なく、ただ闇の中で敵を消していく。

この吹雪にとっては、それが何よりもカッコいいと思った。

ただ、今の彼は殺しから離れ、今の様に、自分たち艦娘の為に尽くしてくれている。

不殺の誓いの元に、自分たちの為に、陸で戦ってくれている。

海で戦う、自分たちの代わりに。

それが証拠に、誘拐された翔鶴を救い、大和と決闘をして、大和と長門を仲直りさせた。

そんな彼に、吹雪は憧れを抱いた。

純粋な、彼の様な人間になりたいという願望が吹雪にはあった。

ただ、彼に憧れるだけではだめだ、と、ふと思ってしまった。

なら、何をすればいい?

それが見つからなかった。

「おなか、空いた」

ふとやってきた雑念を口にして、とりあえず今はその欲求に従い、立ち上がった吹雪。

食堂への道中だった。

「ねえねえ神通~」

「なんですか姉さん」

「提督が飛天童子の頃に使っていた刀の()()、知ってる?」

 

ナンデスト?

 

その場で硬直する吹雪。

たった今、すれ違った川内姉妹の会話に聞き耳をたてる。

「・・・・」

「ちょ!?神通!?なんで早歩きになるの!?」

「離して姉さん私まだ生きていたい」

「だ、大丈夫だって!提督に聞かれなきゃ良いんだから」

「いやです死にたくない離して聞いたら殺されるから精神的にお願いだから」

「何もそこまで怯えなくていいじゃん!?」

そこからしばらくモメて、やっと神通の方が折れた。

「金山市にあるんだって」

「金山市というと、提督が現役の頃に活動していた、あの?」

「そう!そこにある山の上にある神社に納めてあるんだって!」

「だからって取りにいかないですからね」

「分かってるって。ただ誰かに話したかっただけ。でね、その刀の銘は・・・」

「・・・・・」

「ちょ!?また・・・・この!」

「きゃ!?」

「刀の銘は『影丸』っていうんだって」

「・・・」

「そんなに落ち込まなくてもいいじゃん・・・」

そんな風に会話し、去っていく二人。

「・・・・金山市の・・・・山・・・・」

その時、吹雪の中で、何かが渦巻いていた。

 

力を欲する欲望と、それはいけないと止める理性。

 

吹雪は、その心情のまま食堂へ向かった。

何を頼んだかは覚えていないが、ただ口の中が辛かった事は覚えていた。

そして、足は自然と自室へ。

部屋に戻れば、また風呂から戻ってきたのと同じように倒れる吹雪。

そして、一言。

「・・・・長門さん・・・・」

 




次回『消えた吹雪。目的地は、戒めの地』


その地、飛天の伝説が残る。

お楽しみに!

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