艦隊これくしょん その刀は誰が為に   作:幻在

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雷が改になったぜ!

川内も改になったぜ!

これで改の駆逐艦が五隻だぜ!

ひゃっほい!

「夜戦だぁぁぁああ!!」

ぐっはぁ!?

雷「それでは本編をどうぞ」




ヒトナナマルマル―――――午後五時。

 

横須賀鎮守府の食堂には、大きく『祝!大規模作戦成功!』の文字が描かれている横断幕があった。

端には小さく『なのです!』の文字が。

そして、食堂はかなりの熱気に包まれていた。

それは勿論、自然現象などでは無く、気持ちの事だ。

「うめぇ!酒うめぇ!!」

「ちょ!?それ私のなんだけど!?」

「アハハハハ!!!変な踊りー!」

と、こんな風にお祭り騒ぎ。

その様子をカウンター席で日本酒をゆっくりと飲んでいる時打。

「これはすごいですね・・・」

その隣で、時打の小さいサイズの酒器にその日本酒を注ぐ翔鶴。

「提督は爽酒がお好きなんですね」

「そこまでアルコールの高いものなんて飲まないよ。味が淡くて香りが少ないこれが俺にとっては丁度良いんだ」

と、翔鶴が注いでくれた日本酒を口に運ぶ時打。

酔った様子は無い。

「時打」

「あ、翔真さん」

ふと、翔真が赤城を引き連れてやってくる。

「お前の所の明石からもらった設計図。今量産を進めている」

「お、それじゃあこれからの戦局も優位に進められそうですね」

「まだ油断はできない。敵が三式弾を使ってくる事が分かったんだ。そいつの技術が高くても、時代遅れの武器じゃその力を十分に発揮できないという事があるだろう?」

「そうですね」

そう会話をし、翔真は翔鶴をはさんで隣に座った。

そこで赤城は翔鶴に近付いた。

「今回はありがとうございました」

「あ、いえ、私はただ、提督の命令に・・・・」

「それでも、助けられた事は事実です。本当にありがとうございました」

と、深々と頭をさげる赤城。

「鳳翔、塾酒を頼む」

「はい、ただいま」

「あんたは相変わらず濃いものですよね」

「ふん。お前ならこれぐらい飲めるだろう?」

「好みじゃないだけです」

そう言って、酒を一飲み。

ふと、時打は会場の一端に目を向ける。

そこには、もうすっかり元気になった瑞鶴が飛龍たちと楽しそうに談笑していた。

 

 

 

あの後、瑞鶴の心意改装は解除され、もともと負っていたダメージに加え、心意改装の時に負ったダメージが加算されて、生死を彷徨う事になり、一刻を争う状態だったそうだ。

一応、マーシャル諸島近海に待機していた艦娘輸送船『だいば丸』の中にある入渠施設でなんとか命を保ちつつ、横須賀に着いた時にはすぐさま超高速修復カプセルに放り込まれ、そのまま数時間はその中に。そして出された後も何時間かは眠っていたらしい。

この宴は、準備になぜかかなりの時間がかかったために、瑞鶴の参加が間に合ったのだ。

ちなみに、検査などは豪真のお陰で身体的健康状態を調べるだけにとどまり、この宴が終われば、また心意改装や思想改装についての検査が行われるとの事。

 

 

 

「楽しそうですね」

隣の翔鶴が、瑞鶴を見ながらそう呟く。

「そうだな」

時打も、微笑みながら、そういうのだった。

 

 

 

 

 

 

一方でこちらは瑞鶴の方。

「あの後大変だったよ~。逃げた戦艦棲姫の行方を捜して艦載機を飛ばしたんだよ~」

「それで結局は見つからなかったけどね」

飛龍、蒼龍がそう言い、瑞鶴はそれに感心する。

「へえ、私が気絶している間にそんな事があったんだ」

「っていうか、一番大変だったのは瑞鶴の方なんだからね?」

「え?」

蒼龍の言葉に首を傾げる瑞鶴。

「だって、あの姿から戻った途端にお腹から大量の血を吹き出してさぁ。どこの出血大サービスだよって思ったわよ一瞬」

「アハハ・・・・それはどうもすみませんでした」

どうにも実感の無い瑞鶴。

それもそうだろう。

なにせ、その状態でずっと寝ていたのだから。

ただ、瑞鶴の中ではずっと疑問に思っている事が一つ。

それは当然、あの黒の忍び装束姿の事だ。

何故あんな姿になれたのか、未だに分からないのだ。

ただあの時思ったのは、守りたい。ただそれだけだった。

「ふう・・・考えても仕方ないか」

「何が仕方ないのかしら?」

「うわぁ!?」

いきなり背後から声をかけられ、少し驚く瑞鶴。

「か、加賀さん・・・」

「随分な反応ね。少し傷付くわ」

「う・・・ごめんなさい」

項垂れる瑞鶴。

「別にいいわ」

そう言い、加賀はテーブルの上に自分のコップを置く。

そのまま二人の間には沈黙が入る。

「・・・あの、加賀さ・・」

「あの時は、ごめんなさい」

「え?」

突然の謝罪に戸惑う瑞鶴。

「私は何も出来なかった。貴方が傷付いている間に出来た事は、ただ安全な場所で飛行場姫を叩く事ぐらいだった。貴方の手助けなんて、一度も出来なかった」

「そ、そんな事・・・動けなかった私を運んでくれた。危険を冒してまでそうしてくれた事に、私は純粋にうれしいんですよ」

「でも・・・・」

振り向いたの加賀の顔は、ほんのりと濡れていた。

「それだけしか出来なかった・・・・・」

「それだけでも、十分です」

瑞鶴は微笑み、加賀は浮かない表情をしている。

そこへ、飛龍がやってくる。からかいに。

「おー!加賀さんが珍しくデレてる~!それも瑞鶴に」

「飛龍、それはどういう意味かしら?」

ゴゴゴ、という黒いオーラを出しながら、飛龍を睨む加賀。

「えーそのままの意味ですが?」

「良いわ飛龍、演習場に出なさい。みっちりやり合ってあげるわ」

「じょ、冗談ですって」

加賀の気迫に怖気づく飛龍。

「アハハ・・・」

苦笑する瑞鶴に、蒼龍が声をかける。

「加賀さんはね、貴方が倒れた時に真っ先に向かったのよ。貴方の名前を何度も呼んで、そりゃあ大粒の涙をボロボロと零してたものだよ」

「そうなの?」

「うん」

「蒼龍!そんな出鱈目言わないで!あなたもシバくわよ!」

「ごめんなさーい」

飛龍にチョークスリーパーをかけている加賀が蒼龍に向かってそう怒鳴る。

それに蒼龍はお気楽と言った感じ返事をする。

そんな風景に、つい微笑んでしまう瑞鶴。

こんな日常を、毎日送れたら。そう思ってしまう瑞鶴。

この戦いが終わってしまったら、自分たちはそうなってしまうのだろうか?

兵器として用済みとなり、解体されるか、それとも、人として生きるのか。

それは分からなかった。

だけど、今は、過去の事なんかよりも現在(いま)を生きる。

戦うべきは今。その信念をもって、奴らと戦えば良い。

瑞鶴は、そう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マルマルマルマル―――――深夜零時。

すっかり、食堂は静けさに満ちていた。

「すみませんね。手伝ってもらって。お酒も飲んでいるでしょうに」

「なに、軽いものですよ」

台所にて、水道で皿を洗う時打。

そんな時打にお礼を言う、この横須賀鎮守府の鳳翔。

他にも、間宮や伊良湖が食器を拭いて片付けていた。

食堂では、床で寝ているものや机に突っ伏して寝ているものもいたり、すでに自室に戻っている者もいる。

「扶桑もすまないな」

「はい、何分と目が覚めてしまったので、これぐらいの事をするのが丁度良いんです」

時打の言葉にそう答えるのが、横須賀の扶桑だ。

ちなみに、ここの山城はそんな扶桑の為に粘ろうとしたが、すでに酒が回っているらしく、ダウン。

今は床でだらしなく寝ている。

「はあ、不幸だわ・・・」

「そう言いながら手伝っているのはお前だろう?」

一方で、黒河の山城は、黒河の長門と共に、皿を運んでいた。

「それにしても、仕事が速すぎやしないか提督」

「え?」

「これが普通ですけど?」

長門の疑問に、時打だけでなく、何故か鳳翔まで首を傾げてくる。

「・・・・いや、愚問だったか」

まあ、長門がそう思うのも仕方が無いだろう。

なんていったって、時打の担当していた皿の山がどんどんなくなっていき、高速で動く機械の様に早すぎるのだ。

「・・・ねえ、やっぱりうちの提督って、私ほどじゃないけど不幸な事を除けば、完璧超人のレッテル貼られてもおかしくないんじゃない?」

「・・・・そうだな」

山城の言葉に同意する長門。

「そういえば時打くん」

「ん?なんすか鳳翔さん」

ちなみに、何故時打がここの鳳翔の事はさん付けなのかというと、幾分かお世話になったからだ。

「瑞鶴の事はどうするんですか?」

「・・・・」

時打は、皿を洗う手を止める事なく、黙る。

周りは、働く手を止めて、二人に注目する。

「・・・・明日、長官の所に出向く事になってる。その時に、瑞鶴の意志で改装するかしないかを決める」

「そうですか・・・・」

鳳翔はそれを聞くと、時打の洗った皿を拭くのを再開する。

それを聞いた長門たちも、すぐに動き始める。

誰もが、無言で、作業を行った。

 

 

 

食堂の机の一つ、そこで瑞鶴は、突っ伏した状態で、なにやら楽しそうな表情で寝ていた。

「えへへ・・・かがしゃん・・・」

その様な寝言を呟いた。

 

 

 

 

 




次回 瑞鶴編最終回『我願うは、幸福を守る力』

それは、誇りの為に、大切な人を守る為に。

お楽しみに!

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