艦隊これくしょん その刀は誰が為に   作:幻在

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初!連合艦隊!

組んだのは機動部隊だぜ!
旗艦はもちろん、赤城だぜ!

編成としては、

第一艦隊
赤城改:旗艦
飛龍
飛鷹
隼鷹
扶桑改
大和

第二艦隊
川内:旗艦
響改
吹雪改
夕立改
金剛
比叡

という感じです。


吹雪「でも撤退の理由が私の大破・・・」

響「元気だして、司令官だってそれくらいの理由で外したりしないよ」

赤城「大丈夫。次はやられないように、私がフォローしますから」

吹雪「赤城さん・・・・ありがとうございます」

さーってひと段落した所で、本編をどうぞ!


時打VS大和

時打が駆け出す。

距離じゃ圧倒的に敵わない時打が、大和に勝つには接近して戦う他無い。

「第一斉射・・・・」

大和が全ての砲門を時打へと向ける。

若干、焦っている様にも見える。

それほどまでに、時打が速いのだ。

「って―――――!!!」

そして、全ての砲塔が火を吹く。

「ッッああ!!!」

それを見切った時打は不規則に右へ左へと方向転換し、回避。

「ッ」

「オオオッ!!」

そして、そのまま回転。

「龍巻閃・旋!!」

そして抜刀。

だが、かわされる。

「!?」

「少し甘いですよ」

なんと大和が体を背後へ投げ出してかわしたのだ。

「なっん・・!?」

「副砲、て――――!!」

大和の副砲から砲弾が撃ち出されるも、時打はそれ慌てて回転して回避。だが、何発か掠る。

「チッ・・・・!」

大和が舌打ちするのが聞こえるも、時打は前方へ受け身を取って落下によるダメージを回避。

そして、すぐさま大和の方を見る。

「第二斉射、って―――――!!」

「!?」

だが、すでに体制を整えていた大和が二度目の斉射。

時打はそれを左に向かって駆け出して避ける。

だが、それを追いかけるように、機銃や副砲を使って時打を追い詰めていく。

「っのォ!!」

そこで時打は自ら大和の弾幕の中に入っていく。

「!?」

それに一瞬驚いた大和だったが、すぐに表情を引き締め、弾幕を張る。

だが、時打はその全てを、命中弾のみを見切って叩き斬る。

「!?」

二度目の驚愕。

だが、大和もそれで対策を撃たない訳が無い。

「第三斉射、って―――――!!」

流石に、大和の最強の兵装である四十六センチ砲までは斬れないだろう。

だが、時打は、全て直撃コースである砲弾を見切り、その内の一つを頭上へ弾く。

 

飛天御剣流、龍翔閃。

 

「な!?」

三度目の驚愕。

そのお陰で副砲を撃つのをやめてしまう。

「オオオ!!」

そして、そのまま飛び上がる。

「あの技は!」

「お兄ちゃんの十八番、龍槌閃!」

観客席から、瑞鶴と電がそう叫ぶ。

そのまま、時打は落下しながら刀を振り上げる。

だが、大和は笑っていた。

「ッ!?」

「貰いました!」

そして、対空高角砲が火を吹く。

「ッゼアァア!!」

慌てて時打は鋭い気合と共に刀を振り下ろす。

そして、砲弾と正面衝突。

砲弾は明後日の方角へ飛んでいく。

「三式弾、装填!」

「な!?」

それに間髪入れずに大和の主砲が上を向く。

「って――――――!!」

「させるかぁあああ!!!」

それを見た時打は頭を地面の方へ向け、高速回転する。

 

我流飛天御剣流、龍巻閃・息吹

 

その突風と砲弾がまた正面衝突する。

だが、三式弾が突風に触れた瞬間、爆散。

飛び散った破片が時打の体を穿つ。

そのまま落下。

「提督!」

翔鶴が叫ぶ。

地面に落ちた時打。だが、何事も無かったかのようにむくりと起き上がり、距離を取る。

だが、その体からは少なからず、血を流している。

「流石に、三式弾の破片を喰らえば終わりと思っていたんですが・・・まさかその破片の殆どを吹き飛ばす程の突風を巻き起こして弾いてしまうとは」

「なに、驚くのはまだまだこれからさ!」

そう叫び、時打は走り出す。

そして、時打は走りながら、刀を、(ベルト)から外した鞘に、自分の胸元あたりで納める。

「あれは・・・双龍閃か?」

長門がそう呟く。だが、それを電が否定する。

「いえ、あれは、鞘だけでなく、柄も率いた三連撃の技・・・」

時打は、鞘に納めた刀を、自分の前に水平に構えた状態で大和に接近する。

「第五斉射、って―――――!!」

大和が砲弾を放つ。

全て、時打の各部分を狙った精密な射撃。

だが、時打はそれを体を半回転させ、そのまま器用に空中後転して回避。

「我流飛天御剣流・・・・」

「く・・・!」

完全に接近された大和は、時打の攻撃を防ごうとする。

時打は、刀を自分の左脇に抱え込む様に構える。

(抜刀術!?)

すぐさま腕を交差させる大和。だが、次に来た攻撃は、完全に虚を突かれる技だった。

 

―――()が大和の右脇腹に突き刺さる。

 

「っつあ!?」

突然の痛みに一瞬、悶える大和。だが、すぐに態勢を立て直そうとするも、次の攻撃が大和の背中に叩き込まれる。

鞘を纏った状態での回転攻撃。

最も、そのダメージは艤装が受け止めているが。

「く・・このぉ・・・・!」

「オオオ!!」

そして三撃目。その状態のまま鞘から刀が抜き放たれる。

 

「三頭龍・回転ッ!!」

 

そのまま回転して、大和の艤装に三撃目を叩き込む。

「くあ・・!?」

ダメージは無いまでも、艤装から伝わる衝撃は無視できないものだ。

第一の砲塔が回転する。

「!?」

「第一砲塔、って――――!!」

砲撃。もともと、その砲撃を、砲塔の近くにいるだけで、衝撃によって体が吹き飛び、鼓膜が破れ、意識不明の重体になる程の威力。

「ぐおあ!?」

当然、まるで縮小された砲塔でも、その砲撃時の衝撃は物凄いものだ。

その衝撃で吹き飛ぶ時打。

地面を転がり数メートル飛んだあとで態勢を立て直す。

「副砲、撃ち方始めッ!!」

「飛天御剣流!」

大和が副砲を連射する。

一方で時打は逆刃刀を我武者羅(がむしゃら)に振り回す。

「龍巣閃ッ!!」

まるで、龍の巣に入り込んだ小動物が、その瞬間に喰われる様に、命中弾を的確に叩き落していく。

「第二砲塔・・・」

そして、装填を終えた第二砲塔を時打に向け、大和は副砲の弾幕の中で、撃つ。

弾幕を防ぐのに手一杯な時打に、避ける術は無い。

「提督!」

「司令官!」

長門と吹雪が叫ぶ。

「って――――――!!」

そして、大和が四十六センチ砲を放つ。

もはや、直撃は免れない。

(これでッ!!)

勝利を確信する大和。

だが、その表情は一気に驚愕に変貌する。

 

 

 

 

「飛天御剣流―――――九頭龍閃ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガァァアアアンッ!!!!

 

 

 

 

轟音、それも、時打の背後と、大和の背後から。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

大和は、まるで錆びたブリキの人形の様に、首を右に回転させ、後ろを見る。

そこには、闘技場の壁に突き刺さった、四十六センチ砲の砲弾。

一方で、時打の背後には、二発の砲弾。

「な、何が・・・・・」

「どの剣術にも共通する事。それは斬撃の向きだ」

時打が、正眼の構えの状態のまま、語り出す。

「真上から振り下ろす『唐竹(からたけ)切落(きりおろし))』。

左斜め上からの『袈裟(けさ)斬り』。

右斜め上からの『逆袈裟(ぎゃくげさ)』。

右から薙ぐ『右薙(みぎなぎ)(胴)』。

左から薙ぐ『左薙(ひだりなぎ)(逆胴)』。

右斜め下からの『右切上(みぎきりあげ)

左斜め下からの『左切上(ひだりきりあげ)』。

下から斬り上げる『逆風(さかかぜ)(切上)』。

そして、最短距離の一点を貫く『刺突(つき)』。

どの流派のいかなる技であれ、斬撃そのものは、この九つ以外にない。当然、防御の型もこの九つに対応する様に展開される。

だが・・・・」

瞬間、時打が恐ろしいスピードで大和に接近する。

「ッ!?」

いきなりの攻撃に対応できない大和。

だが、ギリギリの所で装甲の展開に成功する。

 

九つの()()が見え、大和の装甲に叩き込まれる。

 

「うっあああああ!?」

その恐ろしい衝撃に思わず下がってしまう大和。

そして、ダメージも少なくない。

時打は、彼女の後ろに。

「飛天御剣流の『神速』を最大に生かし、この九つの斬撃を同時に繰り出す。そうすれば、防御は、これを超える速度を以てしなければ絶対不可能」

大和は急いでふりむいて時打を見据える。

確かな恐怖を持って。

「これこそが、飛天御剣流最強の突進技『九頭龍閃』。そして、さっきの四十六センチ砲の内一つを弾き返したのも、この技だ」

つまりは、九つの強力な斬撃を砲弾の一発に叩き込み、何撃目かで威力を殺し、残った斬撃で砲弾を弾き返したのだ。

「四撃で砲弾の威力を殺してのこる五撃でなんとか弾き返せた。決まれば、いくらお前でも一溜りもないぞ?」

チャキッと構える時打。

「ッ・・・・だけど!」

大和が全ての砲門を時打に向ける。

「乱発できなければ、この一斉射撃を防ぎきる事なんて出来ないですよ!第七斉射、って―――――――――!!」

全ての砲門が日を吹き、計九発の徹甲弾が発射される。

それが、時打に迫る。

だが、時打は落ち着いている。

「そうさ」

その中で、時打は、また、九頭龍閃の構えになる。

「乱発しなければ、その全てを受けきれない。()()()()()()()()()()()()()

「!?」

「だからこそ、無理をするんだッ!!」

そして、時打は走り出す。

「我流飛天御剣流――――九頭龍閃・(みだれ)ェ!!!」

 

 

いくつもの斬像がみえ、全ての砲門にその全てが無限に叩き込まれる!!!

 

 

 

「オオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!!!!!!」

 

 

 

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・嘘」

全ての砲弾が吹き飛ばされる。

「ハア・・・ハア・・・ハア・・・ハア・・・・・全部、吹き飛ばしたぞ・・・・!!」

全てがバラバラの方向に吹き飛んでいき、轟音が響き渡る。

だが、時打の方も疲労が激しい。

「な、なんだよ今の技・・・」

一方観客席では、天龍が驚愕した表情で闘技場を見ていた。

それは、他の艦娘も同じだった。

「九つの斬撃を放つ九頭龍閃。それを縦横無尽に乱射する様にしたのがあの・・・」

「九頭龍閃・乱なのです。ただでさえ、九撃入れるだけで相手はくたばるというのに、それを乱発化するなんてお兄ちゃんの発想には毎度驚かされるのです」

「確かに、あれを連続して喰らったら、いくら大和さんでも・・・」

電の説明に思わず、身震いする吹雪。

「だが、今の技の体力の消費も、かなり大きい筈・・・・いくら提督でも、これ以上砲弾を弾く事などできない筈・・・・」

「ええ。でも、まだ、お兄ちゃんにはあの技を超える『奥義』があります」

『!?』

それを聞いたその場にいる艦娘たちが驚愕する。

あの九つの斬撃を同時に叩き込む九頭龍閃を超える必殺技が存在するのか・・・

「・・・天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)か」

「え?なに、そのあまかけるなんとかって言う技?」

叢雲が響夜の言葉に疑問を持つ。

「飛天御剣流の奥義だ。九頭龍閃を超える、最強の必殺技だ」

響夜の言葉に、思わず悪寒が走る艦娘たち。

「もしかしたら、それを生で見れるかもしれないな・・・・」

響夜の顔に笑みが浮かぶ。

「ええ、とても、凄い技なのです」

電の顔にも、笑みが浮かぶ。

そして、闘技場。

「く・・・」

思わず立ち尽くす大和。

「大和」

ふと、時打が口を開く。

「今、どんな気持ちだ?」

「え?」

「俺は、必死だ」

笑みを浮かべる時打。

「お前の様な強い奴に全力で戦うんだ。全力出すのに必死にならなくてどうする?」

「砲弾を九発も弾き飛ばして置いてよく言いますね」

「そんな事ないさ。一発飛ばすのに、かなりの体力持ってかれるんだ。必死にならずにどうするんだっての」

と、ふと刀を下す時打。

「?」

「お前はどうなんだ?」

「・・・・」

大和は、俯き、しばし考える。

そして、顔を上げる。

「・・・・・とても、楽しいです」

その顔に、笑みが浮かんでいた。

「久しぶりに、本気の砲撃戦をやってみた気分です。こんな事は、演習で長門さんと戦った時以来でしょうか・・・・」

「そうか」

拳を握りしめる大和。

「だけど私は・・・あの日、あの鎮守府に残っている仲間たちを見捨てて逃げてしまった。逃げなければ、今、ここに、翔鶴や瑞鶴以外の仲間がいたかもしれないのに・・・・」

笑みを消し、悔しそうに顔を歪める大和。

「今、どうしても、それを償う『答え』が見つからない。逃げた事を、見捨てた事を、償う答えが見つからない・・・それを見つける為に、私はこの戦いを挑んだつもりだった。でも、まだ・・・・」

大和は、握りしめた右拳を胸元までもって行き、それを見つめる。

その時、時打がまた、口を開いた。

「俺は、人斬りだった。それは、どうあっても覆らない、過去の事だ」

大和は顔を上げ、時打を見る。

時打は、真っすぐに大和を見ていた。

「その罪を償う答え。それを見つけられたのは、ある人のお陰だ。その人が、死ぬ間際に言った言葉を、今でも覚えている」

時打は、刀を持ち上げ、それを胸元で止め、柄を握る右手を眺める。

そして、顔を空に向け、目を閉じて、やがて開けながら顔を下ろし、大和を見る。

「『その力で、今、この世に生きる笑顔を守って』。それがその人の言葉だった」

そして、ゆっくりと、刀を鞘に納める。

「だから、お前も、今この鎮守府に生きる艦娘たちの笑顔を守ってほしい。それが、俺がお前に送る言葉だ」

そして、時打は、大和を自分の射程に収める。

 

無形の構え。

 

ただ立ち、何の構えも取らない、形無き型。

背水の陣ともいえるその構えは、ある、確実な信念が渦巻いていた。

「・・・・本気ですね」

「俺はいつだって本気だ。そうじゃなければ、俺はお前を理解する事はできないし、お前が俺を理解してもらう事はできない」

「そうですか・・・・」

そして、大和は、観客席の方へ視線を向ける。

その中にいる、長門を見つける。

視線が交わる。

ただ、どちらも視線を逸らさない。

 

 

――――ごめんなさい、見捨てたりして。

 

 

そう、心の中で呟き大和は、時打に向き直る。

「全主砲、装填。弾種、九一式徹甲弾」

それは、戦時、大和のみが扱っていたとされる最強の徹甲弾。

たとえ着水しても、魚雷の様に真っすぐに突き進み、敵の装甲を貫く、日本が開発した最強の徹甲弾。

それを今、装填したのだ。

「・・・・・飛天御剣流奥義、天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)

時打がそういう。

その瞬間、とめどない程の剣気が、辺りを支配する。

舞い落ちていた木葉が弾け、消滅する。

その気迫に、若干怖気づくも、すぐに、彼の剣気に負けないような気迫を発する。

冷たい風が、辺りに吹く。

観客席にいる艦娘たちも、静まり返る。

相手の出方を見逃さない様に、大和と時打は、互いを見据え、睨む。

ふと、一羽のハトが、闘技場の塀に降り立ち、何気ない仕草で、辺りを見渡す。

だが、それも、すぐに飛び立ってしまう。

 

 

 

――――――――――――――――その瞬間ッ!!

 

 

 

 

 

 

「――――――ッッ!!」

同時に動くッ!!

時打が右足を大きく踏み込む。

その瞬間、刀が抜き放たれる。

大和は発射準備へ。

「ッッアアァ!!」

飛来してくる時打の刀を、大和が、右腕を犠牲にする様に、その一撃を受け止める。

その速度故に、見切る事が出来ない。ましてや、背中に巨大な艤装を抱え込んでいるのでは、それも至難の業。

だから、受けて(さば)く。

抜刀術はたった一撃。

前に瑞鶴から、鞘を率いた二段抜刀術の存在を聞いたが、(ベルト)に鞘がある以上、それは不可能。

ならば、その一撃を受け止めて、その間に主砲を叩き込む。

そして、その右腕に刀が直撃した瞬間。

 

 

 

バキィィィイッ!!!

 

 

 

鈍い音が響き、右腕の骨が軋む。

装甲を展開しているにも関わらず、艦娘の、それも大和型戦艦の骨をきしませる程の威力となると、この方法は正解だったのかもしれないが、それでも、これ以上は受け止めきれない。

「くッアアァ!!」

右腕を動かし、刃を捌く。

そして、刀は空振ってしまう。

(捌いた!?)

(やられる!)

天龍と熊野が声にならない声を上げて、そう予測する。

(もらった!!)

そして、全ての砲塔を時打に向ける。

(これで終わりです!!)

そして、いざ撃とうとしたその時、艤装の妖精が異常を知らせてくる。

「え」

そう、声を上げた瞬間、周りの空気の動き方がおかしい事に気付く。

そして、大和の体が、()()()()()()()()()()

(う、嘘!?)

あり得ない程の突風に、足を踏ん張るも、抵抗虚しくどんどん引き寄せられていく。

 

―――否、その前方の空間ッ!!

 

 

 

 

飛天御剣流剣術は神速の剣術。故にその抜刀術も神速。

だが、最強の奥義たる『(あま)(かける)(りゅうの)(ひらめき)』は超神速の抜刀術。

そして、その奥義は、龍を模す必殺技でもある。

 

 

例え、龍の牙から逃れられたとしても――――――――――

 

 

 

「―――オオオッ!!!」

時打が大きく回転。

そして、もう一度大きく踏み込む。

 

 

 

――――――龍が巻き起こす風に体の自由を奪われ――――――

 

 

 

「くっああ・・・」

必死に、時打の射程から逃れようとするも、最初の一撃目で弾かれた空気が戻っていくときに巻き起こる戻ろうとする空気が彼女の身動きを封じる。

 

 

 

 

 

―――――龍の牙によって引き裂かれるッッッッ!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

瞬間、最強の二撃目が大和に叩き込まれた――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大和――――――――――――――――!!!!」

長門が立ち上がって絶叫。

大和が宙を舞い、そして、時打の数メートル先に落下する。

一方の時打は、完全に疲労している様に、立ったまま脱力している。

「ハア・・・・ハア・・・・ハア・・・・」

息を上がらせ、刀の先を床につけている。

一方の大和は、立ち上がらず、微動だにしない。

「大和!」

「あ、長門さん!」

思わず、観客席から闘技場へ身を投げ出す長門。

そして、大和に駆け寄る。

「大和!大和!」

「なが・・・と・・・?」

大和は、あまりの威力に感覚が麻痺しているのか、体が動かない状態でしっかりと長門の存在を確認する。

時打は、刀を鞘に納め、彼女たちの姿を見つめる。

「しっかりしろ!頼むから・・・頼むから、生きてるって言ってくれ!」

時打が人を殺さないのは知っている。

だが、それでも、先ほどの技の威力を見て、心を乱さない訳が無かった。

天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)はいくら逆刃刀でも、威力を誤ればそれだけで死に至らしめる程強力な技。

その証拠に、それが直撃した右脇腹には服がはだけ、くっきりと痕が残っていた。

「どうして・・・・」

「大和、私は、お前に・・・言わなきゃいけない事が・・・」

ぽろぽろと涙を流す長門。

その雫が大和の顔にあたる。

「私・・・は・・・・あの日、逃げたのよ・・・そのせいで・・・貴方は・・・陸奥を・・・」

「私は・・・・私はお前の事を何も知らずに、勝手に称賛して、誇りだとか言って。お前の仲間を小馬鹿にして・・・嘲笑って・・・陸奥を失うまで・・・お前の気持ちを知ろうともしなかった・・・・私は、そんな自分が・・・・情けない・・・」

嗚咽を漏らす長門。

涙が、後から後から流れ出てくる。

「う・・・うああああ・・・・」

とうとう、泣き出す長門。

「ごめん・・・・ごめん・・・・」

泣きながら謝り続ける長門。

そんな長門に大和は、優しく話しかける。

「私の方こそ・・・・ごめんなさい・・・・あの時、逃げたりなんてしなければ・・・貴方は、陸奥を失う事なんてなかったのに・・・」

「そ、それは・・・」

「それだけじゃない・・・・貴方に、この鎮守府を守るという責務さえも押し付けてしまった。本当は・・・私がやらなければならないのに・・・・」

「違う・・・・違うんだ・・・そのお陰で・・私は・・・大切な事を・・・」

「そうね・・・貴方は、大切な事を教わった。私は、それが嬉しい。だから、謝りたかった」

大和の目からも、涙があふれる。

「ごめんなさい。逃げたりして、ごめんなさい・・・・」

しっかりと、言葉にして、大和は謝った。

「うう・・・大和ぉ・・・」

「ふふ・・・すっかり泣き虫ね・・・」

まるで、泣く子供をあやすような光景に、時打は微笑む。

 

 

 

 

 

 

二月二十一日1243(ヒトフタヨンサン)―――十二時四十三分を持って、天野時打、戦艦大和の決闘は、天野時打の勝利によって、決着。

 

 

 

 




次回『事後報告』


大和編、最終回。

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