だが・・・・・・・・・・・・・・・・・神通が、沈んだ・・・・
大破させられて追撃受けたらそれで沈んだ。
たった一戦だけで沈んだよチクショ―――!!
それとゴメン!!
犠牲ゼロで行きたかったのに、小破だからって油断した。
大丈夫だと思って慢心したぁぁあああ!!!
赤城「次は沈めない様にしましょう。大丈夫です。提督ならやれます!」
ありがとう赤城・・・・では、本編をどうぞ!
「――――――――――は!?」
気が付く。
どうやら、しばらく意識を失っていた様だ。
「ッ・・・皆は・・・・」
辺りを探しても、誰もいない。
あるのは、硝煙の匂いと、海面に浮かぶ、血。
「う・・・」
その無残な光景に、思わず吐き気を覚える。
そうだ。彼女を探さなければ―――
「陸奥・・・・陸奥はどこだ・・・」
立ち上がり、必死に探す。
痛む足に鞭を打ち、必死にこの場所を探す。
「陸奥・・・・陸奥・・・」
必死に、妹の名を呼ぶ。
だが、どれほど歩いても、まだ見つからなかった。
体中が痛い。だけど、頭だけははっきりしている。
している筈だ。
「陸奥・・・・」
ふと、視界の奥に小さな島が見えた。
血は、そこから流れていた。
「陸奥・・・・!」
出せる速力の全てを出し、あの小島に向かう。
「陸奥・・・!」
小島に辿り着き、その小島を周回しながら、必死に彼女を探す。
そして、見つけた。
「―――――――――――――――――ッッ・・・・・」
それを見た瞬間、底なしの闇に呑まれるような感覚が襲った。
「―――嘘だ・・・」
小さく、そう漏らす。
そして、膝をつき、両手を、海面につける。
「・・・・何がビックセブンだ・・・・」
震える声で、どうしようもない怒りを、自分への恨みを吐き出す様に。
「何が・・・・最強だ・・・・何が・・・巨艦巨砲だ・・・・」
――――自分を罵倒する。
「陸奥・・・・・」
そして、弾かれるように天を仰ぐ様に見上げる。
「――――私は・・・弱い・・・・」
「―――ん、―――さん、長門さん!」
「はッ!?」
誰かに名前を呼ばれ、バッと目を見開く長門。
目の前には、吹雪がいた。
「・・・・大丈夫、ですか?」
心配そうに、長門を見つめる吹雪。
気が付くと、ぐっしょりと、汗を掻いていた。
その汗を、片手で拭うと、無理に笑顔を作り、吹雪に微笑む。
「ああ、大丈夫だ」
だが、それでも吹雪は浮かない表情をしている。
「・・・・・また、陸奥さんの事を思い出していたんですか?」
「・・・・」
それで固まる長門。
そして、一気に顔色を悪くし、手を震わせる。
そんな長門の手を、そっと手で包み込む吹雪。
「大丈夫です。あの時にも言いましたが、私は、いなくなりません」
「ッ・・・」
その言葉を聞き、歯を食いしばる長門。
「・・・・悪くないんだ・・・」
「え?」
「大和は・・・何も悪くないんだ・・・・悪いのは・・・そんな大和の事を考えず、威張り散らしていた私なんだ・・・」
長門は、何かに謝るかのように、顔を歪める。
そして、両手で顔を覆った。
―――涙を見せない様に・・・
戦艦『長門』
その名は、ビッグセブンの名と共に有名だ。
この長門は、その中で、
その性格を利用され、前任の提督の命令で、どんな困難な任務を達成してのけた。
誰かが沈めば、ソイツは火力が弱く、装甲が薄かったから沈んだとバカにし、そして、それによって反論する艦娘を鼻で笑った。
一方で、大和の事は尊敬していた。
彼女こそが自分の理想。彼女こそが日本の誇りだと、いつも思っていた。
彼女の心を知らずに―――
そんな長門を咎めたのは姉妹艦の陸奥だった。
長門が毎回、誰かをバカにすると、それを当たり前の様に止めて、最悪、説教にまで発展する事になる程、この鎮守府の陸奥は、それほどまでに、面倒見が良かった。
そんな陸奥を、長門は嫌う事は無かった。
喧嘩する事もあるが、すぐに仲直りをする様に、長門と陸奥は、本当の姉妹の様に、この鎮守府で過ごしていた。
だが、それも長くは続かなかった。
フィリピン海での、戦い。
未知の敵に、夕立が沈んだ時、大和が悲鳴を上げた事。
次々に沈んでいく仲間たち。
そして、大和が逃げ、敵の砲撃によって自分が気絶した事。
――――陸奥が、自分の身代わりに無残な姿で死んでいた事。
陸奥を失って、長門は―――大和の逃げた理由を悟った。
大切な仲間、いや、家族を失って、失って失って、失い続けて、心が擦り減らない訳が無かった。
大和は、そんな苦しみから逃げた。
そして、無様にも生きようとした。
そこで死ねば、楽になれた筈なのに、彼女は何故生きる道を選んだのかは分からなかった。
だけど、大和の気持ちは、理解した。してしまった。
そして、長門は、今までの自分の行いを後悔した。
沈んだ艦娘の事を悲しんだ艦娘は、その艦娘にとっては、とても大事な存在だという事を。
その想いを、自分は踏みにじってしまったという事を。
後から思い出していけば、自分はとんでもない事をしてしまったのだと、否応無く、察せられた。
母港に戻って、報告を済ませれば、すぐさま、出撃した艦娘の姉妹艦たちが長門を罵倒した。
何故お前だけ帰ってきた?何故見捨てた?何故沈まなければならなかったのか?自分の妹も守れない癖に威張るんじゃない。
全く持ってその通りだった。
もう、どうでも良くなってきた。
自室に戻れば、長門は、広くなった部屋で、泥の様にベッドに倒れた。
―――このまま、消えてなくなりたい。
そう思った時、吹雪がやってきた。
『・・・・なんの用だ?』
長門は、ベッドにうつ伏せのまま、そう問うた。
罵声を浴びせに来たのか?それなら好きにしてくれ。私には、それ以外、『救い』が無い。
だが、そんな彼女に浴びせられたのは、罵声でも、嫌味でもなく、心配だった。
具合はどうですか?入渠はしなくていいのですか?ご飯食べますか?
吹雪の親切さに、長門は、何か熱いものが込み上げてきて、吹雪を壁におしつける。
『――――何故、私に優しくする?』
今まで、お前の姉妹艦が沈んだ時に、私はそんな艦娘をバカにした。嘲笑った。罵倒した。
『なのに、なんでお前は、そんな私に優しくするんだ・・・』
力は込めず、右手を吹雪の首に押し当てる。
そんな長門に、吹雪は、優しく微笑み、こう言った。
『―――同じだからです』
『おな・・・じ・・・?』
『はい。貴方は、陸奥さんを失いました。その気持ちは、失った事のある、私も分かります。だから、罵声なんて浴びせません。もう、貴方も、私たちと同じなんですから』
そして吹雪は長門の自分の首を掴んでいる右手を優しく包み込む。
『私はいなくなりません。ずっと、貴方の傍にいます。貴方の傍で、貴方を守ります。私は、大型艦を守る、駆逐艦なんですから』
その言葉で、長門は、救われた気がした。
そして、誓った。
彼女が自分を守ると言うのなら、自分は彼女を守ろうと。
だから―――――
「私が・・・・私が・・・大和を・・・」
「大丈夫です。今、大和さんが、司令官に決闘を申し込む様です」
「ッ!?本当か!?」
吹雪の言葉に、思わず、顔を上げる長門。
その顔は、涙で濡れていた。
「はい。きっと、『答え』を見つける為に」
吹雪は、安心させるように、微笑む。
「だが・・・・」
「長門さんは、司令官と決闘したから、認めたんじゃないんですか?」
「!」
それでハッとする。
きっと、大和も、自分の答えを見るける為に、時打と戦おうとしているのだろう。
「・・・・」
俯く長門。
そんな長門の肩に手を置く吹雪。
「大丈夫。きっと、仲直りできますよ」
「・・・・そうだな」
すっと立ち上がる長門。
そして、ちょっとした体操をする。
「長門さん?」
「飯をまだ食べてなくてな。今から行こうと思う」
「そうですか。一緒に行っても良いですか?」
「ああ、構わない」
そうして、歩き出した。
次回『決戦前夜』
一人は、己の全力を持って、もう一人は答えを見つける為。
お楽しみに!