艦隊これくしょん その刀は誰が為に   作:幻在

22 / 71
第一海域突破だ―――!!

だが・・・・・・・・・・・・・・・・・神通が、沈んだ・・・・

大破させられて追撃受けたらそれで沈んだ。

たった一戦だけで沈んだよチクショ―――!!

それとゴメン!!

犠牲ゼロで行きたかったのに、小破だからって油断した。

大丈夫だと思って慢心したぁぁあああ!!!

赤城「次は沈めない様にしましょう。大丈夫です。提督ならやれます!」

ありがとう赤城・・・・では、本編をどうぞ!


何がビックセブンだ

「――――――――――は!?」

気が付く。

どうやら、しばらく意識を失っていた様だ。

「ッ・・・皆は・・・・」

辺りを探しても、誰もいない。

あるのは、硝煙の匂いと、海面に浮かぶ、血。

「う・・・」

その無残な光景に、思わず吐き気を覚える。

そうだ。彼女を探さなければ―――

「陸奥・・・・陸奥はどこだ・・・」

立ち上がり、必死に探す。

痛む足に鞭を打ち、必死にこの場所を探す。

「陸奥・・・・陸奥・・・」

必死に、妹の名を呼ぶ。

だが、どれほど歩いても、まだ見つからなかった。

()()()()()()を辿り、必死に進み続ける。

体中が痛い。だけど、頭だけははっきりしている。

している筈だ。

「陸奥・・・・」

ふと、視界の奥に小さな島が見えた。

血は、そこから流れていた。

「陸奥・・・・!」

出せる速力の全てを出し、あの小島に向かう。

「陸奥・・・!」

小島に辿り着き、その小島を周回しながら、必死に彼女を探す。

そして、見つけた。

 

 

「―――――――――――――――――ッッ・・・・・」

 

 

それを見た瞬間、底なしの闇に呑まれるような感覚が襲った。

「―――嘘だ・・・」

小さく、そう漏らす。

そして、膝をつき、両手を、海面につける。

「・・・・何がビックセブンだ・・・・」

震える声で、どうしようもない怒りを、自分への恨みを吐き出す様に。

「何が・・・・最強だ・・・・何が・・・巨艦巨砲だ・・・・」

――――自分を罵倒する。

「陸奥・・・・・」

そして、弾かれるように天を仰ぐ様に見上げる。

 

「――――私は・・・弱い・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ん、―――さん、長門さん!」

「はッ!?」

誰かに名前を呼ばれ、バッと目を見開く長門。

目の前には、吹雪がいた。

「・・・・大丈夫、ですか?」

心配そうに、長門を見つめる吹雪。

気が付くと、ぐっしょりと、汗を掻いていた。

その汗を、片手で拭うと、無理に笑顔を作り、吹雪に微笑む。

「ああ、大丈夫だ」

だが、それでも吹雪は浮かない表情をしている。

「・・・・・また、陸奥さんの事を思い出していたんですか?」

「・・・・」

それで固まる長門。

そして、一気に顔色を悪くし、手を震わせる。

そんな長門の手を、そっと手で包み込む吹雪。

「大丈夫です。あの時にも言いましたが、私は、いなくなりません」

「ッ・・・」

その言葉を聞き、歯を食いしばる長門。

「・・・・悪くないんだ・・・」

「え?」

「大和は・・・何も悪くないんだ・・・・悪いのは・・・そんな大和の事を考えず、威張り散らしていた私なんだ・・・」

長門は、何かに謝るかのように、顔を歪める。

そして、両手で顔を覆った。

 

―――涙を見せない様に・・・

 

 

 

 

 

 

 

戦艦『長門』

その名は、ビッグセブンの名と共に有名だ。

この長門は、その中で、その意識(プライド)がとても高く、そして、火力の弱い者をバカにする性格だった。

その性格を利用され、前任の提督の命令で、どんな困難な任務を達成してのけた。

誰かが沈めば、ソイツは火力が弱く、装甲が薄かったから沈んだとバカにし、そして、それによって反論する艦娘を鼻で笑った。

一方で、大和の事は尊敬していた。

彼女こそが自分の理想。彼女こそが日本の誇りだと、いつも思っていた。

 

彼女の心を知らずに―――

 

そんな長門を咎めたのは姉妹艦の陸奥だった。

長門が毎回、誰かをバカにすると、それを当たり前の様に止めて、最悪、説教にまで発展する事になる程、この鎮守府の陸奥は、それほどまでに、面倒見が良かった。

そんな陸奥を、長門は嫌う事は無かった。

喧嘩する事もあるが、すぐに仲直りをする様に、長門と陸奥は、本当の姉妹の様に、この鎮守府で過ごしていた。

だが、それも長くは続かなかった。

フィリピン海での、戦い。

未知の敵に、夕立が沈んだ時、大和が悲鳴を上げた事。

次々に沈んでいく仲間たち。

そして、大和が逃げ、敵の砲撃によって自分が気絶した事。

 

 

――――陸奥が、自分の身代わりに無残な姿で死んでいた事。

 

 

 

 

陸奥を失って、長門は―――大和の逃げた理由を悟った。

大切な仲間、いや、家族を失って、失って失って、失い続けて、心が擦り減らない訳が無かった。

大和は、そんな苦しみから逃げた。

そして、無様にも生きようとした。

そこで死ねば、楽になれた筈なのに、彼女は何故生きる道を選んだのかは分からなかった。

だけど、大和の気持ちは、理解した。してしまった。

そして、長門は、今までの自分の行いを後悔した。

沈んだ艦娘の事を悲しんだ艦娘は、その艦娘にとっては、とても大事な存在だという事を。

その想いを、自分は踏みにじってしまったという事を。

後から思い出していけば、自分はとんでもない事をしてしまったのだと、否応無く、察せられた。

母港に戻って、報告を済ませれば、すぐさま、出撃した艦娘の姉妹艦たちが長門を罵倒した。

何故お前だけ帰ってきた?何故見捨てた?何故沈まなければならなかったのか?自分の妹も守れない癖に威張るんじゃない。

全く持ってその通りだった。

もう、どうでも良くなってきた。

自室に戻れば、長門は、広くなった部屋で、泥の様にベッドに倒れた。

 

―――このまま、消えてなくなりたい。

 

そう思った時、吹雪がやってきた。

『・・・・なんの用だ?』

長門は、ベッドにうつ伏せのまま、そう問うた。

罵声を浴びせに来たのか?それなら好きにしてくれ。私には、それ以外、『救い』が無い。

だが、そんな彼女に浴びせられたのは、罵声でも、嫌味でもなく、心配だった。

具合はどうですか?入渠はしなくていいのですか?ご飯食べますか?

吹雪の親切さに、長門は、何か熱いものが込み上げてきて、吹雪を壁におしつける。

『――――何故、私に優しくする?』

今まで、お前の姉妹艦が沈んだ時に、私はそんな艦娘をバカにした。嘲笑った。罵倒した。

『なのに、なんでお前は、そんな私に優しくするんだ・・・』

力は込めず、右手を吹雪の首に押し当てる。

そんな長門に、吹雪は、優しく微笑み、こう言った。

『―――同じだからです』

『おな・・・じ・・・?』

『はい。貴方は、陸奥さんを失いました。その気持ちは、失った事のある、私も分かります。だから、罵声なんて浴びせません。もう、貴方も、私たちと同じなんですから』

そして吹雪は長門の自分の首を掴んでいる右手を優しく包み込む。

 

『私はいなくなりません。ずっと、貴方の傍にいます。貴方の傍で、貴方を守ります。私は、大型艦を守る、駆逐艦なんですから』

 

その言葉で、長門は、救われた気がした。

そして、誓った。

彼女が自分を守ると言うのなら、自分は彼女を守ろうと。

だから―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が・・・・私が・・・大和を・・・」

「大丈夫です。今、大和さんが、司令官に決闘を申し込む様です」

「ッ!?本当か!?」

吹雪の言葉に、思わず、顔を上げる長門。

その顔は、涙で濡れていた。

「はい。きっと、『答え』を見つける為に」

吹雪は、安心させるように、微笑む。

「だが・・・・」

「長門さんは、司令官と決闘したから、認めたんじゃないんですか?」

「!」

それでハッとする。

きっと、大和も、自分の答えを見るける為に、時打と戦おうとしているのだろう。

「・・・・」

俯く長門。

そんな長門の肩に手を置く吹雪。

「大丈夫。きっと、仲直りできますよ」

「・・・・そうだな」

すっと立ち上がる長門。

そして、ちょっとした体操をする。

「長門さん?」

「飯をまだ食べてなくてな。今から行こうと思う」

「そうですか。一緒に行っても良いですか?」

「ああ、構わない」

そうして、歩き出した。




次回『決戦前夜』

一人は、己の全力を持って、もう一人は答えを見つける為。

お楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。