艦隊これくしょん その刀は誰が為に   作:幻在

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やっと暁が来たァァァアアア!!

でもって第六駆逐隊の全員が揃ったぁぁああ!!


でも、流石にキス島行く気は無かったよ・・・・

それでもって沖ノ島沖。

飛龍が小破したり道が行き止まりに行くわでもう散々だよぉぉぉぉ!!

響「そんな事どうでも良いからさっさと本編に行ってくれ、眠いんだ」

眠いんかい!?

では本編、どうぞ!


暴走

ミッドウェー海域・・・・

 

そこはかつて、南雲機動部隊と呼ばれた、日本軍最大にして最強の空母機動部隊が、大敗を期した場所。

なので、一部の艦娘にとっては、とても不愉快な場所なのだが・・・・

 

 

 

 

 

 

 

今はそんな事気にしていられない。

 

 

 

 

「まさかこんなところでスコールに出くわすなんて!?」

そう、それも台風ともいうべき、豪雨。

暁が悲鳴の様にそう声を挙げる。

「いくらなんでも、これは強過ぎるよ!?」

強い風に叩き着けられ続けているため、何度もバランスを崩している響。

羽黒も、この天気では水偵もまともに飛ばせない。

「うう・・・・み、みなさん!なるべく離れないで下さい!」

しかし、それでも負けじと駆逐艦たちに指示を出す羽黒。

だが、少しおかしい所がある。

「あれ・・・・?」

その様子にいち早く気付いたのは電だ。

彼女でも、流石に急激に発生したスコールには対応できず、スコールに巻き込まれているのだ。

そして、ある重要な事を口走る。

「鳳翔さんはどこ?」

『え!?』

旗艦である筈の鳳翔がいないのだ。

「そんな!?鳳翔さん!?鳳翔さん!?」

羽黒が急いで無線で鳳翔に呼びかけるが、返事が無い。

「だめ・・・スコールの所為で無線が・・・・」

「そんな!?」

暁がまた悲鳴染みた叫び声を上げる。

もし、彼女が自分たちの知らない所で轟沈なんて事になれば・・・

「嘘・・・やだ・・・鳳翔さん・・・」

それを想像するだけで挙動不審になる暁。

ただでさえ、レディという意識が抜けているだけでなく、精神的にも弱い状態で建造された彼女がこんな状況に陥れば、精神が崩壊して逆に暴走する可能性が高い。

「落ち着くのです!まだ鳳翔さんが轟沈したって事じゃない。だから希望を持つのです!」

電が必死に暁をあやす。

「で、でも・・・・」

「スコールが止めば、水偵も飛ばせる。だから今は耐えるのです!」

「わ、分かった・・・」

なんとか心を落ち着かせた暁。

だが、彼女たちはまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

鳳翔の今の状況について・・・・・

 

 

 

 

 

自分の艦隊とはぐれてしまった鳳翔。

「参りました・・・・」

なんとかスコールから逃れ、近くの岩礁地帯に流れ着いた鳳翔。

スコールによるダメージなどは無く、艦載機の妖精たちにも、それなりの疲労は感じられない。

この様子なら、索敵に飛ばしても良いだろう。

「お願いします」

弓を引き絞り、放つ。

放たれた矢が無数に分裂し、姿を艦爆へと変え、それぞれの方向へ飛んでいく。

「しばらく、何かがあるまでここで待機ですね・・・」

そう、一つ呟き、彼女は自分の艦載機たちが飛んで行った方向を見上げる。

今、空母単独で敵艦隊に遭遇すれば間違いなく勝ち目など無い。

ましてや、世界最初、つまりは史実にある通り、空母の中で最古参である彼女が、護衛も無しに敵とまともに戦える訳が無い。

「あの子たち・・・・大丈夫でしょうか・・・?」

しかし、やはり『母性』が誰よりも強いのか、自分の事より、自分の艦隊の駆逐艦たちの事を心配する鳳翔。

 

 

 

 

 

 

ふと、なにか音が聞こえた。

 

 

 

 

 

「?・・・・」

振り返った瞬間、視界が真っ白に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ド―――――ン・・・・・・

「!?」

そんな音を聞いた暁が勢い良く振り返る。

なんとかスコールを切り抜けた羽黒、暁、響、雷、電の五人。

今、なんとか水偵を飛ばした羽黒が、必死にその入電を待ち構えて、他四人は分かれて探索していた。

その中で、暁のみがその音を聞き取れた。

「・・・鳳翔さん?」

猛烈に嫌な予感が彼女を襲い、いてもたってもいられずに速力を最大にする。

水面を滑る様に、まるでアイススケートでもしているかのように急ぐ暁。

視界に岩礁地帯を捉え、そこから煙があがっているのを捉えた暁。

「鳳翔さん・・・ッ!」

必死に走り、そこに鳳翔がいる事を願う暁。

 

 

 

 

そして、それを見た途端、絶句した。

 

 

 

 

敵深海棲艦に囲まれ、駆逐艦の砲撃や戦艦の副砲で滅多打ちにされている鳳翔の姿がそこにあった。

「ほう、しょう、さん・・・?」

暁が途切れ途切れにそう、呟く。

だが、そんな小さな声が聞こえる筈も無く、ただただダメージを受け続けている鳳翔。

水面に倒れ伏し、飛行甲板が砕け、ボロボロとなり、まともに動けないでいる鳳翔。

それは、まさにリンチだった。

もともと空母としての耐久力を持つ故なのか、駆逐艦の主砲や戦艦の副砲如きのダメージではなかなか沈まない。だが、それが奴らにとっては面白いのか、攻撃する事をやめない。

 

 

 

完全にブチ切れた『駆逐艦(バケモノ)』の存在に気付かず・・・・

 

 

 

ふと雷巡が魚雷を一発、鳳翔に向けて直撃させる。

「ああ・・・・」

微かに聞こえた鳳翔の悲鳴。

それが引金となった。

 

 

 

 

 

毎朝見せてくれる笑顔。

 

それが見られなくなる。

 

―――嫌だ。そんなの嫌だ。

 

ならどうする?

 

簡単だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――ゼンブコワセバイイ――――――

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

ふと、響は、姉の暁がいない事に気付く。

「あかつ・・・・・」

 

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァアアッッッッッ!!!!!!!!」

 

 

 

「!?」

突如、なにかの恐ろしい怪物の様な咆哮が聞こえ、身をすくめる響。

その声を聞いたのは、響だけじゃない。

「なに!?」

「ひい!?」

「え・・・!?」

雷がそれにビビり、羽黒が情けない悲鳴を上げ、電が棒立ちになる。

「お、ねえ、ちゃん・・・?」

唯一、電だけが、その声の正体を悟った。

その最悪の未来を予想した瞬間、全力で走り出す。

 

 

 

声がした方へ向かうと、そこには岩礁地帯。

そこから、いくつもの砲撃音が聞こえた。

嫌な予感に冷や汗を搔きながら、やっと、その戦場(さんげき)を見る事が出来た。

 

 

「――――――嘘」

 

 

 

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァアアアアァァァァァァァアアッ!!!!!!!」

 

 

そこには、恐ろしい形相で、全身ボロボロになりながらも、敵を蹂躙している暁の姿があった。

その姿から似合わない怪力で駆逐艦の首と思わしき場所をもぎ取り、主砲を雷巡の口に押し込み砲撃して頭を吹き飛ばし、更には戦艦ル級の懐に飛び込み、人体で心臓のある左胸に右手を突き刺し、そのまま中にあるものを握り潰す。

ル級はどす黒い液体を口から吐き出し、水面に倒れ伏す。

「電!」

そこでふと、背後から聞き慣れた声が聞こえ、振り返ると、そこには、響、雷、羽黒の三人が真っ直ぐにこちらにやってきていた。

そして、暁の様子を目の当たりにする。

「嘘・・・!?」

「暁ちゃん・・・ッ!?」

「ッ・・・・!?」

嗚咽の様に声を漏らす雷と羽黒にその惨劇に絶句する響。

「あ、あれ・・・!?」

その最中、雷はあるものを見つける。

「ッ!?鳳翔さん!?」

そこには、ボロボロの鳳翔。

気を失っており、ピクリとも動かない。

「まさか・・・・!?」

それで、どうしてこんな状況に陥ったのかを、その場に全員が悟る。

 

 

精神的に弱い暁が最初に会ったのが鳳翔だ。

その優しさと温もりに触れ、暁は彼女を母親の様に接してきたのだ。

だからこそ、鳳翔のいない所で()()拷問を受け、恐怖を植えつけられても、鳳翔だけが、彼女の心の支え。

 

 

その支えを失う事が、その人物にとって大事な事か。

 

 

 

 

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァアァァァアアアアァァァァァァァァァァァアアアァァアアアアアァァアアアァアァァァアアアアアアアアアアッッ!!!!」

 

 

 

 

再び絶叫。

その異常な強さに(おそ)(おのの)く深海棲艦たち。

だが、最後の一隻となった重巡リ級()()()()()()

「アア・・・・アア・・・」

叫び過ぎて声が出せなくなったのか、掠れた声でリ級を追い詰める暁。

フラグシップと言われるほど強い筈のリ級が、完全に暴走した暁の強さに、怯えた表情をする。

だが、どんなに情け無い顔をしても、今の暁にそれを認識する余裕などない。

魚雷を二本抜き放ち、それを両手に持つ。

 

 

 

 

次の瞬間、リ級の両目にその魚雷を容赦無くブッ刺すッ!

 

 

 

 

 

「シネ」

それだけを言い残し、悲鳴も上げる間もなく至近距離で魚雷が爆発。

 

 

 

リ級があっけもなく轟沈する。

 

 

 

一瞬の出来事にただただ茫然とする電、響、雷、羽黒の四人。

これで敵深海棲艦は全て沈めた。

 

 

本来ならここで暴走が終わっても良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――本当ノ悲劇ハココカラダッタ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タリナイ――――

 

 

 

 

 

タリナイ――――

 

 

 

 

 

マダ、イナイノ?

 

 

 

 

 

ホウショウサンヲキズツケルヤツハ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、視界に電たちが映る。

 

 

 

 

それが、自分の姉妹艦や友軍である事を認識する事など、今の暁に、出来る訳が無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シネ」

 

 

 

 

「ッ!?」

おぞましい程の殺気を感じた電。

瞬間、大急ぎで自分の艤装の妖精たちに命令する。

 

 

その時、暁の主砲から砲弾が発射される。その砲弾を、電が間一髪のところで砲弾に砲弾を当てるという荒業をやってのける。

そのお陰で砲弾は明後日の方向へ飛んで行ってしまう。

 

 

「暁!?」

響が叫ぶ。

今、暁が自分たちに向かって砲撃してきたのだ。

それがどうしても信じられない。

「逃げてぇ!!」

更に、電の怒号。

立て続けに暁が砲撃。

全員がなんとか回避運動に移行し、その砲弾を避ける。

「暁ちゃんッ、どうして!?」

羽黒が掠れた声で暁に問いかける。

だが、当然そんな小さな声で聞こえる筈が無く、暁は砲撃するのをやめない。

更には魚雷まで率いてきた。

「うわ!?」

響に被弾。

 

 

響、小破。

 

 

「きゃあ!?」

雷に被弾。

 

 

雷、小破。

 

 

 

「く、やめてお姉ちゃん!」

電が叫ぶ。だが。

「シネ」

暁の返事はそれだった。

「え・・・」

「シネ、シネ、シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ」

「お姉ちゃん・・・・ッ!」

まるで呪詛の様に言葉を連呼する暁。

「どうするのよ!?」

なんとか暁の砲撃を避けている雷がそう叫ぶ。

「そんな事言われても、暁を攻撃なんて・・・ッ!」

響が苦い顔をしながら、そう答える。

だが、今の暁を止めるには、()()()()()しか・・・

 

 

 

「私がいくのです」

 

 

 

そこで名乗りを挙げたのが電だった。

「!? 電ちゃん!?」

羽黒が叫ぶ。

「羽黒さん」

電が振り向く。

 

 

 

「――――鎮守府の事をお願いします」

 

 

 

瞬間、艤装を分離(パージ)する。

 

艦娘の艤装には、二つの物が存在する。

まずは、主砲や副砲などの兵装を搭載する為の『兵装艤装』。

そしてもう一つは、水上に浮かび、移動する為の『水上移動艤装』。

電が外したのは・・・・・・兵装艤装の方だ。

「だめぇぇぇええええ!!!」

絶叫する羽黒。だが、電は、止まらない。

兵種を外した今の電は身軽。だが、逆に無防備でもある。

「シネシネシネェ!!」

まだ呪詛の様にその言葉を繰り返す暁。

砲弾が何度も体を掠め、時には直撃し、血が舞い上がる。

「ッ――――お姉ちゃんッ!!」

叫ぶ電。

暁が、右手を振り上げるのが見えた。

距離は三メートル。これでも十分に回避行動に移れる距離だ。

だが、電は真っすぐ進み、手を広げる。

 

「電ちゃぁぁぁぁあん!!!!」

 

 

 

そして、暁の右手が、電の心臓を貫いた。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ」

掠れた声が、暁の口から洩れた。

「こふ・・・・・」

そして、暁を抱きしめ、吐血する電。

不思議と、痛みは無い。

それとも感覚が麻痺してしまったのか。

ただ、分かる事は、自分にはもう、時間が無いという事だ。

だから・・・・・

「お・・ねえ・・・ちゃん・・・・」

血が溢れ出る口から、なんとか言葉を紡ぐ。

「・・・怒るのは別に、良いけど・・・・あまり、皆を巻き込んじゃ・・・・ダメなのです・・・」

自分に残された時間を、最後まで無駄にしないために。

「お姉ちゃんは・・・鳳翔さんの事・・・・とても、好きだから・・・怒るのは分かるよ・・・・でも、響お姉ちゃんや、雷お姉ちゃん、それに、羽黒さんを、それに巻き込まないで欲しいのです・・・・」

どんどん、体が冷たくなっていく。

「私は・・・もう・・・ここで終わり・・・なのかもしれない・・・けど・・・・」

生命の源が、失われていく。

「・・・お姉ちゃんたちは・・・・生きてね・・・・・生きてれば・・・・きっと・・・・別の『幸せ』が・・・・・」

あまりに血を流しすぎたのか、視界が、だんだんと真っ暗になっていく。

「あ、もう、なにも・・・・見えないや・・・・」

腕から、力が抜けていくのがわかる。

もう、長くない。

「次に・・・生まれ変わる時は・・・・・」

だから、最後に。

「・・・平和な・・・世界だと・・・良いな・・・・」

一言だけ・・・・・

 

 

「・・・・ご・・めん・・・ね・・・・さ・・よ・・な・・・ら・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

電、轟沈(しぼう)

 

 

 

 

 

「・・・いな・・・ずま・・・?」

掠れた声で、すでに水底(みなそこ)に沈んだ妹の姿を見る。

そのまま、真っ赤に染まった右手を見る。

 

 

 

イマジブンハナニヲシタ?

 

 

 

何故電ガ沈ンダ?

 

 

 

何故私ノ手ガ真ッ赤ナンダ?

 

 

 

 

私ガ・・・私ガ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――私ガ殺シタ?

 

 

 

 

 

「あ・・・あああ・・・・」

嗚咽が漏れて、膝を着き、わなわなと震えだす。

 

殺シタ、私ガ殺シタ。

 

それを自覚していくたびに、同時に、それを否定する自分が現れる。

 

―――死んでない。電は死んでなんかいない。私は殺して・・・・

 

「あなたが・・・・・」

ふと、誰かの声がした。

真っ赤な右手から視線を外し、見上げると、そこには怖い顔をした雷。

「あなたが・・・・・ころしたのよ・・・・」

弱々しい声で、暁を、責める。

そして、雷は、残酷な現実を叩き付ける。

「貴方が、電を、殺したのよ!」

「ッ・・・・!?」

雷がそう、怒鳴った。

雷の背後では、鳳翔に手を貸す羽黒と怯えた様な表情をする響。

ただ、その視線の中に、微かに感じられる『怒り』の念は・・・・暁のした事を否応無く突きつけるものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、鎮守府に帰った暁たちは、鳳翔はその状態からすぐさま入渠。報告は羽黒が担当し、鳳翔を除いた艦隊が、執務室にいた。

「――――以上が、今回の作戦の内容です」

羽黒が、苦い顔をしながら、そう答えた。

「ふ~む、そうか、電が沈んだか」

一方で提督の方は、いかにも偉そうな態度で聞いていた。

 

 

「ま、邪魔物が消えてくれただけ、ましか」

 

 

「ッッ!!」

それにキレたのは意外にも響だった。

「こ・・・・!?」

だが、声を上げて提督に掴みかかる寸前で、いきなり意識が刈り取られる。

「響!?」

雷が慌てて、地に伏した響を抱き上げる。

「ありがとう、五月雨」

「いえ・・・・」

なんと、響を気絶させたのは五月雨だった。

首に当身を打ち込み、それで響を気絶させたのだ。

「お前ら、もう戻ってもいいぞ。ご苦労だった」

あっちいけ、とでもいうようなジェスチャーに、苦い顔をする羽黒。

だが、従うしかない。

なんてたって、()()()がいるのだから。

 

 

 

 

駆逐艦『五月雨』

前任の提督の初期艦。

その為に、提督に言われた事はなんでもこなす、本来ドジっ子な筈の駆逐艦だ。

だが、その仕事ぶりは凄まじく、反抗してきた艦娘を取り押さえ、書類の束を全て一時間以内に片づけ、どんな汚い仕事でもやる。

時には、雷撃処分まで躊躇いなくやる彼女に、今の黒河鎮守府の艦娘たちの好感度はどんぞこだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最も、()()する前までの話だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、あの場でどうして暁が動かなかったのか。

そもそも耳に入っていなかったのだ。

ただ、突きつけられた現実にただ茫然として、何も耳に入ってこなかったのだ。

自分が電を殺した。

その真実だけが、今の暁には見えなかった。

だからこそ、提督に逆らう事が出来なくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――これが、電の最後だよ」

響が、そう、言い終わった。


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