真・仮面ライダー 〜CASE・8〜   作:リアクト

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仕事の合間に、調子こいてロゴなど作ってしまいました。
そんな暇あるなら書けっていうね。

それなりにかっこよく出来てると思うんだけど、いかがでしょう。


第14話「失踪」

SideA

 

 テニスコートでの一幕があった翌日。

 朝、遅刻しない程度にゆっくり登校した八幡は、バイク置き場で珍しい人物と遭遇していた。

 

「む、八幡か、久しいな」

「お、材木座か、珍しいな」

「うむ、登校日というやつだ。丁度研究も一段落したのでな、今日はのんびりしようと思って馳せ参じた次第」

「馳せてねえだろ。言われなきゃ来ねえくせに・・・。まぁいいや、いこうぜ」

「うむ」

 

 実際、材木座とは学外で会うことの方が圧倒的に多い八幡である。高校入学後1ヶ月で全ての単位を分捕り、卒業自体に興味がないのでこのまま退学すると言う材木座を、卒業生にとんでもない天才が複数存在(陽乃もその一人だ)する高校、というバリューに目がくらんで半ば強引に在学させたのは高校側である。公立の高校にそんなバリューが必要なのかという疑問も湧くが、その内情などには全く興味のない材木座は、学費免除・最低限の出席・専用の研究室の提供という条件を呑ませ、在籍することにした。ちなみにその研究室は、特別棟の奉仕部部室の丁度反対側にある。

 

 校舎に入り、教室に向かう2人だったが、その途中由比ヶ浜に会った。

 

「あ、ヒッキー!・・・と、えと、材木さん・・・?」

「惜しい」

「ざ、ざいもくじゃ・・でしゅ」

「材木者?」

「材木座な。ちょっと人と話すの慣れてねえから噛んだだけだ。で、どうしたよ由比ヶ浜、もう授業始まるんじゃねえか?」

「あ、そうそう、あのさ、優美子たち見なかった?」

「優美子て誰よ」

「えぇ・・・クラスメートの名前くらい覚えてよ・・・えと、ヒッキーが縦ロール?って呼んでる子。あと隼人くんと姫菜ととべっちもいないんだよー」

「あいつらか・・・」

「どいつらだ?」

「うちのクラスのリア充軍団だよ。金髪イケメンと愉快な仲間たちだ。・・・ん、お前のグループ、他にもなんかいなかったっけ?モブっぽいのが」

「大岡くんと大和くんは教室にいるよ。ってかモブっぽいて・・・」

 

 由比ヶ浜はツッコミかけたが、言われてみればその通りなので言葉を返す事ができない。

 

「で、お前は縦ロールを探してたのか?」

「あ、うん、4人も一緒にってどうしたのかなって。ほら、昨日ヒッキーが言ってた子たちだし・・・」

 

 昨日の放課後、八幡は昼休みのテニス勝負の件を奉仕部の2人に話していた。もちろんある程度情報を伏せてはいるが、邪魔が入ったこと、そのメンツ、そこで勝負に至り勝ったこと、今後は問題ないだろうということだけは報告してある。当然2人は詳細を知りたがったが、戸塚のテニススキルと八幡の基礎体力を押し出し、なんとか納得させることが出来た。雪ノ下は葉山の名前が出た所でビクっと肩を震わせ、それに反応した由比ヶ浜は雪ノ下の肩を抱きながら、同じグループのメンバーとして八幡に頭を下げていた。八幡自身は由比ヶ浜に責任があるとは全く感じていなかったが、それだけ彼女にとってあのグループが大切なのだろうと思い、快く謝罪を受け入れている。

 

「つってもあの後、普通に学校終わってからは知らねえからなぁ・・・。あ、やべ、もう時間だ、とりあえず行こうぜ」

「あ、うん。材木さんも、またね!」

「あ、ざ、ざいもくじゃでし・・・」

 

 ある意味一番難易度の高い女性を落としておきながら、普段会話をしない女性の対応には全く慣れない材木座であった。

 

 

 

sideB(八幡視点)

 

 結局、あの愉快な仲間たちは放課後まで来なかった。同じグループの主要メンバーがこぞって休んだことに、クラスの連中は動揺を隠せなかったようだ。俺は久々に静かな学校生活を送れたせいか、正直余り気にはならなかったのだが、引っかかることが無いではなかった。

 由比ヶ浜とモブ2人のことだ。

 サボって何処かに出かけたなら、一緒に休まないにしてもお誘いくらいはあっただろう。それが、事情も聞かされずにおたおたしていた。

 接点がないのでよくは知らないが、恐らく葉山は何かするなら、グループの全員に声を掛けることはするだろう。教室でたまに聞こえる「みんな」というのは、グループのみんな、という意味だと思う。戸塚の件でも言っていた。その中に俺や川崎、戸塚が入っていないのは明白だった。それほど「グループ」に執着している奴が、由比ヶ浜とモブーズにだけ声を掛けない、なんてことはしないだろう。

 

 奉仕部の扉を開けると、既に3人とも集まっていた。

「こんにちは、遅刻谷くん。遅れるならそう知らせておいて欲しいわね」

「あれ、比企谷あんた、あたしより先に出たよね?」

「あ、ヒッキーやっはろー!っていうかどこいってたし!」

「うっす。すまん、ちょっと考え事しててな」

「まぁいいわ。今日は依頼があるのよ」

「ほう」

「っていっても由比ヶ浜からだけどね。・・・ほら、例のあいつらの」

「・・・金髪イケメン達か」

「そう!さっきから優美子達に連絡してるんだけど、全然つながらないんだよー。既読もつかないし、何かあったんじゃないかって」

「・・・それ、部活でどうこう出来る話か?」

「そうね、連絡出来なくなったのは昨日と言っていたわね?それなら、家族の方なりが警察に連絡くらいしている可能性は高いと思うのだけれど」

「うー、そう言われちゃうとそうなんだけど・・・」

「心配だと」

「うん・・・」

 

 正直面倒くさい。由比ヶ浜には悪いが、あいつらには全く関心がないので、全然テンションが上がらない。それに、奉仕部の活動的には由比ヶ浜のサポートという業務になるのだろうが、高校生がどうにか出来る話ではない気がする。ここ最近の自分の周りで起きている出来事がアレなだけに、失踪・拉致・監禁などの不穏な単語が脳裏に浮かんでは消える。それでも心配にならないあたり、俺も大概だなと思う。

 

「・・・葉山くんも家に帰っていないとなれば、間違いなくご両親が動いてるわ。案外明日あたり、何事もなかったかの様に登校してくるのではないかしら」

「ゆきのん、葉山くんと知り合いなの?」

「・・・以前、少しだけ。あまり良い思い出ではないわね」

「・・・そっか」

「彼の父親が私の父の会社で顧問弁護士をしていてね。その関係で顔を合わせることがよくあったのよ。・・・その程度の話。他には特にないわ・・・だから、わたしは・・・」

「まぁ、この際雪ノ下の過去話はいい。・・・で、どうするの?受けるとして何が出来るのか分からないけど・・・」

「だな。ヒントがなさすぎてどうしていいのか分からねえ」

「・・・少し、電話してくるわね」

 

「由比ヶ浜」

 

 雪ノ下が携帯を持って席を立った後、俺は少し気になっていることを聞いてみた。

 

「今回の依頼を受けるとして、お前の落とし所はどこだ?見つけるところまででいいのか、それとも事情も知りたいか?」

「…ほんとのこといえば、全部知りたいよ。だけど、知りたくない気持ちもあるの。・・・でも、学校休んでまでどこか行くとか、今までなかったんだけどな・・・」

「ごめんなさい、お待たせしたわね」

 

 雪ノ下が戻ってきた。電話の相手は、多分・・・

 

「姉さんに相談してみたの。すぐに調べてみてくれるそうよ」

 

 やっぱりそうか。まぁ雪ノ下さんが調べてくれるなら、それほど時間はかかるまい。

 

 

 

sideC(陽乃視点)

 

「うん、わかった、早急にね。・・・ね、雪乃ちゃん。そこまで急いでるのは、隼人たちが心配だから?それとも、お友達に頼まれたから、かな?」

 

 ちょっと意地の悪い聞き方だったかな。

 

「・・・分かっているでしょう」

「雪乃ちゃんの口から聞きたいんだよー」

「・・・と、ともだち、のため、よ・・・」

「そっか。おっけ、じゃあ待ってて。すぐに調べて電話するね。あ、雪乃ちゃん」

「・・・なにかしら」

「良かったね。大事にしたいと思える友達が出来て。・・・大切にしてね」

「・・・わかってるわ」

 

 電話を切ると同時に、私はPCに向かって検索を始めた。同時に部屋にいる秘書の都築に指示を出す。

 

「都築、隼人と他3人の足取りを探ってくれる?昨日の夕方からの行動が知りたいの」

「かしこまりました。・・・雪乃様からのご依頼ですね」

「そうよ。だからお願い」

「承知いたしました」

 

 都築は部屋を出ていった。入れ替わりに義輝が入ってくる。

 

「陽乃嬢、どうされた。今日の八幡達の様子と関係が?」

「義輝!おかえり、いきなりだけどちょっと手伝って欲しいことが「心得た」・・・ありがとっ」

 

 声フェチだから、という理由で好きになったことになっている。だけど、本当はそれだけじゃない。彼は、私を全面的に信頼し、信用してくれる。私が為そうとすることに、無条件で協力してくれる。私が怖いからでも、見返りが欲しいからでもない。彼がやりたいから、やってくれる。私が間違っていると感じると、決して叱らず、諭してくれる。

 とんでもなく一途で、天才で、努力家で、声がいい。こんなにも無条件で私を想ってくれる人を私は知らない。主従でもない、家族でもない。気は大きいけど弱くて、女の子が苦手で、空気を読むのが少し苦手で、未だに手をつなぐくらいしか出来ない、ヘタレ。だけど、私は彼じゃないと嫌だ。比企谷くんもオーナーさんも好きだけど、ずっと私のとなりにいて欲しいのは、材木座義輝という、暑苦しい男の子だ。

 

「・・・総武のカメラから順に拾えばいいが、時間がかかるな・・・カメラの経過時間と同時に周辺のカメラからも拾って・・・む、陽乃嬢」

「ん、何か見つかった?」

「うむ。・・・これはつついた藪に毒蛇が潜んでいたやもしれぬぞ」

「・・・どういうこと?」

 

 義輝が画面を私に向けて、見ろと合図する。そこには黒いワゴン車が写っている。私が画像を確認した頃合いで、義輝はその写真の後部、ナンバープレート付近をアップにした。

 

「さすがに解像度が低くてな、確証とまではいかんのだが…このナンバー、見覚えがある」

「・・・これ」

「陽乃お嬢様!・・・材木座様もおいででしたか!」

「都築殿、どうなされた」

「は。・・・葉山様御一行が下校する数分前、総武高校裏に停めてあった自動車が動いたという情報を得たのですが、そのナンバーが・・・」

「この車、よね?」

 

 さっき義輝に見せられた画像を都築にも見せる。都築の顔が驚きを見せた。

 

「・・・さすがですな。・・・この車の身元が割れています。…“財団”所属の実行部隊、第三営業部の社用車です」

「・・・やはりそうであったか・・・」

「義輝はどこで気づいたの?」

「同じくナンバーだ。正確には、ナンバープレート周りの形、だな」

 

 義輝は、情報を動画や文章ではなく、画像として切り取り、その全てを脳内に積み上げている。以前、雪ノ下技研がまだ財団との関わりを断っていない頃、義輝はこの車を見ていたのだ。

 

「・・・更にこの自動車に、葉山様御一行と思われる高校生くらいの男女が乗り込むのを、周囲の防犯カメラが撮影していました」

「陽乃殿、この話を直ちに八幡に。妹殿には申し訳ないが、手に負える件ではなかろう」

「うん、わかった。義輝ありがとっ」

 

 第三営業部が絡んでる、か。てことは戸塚くんはこのことを知らない。彼を所有するのは第一営業部のはずだ。あの2つの部署は異常に仲が悪い。大方、このところ余り派手に活動していない第三が、比企谷くんという「成果」を手に入れるために独断で動いているのだろう。

 だとしたら、戸塚くんの協力も得られるかもしれない。

 

 まずは比企谷くんに連絡。次に第一営業部に連絡・・・はメールにしようか。正直やりたくないけど、表向きは技研は明確には敵対していないことになっている。どうせ向こうも気づいているだろうが、それでもこの茶番の関係は崩さない方がいい。諸刃の件だが、結構重めの枷を着けることになる。

 それから、雪乃ちゃんだ。出来れば知らないまま、平和に過ごして欲しかったけど・・・。仮にこのまま第三が暴走して大事になったら、知らないことが仇となる可能性が高い。

 

 ごめんね、雪乃ちゃん。

 もしかしたらもう、お友達と会えないかもしれない。でも、この状況を抜け出した時、それでも雪乃ちゃんの隣にそのお友達がいてくれるなら…。

 

 きっと、あなたは。


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