Muv-Luv ユウヤ・ブリッジスの第二な人生 作:nasigorenn
久々の仲間達ともこんな形ではあるが再会した。
いや、こいつらがあっちの世界のアイツ等じゃないことは分かってる。だから当然同じ顔をした同じ名前の別人だってことも理解している。
だけど、それでも………やっぱり世界は違えど俺等は仲間なんだって分かったから。
だから嬉しくて仕方ない……正直に言うつもりはないけどな。何せ恥ずかしいし、知られれば全員でからかってきそうだから。
そんなわけで、俺はこいつ等と一緒に大学の講義に出ることに。
こんなふうに机にノートとか出して話を聞くのは高校以来だ。あっちじゃその後直ぐに軍に入ったから、ある意味懐かしい。ブリーフィングを聞くのとはまた違った感じなんだよなぁ。
それに受けている授業の内容もまた新鮮だ。
「で、あるからしてこの時代の武家の人間は………」
この世界の俺が取っている授業は日本史が主だ。
どうやら日本好きな生徒はこの手の授業を受講するらしく、今となっては俺も興味深いので実に為になる授業だった。
特に武家の誇り高い精神については教授が熱烈に語っていたあたり、この教授も大好きなのだろう。話を聞いていて、より向こうの唯依が大変だったことが分かりその分迷惑をかけたことが心苦しい。
だからってわけじゃないが、この世界の唯依にはもっと優しくしよう。罪滅ぼしってわけじゃないけどな。
そんなふうに新鮮味を感じながら午前を過ごし、午後の講義も何とか受けてヴィンセント達と一緒にサークルへと向かう。
悪くないって感じなんだが、妙にこしょばゆいと言うべきか。
どうにも落ち着かない感じがして仕方ない。たぶんこれが、所謂『青春』って奴なんだろう。らしくはないと思うしこの歳でどうなんだって思うもするが、この世界で考えれば二十歳なんてのはまだ成人迎えたばかりの子供だ。それを感じるのに十分資質はあるだろうさ。
まさか自分がそれをこうして感じることになるとは思わなかったぜ。
でもよ………悪い気はしねぇな。
そう思いながらサークルまで向かうと、そこで俺は再び知ってる顔と再会した。
「ブリッジス、今回は負けないぞ」
それは白銀の髪をした美女。服越しからでも分かるスタイルの良さに男なら皆見入ってしまうかもしれない。俺はもう慣れたこともあってそんなことはないのだが。
だが、それとは別で驚いた。
「ク、クリスカっ!?」
「? 何を驚いているんだ、お前は?」
俺の目の前で不思議そうにきょとんとした顔をしているのはクリスカ・ビャーチェノワ。
向こうの世界ではソ連の凄腕衛士だが、此方の世界にはソビエト連邦は昔に滅び、今はロシアで統一されている。そのロシアからの留学生がこいつなんだろう。
しかし、何というか……………あまりこいつらしくない。
いや、それほど向こうとの差はないんだが、何というか垢抜けてるんだよなぁ。だからなのか、気迫がまったくない。
少し天然が入っているのか、その顔にはどうにも純粋な気配を感じさせた。
そんなクリスカのことをマジマジと見つつ、同じサークルのヴィンセント達からさりげなく聞いてみたところ、クリスカは同じサークルにいる別グループで、用はライバルらしい。あぁ、勿論ライバルと言ってもこの世界の不知火弐型とのレースでだ。戦ったりはしない。競い合っているんだとか。
尚、向こうのバイクはロシアのメーカーの良いとこ取りをしたもので、名前も戦闘機からとって『チェルミナートル』。
何というか、この世界では戦術機の型番が戦闘機の物になっている。よくよく考えれば、それも納得する。何せ戦術機の正式名称は『戦術歩行戦闘機』だからなぁ。
そんな雑学を思い出しながらもクリスカと会話をすることに。
「お前はいつもそうだな」
実際にはいつもも何もないのだが、こう言えばないかしら返しが返ってくるはずだ。
そう言われたクリスカはまたあどけないような顔で俺を見つめてきた。
「いつもとはどういうことだ?」
そうくると思わなかったぜ。
ちっ、これじゃあ俺が変に見えちまうだろうが。
「いや、何ていうか、お前っていつも俺と張り合うだろ? だからそう思っただけなんだが?」
そう問いかけると、何故か知らないがクリスカが顔を赤くし始めた。
その顔に俺は不思議に思ったが、どうにも周り……特にヴィンセントをVGの二人はニヤニヤと笑い始めやがった。嫌な予感がする。
「べ、別に、お前と一緒にいたいとか、お前と一緒に走りたいとか、お前に勝てたら…………うぅ………」
何やら真っ赤になって俯いてしまったクリスカ。
一体何があったのか分からないが、何かしてしまったのだろうか?
分かることは一つだけ。
『後ろにいる二人がニヤニヤして修羅場修羅場って言いまくっていることだけだ』
一体何が『修羅場』なのか、俺には見当もつかない。そもそも修羅場ってなんだ?
分かることはもう一つだけあった。
とりあえず………。
後ろの二人を黙らせよう。
そう思って俺は拳を力一杯握りながら二人に向かって歩いて行った。
そんなふうにユウヤが思っていた時、唯依は部活中にある予感を感じていた。
「む、ブリッジスさんに何やら良からぬ気配が近づくのを感じます! 絶対に帰りは迎えに行きましょう。そ、そしてあわよくば下校デートを………ふふふ」
恋する彼女の顔は誰が見ても明らかであり、そんな彼女に皆暖かな目を向けていた。