ハイスクールD×D イマジナリーフレンド 作:SINSOU
再投稿に関して、申し訳ありません。
目を覚ますと、私は白い天井を見上げていた。
真っ白に塗られた天井だった。
あれ、ここはどこだろう?私は最初にそう思った。
自分の部屋の天井にしては高く、なにより白くない。
頭がボーっとする中、私は状況を確認しようとし、急に何かが身体に抱きついた。
「ことなちゃん?ことなちゃん!?良かった!ことなちゃんが目を覚ました!」
何故か身体が動かせず、自由な目だけを動かせば、
友達が泣きながら私を抱きしめていた。
「まい・・・ちゃん?」
「そうだよ!舞だよ!
よかった!ことなちゃんが目を覚ましてくれて、本当に良かったよ!」
頭がふらついているせいか、私は状況が呑み込めていない。
いや、それにしてもここはどこなの?
「病院だよ。
私は気を失っちゃって解らないんだけど、気が付いたら病院にいたの。
なんでも、病院の前で倒れてたみたい。
私は何ともなかったんだけど、ことなちゃんが怪我をしてて、血が止まらなくて・・・」
どうやら、病院にたどり着いた際に気を失ったようだ。
病院に着いた後の記憶が全くないのもそれが理由なのだろう。
取りあず、舞ちゃんが無事でなにより。
そんなことを考える私を、舞ちゃん更に力強く抱きしめる。
「ことなちゃんが担架で運ばれて、それから治療を受けても目を覚まさなくて、
私、ことなちゃんが一生目を覚まさないかと心配で・・・!」
もはや涙声になっている舞に、私は安心させるように声をかける。
「大丈夫だよ、舞ちゃん。私は目を覚ましたんだから。
そんなに泣いてると、カワイイ顔が台無しになっちゃう」
「そんなのどうでもいい!
ことなちゃんが目を覚ましてくれるなら、ずっと泣いてやるんだから!」
完全に泣いている舞ちゃんに、私は安心した。
良かった、本当に何とも無くて。もしも何かあったら私は・・・。
舞ちゃんに抱きしめられながら、私は目だけを動かして、右手と左脚を見る。
案の定、あの出来事は夢ではなく、右手と左脚にはしっかりと包帯が巻かれていた。
さて、話を整理すると、私と舞ちゃんが病院前で倒れており、
私の右手と左脚からは血が流れていたと。
そして、その二つは刃物で刺された様な傷口であったと。
うん、どうみても事件ですね。
しかも、女子高生(私)が怪我を負っているということで、傷害事件です。
でも、犯人は化け物です、と答えようものなら、失血による混乱を疑われるか、
頭にも怪我をしたのか疑われ、検査を受けさせられるだろう。
それに、私が言ったところで、誰も信じるわけがないし、巻き込むわけにもいかない。
そもそも、一般人が勝てるのかどうかも分からない。
さてどうしよう、どうやって誤魔化そうか。
私が悩んでいると、案の定、刑事さんらしき人がやってきて、あれこれ聴かれた。
なにぶん、舞ちゃんは気を失っていたので、私に状況を聴くのは当たり前か。
まさか、怪物に襲われましたと言う訳にもいかないので、暴漢とはぐらかした。
私と舞ちゃんが下校中、刃物を持った暴漢に襲われた。
犯人に突き飛ばされた舞ちゃんは気を失い、
私が舞ちゃんを守ろうと抵抗し、その際に手足を傷つけられた。
犯人は私の抵抗で逃げ出し、私は舞ちゃんを病院へと運んだ。
うん、無理がある!でも、私はそれで押し通した。
それこそ、真実の方が現実味がないんだから。
取りあえず、事情聴取が終わり、私と舞ちゃんが病室に残った。
「それで舞ちゃん、私、どれくらい寝てた?」
「えっと、今日を入れて3日間かな。だから私、心配だったんだよ!?
失血してて、顔色が真っ青だったんだから!!」
「だから、もう私は大丈夫だって言ってるでしょ?」
私の言葉に、舞ちゃんは声を荒げた。
「解ってない!解ってないよことなちゃん!」
「!」
「いくらことなちゃんが凄いからって、だからって暴漢に立ち向かうなんて駄目だよ!
怪我だって、もしかしたら死んじゃったかもしれないのに!
馬鹿!バカバカバカバカバカ!ことなちゃんの馬鹿!」
私は、舞ちゃんの姿に、あっけにとられていた。
そういえば、舞ちゃんがここまで怒ったのは久しぶりかもしれない。
つまり、そこまで私は彼女を悲しませていたのだ。
「ごめん・・・ごめんね。舞ちゃんごめんね」
「駄目、絶対に許さない。ことなちゃんが無理をしないって約束するまで、絶対に許さない」
舞ちゃんの涙目+血気迫る雰囲気+自分の罪悪感+その他のせいで、私は言葉が出ない。
「解った。もう無理なんてしないから。
舞ちゃんを心配させるようなことはしません。
これで良い?」
「絶対だからね!?絶対なんだからね!?嘘ついたら罰ゲームだからね!」
そして私と舞ちゃんは、同時に笑いあった。
なんだろ、久々に笑った気がした。
その後、私はもう1日の入院を経て、とりあえずは杖を突きながらも家へと帰った。
退院の際は、舞ちゃんの他、桐生ちゃんも来てくれたのが嬉しかった。
病院に来た桐生ちゃんからは、
「あんた馬鹿でしょ。というか、バカね。それも大馬鹿」と呆られながらも嫌味を言われた。
だが、事実なので何も言えないのが悔しい。
舞ちゃんは「だよねー」と賛同されたのが、更に哀しかった。
そこは友人として私を擁護するべきではないだろうか?
でも、事実だから仕方ないけどね。
「それじゃ、ことなちゃん。ちゃんと養生してよ?」
「はいはい」
そういって帰っていった皆を確認すると、私は『友達』を呼んだ。
「ずっと見てくれてたんでしょ?ありがとね。
それでごめんだけど、私を運んでくれるかな?まだ脚が痛くて」
そういうと、『友達』は何を思ったのか、私を御姫様抱っこしたのだ。
予想外のことに私は驚いた。
「な、何をしてるの!?いや確かにこれは私には良いけど、だからって、は、恥ずかし・・・」
『友達』は私に顔を向けて、じっと見つめてくる。
「はいはい、解りました。ケガ人は安静にしなさい、でしょ」
根負けした私に、『友達』は首を縦に振る。
全く、時折お節介なんだから。
私は客間の方へ行くように頼み、ソファの上に置いてもらった。
取りあえず、今のことを考えてみた。
舞ちゃんが言うには、私が病院で寝ていたのが3日間、
そこに安静の為の1日を足して、私は4日間も病院にいたということだ。
つまり、リアス先輩たちの決闘?は既に終わっているということ。
そのことに、私は溜息を吐く。
リアス先輩たちのことだから、約束通り、ライザーさん?に勝ってるだろうし、
今は勝利に喜んでるだろうから、余計なことで水を差すのは拙いかもしれない。
それに、有耶無耶な理由をつけて参加しなかったことに関しては、
私自身、罪悪感もあり、余計に顔を合わせるのが辛い。
しかし、リアス先輩たちの不在での出来事に関しては、ちゃんと報告しておかないといけない。
但し、必要なことだけ。
あの時のことは、私と『友達』だけに秘めておく。
それに、今回のことで私は色々と思い知らされた。
だからこそ、私は行動しなくてはいけない。
だって、この町を、大切な人を守りたいから。
「大丈夫、リアス先輩たちは大丈夫」
そういって、私は頭を切り替える。
現在、私が取り組まなければいけないことは、まだまだあるのだ。
まずは、4日間も放ったらかしにしてしまった我が家のことである。
取りあえず、冷蔵庫の中身の確認や掃除、洗濯、その他諸々があるのだ。
4日間という日数は、それだけで脅威となる。
それこそ、冷蔵庫の中身が全滅してました!なんて可能性だってあるのだ。
それに、掃除が出来なかったせいで、所々に埃が積もっているわけで。
もちろん、学業に関しても同じだ。
4日間、4日間も授業を受けていないというのは、私からすればヤバい。
予習復習をやっている身とは言え、私が寝ている間に授業は進んでいるのだ。
「取りあえず、舞ちゃんや桐生ちゃん達に見せてもらおう・・・」
私はがっくりと脱力し、なにで埋め合わせをするかを考える。
特に桐生ちゃんは強敵だ、何をされるか分かったもんじゃない!
まぁ、分からないことを考えるのは後でもいい。
取りあえずは、私のやらなきゃいけない現状はこれでいい・・・と思う。
まずは、家の掃除をしなきゃね。
私はソファに座りながら、『友達』に顔を向ける。
そして、見せつけるように右手と左脚をプラプラと動かす。
痛い
だが、私は痛みを堪えながらも、見せつけるように動かす。
私は今、こんな状態だよ、と。
『友達』は、私の言いたいことを解ったようで、肩を竦めた。
後日、私が登校した際に知ったことだが、結婚の解約決闘はリアス先輩たちの勝ちだった。
なんでも、兵藤他、みんなの頑張りでライザーさんを相手に善戦したものの、
搭城さんや木場さん、姫島先輩がやられ、リアス先輩がライザーさんと一騎討ちに。
その際、助けに来た兵藤がライザーにコテンパンされる姿に、リアス先輩の心が折れ、
降伏と言う形でリアス先輩が負けたという。
その後、ライザーさんとリアス先輩の結婚式に兵藤が乱入。
リアス先輩のお兄さんらしい、魔王の口添えもあって、兵藤とライザーさんとの一騎討ちに。
そして、兵藤が自分の左腕を犠牲にして赤龍帝?の力を取り出し、
アーシアちゃんに貰った聖水やら十字架やらで、辛うじて勝利したらしい。
その後、リアス先輩の結婚話は『無事』に『荒れることなく』無かったことになった。
なんでも『急かし過ぎた』だの、『役目を押し付けてしまった』だの、
両家共に思うところがあったもよう。
その上、フェニックス家から、
ライザーさん(自分の息子)を負かしてくれたことに感謝されたとか。
そして、リアス先輩が兵藤の家に住まうことになった。
これが大まかに聞いたことだが、私には意味が解らなかった。
なんだそれは。まるでメロドラマのようだ。
まぁ、参加しなかった私が言うことでもないし、言う資格もないので、
私は何も言わなかったけど。
リアス先輩にとって善ければ、それでいいと思う。
たとえそれが、約束破りによる勝利だとしても。
「これが、リアス先輩たちが不在の際に起きた出来事のまとめです。
契約書類に関しては、いつものように整理しておきましたので、確認してください」
「ありがとう。助かるわ、ことな」
リアスの感謝に、ことなは「いえ、仕事ですから」と答える。
当初、ことなが部室に入ってきた際は、彼女の包帯姿に、リアスを含め全員が驚いた。
右手と左脚に包帯を巻き、杖を突きながら入ってきた彼女が、あまりに予想外だったからだ。
そして事情を聞いた際には、リアスたち全員が、はぐれ悪魔に憤った。
なんでも、自分たちが決闘に向けて修行していた間に、
はぐれ悪魔が侵入し、ことなと彼女の友人が襲われてしまったようだ。
なんとか、ことなが追い払ったものの、そのはぐれ悪魔は未だに逃亡中らしい。
眷属ではなくとも、オカルト研究部の一部員であることなを傷つけたということで、
リアスやその他全員は、そのはぐれ悪魔を見つけだし、然るべき罰を与えることを決意した。
ことなの傷に関しては、アーシアの神器で直ぐに治療したが、
「急に包帯を取ったら怪しまれます」とはことなの弁で、彼女はまだ包帯を巻いてる。
彼女のいつも通りの対応に、リアスは苦笑しつつも、紙束に受け取った。
だが、変わったこともあった。
「ことなも少し休んだら?
いくら『力』があっても、働き詰めだと倒れてしまうわ」
「そうですね、じゃあ、お言葉に甘えます。
あ、家庭科部でクッキーを貰ったので、一緒に頂きませんか?」
リアスの言葉に、ことなは鞄からクッキーの入った小袋を取り出して皿に盛る。
すると、ことなの後方の棚が勝手に開き、
中に置かれていたカップと皿が漂いながら宙に浮きつつ、ことなの方へと移動する。
『ありがとう』
ことなは受け取った2つのカップに紅茶を注いで、1つをリアスに、1つを自分に置く。
「それにしても、本当に不思議な力ね。それも『友達』が手伝ってくれたのかしら?」
「はい、頼りになるんですよ」
そう、ことなが自分たちに心を開いてくれたことだ。
なんでも、襲われた際に、色々と思うところがあったのか、
自分の大切な人を守りたいと、だから色々と教えてくださいと、彼女から願い出たのだ。
実は自分たちに対し、恐いと思っていたこと、
どう接すればいいのか解らなかったことを、謝罪しながら話してくれた。
正直、恐いと思われていたことはショックではあったが、自分たちは悪魔で、彼女は人間。
種族の違いからの恐怖は、仕方がないと納得した。
それに、正直に話してくれたことが、リアス自身も嬉しかったのだ。
その際、リアスは疑問に思っていたことを、ことなに訊いてみた。
「なにか不思議な力を持っていないかしら?」と。
合宿の際に先に話していた朱乃を除き、
部員の全員が驚く中、ことなは頭を下げながらも教えてくれた。
なんでも、ことなには不思議な力があるらしく、
【『友達』という存在が自分を助けてくれる】というのだ。
プリントが崩れそうな際には、何故か元に戻ったり、
備品の整理すると、いつの間にか片付いている時があるらしい。
ことなの『友達』という存在は、リアスたちには想像できなかったが、
ことな曰く「とても頼りになる、私の『友達』なんです」と笑顔で答えた。
その後、
「自分の力のことを皆さんに黙っていてごめんなさい。
でも、『もしも私の力を皆さんが知ったら、一体どうするか』か、私怖くて・・・」
彼女の身体は少し震えていた。
リアスは安心させるようにことなを抱きしめ、
「安心しなさい、ことなに不思議な力があっても、私たちは変わらない。
それに、こうして正直に言ってくれるってことは、私たちを信じてくれたってことだもの」と、
ことなの頭を撫でた。
「リアス先輩、ありがとうございます」と、抱きしめられたことなは呟いた。
こうしてリアスたちオカルト研究部は、本当の意味でことなを部員として迎え入れたのだ。
自分とお茶を飲みながらも談笑していたことなが、ふと思い出したように尋ねてきた。
「そういえばリアス先輩、前に教えて貰った勉強のおさらいなんですが、
悪魔の弱点って、聖水や十字架など、聖なる力を持つ物なんですよね?」
「そうね、悪魔は基本、聖なるものには弱いわ。
聖水・十字架に聖剣、それこそ祈りの言葉もね。
他にも太陽光があるけれど、これは中級以下の悪魔に対してね。
上級なら、昼間でも変わらずに活動できるわ」
リアスの言葉に、ことなはふむふむと頷く。
ことなが自分のことを語ってくれた日、ことなはリアスにお願いしてきた。
それは、『自分たち悪魔のこと』や、他の存在について色々と学びたい、とのことだ。
もしも事前に対策を知っていれば、今回(襲われたこと)のことにも、
もっと早く対処できたかもしれないから、という理由だった。
もちろん、リアスは快く承諾した。ことなの熱意を買ってのことだ。
こうして時にリアスは、ことなと勉強のおさらいをしているのだ。
そしてことなは、自分以外にもアーシアに聖水などの作り方も学んでいるとか。
「聖なる物に弱い悪魔だからこそ、天使や教会、その力を使う堕天使は私たちの天敵なの。
だからこれらと出来るだけ相対しないようにしないといけない。
まぁ、人間のことなには効果はないけどね」
「それにしても、ちゃんと復習をしてるのね、偉いわ」
「いえ、『大切なこと』ですから」
リアスの言葉に、ことなは照れくさそうに応えた。
勉強熱心なことなを、リアスは素直に褒めた。
仮に兵藤がこれを見ていたら、「ぶ、部長!俺も勉強してます!」と叫んだだろう。
「答えてくれてありがとうございます、リアス先輩。
私、大切な人たちを『危険な悪魔』などから守れるように、もっと多くのことを学びたいです」
「ええ、頼りにしてるわよ」
「はい!」
ことなの言葉にリアスは頼もしさを感じ、談笑は続いた。
「あ、帰ってくる皆にも用意しておきますね」
そう言ってことなは席を立ち、宙を舞うカップとお皿の中心で、お茶の準備をしていく。
リアスからは後ろ姿しか見えないが、その光景はとても不思議だった。
どうも『友達』は、ことな自身にしか見えず、
リアスたちは、ことなの言う『友達』の姿に不思議と興味が湧いていた。
一体どんな姿をしているのだろうと。
「一度でいいから、ことなの『友達』を見てみたいものだわ」
「そうですね、『機会』があれば、紹介したいですね」
リアスの呟きを聞きながら、
ことなは、ガラス玉のような無機質な目で、『自身の体から生えている友達の手』を使いながら、
帰ってくる人たちのお茶を用意するのであった。