ハイスクールD×D イマジナリーフレンド   作:SINSOU

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以前出した6話に、少し変更と付け加えをしました。
再投稿に関して、申し訳ありません。


6話

目を覚ますと、私は白い天井を見上げていた。

真っ白に塗られた天井だった。

あれ、ここはどこだろう?私は最初にそう思った。

自分の部屋の天井にしては高く、なにより白くない。

頭がボーっとする中、私は状況を確認しようとし、急に何かが身体に抱きついた。

 

「ことなちゃん?ことなちゃん!?良かった!ことなちゃんが目を覚ました!」

 

何故か身体が動かせず、自由な目だけを動かせば、

友達が泣きながら私を抱きしめていた。

 

「まい・・・ちゃん?」

 

「そうだよ!舞だよ!

 よかった!ことなちゃんが目を覚ましてくれて、本当に良かったよ!」

 

頭がふらついているせいか、私は状況が呑み込めていない。

いや、それにしてもここはどこなの?

 

「病院だよ。

 私は気を失っちゃって解らないんだけど、気が付いたら病院にいたの。

 なんでも、病院の前で倒れてたみたい。

 私は何ともなかったんだけど、ことなちゃんが怪我をしてて、血が止まらなくて・・・」

 

どうやら、病院にたどり着いた際に気を失ったようだ。

病院に着いた後の記憶が全くないのもそれが理由なのだろう。

取りあず、舞ちゃんが無事でなにより。

 

そんなことを考える私を、舞ちゃん更に力強く抱きしめる。

 

「ことなちゃんが担架で運ばれて、それから治療を受けても目を覚まさなくて、

 私、ことなちゃんが一生目を覚まさないかと心配で・・・!」

 

もはや涙声になっている舞に、私は安心させるように声をかける。

 

「大丈夫だよ、舞ちゃん。私は目を覚ましたんだから。

 そんなに泣いてると、カワイイ顔が台無しになっちゃう」

 

「そんなのどうでもいい!

 ことなちゃんが目を覚ましてくれるなら、ずっと泣いてやるんだから!」

 

完全に泣いている舞ちゃんに、私は安心した。

良かった、本当に何とも無くて。もしも何かあったら私は・・・。

舞ちゃんに抱きしめられながら、私は目だけを動かして、右手と左脚を見る。

案の定、あの出来事は夢ではなく、右手と左脚にはしっかりと包帯が巻かれていた。

 

さて、話を整理すると、私と舞ちゃんが病院前で倒れており、

私の右手と左脚からは血が流れていたと。

そして、その二つは刃物で刺された様な傷口であったと。

うん、どうみても事件ですね。

しかも、女子高生(私)が怪我を負っているということで、傷害事件です。

でも、犯人は化け物です、と答えようものなら、失血による混乱を疑われるか、

頭にも怪我をしたのか疑われ、検査を受けさせられるだろう。

それに、私が言ったところで、誰も信じるわけがないし、巻き込むわけにもいかない。

そもそも、一般人が勝てるのかどうかも分からない。

さてどうしよう、どうやって誤魔化そうか。

 

私が悩んでいると、案の定、刑事さんらしき人がやってきて、あれこれ聴かれた。

なにぶん、舞ちゃんは気を失っていたので、私に状況を聴くのは当たり前か。

まさか、怪物に襲われましたと言う訳にもいかないので、暴漢とはぐらかした。

 

私と舞ちゃんが下校中、刃物を持った暴漢に襲われた。

犯人に突き飛ばされた舞ちゃんは気を失い、

私が舞ちゃんを守ろうと抵抗し、その際に手足を傷つけられた。

犯人は私の抵抗で逃げ出し、私は舞ちゃんを病院へと運んだ。

 

うん、無理がある!でも、私はそれで押し通した。

それこそ、真実の方が現実味がないんだから。

取りあえず、事情聴取が終わり、私と舞ちゃんが病室に残った。

 

「それで舞ちゃん、私、どれくらい寝てた?」

 

「えっと、今日を入れて3日間かな。だから私、心配だったんだよ!?

 失血してて、顔色が真っ青だったんだから!!」

 

「だから、もう私は大丈夫だって言ってるでしょ?」

 

私の言葉に、舞ちゃんは声を荒げた。

 

「解ってない!解ってないよことなちゃん!」

 

「!」

 

「いくらことなちゃんが凄いからって、だからって暴漢に立ち向かうなんて駄目だよ!

 怪我だって、もしかしたら死んじゃったかもしれないのに!

 馬鹿!バカバカバカバカバカ!ことなちゃんの馬鹿!」

 

私は、舞ちゃんの姿に、あっけにとられていた。

そういえば、舞ちゃんがここまで怒ったのは久しぶりかもしれない。

つまり、そこまで私は彼女を悲しませていたのだ。

 

「ごめん・・・ごめんね。舞ちゃんごめんね」

 

「駄目、絶対に許さない。ことなちゃんが無理をしないって約束するまで、絶対に許さない」

 

舞ちゃんの涙目+血気迫る雰囲気+自分の罪悪感+その他のせいで、私は言葉が出ない。

 

「解った。もう無理なんてしないから。

 舞ちゃんを心配させるようなことはしません。

 これで良い?」

 

「絶対だからね!?絶対なんだからね!?嘘ついたら罰ゲームだからね!」

 

そして私と舞ちゃんは、同時に笑いあった。

なんだろ、久々に笑った気がした。

 

 

 

 

その後、私はもう1日の入院を経て、とりあえずは杖を突きながらも家へと帰った。

退院の際は、舞ちゃんの他、桐生ちゃんも来てくれたのが嬉しかった。

 

病院に来た桐生ちゃんからは、

 

「あんた馬鹿でしょ。というか、バカね。それも大馬鹿」と呆られながらも嫌味を言われた。

だが、事実なので何も言えないのが悔しい。

 

舞ちゃんは「だよねー」と賛同されたのが、更に哀しかった。

そこは友人として私を擁護するべきではないだろうか?

でも、事実だから仕方ないけどね。

 

「それじゃ、ことなちゃん。ちゃんと養生してよ?」

 

「はいはい」

 

そういって帰っていった皆を確認すると、私は『友達』を呼んだ。

 

「ずっと見てくれてたんでしょ?ありがとね。

 それでごめんだけど、私を運んでくれるかな?まだ脚が痛くて」

 

そういうと、『友達』は何を思ったのか、私を御姫様抱っこしたのだ。

予想外のことに私は驚いた。

 

「な、何をしてるの!?いや確かにこれは私には良いけど、だからって、は、恥ずかし・・・」

 

『友達』は私に顔を向けて、じっと見つめてくる。

 

「はいはい、解りました。ケガ人は安静にしなさい、でしょ」

 

根負けした私に、『友達』は首を縦に振る。

全く、時折お節介なんだから。

私は客間の方へ行くように頼み、ソファの上に置いてもらった。

取りあえず、今のことを考えてみた。

 

舞ちゃんが言うには、私が病院で寝ていたのが3日間、

そこに安静の為の1日を足して、私は4日間も病院にいたということだ。

つまり、リアス先輩たちの決闘?は既に終わっているということ。

そのことに、私は溜息を吐く。

 

リアス先輩たちのことだから、約束通り、ライザーさん?に勝ってるだろうし、

今は勝利に喜んでるだろうから、余計なことで水を差すのは拙いかもしれない。

それに、有耶無耶な理由をつけて参加しなかったことに関しては、

私自身、罪悪感もあり、余計に顔を合わせるのが辛い。

しかし、リアス先輩たちの不在での出来事に関しては、ちゃんと報告しておかないといけない。

 

但し、必要なことだけ。

あの時のことは、私と『友達』だけに秘めておく。

 

それに、今回のことで私は色々と思い知らされた。

だからこそ、私は行動しなくてはいけない。

だって、この町を、大切な人を守りたいから。

 

「大丈夫、リアス先輩たちは大丈夫」

 

そういって、私は頭を切り替える。

現在、私が取り組まなければいけないことは、まだまだあるのだ。

まずは、4日間も放ったらかしにしてしまった我が家のことである。

 

取りあえず、冷蔵庫の中身の確認や掃除、洗濯、その他諸々があるのだ。

4日間という日数は、それだけで脅威となる。

それこそ、冷蔵庫の中身が全滅してました!なんて可能性だってあるのだ。

それに、掃除が出来なかったせいで、所々に埃が積もっているわけで。

 

もちろん、学業に関しても同じだ。

4日間、4日間も授業を受けていないというのは、私からすればヤバい。

予習復習をやっている身とは言え、私が寝ている間に授業は進んでいるのだ。

 

「取りあえず、舞ちゃんや桐生ちゃん達に見せてもらおう・・・」

 

私はがっくりと脱力し、なにで埋め合わせをするかを考える。

特に桐生ちゃんは強敵だ、何をされるか分かったもんじゃない!

 

まぁ、分からないことを考えるのは後でもいい。

取りあえずは、私のやらなきゃいけない現状はこれでいい・・・と思う。

 

まずは、家の掃除をしなきゃね。

私はソファに座りながら、『友達』に顔を向ける。

そして、見せつけるように右手と左脚をプラプラと動かす。

 

痛い

 

だが、私は痛みを堪えながらも、見せつけるように動かす。

私は今、こんな状態だよ、と。

『友達』は、私の言いたいことを解ったようで、肩を竦めた。

 

 

 

 

 

 

後日、私が登校した際に知ったことだが、結婚の解約決闘はリアス先輩たちの勝ちだった。

 

なんでも、兵藤他、みんなの頑張りでライザーさんを相手に善戦したものの、

搭城さんや木場さん、姫島先輩がやられ、リアス先輩がライザーさんと一騎討ちに。

その際、助けに来た兵藤がライザーにコテンパンされる姿に、リアス先輩の心が折れ、

降伏と言う形でリアス先輩が負けたという。

 

その後、ライザーさんとリアス先輩の結婚式に兵藤が乱入。

リアス先輩のお兄さんらしい、魔王の口添えもあって、兵藤とライザーさんとの一騎討ちに。

そして、兵藤が自分の左腕を犠牲にして赤龍帝?の力を取り出し、

アーシアちゃんに貰った聖水やら十字架やらで、辛うじて勝利したらしい。

 

その後、リアス先輩の結婚話は『無事』に『荒れることなく』無かったことになった。

なんでも『急かし過ぎた』だの、『役目を押し付けてしまった』だの、

両家共に思うところがあったもよう。

その上、フェニックス家から、

ライザーさん(自分の息子)を負かしてくれたことに感謝されたとか。

そして、リアス先輩が兵藤の家に住まうことになった。

 

これが大まかに聞いたことだが、私には意味が解らなかった。

なんだそれは。まるでメロドラマのようだ。

まぁ、参加しなかった私が言うことでもないし、言う資格もないので、

私は何も言わなかったけど。

リアス先輩にとって善ければ、それでいいと思う。

 

たとえそれが、約束破りによる勝利だとしても。

 

 

 

 

 

 

 

「これが、リアス先輩たちが不在の際に起きた出来事のまとめです。

 契約書類に関しては、いつものように整理しておきましたので、確認してください」

 

「ありがとう。助かるわ、ことな」

 

リアスの感謝に、ことなは「いえ、仕事ですから」と答える。

当初、ことなが部室に入ってきた際は、彼女の包帯姿に、リアスを含め全員が驚いた。

右手と左脚に包帯を巻き、杖を突きながら入ってきた彼女が、あまりに予想外だったからだ。

 

そして事情を聞いた際には、リアスたち全員が、はぐれ悪魔に憤った。

なんでも、自分たちが決闘に向けて修行していた間に、

はぐれ悪魔が侵入し、ことなと彼女の友人が襲われてしまったようだ。

なんとか、ことなが追い払ったものの、そのはぐれ悪魔は未だに逃亡中らしい。

眷属ではなくとも、オカルト研究部の一部員であることなを傷つけたということで、

リアスやその他全員は、そのはぐれ悪魔を見つけだし、然るべき罰を与えることを決意した。

ことなの傷に関しては、アーシアの神器で直ぐに治療したが、

「急に包帯を取ったら怪しまれます」とはことなの弁で、彼女はまだ包帯を巻いてる。

 

彼女のいつも通りの対応に、リアスは苦笑しつつも、紙束に受け取った。

だが、変わったこともあった。

 

 

「ことなも少し休んだら?

 いくら『力』があっても、働き詰めだと倒れてしまうわ」

 

「そうですね、じゃあ、お言葉に甘えます。

 あ、家庭科部でクッキーを貰ったので、一緒に頂きませんか?」

 

リアスの言葉に、ことなは鞄からクッキーの入った小袋を取り出して皿に盛る。

すると、ことなの後方の棚が勝手に開き、

中に置かれていたカップと皿が漂いながら宙に浮きつつ、ことなの方へと移動する。

 

『ありがとう』

 

ことなは受け取った2つのカップに紅茶を注いで、1つをリアスに、1つを自分に置く。

 

「それにしても、本当に不思議な力ね。それも『友達』が手伝ってくれたのかしら?」

 

「はい、頼りになるんですよ」

 

そう、ことなが自分たちに心を開いてくれたことだ。

 

 

なんでも、襲われた際に、色々と思うところがあったのか、

自分の大切な人を守りたいと、だから色々と教えてくださいと、彼女から願い出たのだ。

 

実は自分たちに対し、恐いと思っていたこと、

どう接すればいいのか解らなかったことを、謝罪しながら話してくれた。

正直、恐いと思われていたことはショックではあったが、自分たちは悪魔で、彼女は人間。

種族の違いからの恐怖は、仕方がないと納得した。

それに、正直に話してくれたことが、リアス自身も嬉しかったのだ。

 

その際、リアスは疑問に思っていたことを、ことなに訊いてみた。

「なにか不思議な力を持っていないかしら?」と。

合宿の際に先に話していた朱乃を除き、

部員の全員が驚く中、ことなは頭を下げながらも教えてくれた。

 

なんでも、ことなには不思議な力があるらしく、

【『友達』という存在が自分を助けてくれる】というのだ。

プリントが崩れそうな際には、何故か元に戻ったり、

備品の整理すると、いつの間にか片付いている時があるらしい。

ことなの『友達』という存在は、リアスたちには想像できなかったが、

ことな曰く「とても頼りになる、私の『友達』なんです」と笑顔で答えた。

 

その後、

「自分の力のことを皆さんに黙っていてごめんなさい。

 でも、『もしも私の力を皆さんが知ったら、一体どうするか』か、私怖くて・・・」

 

彼女の身体は少し震えていた。

リアスは安心させるようにことなを抱きしめ、

「安心しなさい、ことなに不思議な力があっても、私たちは変わらない。

 それに、こうして正直に言ってくれるってことは、私たちを信じてくれたってことだもの」と、

ことなの頭を撫でた。

「リアス先輩、ありがとうございます」と、抱きしめられたことなは呟いた。

 

こうしてリアスたちオカルト研究部は、本当の意味でことなを部員として迎え入れたのだ。

 

 

 

自分とお茶を飲みながらも談笑していたことなが、ふと思い出したように尋ねてきた。

 

「そういえばリアス先輩、前に教えて貰った勉強のおさらいなんですが、

 悪魔の弱点って、聖水や十字架など、聖なる力を持つ物なんですよね?」

 

「そうね、悪魔は基本、聖なるものには弱いわ。

 聖水・十字架に聖剣、それこそ祈りの言葉もね。

 他にも太陽光があるけれど、これは中級以下の悪魔に対してね。

 上級なら、昼間でも変わらずに活動できるわ」

 

リアスの言葉に、ことなはふむふむと頷く。

ことなが自分のことを語ってくれた日、ことなはリアスにお願いしてきた。

それは、『自分たち悪魔のこと』や、他の存在について色々と学びたい、とのことだ。

もしも事前に対策を知っていれば、今回(襲われたこと)のことにも、

もっと早く対処できたかもしれないから、という理由だった。

もちろん、リアスは快く承諾した。ことなの熱意を買ってのことだ。

こうして時にリアスは、ことなと勉強のおさらいをしているのだ。

そしてことなは、自分以外にもアーシアに聖水などの作り方も学んでいるとか。

 

「聖なる物に弱い悪魔だからこそ、天使や教会、その力を使う堕天使は私たちの天敵なの。

 だからこれらと出来るだけ相対しないようにしないといけない。

 まぁ、人間のことなには効果はないけどね」

 

「それにしても、ちゃんと復習をしてるのね、偉いわ」

 

「いえ、『大切なこと』ですから」

 

リアスの言葉に、ことなは照れくさそうに応えた。

 

勉強熱心なことなを、リアスは素直に褒めた。

仮に兵藤がこれを見ていたら、「ぶ、部長!俺も勉強してます!」と叫んだだろう。

 

「答えてくれてありがとうございます、リアス先輩。

 私、大切な人たちを『危険な悪魔』などから守れるように、もっと多くのことを学びたいです」

 

「ええ、頼りにしてるわよ」

 

「はい!」

 

ことなの言葉にリアスは頼もしさを感じ、談笑は続いた。

 

「あ、帰ってくる皆にも用意しておきますね」

 

そう言ってことなは席を立ち、宙を舞うカップとお皿の中心で、お茶の準備をしていく。

リアスからは後ろ姿しか見えないが、その光景はとても不思議だった。

どうも『友達』は、ことな自身にしか見えず、

リアスたちは、ことなの言う『友達』の姿に不思議と興味が湧いていた。

一体どんな姿をしているのだろうと。

 

「一度でいいから、ことなの『友達』を見てみたいものだわ」

 

「そうですね、『機会』があれば、紹介したいですね」

 

リアスの呟きを聞きながら、

ことなは、ガラス玉のような無機質な目で、『自身の体から生えている友達の手』を使いながら、

帰ってくる人たちのお茶を用意するのであった。


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