ハイスクールD×D イマジナリーフレンド   作:SINSOU

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3話

「ことな、急な話だけど、しばらくの間は部活はお休みよ」

 

「はぁ・・・・・・?」

 

いつものように、オカルト研究部へ遅れてやってきた私は、

リアス先輩の言葉の意味が解らなかった。

急な話過ぎて、頭の理解が着いて行かない。

 

「しばらくの間、私たちは修行のために山籠もりするの」

 

「はい・・・・・・?」

 

混乱する私を、リアス先輩は優しく諭すように言う。

その言葉に、私の頭は、ますます理解が追いつかなくなった。

 

修行?山籠もり?一体急にどうしたというんだ。

 

 

「リアス先輩、ことな先輩がますます混乱してます」

 

「あら、ことなには難しかったのかしら」

 

「いえ、部長、そういう問題じゃないと思いますよ」

 

搭城さんの言葉に、リアス先輩が素で聞き返し、木場さんがツッコミをいれる。

取りあえず、私は詳細な説明を求めた。

 

 

 

「というわけで、私たちはレーティングゲームに勝つために、修行するの。

 だから、10日間は学園を離れるから、それで部活は出来なくなったというわけ」

 

「・・・・・・そうですか」

 

リアス先輩の説明を受けた私は、ただただ返答するしかなかった。

そもそも、リアス先輩に婚約者がいたということ自体が初耳だ。

その上、リアス先輩の結婚契約を破棄するために、婚約者と戦う?

なんだそれは。

私にはまったく意味が分からない。

 

なんでも、リアス先輩の実家であるグレモリーの家は、

相手側であるフェニックス家(魔獣フェニックスの血を引くとか)と婚約していたと。

それは、先の戦争による純血悪魔の大半が滅び、

純血悪魔の血を絶やさない為に、両家が同意した契約だとか。

だが、それにリアス先輩が大反対。

散々駄々を捏ねるリアス先輩に我慢できなかったのか、

今日、私がいない時に婚約者が「いい加減にしろ!」と迎えに来たのだとか。

そして、両者の意見が平行線ということで、レーティングゲームによる決闘が決まったとか。

 

取りあえず、リアス先輩や部活のみんなは、

その婚約者のことが大嫌いということは何となく解った。

特に兵藤は、先ほどから人一倍熱いオーラを放っているからだ。

まぁ、ハーレムを持っているいうことらしいので、大半が嫉妬なんだろうけど。

 

 

「あの焼き鳥野郎!あんなイケ好かねぇキザハーレム野郎に部長を渡すわけにはいかねぇ!

 絶対に部長との婚約を阻止してやる!」

 

「一誠先輩、同族嫌悪って知ってますか?」

 

「どうぞくけんお・・・?ってどういうことですか?」

 

「えっと、それは僕からは・・・」

 

なにやら叫んでいる兵藤のことは放っておいていいだろう。

別段、いつものことだし。

搭城さんの皮肉を、アーシアちゃんは意味が解らなかったのか、木場さんに聞いている。

 

 

だが、リアス先輩の説明の中で、私に引っかかった言葉があった。

レーティングゲーム。

前にリアス先輩から、悪魔の駒の流れで説明して貰ったものだ。

 

 

なんでも、天使や堕天使との戦いで大半の同胞を失った悪魔たちは、

数を少なくした代わりに、その小数を即戦力として鍛え上げる方向へと転換。

その際に、人間界のチェスを参考にしたのがレーティングゲームで、

各駒に特性を与えることで、より強力な戦力として活用できるようになったとか。

 

『騎士』は速度の向上、『戦車』は身体の耐久性と攻撃力の増加、

『僧侶』は魔力の底上げ、『女王』は騎士・戦車・僧侶・兵士の特性を供え、

『兵士』は敵陣地で『王』を除いた駒へと昇格し、その特性を得られる。

 

どうして駒の特性がそうなるのかは、私からしたら全く解らないが、

基本的ルールは、私たち(人間界)でお馴染みのチェスと似ている。

 

そして、チェスという基盤を得たこのゲームは、悪魔の上流貴族の中では大ブーム。

それぞれが、自分の眷属を互いに戦わせて、その優劣競うようになった。

レーティングゲームに勝敗によって、その地位も名誉も得られるとか。

ある意味、レーティングゲームが、悪魔社会の一部となったとも言える。

 

まぁ、私が気になるのは、そんなことじゃないけどね。

 

ゲームに勝つために必要であり、自身を着飾るためのステータスとして、

優秀な『駒集め』が行われていうということだ。

 

そりゃそうだ、駒の特性があろうと、それはあくまで付加される特性だ。

基本的な能力が優れていれば、それだけで試合に有利だと私は思う。

いくら優れていようとも、人間がドラゴンと身体能力で勝てるとは思えない。

だから、他の競争相手よりも更に優秀で、より素晴らしい駒を集めようとするのは自明の理だ。

それこそ勝つために、駒集めに『血眼』になったりするんじゃないだろうか。

 

 

 

 

 

『ところで、仮に眷属になるのを断られた場合、どうするんでしょうね?』

 

 

 

 

 

「ことな?」

 

「あ、すみません、少し考え事をしていて・・・」

 

リアス先輩の言葉に、私は考えるのを止めた。

というか今、私は何を考えていたの?

いくらリアス先輩たちが怖いからって、考え過ぎなんじゃないかな。

 

あの時(殺し合い)は確かにショックを受けちゃったし、

今もそれが後を引いているとはいえ、リアス先輩たちは、まだ信じられると思う。

そうだよ、私たちの住んでる駒王町を守るって、リアス先輩は私に言ってくれた。

約束してくれたんだもの。

今はまだ、信じても良いと思う。恐いけど。

 

 

私は、悪い考えを払拭するように、今後の予定についてへ思考を切り替える。

取りあえず、リアス先輩と話をつけないとね。

 

「それで、みなさんは10日間も修行に出かけるということですが、

 その間の部活や部室、契約の方はどうしたらいいですか?

 私、みなさんが帰ってくる間、契約書の分類、部室の掃除とかしておきますけね。

 あと、学園へ部活動の書類を提出したいのですが、どういう風に書いた方が良いですか?」

 

「?」

 

私の言葉に、リアス先輩はまるで「貴女は何を言ってるの?」という顔をする。

まるで、私の言葉が予想していなかった、とでも言うかのように。

リアス先輩どころか、部室にいる他のみんなも、そんな顔をしている。

あの兵藤どころか、アーシアちゃんまでもだ。

 

あれ?私、何か変なことを言ったのかな?

だって、10日間、婚約を解消するためのゲームに勝つために、山に籠って修行してきます、

なんて書いて提出したら、

受理されるどころか、下手しなくても、職員室呼び出し、説教、反省文提出になる。

流石にそれは駄目だと思う。

それに、パトロールのお仕事があるし、契約の依頼は毎日のように来るのだから、

10日間も留守にしたら、契約書の束で部室が埋まってしまうと思うの。

だから、私がやっておきます、と言ったのに。

 

みんな、私を見て、おかしな顔をしてるんだよね。

まるでみんな、『私も一緒に着いて行くと思っていた』という顔をしているんだから。

 

 

 

嫌だ

 

 

 

「ことな」

 

「はい、何ですかリアス先輩?」

リアス先輩は私にゆっくりと近づいてくる。

まるで、授業で問題が解らない生徒に、解りやすく教えようとする先生の様だ。

その顔は、見る者を安心させてしまう、優しい顔だ。

優しい微笑だ。

 

 

 

嫌だ

 

 

 

「あ、あの!私、明日も、その明日も、他の人の代わりというか、助っ人をを頼まれちゃって!

 えっと・・・そう!だからあの、本当に申し訳ないんですけど、

 私はリアス先輩たちと一緒に行けないかなぁ・・・って」

 

リアス先輩が私の前に来た。

 

「だから、あの、本当に・・・ごめんなさい。

 みんなが決意をしてる中、私だけが参加できないのは、心苦しいんですけど、

 本当にごめんなさい」

 

私はリアス先輩に頭を下げた。

リアス先輩は黙ったままで、私に注がれているであろう視線に、

私は身体が震えだすのを必死に堪えている。

 

 

 

恐い。

 

 

 

「ことな」

 

リアス先輩の唇が開き、私は頭を撫でられた。

私は予想外のことに驚き、頭を上げてしまい、リアス先輩と目があってしまった。

リアス先輩は、優しい顔で私を見ていた。

 

「そんなに自分を責めなくてもいいのよ。

 正直に言ってしまうと、確かにことなにも手伝ってほしいと思ったわ。

 だって、あなたはあなたが思っているよりも、私たちにとっては凄い存在なのだから」

 

 

一瞬、私の身体が強張る。

 

 

「でもだからと言って、ことなにはことなの生活があるものね。

 それを私の都合で壊してしまうのは、私にはとても心苦しいし。

 それにことなの気持ちも、痛いほど伝わってきたわ」

 

「リアス先輩・・・」

 

「だから、私たちがいない間は、お仕事のこと、しっかりと頼むわよ。

 大丈夫、私たちは絶対に勝つんだから」

 

リアス先輩の言葉に、他のみんなが声を上げる。

 

「その通りです部長!俺があの焼き鳥をボッコボコにして、部長に勝利を届けます!」

 

「あらあら、一誠君は燃えてますね」

 

「どう見ても、ハーレムを見せつけられた恨みですよ、変態」

 

「これは僕も、一誠君を見習わないといけないのかな?」

 

「わ、私も!頑張ります!」

 

その姿に、私は少し安心した。

ああ、私は行かなくていいんだ、と。戦わなくていいんだ、と。

だから私は、リアス先輩の言葉を受け入れた。

 

「分かりました!

 夢殿ことな、みなさんがいない間、このオカルト研究部を守護します!」

 

「守護するだなんて、大げさなんだから」

 

私の言葉に、みんながくすくすと笑いだし、私は気恥ずかしさで顔を真っ赤にした。

私は、安心した。

リアス先輩やみんなの笑い声に、私は安心した。

安心して・・・しまった。


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