ハイスクールD×D イマジナリーフレンド   作:SINSOU

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オリキャラが登場するのでご注意ください。


26話

「これは一体?」

 

僕の身体を何かが通り抜けたような感覚が襲う。一瞬のことだったけれど、僕はこの感覚を経験したことがあった。

 

「これは確か、ギャスパー君の時間停止・・・!」

 

その答えを裏付けるかのように、目の前の夢殿さんと小猫ちゃんが止まっていた。それこそ、彼女らの毛先さえも言葉通り空中で止まっていた。どうして僕だけが動けるのかは分からない。でもこの状況とさっき部室から聞こえてきた物音、そしてギャスパー君以外の気配から判断して、ギャスパー君に何かあったに違いない。

僕は今すぐにでもギャスパー君を助けようと思うも、目の前の止まっている二人を見る。

 

「二人をこのままにするのは流石に危険だよね。取りあえず、二人をどこか安全な場所に・・・!」

 

そう思った刹那、僕の後ろから何かが迫る。

 

「しっ!」

 

咄嗟のことだったけど、僕はそれを作りだした魔剣で切り払う。

 

「っち、上手いかないものね」

 

声のする方を見れば、黒いローブを被った集団がこちらを見ている。多分、僕に攻撃をしただろう一人が、忌々しげに僕を見ている。声の高さからして女性であり、彼女が彼らのリーダーだろう。

 

「まさか動ける奴がいるなんてね。しかもこんな近くまで接近を許すなんて。吸血鬼に時間をかけ過ぎたかしら」

 

「どうやら、この時間停止は君たちが原因みたいだね」

 

「ええそうよ、私たちが犯人。お前達が飼っている吸血鬼の神器を暴走させたの。ったく、無駄な抵抗しやがったせいで、何人かは巻き込まれちゃったわよ」

 

「ギャスパー君は僕たちの大切な仲間だよ。ペットみたいに言うのは許せないかな」

 

「あ?」

 

ローブを被っているせいか顔は解らないが、声からしてそうとう苛々しているのが解る。一瞬、彼女の素が見えた気がしたが、彼女はそれを気にせずに話す。

 

「本来なら、ここにいる吸血鬼の神器を暴走させて、時間が止まった状態でお前達をタコ殴りするつもりだってのに、なんでお前等がここにいるのかしら?あのさ、吸血鬼といい、お前等といい、段取りはきちんと守ってくれない?無駄な時間をとらせんじゃねぇよカスがぁ!」

 

「生憎、君たちの予定を知らなくてね。今度からは先に教えてくれると助かるよ。悪いけど、ギャスパー君を返して貰うよ」

 

僕は聖魔剣を生み出し、その切っ先を彼らに向ける。聖魔剣の力に圧倒されたのか警戒したのか、彼らは数歩後ずさる。だが先ほどから話している魔法使いは違う。彼女だけがそのままで、口元には笑みがこぼれていた。

 

「そうね、確かにその聖魔剣ってのは脅威みたいね。そして情報でだと、グレモリー眷属の中でもお前は強いらしいし。しかも予想外として、お前はこの止まった世界の中を動けるときた。まさに厄介極まる存在。でもさぁ・・・」

 

そいつは両手を僕に向けて魔力の塊を作り、それらを放つ。

 

「後ろの二人はどうなのかしら?」

 

「!?」

 

僕はそいつの目的を理解した。

 

「させない!」

 

僕は止まって動けない二人の前に立ち、放たれた魔力弾を斬り裂く。

 

「良く出来ましたぁ!流石、グレモリーの『騎士』ですぅ。じゃあ『騎士』様、今からゲームを始めましょっか。ルールは、馬鹿でも理解できるほどチョー簡単!私たちは後の二人を狙うから、君は二人を守るだけ!時間は無制限!じゃあ、すたぁとぉ!」

 

そして魔力弾の雨が僕たちを襲った。

 

 

 

 

 

 

 

「ほらほらほらほらほらぁ!ちゃんとしないと二人に当たるわよぉ!」

 

彼女たちから放たれる魔力の弾を何度も切り払う。何度も何度も何度も何度も、その雨を打ち払う。時に僕を直接狙う弾も混じっているせいで、何度か僕の身を掠めた。だが解ったことは、弾のそれ自体の威力はそれほど強くはない。だが、流石に何度も当たれば不味い。しかも夢殿さんは人間だ。小猫ちゃんや僕なら耐えきれるものでも、夢殿さんが耐えられるとは限らない。

 

「やはり全部切り払うしかないね」

 

僕はそう考え、目の前に迫った魔力の弾を切り払う。が、それに切っ先が触れた瞬間、いままでとは比べれられない爆発が来た。その爆発によって剣が弾かれ、僕は体勢を崩される。爆発の煙から見えた魔法使いの口元が、酷く笑みに歪んでいた。

そのせいで後ろから迫る魔力の弾を切り払うことが出来ない。このままだと、夢殿さんと小猫ちゃんが・・・!咄嗟に僕は後の二人を守ろうと、背を前にして彼女たちを魔力の雨から庇う。

 

まるで何十もの石をぶつけられたような痛みが背中を襲う。痛みに歯を食いしばりながら、口から血が零れながらも、僕は二人を守ろうと耐える。

 

「はい、やめぇ」

 

その言葉を合図に魔力弾の雨が止んだ。僕は身体中の痛みに呻き、そのまま膝をついてしまう。

 

「惜しかった、あーあ、惜しかったなぁ!吃驚玉をしかけたら見事に引っかかってくれたのに、まさか身を盾にするなんて予想外、てかアホ」

 

僕の姿に魔法使いは笑う。

 

「てかマジでアホでしょ。人は自分の身が一番かわいいってのに、そんなことしてお前になんかメリットでもあるの?」

 

僕は聖魔剣を杖にして、何とか自分の身体を立たせる。

 

「お?立つの?立っちゃうの?凄いね、そのまま寝てたら、短い寿命がほんのちょっぴり長くなったのに」

 

「それは無理だよ」

 

僕は彼女を憐れに思う。自分でもよく解らないけど、僕は彼女が可哀想に思えてしまった。自分しか信じられない彼女に。

 

「僕はリアス・グレモリーの『騎士』だ。グレモリーは眷属を、家族を大切にする。そして騎士は皆を守るのが役目。だから僕は、僕の後ろにいる大切な二人を守る。悪いけど、負ける気はしないよ」

 

「は?なにそれ?なにその目。お前今、私を憐れむ目をしてるよね?ふざけんなよ、ふざけんなよ!私は強いんだ!誰よりも優れてるんだ!そんな私を、憐れむような目で見るんじゃねぇ!」

 

先ほどまでの態度とは一変、まるで取り繕うことも忘れ、魔法使いは両手を突出した。その両手の先に、魔法陣が出現する。その姿に彼女の周りも慌てだす。

 

「ま、待ってください、リーウィア様!その魔法では私たちまで巻き込まれてしまいます!」

 

「は?知るかよ。こいつだけは、私を憐れんだこいつだけは!今ココで潰さないと私の気が済まないんだよ!お前等が死のうが私の知ったことか!」

 

その言葉に、彼女の周りにいる魔法使いたちはパニックに陥りだす。その間にも、魔法陣の光は強くなりそして、

 

「くらえ!星光の破壊こ」「させるかぁ!」「なっ!?」

 

リーウィアと呼ばれた魔法使いの後ろ、つまりオカルト研究室の扉から何かが躍り出た。

それは周りの魔法使いをなぎ倒し、一直線にリーウィアに向かう。茶色の髪に駒王学園の学生服、そして左手には真っ赤な籠手。それはまさしく・・・

 

「イッセーくん!」

 

そしてイッセー君は、そのままリーウィアへと飛びかかる。リーウィアの方は、唐突な乱入のせいで動けない。が、イッセー君の目の前に防御障壁を展開する。

 

「馬鹿が!その程度の不意打ち、私にかかれば・・・!「こっちがお留守だよ」しまっ!?」

 

イッセー君に気を取られたリーウィアの隙を突き、僕は彼女へと接近する。ローブから零れた彼女の目は、酷く濁っていた。まるで聖剣に執着していた僕のように。

 

「悪いけど、二人を危険な目に合わせた君を僕は許さない」

 

「糞糞糞糞、くそがぁ!そんな目で、そんな目で私を見るなぁ!」

 

そして僕は、彼女に向けて聖魔剣を振り下ろした。

 

「私を、見ないで・・・」

 

彼女の身体から赤い花が咲いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ことな先輩!ことな先輩!」

 

呆然としている夢殿さんを、小猫ちゃんが揺する。時間停止が解除された後、僕はイッセー君や部長、そしてギャスパー君から事情を聞かされた。なんでも、和平会談を狙った『禍の団』が襲撃をしてきたらしい。そのためにギャスパー君を利用したとか。ギャスパー君を救出するために、イッセー君と部長が部室に転移してギャスパー君を救出。そして外の声が聞こえ、慌てて飛び出したとか。

 

 

「しっかし、ひっどい姿だな」

 

「あはは、でも名誉ある姿だよ」

 

ボロボロの制服を着ている僕の姿にイッセー君は言う。まあでも、着ているよ言うよりは襤褸を纏っている方が正しいのかもしれない。

 

「取りあえず、俺たちは部室の魔術師たちを冥界に送ったら校庭に出るつもりだ。二人はどうするんだよ?」

 

「僕は先に夢殿さんを会議室に連れて行くよ。夢殿さんには悪いけど、そっちの方が安全だと思うから」

 

「なら玄関口で集合しましょう。バラバラで外に出るよりもその方が良いわ」

 

そう言うと、部長やイッセー君、ギャスパー君は部室へと戻っていく。僕は廊下に倒れている魔法使い達を見る。僕がリーウィアを切った後、混乱する彼らを僕たちは斬った。途中で気が付いた小猫ちゃんも参戦し、瞬く間に鎮圧が出来た。そして生きている魔法使い達を部室へと移動させたけど、ふと僕は気付いた。

 

「リーウィアがいない?」

 

彼女が倒れているであろう場所には、既に彼女の姿は無かった。おそらくは、まだ辛うじて生きていて、混乱の際に脱出したのだろう。

僕は直ぐに頭を切り替え、夢殿さんと小猫ちゃんの方へと駆け寄った。

 

 

 

 

 

 

「小猫ちゃん、夢殿さんは!?」

 

僕は廊下で座り込んでいる夢殿さんへと向かう。小猫ちゃんは僕を見ると「大丈夫です、気が付きました」と答えてくれた。

 

「木場さん?どうしてそんな恰好・・・」

 

まるでまだ夢心地な顔の夢殿さんに少し苦笑するが、取りあえずは会議室まで戻らないと。

僕は夢殿さんを立たせると、はぐれないように手を繋ぎ、会議室へと戻る。その間、僕と小猫ちゃんは、夢殿さんに事情を説明する。

 

「そんな、どうして、なんで・・・」

 

信じられない顔でぶつぶつと呟く夢殿さん。この状況は彼女にとっては混乱するのに十分なことだ。僕と塔城さんは落ち着くように夢殿さんに声をかけながら、速足で会議室へと向かう。

 

窓から外を見れば、『禍の団』らしき魔法使いと三大勢力の悪魔、天使、堕天使が戦っている。それに堕天使総督が誰かと戦っているのが見える。相手は褐色肌の悪魔なんだけど、その姿は異質だった。

 

その四肢は鱗に覆われ、背中の翼は片方が悪魔の翼で、もう片方が別の翼だった。その頭からは二本の角が突出し、後ろには鱗に覆われた尻尾が見える。そしてサーゼクス様やセラフォルー様にも引けを取らない魔力のオーラ。そのオーラの中に感じる、悪魔とは異なるもの。

 

「龍?」

 

そうだ、堕天使総督と対峙している悪魔は、まるでイッセー君や白龍皇のように、龍のオーラを纏っているんだ。翼も龍の翼だとようやく気付いた。でも今は、早く夢殿さんを連れて行かなきゃいけない!

頭を振って意識を戻し、僕と小猫ちゃんは夢殿さんを引っ張る。

 

もう少しで会議室が見えてきた時、突然夢殿さんが足を止めた。

 

「ことな先輩?」

 

突然のことに僕たちは戸惑う。

顔を伏せた夢殿さんは頻りに何かを呟いているが、声が小さすぎて聞こえない。僕は嫌な感覚がした。このままだととんでもないことが起きる思った。

 

「夢殿さん!夢殿さん!しっかりするんだ!」

 

何故か、僕は夢殿さんの方を掴み揺さぶる。だが夢殿さんは何も反応しない。それよりも嫌な予感がどんどんと大きくなっていく。まるで何かが這い上がってくるような、空けてはいけない扉がゆっくりと開く様な、そんな感じがしたんだ。

 

「駄目だ夢殿さん!意識をしっかり持つんだ!」

 

そして僕は、夢殿さんの顔を見て言葉を失った。彼女の目に生気が無かった。無機質な眼が僕を見据えていた。そして彼女の足元から黒い靄が溢れだす。それは際限なく溢れだし、地面を這うように広がっていく。

 

「祐斗先輩!」

 

小猫ちゃんの方を見ると、彼女も僕と同じように黒い靄に足元を取られている。

 

「夢殿さん!」

 

僕は声を上げて彼女の名を呼んだ。だが彼女は僕の方に顔を向けず、その一歩を踏み出した。

 

『一緒に往こう』

 

そして僕は意識を失った。




カテレア・レヴィアタンは進化した!カテレア・レヴィアタンに無限龍の加護が付いた!
夢殿ことなは怒った!友達の力がぐーんと上がった!

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