ハイスクールD×D イマジナリーフレンド   作:SINSOU

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21話

「ことなちゃーん!こっちこっちー!」

 

私の姿を見て、満面の笑みで手をブンブン振る舞ちゃんを見つけた。

時折ぴょんぴょんと跳ぶ姿に、私は『舞ちゃん楽しみだったんだなあ』という感想を抱いた。

私はクスリと笑いつつ、待ちあわせ場所の時計の下で跳ねる舞ちゃんに駆け寄る。

 

「ごめんね舞ちゃん。急な話なのに、来てくれて」

 

「そんなことないよ。久々にことなちゃんと買い物に行けるんだもん。

 私、あまりに興奮過ぎてぐっすり寝れたんだから!」

 

えへへと笑う舞ちゃんに、私も自然と笑う。

 

舞ちゃん、ぐっすり寝れたんだ。私はあまり眠れなかったんだけど・・・。

 

そう思いつつ、私は舞ちゃんの元気溌剌な姿に苦笑もする。

私とは違い、元気の塊な舞ちゃんの姿は、私にとってなくてはならないものだ。

もちろん、舞ちゃん自身も。

 

「それじゃいこっか!」

 

そう考えていると、舞ちゃんが私の手をぎゅっと掴む。

そのまま手を掴んで走る舞ちゃんに連れられ、私はショッピングモールへと足を踏み入れた。

 

「待って、ちょっと足が速いよ舞ちゃん、待って待って待ってぇぇぇぇぇ・・・」

 

私は半ば引き摺られていった。

 

 

 

ここは駒王町にあるショッピングモール。

いつも私が食材などを買いに行く商店街と違い、ここは日用品や衣服などの店が軒を連なっている。

私自身は、こういったおしゃれな所に来ることはあまりない。

むしろ、商店街のような雰囲気の方が好きだ。気を張る必要のない、慣れた場所だからだろうか?

でも、時折舞ちゃん等に連れられ、こうしてここに来ることもある。

最初の時は、あまりの緊張に身体が油のきれた人形のようにガチガチだったのを覚えている。

 

「ところで、ことなちゃんは何をご所望ですかね?」

 

隣で歩いている舞ちゃんが私に尋ねる。私は指を頬に当てて暫し考える。

 

「お世話になってる人に何かお礼がしたいの。それで何か贈り物が良いかなって」

 

「ほほう?それは一体誰なのかなー?もしかしてー?」

 

私の言葉に、ニヤニヤ顔の舞ちゃん。

 

「えっと、舞ちゃんが思うような人じゃないよ?単なるお礼だから、お・れ・い」

 

私の言葉に、舞ちゃんは「ふーむ」と言いたいことはあるけど、半ば納得したように口を閉じた。

が、次に満面の笑みを私に向ける。

 

「それってもしかして、木場さんのことかにゃー?」

 

「ぶっ!?」

 

舞ちゃんの言葉に、私はステーンと地面に倒れた。

 

「ななななななななな、舞ちゃん!?急に何を言ってるの!?違うから!木場さんじゃないから!」

 

「えー?そうなの?てっきり、欠席してた時のお礼だと思ったんだけどなー?」

 

私は、顔真っ赤にしながら舞ちゃんに詰め寄るも、舞ちゃんの言葉に一瞬呆ける。

そして更に顔を真っ赤にして「そう!そうなの!それなの!あと塔城さんにもね!」と捲し立てた。

 

「はいはい、そう言うことにしておいてあげるね?」

 

私を笑顔で見てくる舞ちゃんの姿に、私は頬を膨らませた。

 

「ごめんごめん、あとでクレープを奢るので、それで機嫌を直して、ね?」

 

「・・・チョコバナナミルフィーユ、トッピングにアイスもつけること」

 

「心得ました、お嬢様」

 

そして私と舞ちゃんは、堪えきれなくて一緒に笑う。

アハハと笑う舞ちゃんの姿に、私は笑い声が漏れないよう、口を押えて笑う。

これが私の大切な時間なんだ。

私は改めて実感する。これが私の大切な時間なんだ。私の大切な世界なんだ。

 

だから私は思う。絶対に壊させない、と。

 

 

 

 

 

 

「いやー、久々の買い物は疲れたね。ね?ことなちゃんや」

 

「お礼の品を買いに行くからって、じゃあ小物なんて良いんじゃない?と言って、

 お店を何件も梯子したらそりゃ疲れるわよ」

 

ショッピングモールにある公園の噴水で、私たちはベンチに座っていた。

舞ちゃんはベンチで半ば解けたアイスのようにぐでーとしている。

あれから私たちは、お礼の品を買いにいくつもの店を見て回った。

流石ショッピングモールと言うべきか、小物やアクセサリーだけでも何件もあり、

私たちはそこをぐるぐるとまわっていたのだ。

 

ああでもないこうでもないと、各々の店の品を物色する姿は、

まさに獲物を狙う肉食動物だったのではないだろうか?

 

「でも良かったね、目的の物が買えて」

 

「うん、今日はありがとね」

 

包装紙に包まれた小箱の入った袋を見ながら、私は舞ちゃんに礼を言う。

 

「私はことなちゃんと友達だからね?困っていたら、助けるのが当たり前なのですよ。

 だからことなちゃん、困っていたら私に相談すること。いい?」

 

私に笑顔を向ける舞ちゃんに、私は「解ってるよ」と言いつつ、胸がちくりと痛んだ。

 

「それで、今から木場さんと塔城さんと一緒にデートだっけ?このこの~」

 

「だからデートじゃないって言ってるでしょ!ただのお礼だから!お、れ、い!」

 

また茶化しに来る舞ちゃんに私は怒る。

そうして少し時間が経ち、舞ちゃんがすくっとベンチから立つ。

 

「それじゃ、また学校で。あと無理はしないこと!いい?」

 

そう言ってベンチから離れようとする舞ちゃんを、私は呼び止める。

そして首を傾げる舞ちゃんに駆け寄り、小さな包装紙に包まれた箱を渡す。

 

「はいこれ、舞ちゃんのプレゼント」 

 

「え?」

 

私の言葉に、舞ちゃんは少し言葉を詰まらせる。そして呆けたままの顔で、私のプレゼントを受け取る。

実は店を回っている際、こっそりと買っておいたのだ。正直、本当はこれが本当の目的だったりする。

 

舞ちゃんは、受け取ったプレゼントと私の顔を何度も見返す。

そして、ようやく理解したのか、私をがばっと抱きしめた。

 

「ちょっと舞ちゃん!?」

 

「ごとなぢゃーん!!やっばりわだじはごどなぢゃんのどもだぢでよがっだよー!」

 

そのまま大声で泣き出す舞ちゃん。

その姿に、私はぎゅっと抱きしめ返しつつ、「私もだよ」と返した。

私も、舞ちゃんの友達で本当に良かった。

 

 

「えっと、あれは一体どうしたのかな?」

 

戸惑う声に私は現実に戻された。

 

「あれって、もしかしてことな先輩じゃないですか?」

 

次に聞こえた声に、私は顔が真っ青になった。

泣いている舞ちゃんをそのままに、私は首だけをぎちぎちと動かすと、

そこには待ち合わせの時間にやって来た木場さんと塔城さんが、遠目で私たちを見ていたのだった。


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