ハイスクールD×D イマジナリーフレンド   作:SINSOU

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20話

「どうして、木場さんと塔城さんが私の家にいるんですか?」

 

私は、木場さんと塔城さんがいることに頭が追いつかず、ただ疑問を零した。

私の言葉に、木場さんは少し口元を歪め、塔城さんの方を見た。多分、苦笑いなのかもしれない。

塔城さんの方も、何を説明すればいいのかと悩んでいるようで、

無表情ながらもどこか落ち着きのない雰囲気が漂っている。

 

何故かと思いつつも、私は今の現状を反芻してみる。

確か、私はあのまま学園で気を失ってしまったのだが、目を覚ませば自分の家にいた。

そして木場さんと塔城さんが私の部屋にいる。

ということは、二人が私を家まで運んでくれたのかな?

だったら、二人にお礼を言わなきゃいけない。

しかし、なぜ二人は私から頻りに目を逸らそうとしているのかな?

そんな二人を一瞥し、私は自分の身体の方を見る。

 

不思議なことに、私はあの時のパジャマとは別のパジャマを着ていた。

ピンクの生地に白い水玉模様のパジャマを着ていたはずなんだけど、

それが黄土色の生地に青いチェック柄のパジャマになっている。

私はチラリと二人を一瞥し、そしてもう一度パジャマを見、そして再び二人を見る。

木場さんも塔城さんも、顔を赤らめているからして、私はそう言う事かと気付いてしまった。

 

「エッチ」

 

私の言葉に、二人は全力で首と手を横に振り、

私に「誤解だよ!」「そうです、これは訳があるんです!」と言い訳する羽目になった。

そしてどれくらいの時間が経ったのだろうか、

二人が疲れはじめた頃を見て、私は話を切りあげることにする。

 

「まぁ、お二人が私の身体に興味を持っていて、寝ていて抵抗も出来ない無防備な私を、

 お二人がその手で好き勝手に弄っていたという衝撃の事実は横に置きましょうか」

 

私の言葉に、二人は「違うんだ・・・」「そうじゃありません・・・」と項垂れる。

その姿に、私は少し意地悪をし過ぎたかなと思い、苦笑を交えつつ謝罪をする。

一安心したのか、ほっと溜息を吐く二人の姿に、

私は彼らの知らなかった一面を知れたのかもしれない。

そんなことを思いつつ、私は二人にお礼を言う。

 

「木場さん、塔城さん、私を家まで運んでくれて本当にありがとうございます」

 

予定外のことで話が逸れたが、私はこの二人に助けられた。

それは本当に感謝してもしきれないこと。

取りあえず、お二人にはお茶とお菓子を出さなきゃ。

そんなことを思い、私はベッドから身体を起こそうとするが、未だに身体が重い。

何とか上半身だけでも起こそうとするも、まるで水の中を動くような感覚が身体を襲う。

 

「夢殿さん!?」

 

布団の中でジタバタする私に気付いた木場さんが、慌てた様子で私を支える。

 

「木場さん、ありがとうございます。

 出来れば、このまま起き上がりたいのですが、もう少し支えて貰っても良いですか?」

 

私はこのまま上半身を起こそうと、鈍い身体に鞭を打つ。

そんな私の姿に塔城さんも慌てたらしい。

 

「駄目ですよ、ことな先輩。先輩は今起きたばかりなんですから」

 

そう言うと、塔城さんは木場さんに私を寝かせるように言い、

木場さんはそれに従い、私は再びベッドに横になった。

 

「お二人には、色々とご迷惑をかけてすみません」

 

起き上がるのは止めて、私は二人に礼を言う。

 

「いや、礼を言うのは僕たちの方だよ。

 それに、僕たちの方こそ夢殿さんに謝らなきゃいけない」

 

木場さんは、私にお礼を言いつつも、申し訳なさそうな顔をする。

塔城さんの方も、何かしら複雑そうな顔をしていた。

 

「ことな先輩に町を守ると言ったのに、私たちの力不足で町を危険な目に晒してしまいました。

 そのことで、ことな先輩を不安にさせてしまって、本当にごめんなさい」

 

ぺこりと頭を下げる二人に私は慌て、二人に頭を上げるように言う。

 

「何はともあれ、町に被害は無かったんですから、結果オーライです。

 終わりよければすべてよし、ですよ」

 

そう、結果から言えば町に被害は起きていない。私にはそれだけで十分だった。

 

その後、私は二人からその後のことを聞かされた。

今回の件によるものか、教会から聖剣事件ついての謝罪があったとか。

とりあえず、木場さんの心が救われるきっかけになってほしいと思う。

私自身、木場さんを救いたいと思っていたのは正直な気持ちだ。

 

「これで犠牲になった同士たちも、少しは救われるかもしれない」

 

そう言った木場さんの顔は複雑そうながらも、憎しみに染まった黒い影が見えなくなっていた。

その顔が木場さんの本当の顔なのかもしれない。

 

次に、ゼノヴィアと名乗っていたエクソシストが、リアス先輩の眷属になったらしい。

私は知らなかったけれど、コカビエルから神の死を聞かされ、それを教会に問いただしたようだ。

その結果、教会から危険視されそのまま異端として追放。

信じる者に裏切られて自棄をおこした彼女は、そのまま悪魔になってしまったとか。

彼女なりに決めたみたいだけど、私としては流されてしまったように思えた。

アーシアさんを斬ろうとした彼女の姿を思い出すと、『呆気ないものなんですね』とも。

 

そして今回、駒王町を巻き込んでの事件の結末。

 

今回の事件はコカビエルの単独によるもので、堕天使側としては寝耳に水だったらしい。

そのため、早急に収拾をつけるために出てきたのが、あの白い鎧だっとか。

堕天使側としては、三すくみを壊してまで戦争を再開する意図は無いとのこと。

それを実行しようとしたコカビエルは、堕天使のトップにより、

地の底で永久に氷漬けの刑に処されたのこと。

これが、事件の顛末であり結末。

正直、納得できると言われれば難しいというのが、私の感想でしかない。

そして堕天使側から悪魔と天使側に、それらを含めて会議を開きたいとと打診されたみたい。

事件の関係者として、事件に関する報告のためにも、リアス先輩たちが招かれているらしい。

 

「それで、夢殿さんもその場に出てほしいみたいなんだ」

 

「なぜですか?」

 

私は木場さんに尋ねた。

木場さんも塔城さんの顔は、少し強張っているように見えた。

 

「ことな先輩も、あの事件の関係者という立場なんです。

 コカビエルと戦ったことな先輩が、ある意味で話題の中心になっていて・・・」

 

私の視線から目を背けながらも答える塔城さん。

その姿には、何かしら怯えのようなものが見え隠れしているように感じた。

 

「そうですか」

  

その後、会話はきっぱりと途絶え、長い沈黙が訪れた。

カチカチと部屋に置かれている目覚まし時計の音が、鮮明に聞こえるほどに。

二人の方を見ると、二人とも何か複雑そうな顔をしている。

何か言いたいのに、それを言っていいのか判らない、口元が動くも、直ぐに真一文字に結ぶ。

言いたいことがあるならはっきりと言って欲しいと私はそう思いつつも、

私を気遣ってなのか、悩んでいる姿を見ると、それが二人の優しさでもあることも理解した。

だからこそ、私から先に訊くことにした。

 

「『友達』のことを聞きたいんじゃないんですか?」

 

二人の顔は、不意打ちを食らったかのように驚いていた。

 

「木場さんも塔城さんも、本当に優しいですよね。

 二人とも私のことを思っていて、どうすればいいのか迷っている姿が解っちゃうんです」

 

私は笑う。

 

「多分ですけれど、『友達』ついて私に訊くように、リアス先輩から言われていませんか?

 私を思ってくれるのは嬉しいですが、正直に答えてください。」

 

私の言葉に、二人は何かしら言い返そうとするも、黙って首を縦に動かした。

 

「正直に答えてくれてありがとうございます。

 そうですよね、私も肝心なことは言っていませんでしたからね。

 そのことについては、私も謝らなければいけません。黙っていてごめんなさい」

 

私は身体を木場さんと塔城さんに向け、頭を下げる。

 

「これから二人に話すことは、私の『友達』についてです。

 でも、それだけだと理解され難いと思いますので、私のことについてもお話します」 

 

私の言葉に、二人の目が少し鋭くなった。

その視線を受けながらも、私は幼少の頃を語った。

 

 

幼少の頃の私のこと。忙しい両親の下で暮らしていた私。

一人で過ごしていた私の前に現れた『友達』のこと。

『友達』と一緒に遊ぶようになったこと、

幼少期から順に、時折私のことを織り交ぜながら、私は『友達』について語る。

 

・友達は、私が許可をしない限り私以外には見えない。

・見えない時の友達の行動範囲は、私から精々3メートルほど。

 その際は私の身体から手だけが出ていて、その手で物を持つことが出来る。

・基本的に、『友達』は私を守ることを優先する。

・許可を得て出てきた場合は、自分の意志を持つかのように行動する。

 その目的は、私にとって危険なものを排除するように動く。

・『友達』を出した場合、私自身の感情が抑えられない。

・『友達』を呼び出した後は、しばらくの間倦怠感に襲われる。

 

そういったことを簡単に説明していると、木場さんが手を挙げる。

 

「夢殿さん、その感情が抑えられないっていうのは・・・」

 

「言葉通りの意味ですよ。『友達』を出すと私、感情が抑えられなくなるんです。

 多分、二人とも見ていたと思います」

 

私の言葉に、二人はあの時のことを思い出したのだろう、顔が強張る。

 

「でも安心してください。二人は私の大切な人たちです。

 オカ研の皆さんも、まいちゃんもクラスの皆もそうです。

 この町の人はみんな、私にとって本当に大切なんです。

 だから、『友達』には絶対に手を出させません。それは私が約束します」

 

二人に気を使って笑ってみた。

 

「だから、安心してください」

 

その時の私は、上手く笑えていたのだろうか?正直、今でもよく解らない。

でも、二人が安堵の溜息を吐いたことで、良かったと思う。

 

「それで夢殿さん、その、力を使った後の倦怠感って言うのは?」

 

「それは私にも、正直よく解りません。

 ただ、『友達』を呼び出した後は酷い疲れに襲われるんです。

 酷い場合はそのまま眠ってしまい、気付けばずっと眠っていたこともあります」

 

「もしかすると、それは力を使った反動なのでしょうか?」

 

「おそらくはそうでしょうね。なので、正直やたら目ったら『友達』を使いたくはないんです。

 それに・・・」

 

私は口を紡ぐ。

 

「それに?」

 

「いえ、大したことではないんです。ただ、可哀想だと思うんです、『友達』が」

 

「可哀想・・・ですか?」

 

塔城さんが首を傾げる。

 

「『友達』は幼い頃からずっと、私の大切な友達なんです。

 それを、かっとなったからって、私を守るためだからって、暴力は駄目だと思うんです。

 自分勝手なことですが、そんなことのために、『友達』を利用したくないんです」

 

私の言葉に、二人は何かを言いかけて口を噤んだ。

 

「なので、正直に言います。自分勝手とは解っています。

 あくまで、人のために、町を守る為に使うなら、『友達』も解ってくると思います。

 ですが、『友達』を暴力に使えと言われた場合、私はそれを受けるつもりはありません。

 そのことは、リアス先輩にも伝えてください」

 

私は二人を射抜くような目で見つめた。

 

「解った。今言ったこと、ちゃんと部長に伝えておくね」

 

「ありがとうございます」

 

私はぺこりと頭を下げた。

 

その後、重くなった雰囲気を変えようと、

いつごろ復帰できるのか、オカルト研究部に来れるのかと、

なんとも他愛のない会話をしていると、塔城さんが声をあげた。

 

「それでことな先輩、約束の件なんですけど・・・」

 

「約束・・・?」

 

首を傾げる私に対し、塔城さんはじっと見つめてきた。

 

「誤魔化さないでください。私に『カデンツァ』のスペシャルパンケーキを奢ることです」

 

「ああ、そうでしたね」

 

じっと見てくる塔城さんの視線を受けつつ、私は何とか思い出した。

正直、今の今まで頭の片隅に追いやっていたのは黙っておこう。

 

「少し気分転換ではないですけど、今度の週末に行きませんか?

 ことな先輩も何かと大変だっと思いますし」

 

「そうですね、週末に予定はありませんし、大丈夫ですよ。

 それに、お礼はきっちりするのが、私の家訓ですから」

 

「それ、僕も参加していいかな?」

 

唐突な木場さんの言葉に、私は彼の方を向く。

木場さんは少し恥ずかしそうに顔を赤らめつつも、咳払いを一つ。

 

「今回の事件で将来のことを考えようと思ってね。

 それで参考までに、もう一度ケーキに行こうと思っていたんだ。駄目かな?」

 

頬を掻きながらもこちらを見てくる木場さんに、私は少しくらっとしかけた。

なんだろう、可愛い。

 

「驕れませんよ?」

 

そんなことを誤魔化そうとして吐いた言葉に、二人は苦笑いをしていた・・・。

 

「お大事にしてください」

 

「それじゃ、また明日来るね」

 

二人を玄関まで見送った後、私は今のソファにどさりと腰を下していた。

二人の前では気丈に振舞っていたけれど、まだ体が重い。

今の今まで、これほどまでに身体が重く感じたことは無かった。

そして身体の重みと同じように、頭も重く、眠い。

取りあえず、大事を取って明日は休むとしよう。

 

そんなことを考えつつボーっとしていると、玄関のチャイムが鳴った。

 

「ことなちゃーん!大丈夫ー!?まだ寝てるー!?」

 

声の主は、まいちゃんだった。


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