ハイスクールD×D イマジナリーフレンド   作:SINSOU

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多分、修正すると思います。


19話

『誰ですか?』

 

私は乱入してきた白い鎧に目を向ける。

背丈の大きさからして、私よりも高いことは確かだ。

声からして・・・男の人なのかもしれない。もしかしたら女の人かもしれない。

でも、今の私にはどうでもいい。

 

私はそれを一瞥すると、再びコカビエルへと目を移す。

ボロボロのコカビエルが、口からゲホゴホと咳き込み、紅い液体を漏らしている。

その姿は、見る人からすれば目を逸らしてしまうか、救急車を呼んでしまうだろう。

 

でも、彼はまだ謝っていない。だから私は、まだ許せない。

だから私は、三度目のお願いをする。

 

『コカビエルさん、お願いだから反省の言葉を言ってください。

 もう一度言いますが、もし貴方が反省してくれるなら、私はこれ以上は何もしません。

 幸い、怪我とかしましたけど、この町は、大切なみんなは無事だったんだから』

 

私は安心させるために、口元に笑みの形にする。

でも、肝心のコカビエルは口を歪めて笑う。

 

「舐めるなよ小娘。俺は俺のために動いただけだ。

 たかが矮小な人間がいくら死のうと、俺には知ったことか!」

 

それでもコカビエルは笑う。見るからにボロボロだと言うのに、それでも謝らない。

 

『そうですか』

 

その言葉に、私の心は更に冷えていく。

私の心に呼応するように、『友達』の右腕が振り挙げられ、

 

「それは困る」

 

その声が聞こえると、突然私の身体が後ろへと跳んだ。

後ろへと下がっていく私が見たのは、数秒前にいた私の場所を、白色の光が薙ぎ、爆発音。

横を見れば、『友達』が私を抱きかかえていた。

もしも『友達』がいなかったら、私は今の光に呑みこまれていたのだろう。

 

「俺はアザゼルから、こいつとフリードを回収するように言われているんでね。

 フリードには聞きたいこともあるらしいしな」

 

見れば、乱入した白い鎧が、コカビエルの前に立っていた。

まるでコカビエルを守るかのように、私の目の前に立ちはだった。

 

『どいてください。私はそこの人に用があるんです。まだ謝罪を聞いていないんです』

 

「悪いが諦めてくれ。俺はさっさとこいつらをアザゼルに持っていかなきゃいけないんでな」

 

白い鎧の声は、どうでもいいように答えた。

 

 

なんで

 

『ことな、誰だって間違いは犯すものだ。

 そこから反省して、もう間違えないことが大切なんじゃないかな』

 

『じゃあ、おとうさんはどうして、いっつもおそくかえってくるの?

 わたし、おかあさんとずっとまってるんだよ?』

 

『そ、それはだな、えーっと、ごめんなさい』

 

『あらあら、お父さんも反省しないとね』

 

『母さん・・・、えっと、参ったなぁ・・・』

 

チラリと見えた、幼かった私の記憶。

 

 

 

『あれはどうしようもない事故だったんだ。

 それに誰かを恨んだところで、君の両親はもう・・・』

 

『なんで、もうおとうさんとおかあさんはかえってこないの?』

 

そして

 

『俺は悪くない!そうだ!あれは事故だ!俺だけのせいじゃない!

 お前等だって悪いんだ!そうだそこのお前!

 お前の父親が注意してればこんな事にはならなかったんだよ!』

 

あの時の記憶

 

 

 

『なんで・・・』

 

私の言葉は無意識に呟く。

 

 

なんで

 

なんで、なんで

 

なんでなんでなんで!

 

なんでなんでなんでなんで!!

 

なんでなんでなんでなんでなんでぇ!!!

 

『なんで謝ってくれないんですか!なんでそうまでしてそいつを庇うのよ!

そいつは私から大切なものを奪おうとしたんだ!罪を自覚もしない!

 だったら誰かが自覚させなきゃダメだろ!もういい加減にしてよ!』

 

私は頭を抱えて大声を上げる。

反省しないと、私はそいつを許せない。なのに、そいつは反省する気もない。

あろうことか、乱入者はそいつを庇う。

 

なら、私の気持ちはどうなるの?

私の気持ちはどうすればいいのよ?

 

許せない

許せない、許せない

許せない許せない許せない!

 

絶対に許さない!!

 

『ああああああああぁあぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁ!!』

 

「夢殿さん!?」

 

私の叫びが木霊する。私の叫びに、私以外が戸惑う。私の叫びに、『友達』が動く。

 

「ほう、面白い」

 

『友達』が白い鎧へと駆けだし、右腕を振り挙げて叩き付けた。

まるで金属同士が衝突したような音が響く。

 

「良い一撃だ。確かにコカビエルに傷を負わせられる位はある」

 

けれど『友達』の腕は、白い鎧の右手だけで止められた。

 

「だが足りん」

 

そのまま握った手を後ろへ下げたことで、腕を握られていた『友達』がバランスを崩す。

白い鎧は、その隙を突くように、左腕で『友達』を殴る。

その瞬間、『友達』の下半身が千切れ飛んだ。

 

『だから何ですか?』

 

私の声に、『友達』の残った上半身が、白い鎧を掴む。

 

「何をする気だ?」

 

『こうするんですよ』

 

私は腕を振るう。

それを合図に、『友達』の上半身から、剣山の如く突起物が出る。

 

『串刺しになってしまえ!』

 

至近距離の串刺しだ。多少なりとも傷を付けられればそれでいい。

だが私の予想を裏切るように、白い鎧は健在。

『友達』の上半身は地面に倒れている。

 

「咄嗟のことで驚いたが、鎧を貫くには至らなかったようだな。

 まあ、始めの時にくらっていたら、あるいは危なかったかな?」

 

『だったら!』

 

私は次の手を考え、それを実行しようとして・・・

 

『あれ?』

 

地面に倒れた。なんでだろう。力が入らない。

必死に身体を起こそうとしているのに、身体に力が入らない。

まるで身体が海月のようになったみたいに、必死に力を込めても動かない。

同時に、大地を黒く覆っていた影が、私へと戻っていく。

 

『なんで?どうして身体に力が入らないの!?』

 

「俺の神器の効果さ」

 

私の疑問に、白い鎧が答える。

 

「俺の神器『白龍皇の光翼』の力の1つさ。

 俺が相手に触れると、十秒ごとにその力を半減させる。そしてその力は俺の糧になる。

 どうやら俺の神器の効果は、あの黒い存在ではなく、お前の方に行っていたようだ」

 

白い鎧い覆われた顔は、私をずっと見ている。

 

「俺の名はアルビオン。そこにいる赤龍帝と対をなす二天龍の一角、白龍皇だ」

 

そう言うと、アルビオンは私を背を向けて、倒れているコカビエルと神父へと進む。

 

「それにしても興味深いな。

 腕や足が引き千切られていたはずだが、どういう訳か元に戻っている。

 まあ、死にかけではないことには、助かったがね」

 

そしてそのまま、ボロボロのコカビエルと白髪の神父を担ぐ。

私は必死に身体を動かそうとするが、私の身体はいう事を聞いてくれない。

 

「おい待てよ!」

 

なんとか視線だけを動かすと、兵藤がアルビオンに突っかかっていた。

 

「急に出てきたと思ったら、お前は一体何なんだよ!というか、何してくれたんだよ!

 お前のせいで、俺は部長の乳を・・・!」

 

なんだろう、最後の言葉が聞こえない。

それになんだろう、視界に靄がかかったようにぼんやりしてきた。

その後も、なにやらアルビオンと兵藤が何か言いあっているが、頭に入ってこない。

それでも私は、必死に声を出す。

 

「待って・・・よ!私は・・・ま、だ!」

 

それでも私は、アルビオンを捕まえようと手を伸ばす。

待ってよ、私はまだ、コカビエルからごめんなさいを聞いていない。

そうしないと、私は彼を・・・。

 

「それしても、赤龍帝だけじゃなく、随分と面白い者がいたものだ。

 案外、思いのほか楽しくなりそうだ」

 

そう言って、アルビオンは背中の光翼を開き、光となって空へと飛んで行った。

そして私の意識は、真っ暗に落ちていった。

 

 

 

 

ごめんなさい

 

私は目の前でボロボロになっていくコカビエルに謝っていた。

 

ごめんなさい、ごめんなさい

 

私は、真っ赤に染まっていく私の手を見ながら、自分の行いを見ていた。

 

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい

 

痛みに叫ぶ声に耳を塞ぎたくなるが、身体がそれを許さない。

 

ごめんなさいごめんさないごめんなさいごめんなさい

 

ボロボロになっていく『友達』に私はただ謝るしか出来なかった。

私のせいで、私のせいで!『友達』が傷つき、したくもないことをさせてしまった。

 

真っ赤に染まった手で顔を覆い、私はただ謝るしかなかった。

 

そして『友達』が私の前に現れて・・・。

 

 

・・・め・・・の・・・ん!ゆめ・・・・・・ん!

 

「夢殿さん!」

 

誰かの声で、私は意識を取り戻した。

私の目の前に広がるのは、白い天井と電灯。

でも、それは病院でなく、毎日見ている天井と電灯で・・・。

 

「あ・・・れ?なんで私・・・部屋にいるの・・・?」

 

私の頭はまだ靄がかかったかのようにぼんやりしていた。

確か、私は駒王学園に走って、そして・・・。その途端、私の猛烈な吐き気に襲われた。

 

そうだ、私はあそこで傷つけた。泣き叫ぶ相手を何度もいたぶった。

徹底的にいたぶり続けた。その感触が私の手に残っている。

 

胃の中の物が出かけ、必死に両手で口を覆う。

すると、誰かが私の背中をさする。

どれだけ続いたのだろうか、ようやく落ち着いた私は、背中をさすってくれた誰かに目を向けた。

 

「落ち着いたかな?」

 

そこにいたのは、

 

「落ち着きましたか?」

 

木場さんと塔城さんだった・・・。


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