ハイスクールD×D イマジナリーフレンド   作:SINSOU

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15話

協力関係を結んで数日後、俺たちは暗礁に打ち上げられていた。

いくら探しても、一向に足取りがつかめない。

フリードの野郎は、神父を狙っているということで、

神父に化けて歩いているものの、一向に襲ってくることはなかった。

あのクソ神父、さっさと出てきて木場にエクスカリバーを折らせろ。

そう思うも、気持ちだけが空回りしていた。

 

そして昨日のように収穫無いと思い、気をゆるんだ瞬間、

 

「死ね」

 

強烈な殺意が上から襲ってきた。

鋼と鋼がぶつかり、激しい音が響く。

 

「フリード!」

 

「へぇ、これはこれは一誠君じゃないですかぁー。

 これは運命的な出会いですねー?ぶっ殺してもいい?」

 

相変わらずふざけた言動のイカレ野郎だ。俺は纏っていた神父服を脱ぎ捨てる。

小猫ちゃん達も、神父服を脱ぎ捨てて制服になる。

 

「あー、あー、あー。これはいわゆる罠って奴っすか?

 へー、へー、へー。俺っち、罠にはまっちゃったんでヤンすか」

 

俺たちを見回すフリード。

 

「ところでさ、あの女いないの?」

 

「あいつ?」

 

フリードの言葉に、俺たちは首を傾げる。彼奴って誰だ?

 

「まいっか!俺をフルボッコにした礼を熨し付けて返す気だったけどさ。

 あの羊の皮を被った狼女がいないなら良いですわ。

 今回は、お前らをぶっ殺せばいいだけだしなぁ!」

 

そう言って、フリードは聖剣を向ける。

やっぱ、聖剣だけあって、剣先を向けられるだけで寒気がする。

 

だが、木場のためにも引くわけにはいかない!俺は皆に頷く。

 

「いくぞフリード!」

 

俺たちはフリードに立ち向かっていった。

 

結果としては、あと一歩まで追い詰めるが、途中でパルパー・ガリレイという、

聖剣実験の親玉が現れ、結局逃げられてしまった。

ゼノヴィアとイリナ、木場が後を追いかけ、

俺たちも追いかけようとしたんだけど、それは出来なかった。

 

そう、部長たちが来てしまったんだ。

部長は俺を問いただすも、俺は毅然として答えた。

俺は木場を助けたいと。小猫ちゃんも言ってくれた。

許して貰おうなんて思っていない。これは俺が勝手にやったことだ。

俺は、部長からの叱責を覚悟していた。でもやっぱりされるときついなぁ。

そう思っていたけど、実際は俺の予想とは違っていた。

俺は、部長に抱き締められていた。

どうやら別れた後、ことなが部長に話していたらい。

でも、命令を無視した罰として、尻叩きを千回受け俺の尻は死んだのだった。

 

 

 

 

 

一誠たちが私に何かを隠している。

リアスがそう感じたのは、自分の眷属である木場祐斗が行方をくらませた後のことだ。

木場祐斗、聖剣実験によって死に、自分の手によって悪魔になった『騎士』

 

教会から派遣された悪魔殲滅士(エクソシスト)との接触で、

彼は自分の中に燻っていた憎しみに捕らわれてしまったのだ。

リアスは、木場祐斗の中にある、拭い去れない心の闇を知っていた。

 

リアスが木場祐斗と出会ったのは偶然だった。

吹雪の中、リアスは彼を見つけたのだ。

汚れた襤褸をまとい、もはや死ぬしかない子供だった。

だからリアスは、彼を悪魔に転生させ、その消えかけていた命を救った。

その時の彼は、木場祐斗という名前ではなかった。

木場祐斗の名前は、リアスが名づけたのだから。

 

祐斗は教会の行っていた聖剣実験の被検体だった。

聖剣エクスカリバーを使うために体中を弄られたという彼は、

エクスカリバーを使えなかったために、教会によって殺されかけた。

死んでいく仲間たちを見ながら、彼はただ一人逃げ、そして自分によって救われた。

自分だけが助かってしまったという事実は、祐斗を自責の念に駆らせた。

仲間の無念を果たすために、聖剣を破壊する。そのためなら、自分はどうなっても良い。

仲間を見捨てて生き残った自分は、決して救われてはいけない。

 

リアスは思った。それはあまりにも残酷だと。あまりにも哀しいと。

リアスは、祐斗を救いたかった。悪魔として、その優れた才能を使って欲しかった。

復讐だけに囚われる生き方は、あまりにも哀しかったから。

だが、自分は彼の闇を払えなかった。

今回のことで、祐斗はその復讐心を滾らせ、復讐に身を焦がしてしまう。

このままでは大切な眷属を失ってしまう。

でも下手に首を突っ込めば、そこから三すくみの関係が崩れ、戦争になってしまうかもしれない。

 

大切な眷属を失いたくない。でも、自分の我が儘で世界を危険にさせてしまう。

それがリアスを苦しめていた。

 

こうして一人、部室で考えていても、リアスの思いは纏まらない。

自分はどうしたらいいのか?それが彼女を縛り付けていた。

 

そんな中、部室の扉が開く音がした。

目を向ければ、そこにいたのは、

 

「グレモリー先輩、少しいいですか?」

 

夢殿ことなだった。

 

 

 

 

 

「そう、一誠たちがそんなことを」

 

私は、ことなからの話を聞き、そう零した。あれほど関わっちゃいけないと言っておいたのに。

私は一誠の行動に、言うことを聞かなかったことへ腹立たしさを感じた。

そして同時に、一誠の姿に羨ましさを感じた。

一誠は、自分が罰せられることを理解した上で、祐斗を助けたいと行動を起こした。

小猫だってそうだ。

二人は、本当に祐斗のことを大切にしている。

じゃあ自分は?

 

私は自分を見つめる。

大切な眷属がいなくなってしまうというのに、自分は何もしていない。

大切な祐斗がはぐれ悪魔になってしまうかもしれないのに、私は三すくみの崩壊を恐れている。

私は・・・。

 

「グレモリー先輩」

 

黙っていたことなが、私に声をかけた。

 

「先輩は、どうしたいんですか?」

 

ことなはまっすぐ、私を見つめていた。

 

「私は、この町が大好きです。お父さんやお母さんと過ごした町、舞ちゃんや近所のおばさん等、

 先輩たちと出会えた町、私はこの駒王町が大好きです。」

 

ぽつりぽつりと、ことなは呟く。

 

「私は、自分の大切な人が悲しんでいたり、とても辛かったら、黙っていられません。

 それこそ、相手からしたら迷惑かもしれない。

 私のせいで周りが迷惑をかけてしまうかもしれない。

 それでも私は、助けに行ってしまうと思います。

 だって、私の大切な人だから。自分に嘘をついて、後悔はしたくないから。」

 

彼女の目が無機質になる。

 

「だから私、もしもこの町が危険に晒されると知ったら、私は何でもします。

 私の大切な人が傷つくなら、私は相手を許さない。何が何でも、相手を追い続けます。

 私の大切なものを奪うのなら、相応の報いを受けさせます。」

 

彼女の目が戻る。 

 

「私、このオカルト研究部の皆さんが大好きです。

 先輩はもちろん、姫島先輩や塔城さんや木場さん、変態は及第点ですが。

 木場さんがいなくなってしまうのは、私は辛いです。

 だから、グレモリー先輩に怒られても、私は木場さんのことを助けようと思います。

 それが、私の本心だからです」

 

そしてもう一度、彼女は私を見据える。

 

「グレモリー先輩が、本当にしたいことってなんですか?」

 

その言葉に、私は言葉が詰まる。

 

「今の先輩は、何て言うか、いつもの先輩らしくない気がします。

 私の知ってる先輩は、明るくて、自信に満ち溢れていて、凄く輝いています。

 今の先輩は、とても暗いです。やりたいことを、無理やり我慢してるような気がします。

 もし、何か迷っているなら、自分の思いに従ってみたらどうでしょうか?」

 

生意気なこと言ってすみません、そう言って頭を下げることな。

 

その言葉に、私は背中を押された気がした。

彼女は言った。私に怒られても祐斗を助けたいと。それが自分の本心だと。

彼女も、一誠たちと同じように、祐斗を助けたいと思い、行動している。

じゃあ自分は?眷属たちが必死なのに、主である自分は何をしている?

 

「そうね」

 

私はようやく自分の心に気付けた。

私は情愛のグレモリーの次期当主。大切な眷属を見捨てて、何が情愛だというのだ。

 

「ありがとう、ことな」

 

「いえ、どういたしまして」

 

私の言葉に、ことなは顔をにこりとする。

 

「でも、どうすればいいのかしら。

 聖剣には関わらないと言った手前、約束を破るのは拙いわね」

 

宣言した手前、後からそれを反故にすると言うのは流石に拙い。

下手をすれば、敵対行為と見做される。

 

私の言葉に、ことなが手を挙げる。

 

「グレモリー先輩、こう考えればいいんじゃないでしょうか?」

 

ことなが語る。

 

「危険な堕天使が領地に現れ、領民と領地に被害を及ぼしかねない。

 なので、領民たちを守る為に自分たちも動く。

 あくま体裁は、危険な堕天使等の排除と、領主の義務を果たしているだけ。

 それがどんな偶然か、聖剣と関わってしまったとしても、偶然なので仕方ありません」

 

「随分と屁理屈じゃないかしら?」

 

「エクソシストの方も、悪魔は駄目だけどドラゴンとなら協力しても良いって言ってましたし」

 

ことなの顔は、とても清々しい笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫・・・だよね?」

 

私は『友達』に話しかける。『友達』は何も言わず、黙ったままだ。

電灯もつけず、私は自分のベッドの上で膝を抱えていた。

リアス先輩と話し合った後、私はリアス先輩に促され、家へと帰った。

帰り際に、リアス先輩は私に言ってくれた。

 

「ありがとう」と。

 

それがどういう意味かは、私には理解できていない。

そもそも私は、リアス先輩たちを、本当の意味で理解出来ていない。

なぜなら私は人間で、先輩たちは悪魔だから。

でも、私は本心を晒した。リアス先輩に言ったことは、『私の思っていること』だ。

本心をさらけ出せば、相手も理解してくれる。お母さんが言ってくれたことだ。

だから私は語った。

出来れば、それがいい方向に行ってほしいと思う。

 

「大丈夫、だよね」

 

あの時、リアス先輩の顔は晴れやかだった。

暗かったリアス先輩の顔が、いつものように輝いていた。

それを見れただけで、私は満足していた。

 

「あとは私に任せなさい」

 

笑顔で語るリアス先輩。

 

「任せて良いんですよね?」

 

私はその姿に問いかける。

私の心は揺れていた。

目の前で楽しそうに悪魔を殺す姿を見た時も、アーシアちゃんを転生させる時も、

私たちが悪魔に襲われた時も、目の前で舞ちゃんが傷つきそうになった時も、

『友達』のことを話した私を見ていた時も、私はリアス先輩の言葉を信じた。

ぐらついたこともあった。不安になったこともあった。

それでも私は、リアス先輩を信じたい。

だってリアス先輩たちは、この町を守ると言ってくれたから。

 

「大丈夫」

 

私は何度も呟く。大丈夫、リアス先輩たちは大丈夫。

私はベッドに横になり、ゆっくりと瞼を閉じる。

 

そして私は、強烈な寒気を感じて目を覚ました。

まるで、裸で極寒の水に放り込まれたような、痛みすらも覚える寒さ。

 

「なに・・・これ・・・」

 

身体が震える。ぎゅっと抱きしめても、その震えは止まらない。

何とかベッドから起き上がり、私は閉めていた窓のカーテンを開ける。

私が目にしたのは、何かに覆われていた駒王学園だった。


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