ハイスクールD×D イマジナリーフレンド   作:SINSOU

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14話

「私は、木場さんのことを止めるつもりはありません。

 木場さんが決めたことを否定する資格は、私には無いと思いますから」

 

僕の話を聞いて、彼女はそう答えた。

彼女の顔には、一切の憐れみも、同情も、侮蔑も、怒りもなかった。

だからだろうか、彼女の言葉は、すんなりと僕の中に沁み込んでいく。

 

「私は、この町が大切なんです。お父さんとお母さんと一緒に住んでいたこの町が、

 舞ちゃんや桐生ちゃん、オカルト研究部の皆がいるこの町が、大好きなんです。

 だから、私はこの町を守りたいんです。それが・・・私の想いです」

 

彼女の言葉に僕は黙って聞くしかなかった。

その顔は、日常の彼女とは全くの逆の印象だった。

もしかしたら、これが彼女の本当の顔なのかもしれない。

 

「木場さん、答えてください」

 

僕を、ただじっと見つめる彼女の顔。

夢殿ことなの無機質な瞳が、僕を映し出してる。

彼女の瞳に映った僕は、まるで自分が自分を問いただしているようだ。

 

「あなたのやりたいことって、何なんですか?」

 

その言葉に、僕は・・・。

 

 

 

 

 

「待たせたね、一誠君」

 

俺が電話をかけて数分後、木場が俺たちのテーブルへとやって来た。

その表情は、少し陰ってはいたが、思いのほか元気だった。

 

「木場、一体今までどこに行ってたんだよ!

 学校も休んだし、携帯には繋がらなかったしで、みんな心配してたんだぞ!」

 

「そうです。先輩が急にいなくなって、私・・・」

 

小猫ちゃんが、泣きそうな顔で木場を見つめる。

小猫ちゃんの姿に、木場は申し訳ない、という表情になる。

 

「ごめん、それに関しては色々とあってね。それは後で説明するよ」

 

「まぁ、別段何もなくて安心したぜ。それで・・・」

 

俺は、木場の後ろをちらりと見た。

 

「・・・」

 

木場の後ろでは、ことなの奴が黙ったまま立っていた。

木場と同じく、体調不良とかで休んでいたみたいだが、別段何ともないように見える。

 

「夢殿さんは、僕が付いて来てほしいとお願いしたんだ」

 

「まぁ、別にいいけどよ」

 

俺はもう一度、ことなを見る。

 

「なに?」

 

「いや別に」

 

ことながこちらを見てきたので、俺ははぐらかす様に答えた。

なんだろ、なんか違和感を感じたんだけどな。

ま、気のせいか。

 

 

 

 

 

その後は、木場とエクソシスト二人の言葉のぶつけ合いだった。

やはり木場は、エクスカリバーへの憎しみを捨てきれない様子だった。

なんとか木場を落ち着かせながらも、話は何とかまとまった。

その際、聖剣実験に首謀者の存在、

フリードと言うあのイカレ神父がこの町に来ていたことなど、色々と情報を共有できた。

 

イリナとゼノヴィアと別れた後、俺たちは木場の過去を知った。

信じていた存在に裏切られたこと、死んでいく仲間たちの姿など、

それは俺たちの想像を超えていた。

木場の過去を聞かされた俺は、それでも復讐心で生きちゃ駄目だと思った。

だってそれは、あまりに辛すぎるし、哀しすぎたと思ったから。

 

それから俺は、木場の過去に号泣する匙の、大いなる野望を聴き、俺と匙は同志となった。

その際、小猫ちゃんから「変態」と言われるが、そんなことは気にしなかった。

 

 

「じゃあ、私はグレモリー先輩を説得するわね」

 

その声の方を見ると、ずっと黙っていたことなが席を立っていた。

ずっと黙っていたせいで、いたことをすっかり忘れてた。

というか、今なんて言った?

 

「え、部長を説得?」

 

「はい、そうですけど」

 

俺はことなの言葉に少し呆けたが、直ぐに気を戻して叫ぶ。

 

「いや、駄目だろ、これは部長には秘密であって、知らせたらまずいんだって!」

 

「黙ったまま動く方が、よっぽど拙いと思うよ?」

 

「うぐっ・・・!」

 

ことなの言葉に、俺は言葉が出ない。

確かに、部長はこのことは関わるなと言った。

 

「だからって、良いわけないだろ!?木場の無念を晴らしてやりたいんだ」

 

「一誠君・・・」「一誠先輩・・・」「兵藤・・・」

 

俺の言葉に、ことなは溜息を吐く。

 

「だからって、勝手に動くのは拙いと思わないの?

 これに関しては、リアス部長の言葉を無視してるんだよ?

 まぁ、私は眷属じゃないから問題ないと思うけど。

 それに、問題になったら自分が犠牲になればいいと思ってない?」

 

「それは・・・」

 

「思いを行動に映せるのは、変態の良いところであり、悪いところだと思う。

 時には、冷静に考えることも必要じゃないの?」

 

ことなはそう言うと、俺たちに後ろを向ける。

 

「祐斗さんの決意も聞けましたから、私は私の出来ることをしようと思います。

 それでいいですね、祐斗さん」

 

「うん、よろしく頼むね」

 

木場の言葉を聞くと、ことなはそのまま出て行った。

 

 

 

 

 

「で、なんで木場がことなの家にいたんだよ。あの後、一体何があったんだ」

 

俺はことなが去った後、木場に問いただした。

小猫ちゃんも、そのことが気がかりだったようで、木場を見ている。

 

「僕もよく解らないんだ。あの後、彷徨っていたらフリードに襲われてね。 

 防戦一方だった時に、夢殿さんが現れたんだ。

 どうにか彼女を逃がそうとしたんだけど、気を失って、気が付いたら彼女の家で寝たいたんだ」

 

「なんだよそれ」

 

木場の説明に、俺は首を傾げた。

 

「ってことは、ことなが気を失ったお前を家に運んだってことになるぞ。

 しかも、あのイカレ神父を何とかして」

 

「その通りだよ。そのことを聞いたら、『友達』が助けてくれたって言われたんだけどね」

 

「『友達』ですか・・・」

 

「おいおい、何の話をしてるんだ?」

 

案の定、話に付いていけていない匙は混乱している。

取りあえず、俺はことなの力について説明した。

 

「へえー、夢殿の奴、そんな力を持ってたんだな。

 だからあいつ、あんな無茶なことも出来たんだ」

 

納得と言った様子で頷く匙を横目に、俺は疑問を口にした。

 

「なぁ、そもそもことなの『友達』ってなんなんだろうな?

 あいつが言うには、守ってくれる存在、だっけ?」

 

「はい、確かにそう言ってましたね」

 

あの焼き鳥との戦いの後、部長に質問され、しどろもどろで答えたことなの言葉。

部長曰く、ことなの力は曖昧だから、少しずつ使いこなせるようにしようと言っていた。

けど、なんか見落としてる気がする。

まぁでも、今は聖剣の方が大事だ。それに、後でことなに聞けば解ることだしな。

 

「ま、今は聖剣を何とかしないとな」

 

俺は小猫ちゃんと木場、匙を見ながら計画を考えるのであった。

 

 

 

 

「分からないんだ」

 

「分からない?」

 

僕の言葉に、夢殿さんが首を傾げた。

 

ここは夢殿さんの家で、フリードに襲われ気を失った後、

気付いたら僕は、彼女の家で横になっていた。

目が覚めた際、僕は意識が朦朧としながらも、何とか身体を起こそうとした。

でも、身体に痛みが走り、苦痛のうめき声をあげるだけだった。

 

「木場さん!?気が付いた・・・て、何してるんですか!?」

 

その声に、僕はようやく、ここが別の所にいたと気付いたのだ。

 

「夢殿・・・さん?」

 

「もう、まだ動ける状態じゃないんですよ!無茶は駄目です」

 

彼女が僕の身体に触れ、ゆっくりと横に戻す。

どうやら、布団の中にいるようだった。

 

「どうして?」

 

「そのことは後で話します。今は休んでください」

 

そう言うと、彼女は扉の向こうへと出て行った。

その後、僕はずっと夢殿さんに介抱されていった。

 

僕が彼女にお世話になっていた際、不意に彼女が訊いてきたのだ。

 

「あなたのしたいことってなんですか?」と。

 

その言葉に、僕の中には色々な感情が渦まいた。

 

聖剣エクスカリバーを破壊したい。

 

皆と一緒にいたい

 

破壊しなきゃダメなんだ

 

皆の力になりたい

 

「僕は・・・」

 

言葉が出ない。

僕の、本当のしたいことって、一体何なんだ?

 

 

「そうだ木場さん!」

 

夢殿さんの声が聞こえた。

 

「じゃあ、一緒に『カデンツァ』に行きませんか?」

 

「え?」

 

彼女の顔を見れば、彼女の目には光が宿り、恥ずかしそうに顔を赤らめていた。

 

「実は、搭城さんにおやつを奢ることになりまして・・・。

 それで、もし良かったら木場さんも一緒にどうかな?って・・・」

 

「でも、僕は・・・」

 

「この事件が終わったら、一緒にケーキを食べに行きましょう!

 約束ですよ!絶対に食べに行きますからね!

 あ・・・でも、流石に奢れそうにないので・・・すみません」

 

彼女のあたふたな姿に、僕は不思議と笑ってしまった。

僕の姿に、彼女は顔をトマトのように赤らめる。

 

「そう・・・だね。うん、約束しよう。

 これが終わったら、ケーキを食べに行く。だから、そんなに怒らないで」

 

「絶対ですよ!絶対ですからね!嘘ついたらはり千本飲ましますから!」

 

そう言って部屋を出て行った夢殿さんを見ながら、僕は思った。

もしかしたら、僕の本当の願いって・・・。

そんな時、僕の携帯電話が鳴った。イッセーくんからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの人たち、木場さんに謝りませんでしたね」

 

私は、先ほど行われていた話し合いのことを思い出していた。

聖剣実験によって木場さんは、その仲間たちは死んだ。

それは変わらない事実だ。

だというのに、あの子はなんて答えたっけ?

 

「でも聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたんだっけ?成功例が生まれたんだっけ?

 当時、その研究者は異端の烙印を押された、『それだけ』でしたっけ?」

 

ああ、軽い。私は心の中で感じた。

 

私は、身体が震えだすのを感じた。

ファミレスの時から感じた、彼女たちの会話を聞いていた際にも、

私は必死に体が震えるのを堪えていた。

でも、もう我慢できず、私は地面に膝をつき、身体を両手できつく、きつく抱きしめる、

 

恐い。

 

人が死んだ。多くの人がその実験によって殺されてしまった。

毒ガスで殺されたという。生きながら、血反吐をぶちまけて。

嫌、想像しないようにしてるのに、私の頭は勝手にその光景を描く。

 

胃の中がこみあげてくる感じがして、口元を右手で塞ぐ。

 

 

生き地獄だと木場さんは言った。仲間が、友人が、死んでいく姿。

私はそれを自分に置き換えてしまった。

目の前で、舞ちゃんが、桐生ちゃんが、隣のおばちゃんが、先生が、死んでいく。

 

「おげぇぇぇえぇぇぇえぇぇえ・・・」

 

抑えきれずにぶちまけた。口の中が酸っぱくなる。

 

でもエクソシストの二人は、殺されたことが悪いみたいな言い方だった。

ゼノヴィアさんの、イリナさんの目は純粋だった。

純粋にそうだと、本心からそうだと思っていた。

虐殺があったことが悪い。全てはやった人間『だけ』が悪い。

そう思っている目立った。

 

恐い。

 

「最大級に嫌悪された事件?でも続けたんですよね、聖剣実験。

 多くの人が犠牲になっちゃったのに。

 嫌悪したのに続けちゃったんですよね。それで聖剣使いを作っちゃったんですよね?」

 

だからなんだと言うのだろうか。

嫌悪したからと言って、実際には聖剣使いを生み出した。

だから何なの?犠牲となった人たちが、それを喜ぶというの?

 

「そんなの、解るわけないじゃない・・・!」

 

それでも、犠牲者を出したことを、謝るべきじゃないの?

それとも、そのことを気にかけていないのか?

 

心が冷えていく。

 

それと話に出てきたえっと、誰でしたっけ・・・?

 

「あ、そうそう、フリード・セルゼンでしたっけ」

 

私は思い出した。

祐斗さんを追いかけて、彼を殺そうとした人。

私の日常を奪おうとした人。

必死に止めようと言ったのに、それでも聞いてくれなかった。

だったら、仕方ないじゃない・・・!

 

なんでも、天災のエクソシストで、信仰心ゼロの化け物殺し。

あまりにやりすぎと言うことで、同じく異端とされたんだっけ。

それって、あまりにも危険すぎる人じゃない・・・!

 

でも、ゼノヴィアさんは何て言った・・?

 

『処理班が始末できなかったツケを、私たちが支払うとわな』だっけ?

 

「何よ・・・それ」

 

私は呟く。

まるで面倒事のように言い放っていた。人が、仲間が殺されたのに。

 

そして、私が先ほどの会話で思ってしまった事。

今、私が震えている原因。

 

誰一人として、『町の人のことを気にかけていない』

 

エクスカリバー、エクスカリバー、エクスカリバー、エクスカリバー・・・

 

木場さんのために、エクスカリバーを破壊しよう!

堕天使に使われないために、エクスカリバーを取り戻す!

俺は部長のおっぱいを吸うんだ!

俺は会長とできちゃった婚をするのが夢だ!

 

「何よ・・・それ」

 

どうして誰も、町の人を心配しないの?

みんな、この町を大切にしてるんだよね?

なんでエクスカリバーのことしか話さないの?

 

みんな、それしかないの?

 

 

それとも、命なんて皆からすれば軽いものなの?

直ぐに消えて、気にも留めないのものなの?命って大切なものじゃないの?

 

だから、みんな必死に生きてるんじゃないの?

 

でも、私は知ってしまった、いや、教えられた。

あの、蜘蛛の人に。

私を、舞ちゃんを食べようとしたあの悪魔に。

 

命は簡単に踏みつぶされるものだと、彼女のおかげで思い出した。

日常は簡単に奪われていくことを、彼女のおかげで思い知らされた。

 

『大丈夫、私たちがあなたを守るわ』

 

「本当に、信じて良いんですか?」

 

私はあの人の言葉に問いかける。

何故か、手と足に痛みを感じた。傷はアーシアちゃんのおかげで治っているのに。

 

『私は、この件には関わることはしないわ!』

 

あの人の姿が映し出される。

私は、その人に問いかける。

 

「教えて・・・ください、リアス先輩。

 私は、先輩を信じても良いんですか?本当に、守ってくれるんですか?

 本当に、この町を、私たちを、守ってくれるんですか・・・?」

 

私は問いかける。でも、答えが返ってくることはない。

しばらくじっとしていると、少しずつだが、身体の震えが収まってきた。

 

「そう、だよね」

 

私はゆっくりと立ち上がる。

吐瀉物をまき散らしたせいか、少し身体が重い。

 

「私は、先輩を信じるって決めたんだ。

 先輩は、みんなは、この町を守ってくれるって言ってくれたんだ。

 だから、私は信なきゃ、信じなきゃダメなんだ」

 

私は落ち着くために、肺いっぱいに空気を満たし、そして吐く。

よし、落ち着いてきた。

 

ふいに、後ろから抱きしめられた。

顔を向ければ、『友達』が私を抱きしめてくていた。

 

「ありがとう」

 

私は『友達』にお礼を言う。

『友達』は、こうやって私を励ましてくれる、安心させてくれる。

私は、にっこりと笑う。

すると、『友達』は解けるように消えた。

 

「そうだね、くよくよしてもだめ。

 自分が出来ることで、この町を守っていくって決めたんだ。

 こうなりゃ、何が何でも、リアス先輩を説得しなきゃね」

 

私はそう決意すると、どうすればいいのか考えながら、帰路につくのであった。

 

 

 


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