ハイスクールD×D イマジナリーフレンド   作:SINSOU

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13話

「木場とことなが休みだって?」

 

エクソシストたちとの模擬試合の翌日、俺は二人が欠席していることを知った。

木場の方は連絡が取れず、ことなは本人から体調不良という連絡を受けたらしい。

試しに木場に電話を掛けるが、電源が切られているらしく、

掛け直してくださいという無機質な機械音声が答えるだけだ。

俺は嫌でも昨日のことを思い出す。

 

エクソシストと聖剣エクスカリバーに、背筋が凍るほどの憎悪を滾らせていた木場。

その姿を見た時、俺は嫌な予感がした。

このままじゃ、取り返しのつかないことになっちまうかもしれない。

今の木場は、リアス部長の言葉に耳を傾けないほどに、憎しみに呑みこまれちまってる。

もしかしたら、エクスカリバーを破壊するために、無茶をするかもしれない。

最悪、木場がはぐれ悪魔になっちまうって可能性もある。

それじゃ、あんまりすぎるだろ!

 

俺は昨日、決意したことを思い出す。

リアス部長はこの問題に手を出さないと言ったけど、やっぱり木場を放ってなんておけねぇ。

あいつはいけ好かないモテモテでイケメン野郎だけど、俺たちは仲間なんだ。

気に入らないけど、あいつはいい奴だって解る。

それに、リアス部長の哀しむ顔なんて見たくない。

部長、申し訳ないけど、俺はこの件に首を突っ込みます!

俺はさっそく、行動に移すことにした。

 

そして休日、俺は小猫ちゃんとあのエクソシストたちを探していた。

ついでに頼れそうな匙も仲間に加えて。

匙は「俺は関係ねぇエだろぉぉぉぉぉ!?俺はかえるんだぁぁぁぁぁ!」

と叫んでジタバタ足掻くも、小猫ちゃんががっちりと掴んで離さない。

小猫ちゃんは、俺がエクスカリバーを破壊する旨を伝えたら、

少し考え込んだ後「私も協力します」と言ってくれた。

 

「そもそもなんで俺なんだよ!これはお前らの問題だろ!?」

 

「なんつーか、お前くらいしか頼める奴が思いつかなくてさ」

 

「っざけんなぁ!これがばれたら会長に俺は殺されるんだそぉぉぉ!?」

 

匙は更にもがいて暴れるも、小猫ちゃんは逃がさない。

泣き叫ぶ匙を見て俺は、会長は部長と違って恐いのか。

部長は厳しいけど優しいからな、いやー良かったよ。

 

 

「ところでイッセー先輩、あの二人を見つけた後はどうするんですか?」

 

俺と匙のやり取りを、無表情(でも少し呆れた目)で見ていた小猫ちゃんが聞いてきた。

俺はことの詳細を二人に話した。

 

「イリナとゼノヴィアが来た時、言っていたよな?」

『教会はエクスカリバーの奪還を希望しているが、

 堕天使に利用される位なら、破壊しろとの仰せだ。

 私たちの役目としては、エクスカリバーが堕天使渡るのを阻止すればいい』

 

「これって、エクスカリバーを回収するために、破壊しても構わないってことじゃないのか?」

 

「つまり、祐斗先輩にエクスカリバーを破壊させて、想いを遂げさせる、いうことですか」

 

「その通り。木場を中心に、俺たちも奪還作戦に協力するってことでさ。

 3本も奪われてるんだから、1本くらい破壊させて貰えないかなってな」

 

俺は小猫ちゃんの言葉に頷く。

木場も思いを遂げて万事解決、いつも通りの日常が帰ってくるって寸法だ。

 

「木場の目的はエクスカリバーの破壊。

 そしてゼノヴィア達の目的はエクスカリバーの奪還。それも破壊しても構わない。

 だったら、俺たちの利点は一致してる。

 問題は、ゼノヴィア達が俺たち(悪魔)の言葉を聞いてくれるかどうかだけどな」

 

俺の言葉に、小猫ちゃんは少し考えた後に、「問題はまだあります」と言う。

 

『リアス部長には内緒であること』

 

そう、この作戦は部長にばれてはいけない。

現状、『手を出さない』という部長の言葉に逆らっているからだ。

しかもばれたが最後、色んな迷惑をかけるかもしれない。

やべぇ、今更ながら怖くなってきた。でも、やらなきゃいけない。

いつも通りの日常をとりもどすために。

 

「最悪、俺が命を賭けて何とかするさ。

 拙くなったら小猫ちゃんは、逃げてほしい」

 

「兵藤ぉぉぉぉぉ!、俺は強制参加かこのやろぉぉぉぉぉ!!」

 

「まぁまぁ、匙だって逃げても構わないけど、

 上手く行くかもしれないから、取りあえず付き合ってくれ」

 

「ふざけんな!今すぐ帰らせろ!俺を巻き込んでんじゃねぇ!」

 

叫ぶ匙を、俺は宥める。いや、頼れるのはお前くらいしかいないんだから。

 

「いえ、私は最後まで協力します。仲間の為ですから」

 

小猫ちゃんは、はっきりと俺に言ってくれた。それも真剣な眼差しで。

思うけど、実は小猫ちゃん、結構熱い心を持ってるよね。

 

「ところで、ことな先輩はどうするんですか?

 もしかしたら、先輩ならもっといい考えをくれるかもしれませんけど」

 

小猫ちゃんの提案に、俺は考える。

 

「うーん、確かにそうなんだけどさ。

 ことなの奴に言ったら、もしかしたら部長に喋っちまう可能性があるんだよ。

 ほら、部長とよく話してるだろ?

 あいつは隠し事が苦手みたいだし、部長に問い詰められたらうっかりしそうだし。

 それに、あいつは俺たちと違ってただの人間だしなぁ。

 万が一戦いになったら、怪我するかもしれないしさ」

 

「ことな先輩なら大丈夫です。

 私たちが事情を説明すれば、解ってくれると思いますし。

 先輩だって、祐斗先輩や町のことを心配してると思います。

 それに、もしかしたらリアス部長を説得してくれるかもしれません。

 戦いに関してですが、先輩を巻き込むのは駄目ですね。

 もしもの時は、私たちがことな先輩の逃げる時間を稼がないといけないと思います」

 

ことなの奴は俺たちと違って人間だけど、あいつだって俺たちの仲間だ。

小猫ちゃんの言う通り、木場のことを心配してるに違いない。

きっと力を貸してくれる。

 

「まぁでも、取りあえずはゼノヴィアとイリナを見つけないとな」

 

それにしても、あいつらどこに言ったんだ。

駒王町にいるのは確かだけど、そう簡単に見つけられ「イッセー先輩」

小猫ちゃんに声を掛けられて振り返ると、

そこには「神の御恵みを~」と、道行く人にお布施を貰おうとする二人がいた。

俺たちは何とも言えない空気に包まれた。

小猫ちゃんどころか、散々「いやだぁぁ」と暴れていた匙も黙ってしまった。

 

その間にもゼノヴィアとイリナは、やれ、

お前が怪しい絵画を買ったからだ!これは聖なるお方が書かれた絵よ!

信仰の無い国なんて私は嫌いだ。路銀の尽きた私たちは異教徒の恵みが必要なのよ。

こんなのが私のパートナーだったなんて。あなたの宗派は頭硬すぎなのよ。

なんだとこの異教徒が。何よ、この異教徒!と、やいのやいのと喧嘩する始末だ。

果てにはお金のために、寺か神社を襲撃する算段を練り始めたので、

俺たちは慌てて二人へ駆け出した。

 

その後ファミレスで、腹ペコの二人に飯を奢りつつも話あった結果、

俺たちの提案は問題なく受け入れられた。

提案を持ちかけた際にイリナが声を荒げたが、

ゼノヴィアもイリナも、今回の指令に対しては思うところがあったらしく、

秘密裏という条件の元、俺たちは二人と共同戦線を張ることになった。

ゼノヴィアが言うには、「悪魔の力は借りないが、ドラゴンの力ならいいだろ」とのこと。

うわぁ、それってすっげぇ屁理屈じゃねぇの?

イリナも同じことを言ったが、ゼノヴィアに言いくるめられてしまった。

まあ、戦争の生き残りである猛者相手に二人で立ち向かえ、

なんてのは二人からしても無茶な命令だったらしい。

いやはや、ほんと教会って奴は・・・・。

 

そんなこんなで話は纏まり、俺は木場に電話を掛ける。

何度かけても不通だったから心配したが、今回は繋がった。

 

「もしもし、一誠君かい?」

 

「良かった、ようやくつながった。木場!一体どうしたんだよ。

 学校にはこねぇし、電話は通じないで、みんな心配だったんだぞ!?」

 

「ごめん一誠君、こっちも色々とあってね。それについてはあとで話すよ。

 それで、なにかあったのかい?」

 

「ああ、実は・・・」

 

俺は木場に、二人のエクソシストと出会っていることを話す。

一瞬、受話器の向こうの木場が、息をつめたような感じがしたが、

すぐに「それで?」と会話を促してきた。

取りあえず俺は、エクスカリバーについて話があるから、ファミレスに来てくれと告げる。

 

「多分、僕のことで話があるんだろうね。話は解ったよ、ファミレスに行けばいいんだね?

 多分、そこまでかからないと思うけど、少し待っていてほしい」

 

「ああ、分かった。こっちはお前が来るまで待ってるわ」

 

「それで一誠君、これは僕からのお願いなんだけど、

 問題が無いなら、もう一人連れてきても構わないかな?」

 

「もう一人?」

 

俺は木場の言葉に、頭に疑問符が浮かぶ。

もう一人ってことは朱乃さんか?

でも朱乃さんは、今日は部長と一緒に夜の見回りに行ってるはずなんだけど・・・。

俺が首を捻っていることを、木場は受話器越しからでも感じたのだろう。

クスリと苦笑いが、向こうの受話器越しから聞こえた。

 

「夢殿さんだよ。実は今、僕は夢殿さんの家にいるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにを、しているんですか?」

 

僕は声の方を振り向いてしまった。フリード・セルゼンも同様、顔だけを動かしていた。

 

「どうして君がここに!?」

 

彼女の姿を見て、僕は驚きを隠せなかった。

まさか、僕を追って来たのか。

 

「おんやぁ?誰かと思えば、いつぞやの廃教会の時にいた、ビビりさんじゃないですか。

 え、なに?何してるんですかって?見てわからないの?馬鹿なの?

 俺ッチが邪悪な悪魔を浄化してる最中なんですが?」

 

「そうですか」

 

彼女が一歩踏み出す。

その姿にフリードは虚を突かれたようで、剣の力が一瞬弱まる。

僕は痛む身体に鞭を打ち、その隙をついて無理やり剣を押し、

フリードから距離をとりつつも、彼女を守るように前に立つ。

 

「早く君は逃げるんだ。今の僕じゃ君を守れそうにない」

 

僕は彼女に声を掛けるも、彼女は「そうですか」と答えるだけ。

 

「しっかし、何なんですかねぇ。

 あの時は漏らしそうな位に恐怖で顔を歪めてたってのに、なにその顔?

 え、もしかしてなんかヤバい感じになってる?

 はぁ?いっちょまえになんかガンギマリしっちゃったの?

 人間は人間らしく、普通の生活をしてればいいんですよ?

 まあでも、悪魔とお近づきになった奴はもれなくぶっころDEATHけどねぇ!!」

 

「そうですか」

 

フリードの言葉にも、彼女は壊れたテープのように、「そうですか」と答えるだけ。

その姿に、僕はただならぬ予感を感じた。

あの時、彼女から発せられた異様な雰囲気のような・・・。

 

そう考えてるうちに、彼女は僕よりも前に行こうとしているのに気付き、

僕は彼女を止めようと肩をつか・・・めなかった。

気が付けば僕は地面に伏し、意識が薄れかけていく。

 

「に、逃げるんだ・・・」

 

朦朧とする意識の中、僕は必死に呼びかける。

 

「大丈夫です。ただ彼に謝罪を要求するだけですから」

 

僕の声に彼女は呟く。

まるで、聞き分けのない悪い子を叱るだけですよ、とでも言っているかのように。

フリードはそんな彼女に対し、冷めた目で見据えている。

 

「あーあ、短い人間の生を悪魔と関わったせいで終わらせるなんて、ほんとに馬鹿だわ。

 まぁでも、悪魔は死ね。悪魔と関わった人間も死ね。それが俺の信条なんでね。

 間が悪かったとでも思って諦めてくれ」

 

「そんなの、私にはどうでもいいんですけど。

 私が今聴きたいのは、

 『私は貴方の大切な人を傷つけてしまい、申し訳ありませんでした』

 『私は自分の犯した罪を償います。迷惑をかけて本当にごめんなさい』という、

 貴方の心の籠った言葉だけです。

 ですので、それ以外は一切どうでもいいので、喋らないでください」   

 

「おっと、言葉の通じない馬鹿ですかあなた~?

 馬鹿は死ななきゃ治らないってか?

 なら、さっさと死んでくれませんかねぇ!」

 

その声と同時に、フリードはエクスカリバーを掲げ、彼女を袈裟切りにしようと飛び上がる。

それに対し、彼女はまるで無反応。

 

「止めてくれ・・・!」

 

もはや視界がぼやけている僕は、そのすぐ後で起るだろう悲劇に、

僕はまた大切な人を守れないのかと後悔しつつ、気を失った・・・。

 

「いいよ、出てきても」

 

気を失う寸前、彼女の言葉が聞こえた。


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