ハイスクールD×D イマジナリーフレンド   作:SINSOU

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おかしい、なんだこの主人公は・・・。


12話

「ことな・・・?」

 

リアス・グレモリーは、目の前にいる夢殿ことなに戸惑っていた。

リアスにとって、夢殿ことなは、可愛い後輩であり、オカルト研究部の一員であり、

眷属ではなくても、大切な仲間の1人だ。

彼女のおかげで、オカルト研究部の運営は、以前よりも良くなっていると言える。

彼女の仕分けやスケジュール管理は、リアスたちにとって大助かりだったのだ。

時折、お手製のお菓子のクッキーやケーキを持って来るなど、

少し体重が気になってくるようなこともあったが、別段おかしいというわけではない。

自分たちが不在の際、不幸にもはぐれ悪魔に襲われてしまった後は、

悪魔や天使、堕天使について勉強すると言った頑張りも見せてくれた。

 

リアスから見た夢殿ことなは、それこそただの人間だ。

ただ、彼女曰く『友達』という変わった力を持っているだけの、人間だ。

少し変わった考えを持っているも、別に変と言うわけでもない。

実際、彼女は、一誠のドラゴン化を推奨しようとしたり、

ドラゴン化しても、魔力を吸い取れば問題はないじゃないですかと、

あまりにも行き過ぎた提案をしたこともあった。

 

しかし、普段の彼女を見れば、夢殿ことなは、

明るく、周りのために奔走したりと、少し変わっていても、

それが杞憂に思えてくるほど、彼女の姿は好意的に思える。

 

だが、今のことなは、その印象とは真逆だ。

感情を捨て去ったような、作り物の笑顔。

まるで、人形と向き合っているような印象を感じる。

瞳の光は消え、まるでどこまでも吸い込まれるような、無機質な黒色。

そして何より、何かを感じるのだ。

自分には見えない何かが、そこにいると感じている。

 

 

「ほう、それはどういう意味だ?」

 

エクソシストの片割れ、確かゼノヴィアと言う名前だったか、

彼女は少し眉を顰めながら、ことなに向かい合う。

その表情は、不快感が滲み出ている。

 

「この部屋に入った際に気になったが、君は一体なんだ?

 どうやら悪魔ではなく人間の様だが、なぜこの悪魔たちと一緒にいる」

 

「そんなの、今はどうでもいいじゃないですか。

 私がここにいようといまいと、貴女に話す通りなんて、今は無いでしょう?」

 

笑顔で拒絶することなに、ゼノヴィアの眉がピクリと動く。

リアスは、ことなの姿に違和感を感じる。

先ほどのことなとは、全くの別人に見える。

さっきまでは、壁際でおっかなびっくり、私たちの交渉を見ていたことなとは。

 

「いやなに。

 悪魔に転生もしていない人間が、悪魔と共にいることが不思議でね。

 君も契約者と同じように、ここにいる悪魔と契約でもしたのか?」

 

「それこそ、貴女に言う意味があるんでしょうか?」

 

変わらず笑顔で拒絶することなに、ゼノヴィアは興味を失くしたように溜息を吐く。

 

「それもそうだな。

 私には悪魔と共にいる人間について、不思議に思っていたのでね。

 ただ、理由を知りたかったんだがな。

 それで、迷惑とはどういう意味だ?」

 

「だからそのままの意味ですよ。迷惑だから迷惑です」

 

ことなの無機質な瞳が笑う。

 

「聖剣を盗まれた上に、無関係な私たちの町を巻き込んでおいた挙句、

 こちらに連絡もせず、秘密裏に活動をしておいて、犠牲者まで出している。

 しかも事が深刻になって、形振り構わなくなって私たちに頼ってきたのに、

 その交渉の内容は、信用出来ないから事件に関与するな。

 堕天使と手を組んだら真っ先に殺す。

 おかしいと思わないんですか?」

 

ことなの口元が歪む。

その姿に、リアスどころか、一誠たちや他の眷属たちも寒気を覚える。

ことなの隣の小猫は、別人のようになったことなの姿に、

彼女から離れようと一歩後ろに下がっている。

小猫の顔には、戸惑いが見えている。

 

「何がおかしいというんだ?この件は私たち教会の問題だ。

 悪魔たちが関われば、それこそ三つ巴の状態に影響が出てしまう。

 むしろ、事態をこれ以上に大きくしないためには最善だと思うが?」

 

ゼノヴィアは、まるで意味が解らんと言うように、ことなの言葉に首を傾げる。

まるで、ことなの方がおかしいという風な印象だ。

 

「そうですか」 

 

その姿と言葉に、微かだがことなの目が吊り上る。

 

「ではもう一つ、あなた方は悪魔に手を出さないと誓ったはずです。

 ですから、先ほどアーシアを浄化しようとした行為は、明らかに契約違反では?」

 

ゼノヴィアの言葉に、アーシアがビクリと身体を振るわせる。

傍にいた一誠は、安心させるようにアーシアの手をぎゅっと掴み、彼女の肩に手を置く。

 

「彼女は悪魔に転生してもなお、主を信仰している。

 ならば、その穢れた、悪魔に堕ちた肉体を浄化し、魂を主の身元へと送るのは、

 むしろ彼女にとっては救いのはずだが。

 それの何がおかしいんだ?」

 

「そうですか」

 

またしても同じように、ゼノヴィアは答える。

その姿に、ことなは一呼吸する。

すると、彼女から感じる異質さは更に強くなり、彼女の口元がゆっくりと動き・・・

 

「良いよ、出てき」

 

「ことな、止めなさ・・・!」

 

見守っていたリアスは、咄嗟に止めようと声を荒げた。

リアスは直感的に何かを感じた。それこそ、止めなければいかない何かを。

同じように、ゼノヴィアも直感的に何かを感じたのか、

布に包まれていた聖剣を構えようとし・・・

 

「そこまでだよ、夢殿さん。後は僕が相手になろう」

 

「あ・・・」

 

祐斗が、ゼノヴィアとことなの間に入る。

祐斗からは、信じられない程の殺気を放ち、その手には剣を携えていた。

そして、不倶戴天の敵を見るかのように、ゼノヴィアを睨みつけている。

 

その瞬間、先ほどまで感じていた異質さは霧散し、ことなは、ただ無言で祐斗を見ている。

その表情は、先ほどまでの姿ではないが、

まるで、やってしまった・・・と、バツが悪そうな苦い顔だ。

 

「誰だ君は?」

 

ゼノヴィアの言葉に、祐斗は不敵な笑みを浮かべる。

 

「君たちの先輩だよ。どうやら失敗作だったようだけどね」

 

その瞬間、無数の魔剣が部室に顕現した。

 

 

結果から言えば、祐斗はゼノヴィアと、そして一誠がイリナと戦うことになった。

リアスは交渉を穏便に済まそうとしたはずが、

一誠の言葉がきっかけとなり、ついでことなによる口論、

そして祐斗が口を挿んだことで拗れてしまったのだ。

自分の眷属が喧嘩を吹っ掛けてしまったため、

どうしようかと苦慮していたリアスに、ゼノヴィアが

「リアス・グレモリー眷属の力を、なにより『先輩』の力を見るのも面白い」と、

喜んでその喧嘩を買ってしまったのだ。

戦う場所は球技大会練習場で、朱乃が丁寧に結界を張ってくれた。

あとは戦う相手だが、ここで問題が発生。

木場や一誠は問題なかったのだが、問題はことなだった。

 

自身の眷属である祐斗と一誠は、

転生悪魔であり、神器持ちであり、それこそ戦いを経験している。

だがことなは違う。ただの人間であり、戦いには素人同然だ。

彼女曰く『友達』という力を持ってはいるが、

自分たちが知る限り、戦いに使えるものとは到底思えない。

もちろん、先ほど感じた異質な雰囲気は気になるが、今は置いておく。

そしてなにより、彼女はあくまで協力者であり、眷属ではない。

それこそ、眷属ではない人間を巻き込んだとなれば、自分のプライドが許さない。

ということで、対戦カードはゼノヴィア対祐斗、イリナ対一誠となったのだ。

 

肝心のことなは、ただ無言で4人をじっと見ている。

傍にいる小猫は、不安そうに彼女をじっと見ており、

アーシアは「頑張ってください!」と一誠と祐斗を応援していた。

 

「一誠、手合せとは言え、聖剣には十分に気をつけなさい!」

 

「分かりました!」

 

取りあえず、自分はもはや声をかけることしか出来ないので、

一誠には聖剣に気を配ることを言っておく。

そして祐斗の方へと顔を向けると、祐斗は笑っていた。

それこそ、不気味なまでに薄ら笑いを浮かべているが、目は決して笑っていない。

その視線は、先ほどからずっと聖剣とゼノヴィアに向けられている。

 

祐斗、あなたはそこまで・・・

 

祐斗の気持ちを知っているとはいえ、未だ彼の中に残るエクスカリバーへの憎悪に、

リアスは哀しい気持ちになる。

 

「なぜ笑っている?」

 

祐斗の表情を見て、ゼノヴィアが問う。

その答えは、薄ら笑い。

 

「ずっと会いたかった物に会えたからね。まさかこうも早く出会えるなんて思わなかったよ。

 これも、悪魔やドラゴンのおかげかな?」

 

自分と一誠に顔を向け、何かを呟いているが、生憎と聞こえなかった。

 

 

そして一方の一誠だが、幼馴染が悪魔に転生したことによるショックなのか、

イリナと言うエクソシストは、キラキラと目を輝かせながら、

何やら神聖とは言い難い雰囲気を発しながら、自分の(妄想)世界に突入していた。

 

「ああ!幼い頃、仲良く遊んでいた君と、まさかの悪魔になるなんて!

 兵藤一誠君、ううん、イッセーくんと呼んでいいかしら?

 主のお力になれるとイギリスで代行者になれたのに、帰ってきたらこうなるなんて!

 運命と時間は残酷にも、私とイッセーくんを引き裂いてしまったわ!

 でも、これは主の試練なのね!そうなのね。うん、きっとそうよ。

 この試練を乗り越えることで、私は新しい私へと昇華するの!

 イッセーくん、だから私に断罪されてね!」

 

「いや待てよ!俺は別に戦いたいわけじゃないし、

 話し合いで解決するなら良いって言ってるだけで・・・って、なんで聖剣を向けるんだよ!?

 いやだから話し合いで解決しよう・・・って、全然聞いてねぇ!?」

 

一誠は赤龍帝の籠手を顕現させ、倍加を開始。

そして、戦いの火ぶたは切って落とされた・・・。

 

 

 

結果から言えば、祐斗と一誠の負けだった。

聖剣という、悪魔(自分たち)からすれば相性が悪い相手だったのもあっただろう。

しかも祐斗は、憎しみが先に出ているせいか、普段のように速さで挑んでいたが。

ゼノヴィアというエクソシストは、それを全て切り払ってしまった。

それだけでも、彼女が相当の実力者と窺えた。

傍から見れば、双方ともに拮抗しているようだったが、悪魔である祐斗からすれば、

聖剣という、悪魔を殺す必殺の兵器に対面するだけでも、

じりじりと体力を、精神を削られていく相手だっただろう。

最終的には真正面から斬りかかるも、生み出した魔剣を破壊され、柄による腹部の殴打で倒れた。

 

一誠の方は、倍加をして身体能力をあげ、

イリナというエクソシストの動きに追い付こうと必死だったが、

彼女の軽業師のような身軽な動きに翻弄されっぱなしであった。

一誠の動きを見ると、まだまだ訓練しなければと思うも、

イリナと言うエクソシストも相当な実戦経験者だと解った。

途中、一誠が洋服破壊(ドレスブレイク)を行おうとし、彼女が避けた結果、

『偶然』にもことなから逸れて、小猫とアーシアに突っ込み、二人の服を破壊。

小猫に見事な蹴りをお見舞いされるというアクシデントがあった。

まったく一誠ってば!それなら私の服を・・・。

 

ことなが、「ありがとう」と呟いたのが聞こえた気がした。

 

そして敗北後、祐斗は私の制止を聞かずに去っていった。

去っていく祐斗の姿に、私はただ自身の無力さを知らされる。

 

「どうして・・・」

 

祐斗の中にある、エクスカリバーの憎しみはそこまで強いというの?

私はその思いに苦しくなるも、悩むなら後だ。

今は、もう一つの問題へと目を向けた。

 

 

 

「待ちなさい、ことな」

 

そう言って、リアス部長はことなを呼び止めた。

ことなの奴は、さっさと帰ろうとしていたのか、いの一番に部室へと移動していた。

 

「なんですか、リアスさん?」

 

くるりと俺たちの方へと向けたことなは、別段、普段と変わらなかった。

あれ?なんか今、凄い違和感があったような・・・。

 

「さっきのアレは何なの?」

 

「何の話ですか?」

 

リアス部長の言葉に俺は、そういえば、

さっき部室でことなから感じた異質なモノを思い出した。

それに、ことなの奴、見たこともないような恐い雰囲気だったな、まるで木場みたいに。

 

「誤魔化さないで。あの時ことなから感じた異質な感じ、アレは何なの?

 それに、祐斗が止めなかったら、何をする気だったの?」

 

リアス部長の言葉に、ことなは「ああ、あれですか」と思い出したように答える。

 

「いえ、少し話し合いをしたいなぁ、と思ったんですよ。

 それこそ、一対一で。でも木場さんに止められてしまったので」

 

ことなの言葉に、俺や他のみんな、リアス部長も首を傾げる。

 

「それはどういう意「あー!そう言えば!」

 

ことなはリアス部長の言葉を遮ると、部長の前まで移動し、頭を下げた。

 

「すみませんでした、リアスさん!

 私、リアスさんが交渉してくれてたのに、自分のせいで滅茶苦茶にしてしまって!」

 

「まあ、ことなだけのせいではないけど、それでことな、今の言葉の意味を・・・」

 

「私、自分の町が巻き込まれていると知って、それで頭がカッー!となって、

 そう思ったら、いつの間にか口を挿んでしまっていて・・・本当にすみませんでした!」

 

部長の言葉を遮ることなの言葉に、

俺は、どうやら答えるつもりはないんだな、と感じた。

部長もそう思ったらしく、半ば諦めの表情をする。

 

「まぁ、いいわ。ことなも眷属ではないけれど、私の大切な仲間だもの。

 でも次からは気をつけなさい」

 

「はい!」

 

ことなはそう答えると、直ぐに部室の方へと走って行った。

 

「今は無理でも、次の機会があるもの。

 それにしても、一体どうすればいいのかしら・・・」

 

溜息を吐く部長を見て、俺はある決心をすることなった。

木場、俺は絶対にお前をはぐれなんかにさせないぜ!

 

 

 

 

 

 

「僕は、みんなの為にも聖剣を破壊しないといけないんだ・・・!」

 

先ほどの手合いで受けた痛みが、まだ自分の身体を蝕んでいる。

当分立ち上げれないと言われたが、彼女の言葉は正しい。

なんとか動けるものの、動けるだけでしかない。

歩く度に、受けた痛みで身体がふらつき、片膝をつきかけてただろうか。

 

「それにしても・・・」

 

僕は対峙したエクスカリバーを思い出す。

破壊の聖剣だったか、地面を抉り、僕の魔剣を悉く破壊したエクスカリバー。

確かにその名の通り、破壊に特化していた。

それに、使い手であるエクソシストも相当に経験を積んでいた。

自分の攻撃を悉く防いでいくその手腕は、嫌でも強敵を思い知らされる。

一誠君の方の聖剣も、形に捕らわれないという特性は厄介と言える。

 

「それでも僕は・・・!」

 

破壊しないといけない、あの時、みんなが死んでいく中で見たあの光景を。

僕一人が生き残ってしまったという負い目を、僕は嫌でも思い出す。

皆の無念を晴らすためにも、エクスカリバーを破壊しないといけない。

そしてそのエクスカリバーが目の前にあるというのに、自分の無力さで・・・!

僕自身に対して、許せない気持ちを抱きかけた中、耳障りな声が聞こえた。

 

 

「あっれ~?こんなことろで再び出会うなんて、

 もしかして僕ちんと君って赤い糸で結ばれてるかな~?きゃー!運命って素敵!

 でもそんなの関係ねぇ!お前は悪魔なんだから、そんな運命は俺が切り裂いてやるぜ!」

 

目を向ければ、下卑顔のエクソシストがいた。

神父の服を纏ってはいるが、その雰囲気は神父とはかけ離れていた。

フリード・セルゼン

堕天使との事件で相対し、手を組んでいた堕天使を見捨てて逃げた、はぐれエクソシスト。

相も変わら、癇に障る笑い声と顔だ。

 

「この町に潜んでいたのかい?生憎と僕は機嫌が悪いんだ」

 

「あらそうなの?うん、知ってる。で、それがどうかしたの?

 俺としては悪魔の事情なんてどーでもいいんで」

 

そういうと、フリードは剣を取り出す。

僕も、痛む身体に鞭をうちつつ何とか剣を生み出す。

 

「あれ?なんか調子悪い?

 道端の生ごみでも食べた?でも悪魔らしくていいね!

 ゴミはゴミを食ってりゃいいんだよクソ悪魔がぁぁぁぁ!」

 

「相変わらず口が悪いね、反吐が出るよ」

 

「あ、そんなこと言うんだ、俺ッチ傷ついた。傷ついたから、お前をこれでミンチの刑」

 

そう言うと、フリードの持っていた剣が光を放つ。

ま、まさかそれは・・・!

 

「聖剣エクスカリバーのお目見えだよ!御代はてめぇの命だゴラァぁぁぁ!」

 

そう言い放ち、フリードは剣を振り上げる。

その光に、僕の身体は焼け付く痛みに悲鳴を上げる。

 

「それでも、僕は・・・!」

 

痛む身体をねじ伏せ、僕はフリードの聖剣を受け止めようとした瞬間、それは聞こえた。 

 

「なにを、しているんですか?」




読みづらかったら修正します。

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