ハイスクールD×D イマジナリーフレンド   作:SINSOU

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10話

『友達』と出会ってから、私は寂しくなくなった。

お父さんやお母さんがいなかった時、一人で家にいた時、私は寂しかった。

そんな時に出会った、私の『友達』

『友達』が出来てからは、そんなことを思うことはなかった。

一緒に本を読んだり、おままごとをしたり、お歌を歌ったり、遊んだりと、

『友達』はずっと私と一緒にいたから。

『友達』は、ずっと私を助けてくれた。

寂しい時も、哀しい時も、楽しい時も、ずっと一緒にいてくれて、私を励ましてくれた。

私が小学校に行き、中学校にいき、そして高校生になった今でも、『友達』はずっと一緒だ。

舞ちゃんや桐生ちゃん等と一緒にいる時は、

私のことを思って出てこないけど、いつも私を見守ってくれている。

私のことを、私の考えを、『友達』は解ってくれる。

私にとって、かけがえのない『友達』なんだ。

 

だから私は・・・

 

 

 

木場さんの様子がおかしい。

そう感じたのは、兵藤の家でオカルト研究部の会議をすることになった後だった。

別にオカルト研究部の部室でもいいと思ったけど、

リアス部長の提案もあるし、別段、私には反対をする理由もなかった。

だから、結局は兵藤の家で会議は行われた。

 

取りあえず私は、兵藤の家にお邪魔するならと、一端は家に帰り、

着く途中で、カデンツァに立ち寄り、シュークリームを人数より少し多く買い、

お邪魔する際に、お邪魔するお礼と共に、渡しておいた。

 

そこから先は、兵藤の幼い頃のアルバム観賞だ。

いや、なんで会議から脱線したからと言えば、

兵藤のお母さんが、一誠を写したアルバムを持ってきたからである。

そこから、私を除く、リアス部長や姫島先輩、アーシアちゃんはともかく、

小猫ちゃんや木場さんまでもが、そのアルバムに釘付けである。

正直、「やめろー!やめてくれー!」と叫ぶ一誠が、少し不憫に思えたほどだ。

 

正直、私も興味はあったが、流石に気が引けたので、止めておいた。

半ばしっちゃかめっちゃか中で、私は兵藤のご両親を見ていた。

うん、いい人だと思う。本当に良い人だと思う。

というか、どうしてこのご両親から、あの変態が生まれたのか、疑問に思えるほどだ。

突然変異?チェンジリング?もしや、なにか謎の電波でも受信したのかな?

そんなレベルだ。

 

そんな大変失礼なことを考えている中、私は何かを感じ、そちらに目を向けた。

見れば、木場さんが兵藤のアルバムを、まるで射抜くように、目を凝らしていた。

殆ど見ることのない、珍しい表情の木場さんに、

私は何か面白い物でも見つけたのかな?と思い、後ろから写真を見ようと覗きこんだ。

 

「? 木場さん、何か面白い写真でもありましたか?」

 

そう言って覗きこむと、そこに写っていたのは、

やんちゃな子供が二人と男の人と、そして不思議なものだった。

兵藤のアルバムなのだから、子供の一人は、兵藤なのだろうか。

いや、これ(やんちゃな子供)がどうしてこう(覗き魔の変態)なった。

いけない、思考が変な方向に行った。私は頭を振り、写真に目を戻す。

 

もう一人の子供と男の人は、多分、兵藤の知り合いなんだろうか。

だが、それよりも気になったのは、その男の人が抱えている物だ。

それは剣だ。

色々と装飾で飾られたそれは、博物館で目にするような、

そんな雰囲気を、写真越しからでも感じた。

骨董品なのかな?

 

「これに見覚えは?」

 

その声に、私は違和感を感じた。いつもの木場さんじゃないような、そんな違和感。

見れば、兵藤も少し目を開き、戸惑っているようだ。

 

「いや、ガキの頃だから、記憶があんまなくてな・・・」

「そうなんだ。いや、思いもかけない場所で、目にするなんてね。

 こんなことってあるんだね」

 

少し苦笑する木場さん。

でも、その声は、その目は、そしてその表情は、氷のように冷たくて

 

「これは聖剣だよ」

 

私に似ていた。

 

 

 

 

 

そして、木場さんの行動は更に違和感を感じるようになった。

表面的には、いつも通りの木場さんだった。

でも、違う。

まるで同じ曲を弾いているのに、ピアノの鍵盤が1鍵変わったことで、

別の曲になってしまったかのように、普段の姿であればあるほどに、

その違和感は強くなっていく。

 

一度、尋ねてみたこともあったが、

 

「あの、木場さん?何かあったんですか?」

 

「どうしたの夢殿さん。僕は別にいつも通りだよ?」

 

まるで、こちらを阻むかのように、木場さんは笑顔だった。

でも、目が笑っていない。

 

「そう・・・ですか。いえ、なら良いんです。

 ごめんなさい、変なこと聞いてしまって・・・」

 

「そう。ならいいかな?」

 

体調を聞こうにも、適当にはぐらかされて、会話さえも続かなかった。

私に背を向ける木場さんの姿を、私は、不安に感じながら、見るしか出来なかった。

 

 

そんな中でも、色々と時は過ぎ、

実は駒王学園の生徒会長も、生徒会メンバーもじつは悪魔だったとか、衝撃的な事実が発覚した。

もう、この学園は何なんでしょうか。

いや、何度も書類を提出したり、雑用の手伝いをするなど、

私は何度も生徒会室に足を運んだわけだけど、全く気付けなかった。

まあ、私にはそんな霊感なんてないんですけどね。あははは・・・。

しかも、支取生徒会長は、実はシトリー家の次期当主だとか。

え、もしかして駒王町って、実は凄い場所だったの?

上級悪魔のグレモリー家の次期当主と、同じく上級悪魔のシトリー家の次期当主。

なんだろう、胃が痛くなってきちゃった。

 

でも、リアス先輩も、蒼那生徒会長も、この学園を、町を大切にしてくれている。

それがまだ信じられるのであれば、私にはそれでいいと思う。

それが、私が信じられることだ。

 

 

 

そして、球技大会。

私は、いつも通りに雑務に動き回り、

クラス対抗では全力を出して頑張るも、徒競走では6位中3位と、

やはり身体能力の無さにを思い知らされることになった。

舞ちゃんから「うんうん、ことなちゃんはやっぱり体力がないよねー」と、

励ましなのか、それとも止めを刺しに来たのか判らない言葉をかけられた。

取りあえず、昼食の際に、弁当のおかずを一品、奪いました。

そしてランチ戦争が勃発し、双方が致命傷を負うことで決着がつきました。

 

昼食を経て、後半の部活動対抗戦。

ドッヂボールでは、妬み恨み辛みにより、兵藤『だけ』が集中攻撃を受けていた。

まぁ、学園内で有名の変態覗き魔が、なぜか学園内で有名なお嬢様先輩たちや、

マスコット、そして金髪の転入生美少女と一緒にいるのだから、

それはそれは、相当恨まれているとは思っていたが、まさかここまでとは。

 

でも、私が見ていたのはそんな兵藤ではなく、

まるで心ここに非ずのように、ボーっとしていた木場さんだった。

やはり、木場さんは何かがおかしい。

しかも、そのおかしさが段々と酷くなっている。

そんなことを思っていると、木場さんを庇おうとして、

股間にボールを受けて悶絶しながら、引き摺られながら退場する兵藤。

ああ、合掌。

そして一誠の貴い犠牲により、その怒りから、リアス部長たちが奮起。

その後、兵藤等の復帰により、オカルト研究部は無事勝利を収めた・・・はずだった。

 

 

 

 

 

 

響き渡る音が聞こえた。

リアス部長が、木場さんを叩いたのだ。

勝利を収めたものの、木場さんの行動が、リアス部長の怒りに触れたのだ。

何度か貢献したものの、明らかにどうでもいいような雰囲気を出していた。

時折、リアス部長が注意をするも、どうでもいいような対応だったのも、

リアス部長が怒った理由の一つだと思う。

そして、一瞬だが、叩かれた後に見えた、木場さんの感情の無い顔。

 

ああ、やっぱり似てる。

 

一瞬の無表情だったが、いつも通りの笑顔に戻る木場さんに、戸惑う兵藤。

そして、戸惑いつつも、何とか会話を続けようとする兵藤を、

木場さんは、割とどうでもいいように応じる。

 

「仲間か」

 

兵藤の言葉に、木場さんは表情を曇らせる。

 

「そうだぜ、木場。俺たちは仲間だろ?

 俺たちは、互いに補っていかなきゃ、駄目なんじゃねぇか?

 仲間なんだから、木場が心配なんだよ」

 

「君は・・・熱いね。

 イッセー君、僕はずっと忘れていたんだ、自分の、本来の理由をね」

 

「本来の理由・・・?」

 

兵藤の言葉に、木場は少し口元を上げ、まるで笑っているようで、泣いてるような表情する。

 

「僕はね、復讐するために生きているんだ。

 僕を、僕らを殺した、聖剣エクスカリバー。

 それに関わらった存在、全てに復讐する」

 

そして、その表情は見て、私は、

 

「それが、僕の戦う意味だったんだ」

 

ようやく、本当の木場さんの顔を、見れた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聖剣計画?」

 

兵藤の言葉に、リアス部長は頷く。

ここはオカルト研究部の部室で、

木場さんと、仕事で席を外した人たちを除いたオカルト部メンバーが、リアス部長の言葉を聞く。

 

「聖剣って言いますと、あの、よくあるゲームで出てくる武器、みたいなものですか?」

 

「ええ、ことなの言うように、ゲームなどで出てくる武器。

 聖なる力を纏い、魔族に強烈な威力を発揮するものね。でも、聖剣は実在するのよ。

 しかも、ゲームと同じように、対悪魔兵器としては必殺の兵器としてね。

 悪魔は触れただけで身を焦がし、その光ですら悪魔を弱らせ、

 斬られれば消滅させられる、まさに、魔を滅ぼすには究極と言っても良い」

 

リアス部長の言葉に、兵藤とアーシアちゃんは驚きを隠せない。

私も、ゲームや漫画、お伽話の武器が、まさに現実にあるなんて思えず、戸惑う。

 

「そして、その聖剣の代表的な物が、エクスカリバーってところかしら。

 他にも、デュランダルや天叢雲剣など、聖剣はいくつかあるわね」

 

「じゃあ、もしも聖剣を使われたら、大変じゃないですか!」

 

兵藤の言葉は声を荒げる。

私も思案する。

確かに、そんなものを持ち出されたら、

悪魔であるオカルト研究部の皆にとっては、命に係わるものだから。

兵藤の声に、リアスは落ち着かせるように、手で制す。

 

「一誠、落ち着きなさい。確かに、聖剣は私たちには恐ろしい武器よ。

 でもね、強力過ぎるが故に、聖剣を扱える存在は稀有なのよ。

 聖剣が使い手を選ぶが故にね。

 聖剣の使い手が現れるのは、数十年に一人ってほどにね」

 

「そ、そうなんですか・・・?じゃあ、聖剣計画ってのは一体」

 

少し安心した兵藤の問いに、リアス部長は応える。

 

「聖剣計画はね、数年前に教会が、聖剣の使い手を生み出すために行われた人体実験よ。

 教会が保有していた聖剣、エクスカリバーの使い手を育てる為にね。

 そして祐斗が、その生き残りなのよ」

 

「そんな・・・!教会がそんなことをするはずが・・・」

 

聖女として教会にいたアーシアちゃんが、信じられないと、声を震わせる。

確かに、信じられない内容だろう。

自分がいた場所で、まさかの人体実験が行われていたのだから。

 

「じゃあ、木場は聖剣も扱えるんですか?あいつは魔剣を使えてましたけど」

 

リアス部長は首を振る。

 

「祐斗も含めて、当時一緒にいた子供たちは全員、適性がなかったみたいね。

 だから、教会の関係者は、祐斗を含めた全ての子供たちを処分したのよ。

 聖剣を扱えない『不良品』としてね・・・」

 

「酷でぇ・・・!酷過ぎる!」

 

「主に仕える教会が、そ、そんなことをするなんて、間違ってます・・・」

 

怒りで拳を振るわす兵藤と、目に涙を浮かべるアーシアちゃん。

 

「私は、瀕死の祐斗を悪魔に転生させた。

 その時の祐斗は、聖剣に強い復讐を宿らせていたわ。

 聖剣によって全てを奪われたことに対してね」

 

リアス部長の表情が、哀しみに沈む。

 

「私は、祐斗の才能を、悪魔の生の中で、有意義に使って欲しかった。

 聖剣に捕らわれてほしくなかったから。

 祐斗の才能は、それこそ素晴らしいものと、私は思っているんだから」

 

「リアス部長・・・!」

「部長さん・・・!」

 

兵藤とアーシアちゃんの二人は、リアス部長の言葉を受け、敬意の眼差しを向ける。

 

「でも、改めて人間の悪意の恐ろしさを実感してしまうわ。

 教会の人間は、私たち悪魔を邪悪な存在と言うけれど、

 人間の悪意こそが、この世の一番の邪悪だと思うわ」

 

「部長は恐ろしくなんてありません!

 だって、俺たちのことを本当に思っていて、俺たちに優しくて!

 悪魔なんて関係ない!リアス部長は、教会の言う、邪悪なんかじゃないです!

 悪魔にだって、優しい者はいるんです!」

 

「そうです。イッセーさんは、私を助けてくれました。

 部長さんは、皆さんは、私を、受け入れてくれました。

 悪魔にも優しい人はいるんです」

 

リアス部長の憂いた顔を見て、兵藤が声を荒げ、アーシアちゃんがそれに続く。

一瞬、呆けた表情のリアス部長だが、

 

「ありがとう、二人とも」

 

と、二人に優しい笑みを向けていた。

 

 

 

 

その後、私は雑務を終わらせると、直ぐに家へと帰った。

自分の部屋で、私はベッドによこになりながら、先ほどの話を思い出す。

リアス部長はとても優しい、それは本当だと思う。

リアス部長の笑みは、安心させてしまうような、そんな力を持っている。

それこそ、兵藤やアーシアちゃんは、リアス部長を信じてる。

私も、信じてる。

 

でも、

 

『ここの領主さまのために頑張ろうが、どうせお前も捨てられる。

 いくらお前が媚びようが、悪魔は自分勝手で、自分のことしか考えないんだからな!

 あはははははははは!

 お前も私のように、大切なものを奪われる! そして私と同じになるんだ!』

 

彼女が、私に叫んだ言葉

 

『基本、利己的なのが悪魔の生き方だと思うけど?』

 

木場さんが、兵藤に放った言葉

 

そして、

 

『人間の悪意こそが、この世の一番の邪悪だと思うわ』

 

リアス部長の言葉。

 

 

「わけ、わかんないよ」

 

私は、ゆっくりと目を閉じた。


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