ハイスクールD×D イマジナリーフレンド   作:SINSOU

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修正するかもしれませんので、ご容赦ください


8話

「夢殿さんは、部屋の隅で蹲ってるけど、なにかあったのかい?」

 

私の姿を見て、木場さんが他の人に聞いている。

その声は戸惑いと困惑、そして若干の怯えが入っているように聞こえた。

そりゃそうだ、何せ、私が部室の隅で体育座りをして蹲まり、

こっちくんな、こっちを見るな、私に関わらないでくださいオーラを全開にしているのだから。

木場さんは、私の方を見た後に、もう一方の存在に目を向ける。

 

「それに、一誠君はどうして正座をしているのかな?しかも足に備品を乗せて」

 

「ことな先輩による罰、みたいです」

 

塔城さんがその問いに答え、木場さんは、その顔に更なる困惑を刻んだ。

こうなったのは、彼らが来る前に遡る。

 

塔城さんとのお話のあと、私はいつものように駆け回った。

塔城さんの言葉と、友達になれたことの嬉しさが激励となり、

私は更なる飛躍を遂げたのかもしれない。

 

そして、珍しく助っ人活動が早く終わり、時間よりもオカルト研究部に訪れることが出来た。

ふふん、今日は嫌味を言われることもないし、みんな驚くだろうなぁ、

と意気揚々と扉を開けた私が見たのは、

 

どう見ても肌着一枚の姫島先輩が、変態兵藤の指をチュウチュウと吸っている光景だった。

その瞬間、私は全てを理解してしまった。

ああそうか、覗きや盗撮な犯罪行為や猥褻なモノを持って来ても反省しなかったわけだが、

変態はとうとう一線を越えて、変態クソ野郎になってしまいやがったのか。

しかもお相手は、学園の二大お姉さまの一人、姫島先輩ではないか。

不純異性交遊は駄目だというのに、それすらも無視して変態クソ野郎はヤリヤガッタのだ。

部室はホテルじゃないんだけど、というか学校でそんなことしてるんじゃないよ。

あ、変態クソ野郎には言っても意味ないか。

それにしても、これは言い逃れが出来ない(犯罪)現場に入ってしまったものだ。

色んな意味で大問題に発展するじゃないか。

 

目の前の光景に私は目が点になるも、直ぐに我に返り、

音を置き去りにした速さで鞄から携帯を取り出して、目の前の場面をパシャリ。

扉の音に気付き、更にカメラのシャッター音が聞こえたのか、

こちらを見ている変態クソ野郎の呆然としている顔を見つつ、私は無言で戸を閉める。

そして流れるように警察に電話をしようとして、

血相を変えた変態野郎に、決死の覚悟で妨害された。

その際、私も決死の覚悟で反抗し、『友達の力』を使ってまで抵抗を果たしたものの、

指チュパ行為をしていた姫島先輩にやんわりと制止された。

 

場面を言うならば、

 

「ことな!違う!これはえっと、そう!治療だ!俺の治療の為なんだ!」

 

「近づくな触れるな話しかけるな変態クソ野郎!どこに自分の指を吸わせる治療があるんだ。

 しかも相手は姫島先輩な上に、その先輩は肌着とかおかしいよね?

 どう見ても、誰が見ても、不純異性交遊寸前の現場だったよ!

 とうとう一線を越えてヤリヤガッタな変態クソ野郎が!

 なぜか色々とやらかしても捕まらないからおかしいと思っていたけど、

 現場写真(証拠)があるから、もう言い逃れは出来ないねぇ!

 言い訳はお巡りさんに聞かせて、後はクサイ飯を食って来なさいよ!」

 

「だからそれは違うんだって!朱乃さんも説明してください!というか話聞けよ!

 いい加減にしねぇとお前を縛り上げてでも。それ(写真)を奪うぞこらぁ!」

 

「あらあら、これはどうしましょうか」

 

「そうは問屋が卸さない!お願い、この変態を抑えて!」

 

「な!?くそ!急に体が動けねぇ!これがことなの力なのか!?」

 

「あははははははは!善行には善果を!悪行には悪果を!この世の理ここにあり!

 さぁて、今までの罪を数えておきなさい!それがお前の絶望への道よ!」

 

「あの、ことなちゃん、それはちょっと待ってくれないかしら?」

 

「は?」

 

という感じである。  

 

なお、私と変態が互いに熾烈を極めていた間、

姫島先輩はニコニコ顔でそれを見ていただけで、私が電話をかける寸前で止めに入ってきた。

ところで、胸にある胸部装甲、もといメロン、いやスイカ?を私に見せつけるとか、

私に対する嫌味ですか?嫌味ですね?刈り取ってあげましょうか?捥ぎましょうか?と、

私が曇った目で見つめるも、当の先輩は気付かなかった模様。

 

話を戻すが、学園で散々犯罪行為を仕出かしておいて、

挙句に学園の二大お姉さまの一角にわいせつ行為を働くとは、

もう変態は捕まるべきではないだろうか?然り!然り!

それこそがこの学園に平和をもたらす一歩ではないだろうか?然り!然り!

というか、さっき撮った写真をばら撒くだけでも、

変態の学園生活は一瞬で終わらせられるのだが。

そう思ったが、姫島先輩からの変態擁護により、それは哀しくも阻止にされた。

別に姫島先輩は、強制されたわけでもなく、自分から進んで申し出たとか。

そして果てには、写真は削除するようにと、事情を聞いたリアス先輩に言われた。

なんで?と理由を問いただすと、一誠が困るでしょう?との返答。

訳が解らないよ。

 

 

以前のリアス先輩の結婚騒動の際に、一誠が左腕を捧げて勝利をしたのだが、

代償として左腕がドラゴンと化したのだ。

私も見せて貰ったが、ものの見事に人外の腕をしていた。

これでは日常生活も大変だろうに、と危惧していたが、

ギブスを巻くことで、治療が終わるまでの、その場しのぎをするとか言っていたと思う。

 

いやはや、自分の腕を省みずにリアス部長を助けようとするとは、

変態も少しはやるじゃないかと、その時の私は見直したのだが・・・。

なんでも、ドラゴン化した腕の魔力を吸いだせば元に戻るということが判明。

そのため、姫島先輩がその役目を担ったとのことだ。

だが、なぜ指チュパなんだ?しかも、先輩が肌着でやる、コレガワカラナイ。

しかも、ちらっと見えてしまったが、一誠は完全に鼻の下を伸ばしていたぞ。

というか、ドラゴン化の代償って説明を受け、実際に一誠の腕を見せて貰った時は、

なんとも恐ろしいものだと思ったが、なんとも軽い代償なんだな、と私は思い至った。

 

だが不慮の事故とはいえ、私の心は深い傷を負ってしまい、

一誠の為の治療とはいえ、猥褻行為まがいのことをしていたし、

これで御咎めなしは許されない。

悪いことをしておいて、謝罪も反省もなく、

何の罰も受けないのは、私の心情からして許されない。

 

だって、『悪いことをしたら謝るのが、罰を受けるのが普通なんだから』

 

ということで、私は一誠に正座をさせ、その足の上に備品を重石代わりに置き、

リアス先輩が来るまでそのままでいることで、一応の恩赦を出した。

姫島先輩にも、お願いですから勘違いを起こすような行為をしないでください!

と文句を言っておいたが、姫島先輩はのほほんとしていた。

 

そして私は、部室の隅に体育座りで、リアス先輩等が来るまで待機していたのだ、

死んだ魚のような目で。

一誠は必死に耐えるように悶絶し、その光景を見ていた姫島先輩は、

なぜか恍惚の表情をしていたので、第三者からすれば、とても混沌としていただろう。

現に、後からやってきた人たちの反応は殆どが同じだったから。

 

塔城さんが現れた際は、「ことな先輩になにしたんですか変態」と言って変態に詰め寄り、

木場さんは先に説明した通り、困惑を浮かべ、アーシアちゃんはおろおろするばかり。

そしてリアス先輩がやってきて、私と変態の姿に目が点になった、と言うわけだ。

 

リアス先輩は、直ぐに変態を解放するように私に言ってきた。

そして、足がしびれて動けない変態を抱き寄せ、

「可哀想」だの「痛いの痛いのとんでけー」だの、心配していた。

その時、リアス先輩の忌々しい胸部装甲を押し付けられて、

変態の顔が蕩けていたのを私は見逃さなかった。

 

なお、私に対しては、「ことはなやり過ぎ」だの、「これは一誠の為」だの、

「ちょっとぐらいなら大目にみなさい」だの、色々と言ってきた。

明らかな猥褻行為をしておいて、警察に突き出されない時点で優しいと思うのだが。

というか、だったら連絡をお願いします。

やはりというか、婚約騒動の後、リアス先輩は一誠に対して甘くなった、気がする。

どうみても、アーシアちゃんと同じような雰囲気を醸しだしているので、

私は嫌でも気付かされたのだが、だからと言って公私混同は困ると思う。

それこそ、私の報告を聞きながらも上の空だった時もあったのだから。

 

そんなことは置いといて、

私はドラゴン化の治療に対して、軽い代償だなぁと感じたわけだ。

なので私は、指で魔力を吸い出せばドラゴン化が元に戻るなら、

いっそのこと、力を求めるために全部を代償に捧げても良いんじゃないですか?

それこそ、ピンチになったらポンポンと捧げちゃえば良くないですか?

指チュパや舐めれば良いんでしょうし、と思い、リアス先輩にこの考えを提案したら、

 

『ことなって、時々恐ろしいことを考えつくわね・・・』とか、

『鬼!悪魔!この人でなし!でも部長らに舐めて貰えるなら・・・ゲヘヘエヘヘヘ』とか、

『夢殿さん、それは流石にちょっと・・・』とか、

『あらあら、ことなちゃんは面白いことを考えますわね』とか、

『ことな先輩、しっかりしてください!正気に戻ってください!』とか、

『い、イッセーさんを舐めるなんて・・・!でもイッセーさんの為なら・・・』

とかドン引きされたり、私がおかしいなどと言われてしまった。

おかしい。私は最善のことを思っての発言なのだが。

 

ちなみに、私は指チュパをする相手を『女性陣』とは言っていないのだが。

それこそ、女性陣がやれば『代償』ではなく、

一誠にとって『ご褒美』になってしまうではないか。

だがそれを言ってしまうと、現状で唯一の『男性』である木場さんに被害が行くし、

私は漫研部のように腐敗していないので、黙っておくことにした。

 

 

 

「はぐれ悪魔に関する資料はありますか?」

 

「あるにはあるけど、どうして?」

 

先ほどまでの大騒ぎは収まり、私はリアス先輩に質問してみた。

他のみんなは、契約のお仕事とパトロールに出かけていて、

いつも一緒にいる姫島先輩も今はいない。

まるで時が止まったかのような、静寂が一瞬、訪れた。

時計の針の規則正しい音だけが、部室内に響く。

リアス先輩は、少し訝しげに私を見ているが、単に疑問に思ったという表情だ。

 

「私、色々と知らなきゃいけないと思いまして。

 ほら、私、友達と襲われちゃったから、先にどんな悪魔が危険か知りたいなと・・・」

 

私は、その時に怪我をした場所に手を触れる。

怪我自体は、アーシアちゃんの『聖母の微笑』で完治をしているが、未だ包帯を巻いている。

それでも、治療する前の痛みは覚えているし、襲われた時の恐怖は未だに残っている。

それこそ、彼女が私に言った事や、自分が彼女に行った事まで。

 

「そう・・・そうね。

 ことなは私たちがいなかった時に襲われてるし、なにより人間だもの。

 この前のようなことまた起きてしまったら、それこそ問題ね。

 良いわ、これがはぐれ悪魔に関する資料よ。

 読み終えたら、私に返してね」

 

「はい!」

 

私の振る舞いと表情に思うところがあったのか、

リアス先輩は私に紙束が収まった冊子を渡してくれた。

表紙を捲れば、中にはぎっしりと紙束が挿んである。

これが全て、はぐれ悪魔に関するものか。

 

「リアス先輩、ありがとうございます!」

 

私はリアス先輩に頭を下げて礼を言う。

そして、直ぐに自分の机へに向かい、さっそく読みはじめた。

私が知りたいのはいくつかあるが、まずは『現段階で認定されているはぐれ悪魔』のみ。

私を襲ったレディプスという悪魔について。

彼女の言葉を思い出しながらも、私は資料の頁をめくる。

そして見つけた、彼女(レディプス)の資料を。

 

 

 

レディプス

Bランク該当のはぐれ悪魔 

種族:元アラクネ属の転生悪魔

特徴:声を媒介とした催眠

経緯:純血貴族の悪魔の兵士であったものの、突如主に反旗を翻し、主を殺害。

   殺害された主は、四肢と首、顔を捻じ曲げられた惨たらしい姿で発見され、

   残虐な殺害方法からして、危険存在と認定。

   なお、反旗を翻した理由は不明であり、

   悪魔の力に魅入られ、快楽目的の破壊衝動によるものだと考えられる。

 

対処:レディプスの能力は能力であるが、声を媒介としたものであることから、

   彼女の発する音波や声を封じるか、聞こえないようにする必要がある。

   推奨としては、先に彼女の喉を破壊することで、危険度は格段に下がる。

   身体能力自体は中級悪魔の『兵士』程度であり、注意すべきは『声』のみである。

   

   それを考慮して、Bランクとする。

   

 

「なに・・・これ・・・」

 

私は書かれている資料内容に驚いた。

これ(資料)から受ける印象は、彼女自身からの言葉とは真逆だ。

これじゃ、彼女は残虐な冷酷悪魔にしか思えない。

彼女が言った、彼女がはぐれ悪魔になった経緯なんて解るわけがない。

 

私は混乱した。

それこそ、その時の彼女の言葉は全て出鱈目で、私に同情を抱かせるためだったかもしれない。

でも、そうは思えない。

じゃあ、これ(資料)が嘘をついているのか?

それも、簡単には判断できない。

私は、混乱する頭を休めるために、一端、自分の目を頁から離す。

すると、頁が自身の重みで勝手に捲れだす。

慌てた私は、閉じだした頁を押さえ、ほう・・・とため息を吐く。

突如慌てた私に気付いたのか、リアス先輩が自分の方を見ていたが、

大丈夫です、なんでもありませんから、と誤魔化しておいた。

 

少しも気が抜けないわね、と内心で愚痴りながらも、

私はレディプスの頁に戻そうとして、手が止まった。

私が本に指を挿んで止めた頁に、目が留まったからだ。

 

『黒歌』

SSランクのはぐれ悪魔。

その写真を見た瞬間、私は何故か、塔城さんの姿を見た、ような気がした。


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