仮面ライダー ザ エスケープ   作:あるアルミン

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Worldescape6

「お呼びですか?社長」

 

 

「まあ、そんなに固くなら無いでくれ」

 

 

声からして男だろう。社長と呼ばれた男は呼び出した男に銀色のケースを見せ、ロックを解除して中身を見せる。

 

 

「しゃ、社長ッ!!……………これは」

 

 

「ヴァーチャルリアリティシステム、まだ半分しか完成していないがね。ーーー質量物理学者である君折り入ってお願いがあるのだが、これを完成させてほしい。完成の暁には君の名前を開発者として大々的に公表したい」

 

 

 

社長は男の肩に手を置く、ソッと静かにしかし確かに耳に残る声で、

 

 

「やってくれるね」

 

 

男は動揺な表情を見せるが、すぐケースを持つと

 

 

「やります、いえ、やらせてください!!」

 

 

男は一礼をすると、部屋を後にした。社長ーー壇 黎斗は邪悪な笑みを浮かべビルから空を眺める。その笑みには彼の野心が見え隠れして居た。

 

 

「頼んだよ、茅場 明彦君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、恭弥君、美由紀君、久しぶりだね」

 

 

「黎斗さんッ!!お久しぶりですッ!!」

 

 

翠屋、高町士郎及び高町家の面々が開業しているお菓子屋である。特にそこのシュークリームは絶品の一品でわざわざ遠くから買いに来るお客もいるとか。この店の店員の高町恭也君と高町美由希君は彼のゲーム開発の協力者で時折、この場所に来てはゲームのデバックなどを頼んでいる。

 

 

「前回の『ゲキトツロボッツ』のデバックを受けてくれてありがとう。今日はプレゼントを渡そうと思ってね」

 

 

そう言って、2人の前に銀色のケースを取り出す。ロック外しケースを開けるとそこにはヴァーチャルリアリティシステムが入って居た。

 

 

「我が社が開発したヴァーチャルリアリティシステムの完成品(・・・)第1号さ」

 

 

「うわー、すごーいッ!!ヴァーチャルリアリティシステムって確か自分がリアルにゲームの世界を体験できる最先端ゲームでしたよねッ!!」

 

 

「よく知ってるね、これは1番最初の完成品だから発売日に発売したものは形状が変わってるかもしれないけど、発売する全てのゲームにこれは対応しているから安心してくれたまえ」

 

 

そう言うと1枚のゲームを取り出す。その絵には巨大な恐竜とそれに立ち向かう鎧の戦士、そして『DRAGON KNIGHT HUNTER Z』と書かれていた。

 

 

「あー、やっぱりそのゲームのデバック目的だったんでしょ〜」

 

 

「ハハハ、バレてしまったか。で、お願いできるかな?」

 

 

「黎斗さんにはいつもお世話になってますから、分かりましたお引き受けしましょう」

 

 

 

クスクス、と笑いながらゲームとVRを受け取る恭也、ウキウキと新しいゲームに胸躍らせる美由希、そしてそれを嬉しそうに見つめる高町夫妻

 

 

「君たちに頼んで本当に良かった。さて私は別の用事があるのでこれで失礼するよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《DUMMY》

 

 

壇黎斗、いや戦道大虎は高町家と別れ、やることもあてもなく、ぶらぶらと外を歩いていた。彼の頭の中では今後の計画の見通し、計画の障害の排除、そして計画の第2フェーズの事を考えていた。

 

 

「あ、戦道くん………」

 

 

高町なのは、まさに目の上のたんこぶと言うかこの世界の中心、物語の主人公、大虎はぴくぴく、と眉にシワを寄せて明らかに嫌そうな顔をする。絶対に何か面倒なことに巻き込まれる。原作崩壊している今の世界で転生者と主人公が出会えば、それは何かが起こる前触れだと言うことだ。

 

 

「何の用だ、はっきり言ってお前に関わるとろくな事が起きない。消えろ」

 

 

「………戦道くんはなのはの事嫌いなの?」

 

 

「ああ、大嫌いだ、貴様といると吐き気がして来る。いや、貴様だけじゃないバニングスも月村も神狩に平賀、神城、お前達を見ていると本当にムカつくんだよ、小山から聞いたぞ、フェイトとか言うお前と同じ事してる奴がいるんだってな、そんでそいつに負けて、悩んでるって」

 

 

大虎はなのはに追い討ちのようにこう言い放った。

 

 

 

「ジュエルシード集めなんてやめちまえ、お前じゃ無理なんだよ。力を持ってもそれを使いこなせず、決めた事もやり遂げられない。うだうだと1人きりで悩んでるようなお前に、世界を救う事なんて出来やしないんだよ」

 

 

 

「高町ッ!!」

 

 

突如、なのはを呼ぶ声と後ろから引っ張られるなのは。そして庇うように前に出て来たのは神狩一輝、彼の目には大虎を敵と見て敵意を向けて来る。そして、顔色一つ変えず一輝を睨む大虎、一触即発、のその空気に周りには人ばかりができる。

 

 

「は、お姫様を守るナイトって訳か、お前にその子が守れるか!!………なんてな」

 

 

 

不敵な笑みを浮かべながら、その場を後にする。あいつがこれから先、一体どんな行動をするのか、少し楽しみだな。

 

 

「新ガシャット『パーフェクトパズル』と『ノックアウトファイター』の完成、そして死のデータの入手、バグスターウィルスの増殖と強化、etc、etcやる事が多いってのも困りものだな」

 

 

《ZONE》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが時の箱庭ですか」

 

 

黒いスーツに銀色のケースを片手に持ち貼り付けたような笑顔を浮かべる壇黎斗。

 

 

「お邪魔します、プレシア・テスタロッサさんはございますか」

 

 

途端、無人武装の機械がお出迎えしてくれた。しかし、黎斗が手をかざすと全ての機械兵がストップした。そして、それと同時に全ての機械兵が反旗を翻す。

 

 

「貴方、一体何者なの?」

 

 

「プレシア・テスタロッサさんですね」

 

 

「ええ、私がプレシア・テスタロッサよ」

 

 

パチパチと紫の雷を腕に纏い、明らかに威嚇する低いトーンで答える。プレシアは多少なり自分は実力者であると思っている。フェイトやあの白い娘なら殺気を当てただけで勝てる自信がある。だが、奴は、目の前の男は、そんな殺気にすらヘラヘラとした笑いを浮かべ紳士的に話しかけて来る。恐ろしい、その不気味さがより恐怖を掻き立てる。

 

 

「私は地球の企業『スマートブレイン』社長、壇黎斗と申します。この度は、貴方と交渉を申し立てに来た所存です」

 

 

「交渉?」

 

 

「ええ、私はデータが欲しいのです。貴方が開発して居た大型魔力稼働炉『ヒュドーラ』のデータを、私は貴方が求めているロストロギア『ジュエルシード』を。ね、悪くない話でしょ」

 

 

パカ、と開けたケースの中には三つのジェエルシードが入っていた。既に封印済みのそれは見間違いのない本物だった。

 

 

「未完成のヒュドーラのデータ、あなたにとって忌々しいそれを誰とも知れないものに軽々と渡すのは忍びないと思いますが、貴方が開発したそれを私が完成させる。そうすれば、より『アルハザード』へと近づけるでしょう。そうすれば貴女の願いは完遂される、またあの時の様に今度はフェイトちゃんとも一緒に笑って過ごせる日常が手に入るのですから」

 

 

それはまさに悪魔の囁きだ、魅惑、甘美、私が犯罪にまで手を染め手に入れたかったものをこの男は手を貸してくれると言っているのだ。

 

ヒュドーラ、それは私の全てを奪った忌々しい存在、だけど、またアリシアが帰って来るなら、私は悪魔に命を売ってもいい。

 

私は彼の提案に乗ったのだった。


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