とっさに別のベルトを取り出す。色の付いていないボトルのようなアイテムを2つ取り出し振る。シャカシャカと小刻みに音を立てながら、ボトルの上部分を回す。そしてベルトのくぼみ部分に2つのボトルを逆さに差し込む。
《□□□□□!!》《□□□□□!!》
《ベストマッチ!!》
突如、天井が崩れそれが変身中の大虎に落下する。しかし、その中から現れたのは、
灰色の姿をした仮面ライダーだった。
『まだ、未完成だが、仕方ない………………ッ!!?』
体から電撃が走り、火花が散る。そして返信が解けた。血を吐き膝をつく。
「あ、あの大丈夫ですか!!?」
ブラックマジシャンガールは駆け寄りながら杖を使い緑色の魔法をかける。すると痛みが引いた、
「動かないでください、ちゃんと治療しないと」
回復の魔法を重ねがけする。傷ついたからだが治っていく。
「なんで俺を助けた………」
俺を助けてなんのメリットがこいつにある?ベルトが目当てかッ!!
「目の前に傷ついている人がいたら助けるのは当然です!!」
「お前…………………………………………………馬鹿だろ?」
首筋にナイフを当てる。すでにベルトは腰に巻いている、後はこのUSBメモリ型アイテムを差し込む。それだけで超人的な力が手に入る、今まで戦ってきた奴らの中にはベルトを狙う輩も存在した。
誰も信用しようとしないのはかつて自分が信じた仲間にベルトを奪われかけたことからであり、信用すればそれが弱さとなる。
「それでも私はあなたを救いたい」
「お前じゃ無理だ、この世界の誰も俺を救えない。俺を救えるのは、俺だけだ」
ブラックマジシャンガールを突き飛ばしナイフをしまいカービィを頭に乗せ部屋を出る。あたりは出そうな程ボロボロであり廃墟と言っても過言では無い薄気味悪さを感じながら出口を目指す。部屋がわからず手当たり次第にドアを開けていく。
いくつかのドアを開けた時、図書館の様な場所を見つけた。いや図書館なのだろう、古い本が大量に並んでいる。
『1万年前、全ての生物がこの地球の支配種となる為の戦いが行われた可能性』
『鏡の中にはこの世界の裏の世界が存在する説』
『人間を殺す遊戯を生業とする種族の存在』
『古代文献に載っている電車の様な乗り物の考察』
『黄金の果実は本当に実在するのか』
『13魔族絶滅の真相』
『魔法科学の歴史 指輪編』
など、様々な歴史がまるでその場で見たかのように頭に入ってくる。頭の中に直接その記憶を埋め込まれたような感覚、だがまるで違和感を感じない。ページを開く度に匂い、痛み、感情がダイレクトに伝わってくる。カービィが不思議そうに顔を覗かせてくる。
本を閉じ俺はふと頭上を見上げる。周りは見えていない、放心状態に陥った俺は全ての本を読み漁る。周りが暗くなるまでそこにある全ての本を閲覧した。閲覧中、カービィが顔をペチペチと叩いてくるがそれすら気にならないほど本に集中していた。
「あらあら、こんな所で寝ては風邪を引きますよ」
どうやら俺は眠ってしまったらしい、かすかな意識の中、お婆ちゃんの声が頭に響いた。そんなことはどうでもいい、新しいベルトの設計………を………………
▽
「えと、あの、師匠、大丈夫なんでしょうか?」
本棚の影に身を潜め、私ブラックマジシャンガールこと、マナは師匠である大魔法使い『パチュリー・アガルサレイド・シャクルセナス』様に尋ねた。かつては天を想像し大地を割り世界そのものの自転すら意のままに操る事が出来たと聞く。その能力は年老いても衰えず、現代の最強魔法使いである私の兄『マハード』でも今の師匠の足元にも及ばない。
「安心しなさい、この子は大丈夫ですよ」
師匠がそう言うなら大丈夫なのだろう、丸いピンクボールのような生物カービィを抱えながら、魔法で彼を浮かせる師匠の後を付いて行く。
「あ、あのなんで彼は図書室から出なかったのでしょうか?」
素朴な疑問だった。
「館には色々なトラップが仕掛けられているの。あの本は私がその土地に染み込んだ記憶を呼び覚まし本にしたもの、その本を見た者は自分自身がその記憶を体験したように感じる見る見ないに関係なくね。並大抵の人間ならばあの場で発狂していたわ。この子がそうならなかった理由はこの子の心がとても強いからよ」
魔法の力は心と精神に比例する。心が荒めば荒む程弱くなる、怒りや憎しみが強ければ魔法は暴走する。最強の魔法使いとは何事にも折れず屈しない心と気高い魂を持つもののことだ。
彼は魔法使いの資質があるのかもしれない。そして師匠が認めるほどの資質、もしかしたら師匠でも至る事の出来なかった伝説の魔法、
パチュリーお婆ちゃんは東方のパチュリーじゃありません。他人の空似に近い別人です。