ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント!   作:AUOジョンソン

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「……女の扱いとか?」「……否定はできないけど肯定もしづらいこと言うのやめてくれよ」「だってそうじゃない。あんたったらあっちに女がいたら声かけて、向こうに女がいたら声かけて……なんかムカムカしてきたわね」「おいおい……まぁ、そう思わせてるのは申し訳なく思うけど……」「……むぅ。そう言われたら……まぁ……あ、こら、撫でるなっ。撫でておけば機嫌よくなると思ってるでしょ!」「はっはっは、撫でやすい所にあるからな。ごめんごめん」「あっ……むぅ。やめるの?」「……おいおい、可愛い所もあるもんだな。……その内絶対手出すな、俺」


それでは、どうぞ。


第六十二話 唯一無二の得意技

 何故か歩いてるだけでサーヴァントからのボスラッシュを受けていたのだが、一旦落ち着けたみたいだ。少し甲板で風に当たると、心地よい風が頬を撫でる。……俺の防御宝具で弱められているから心地よいだけで、たぶんそのまま吹き付けられていたら俺の一人や二人は吹っ飛んでいるくらいの風があるとは思う。それなりに速度もあるしな。いくら俺のステータスが高くとも、そもそもの重量的に抵抗できないのだ。こういう時は宝具は偉大だと感じるな。

 

「あっ、いたっ!」

 

「ん? ジャンヌ?」

 

 ばん! と勢いよく扉を開けてこちらを勢いよく指さしてくるジャンヌ。……いつになく珍しい眉の吊り上がった表情である。芋っ子のジャンヌがこんなキリッとした顔をするのは本当に珍しい。何かあったのだろうかとこちらにずんずん歩み寄ってくるのを見ていると、俺の前で立ち止まる。

 

「ギルさんっ!」

 

「お、おう?」

 

 なにやらとてもお怒りのようである。取っておいたお菓子を食べられたとき以外で見たことのない表情に俺が驚いていると、そのままの勢いでジャンヌが口を開く。

 

「卑弥呼さんも壱与さんも謙信さんも信玄さんもさっきから私とすれ違うたびに意味深な笑みを浮かべて下腹部さすってェ! なんであのラインナップに信玄さん入ったんですかねぇ!?」

 

「あー、いや、それは結構やんごとない理由があってだな……」

 

「絶対ない! ギルさんは可愛い子は見境なく手出すから手出しただけですよね!?」

 

「……すんごい押しが強いな……」

 

「……許されたければ、わかりますよね? ……まだ十回はできますよね?」

 

 できると言えばできる。……良かった、休憩しておいて。それにまだ時間はあるしな。……最後にいるであろう小碓のためにも少し抑えめに行くか。早めにジャンヌをつぶすとしよう。

 

「行きますよッ! もうみんなから空いてる部屋は教えられてるのでそこ行きますっ!」

 

 俺の手を引くジャンヌに苦笑いしながら、俺はジャンヌにつれられるままに空き部屋に入り……何とか一時間ほどでジャンヌをノックアウトしたものの、一息ついたところでいつの間にかジャンヌと入れ替わっていた小碓とさらに一時間ラウンド2を行ったことをここに記す。……カルキは来ないよな? こういうこと言うとフラグたちそうで嫌なんだが……。

 

・・・

 

「お、ようやく見つけた」

 

「は?」

 

 一人でなにやら黄昏ているっぽいマスターを見つけたのは、先ほど来た甲板であった。ジャンヌと小碓をつぶした後に部屋に行ったがおらず、他の所を探しているところでの発見であった。なんだか感動したので、マスターを抱き上げてみる。

 

「ひゃぅっ! ちょっと、急に何よっ」

 

「マスターに会えてうれしくてな。嫌だったか?」

 

「……そう言うの聞くの、ずるいと思うわ」

 

 正面から抱き上げているので、耳元で囁くようになってしまったが、マスターは照れくさそうにそう言って俺の首に手を回してきてくれた。うんうん、二人っきりだとだいぶ素直になるようになったなぁ。今までだったらもう少し暴れていただろう。それでも止めなかったら最終的には受け入れてくれるという確信はあるが。

 

「だいぶ冷えるだろう。宝具で弱めているとはいえ、上空の空気は冷たい。体を冷やす前に部屋に戻ろうか」

 

「……降ろしなさいっ」

 

「やだね。ほーれぐりぐりー」

 

「ばかっ。子供みたいなことしないのっ。……ちょっと待って、あんた肌すべすべね……!?」

 

「お、褒められて悪い気はしないな。いくらでも触っていいぞ」

 

 俺がそう言うと、はじめはおずおずと。少ししたらぺたぺたと遠慮なく俺の顔を触ってくるようになった。はっはっは、どうだどうだ。英霊王のすべすべほっぺだぞー。

 よく獣系や鬼系や神系や蛇系や姫系やらに舐められ……む? ほぼすべてか? まぁ可愛いもんだ。

 つまるところこの体はぱーぺきってことになるな。

 

「この前ジャンヌの頬も触ったけど、あの子はすべすべよりもちもちって感じなのよね」

 

「ああ、ジャンヌはほっぺたの柔らかさが持ち味だからな」

 

 引っ張ると良く伸びるのだ。一時間は時間がつぶせるぞ。

 

「そういえばマスター、帰ったらテファのこと気にしてやってくれよな」

 

「……ええ? ……まぁ、気にかけてはあげるけど……。でも、公爵家の私と繋がりがあることを示しちゃうと、あの子が困るわよ?」

 

「ああ、そうか。その場合はみんなからも興味を持たれちゃうからな……難しい所だな」

 

「ま、これから私たちの側で過ごしていくっていうなら、社会の過ごし方っていうのを学ばないとだしね」

 

 うーむ、その言い分も確かにわかるな。テファも人とのかかわり方、貴族との接し方と言うのは身につけないといけないわけだし……。

 

「そうだな。それはそれとして、困ったことがありそうなら助けてやってくれよ? 俺もしっかり見ておくけどさ」

 

「仕方ないわねぇ……」

 

 彼女にはそもそもエルキドゥもいるし、あんまり干渉するのも良くはないだろうしな。

 

「この後学院に戻ったら一度様子を見てみるよ。またその時助けが必要ならお願いしようかな」

 

「それが良いわね。私も知らないふりはできないし……。頼むわ」

 

「よっし、そうと決まれば向こうに着くまでは暇だな。一緒に寝るとしよう。……あ、その前に露天風呂作ったんだよ。一緒に入るか?」

 

「え、露天風呂ってあの外で入るお風呂でしょ? ……それ飛行船に作るって……どういう感性してんの、あんた」

 

「はっはっは、上空で露天風呂って景色がいいと思ってな。なかなか乙なもんだと思うぞ。信玄なんてさっき教えてからずっと入ってるし」

 

 そろそろふやけて溶けそうなので引き上げるついでに俺もさっぱりしようかなと思っていたのだ。

 

「ほらほら、マスターも露天風呂の寒いけどお湯が暖かいっていう不思議な状態体感しに行こうぜ」

 

「ちょっと、私はまだ行くって言ってな……お風呂って言ったわよね!? 裸になるってことじゃない! ちょっと、あんたは恋人だけどそこまで許しては……ちょっと聞いてるの!?」

 

 なんとか宥めながら一緒に露天風呂へ入ることはできた。ぶつくさ言ってはいたが、なんだかんだ気に入ってくれたようだ。まったりと温かいお風呂で寛ぎつつ、空からの景色を見るというのが新感覚だったようで、結構な時間浸かっていた。気に入ってもらえたようで何よりだ。

 

・・・

 

 

 学院に戻ってきた。久しぶり……と言うほど離れてはいなかったが、起こった事件が事件だったので、だいぶん離れていたように感じていた。こちらに帰ってきてからは荷物を片付けたり旅の疲れを癒したりしながら日々を過ごしていた。

 さて、そんな感じで一日二日過ごしていると、次のやるべきことができてくる。そう、テファがどうなってるか、である。彼女は一つ下の一年生として編入しており、すでに二週間ほどが経過している。編入と言いつつもみんなと同じ時期に入っているので、友達くらいはできているだろう、と思っていたのだが……。

 

「ええ? そんなことあるぅ?」

 

「いえ、まぁ、その……あの美しさですから。『金色の妖精』と呼ばれているようですわ」

 

 直接の知り合いは一年生にいないため、少し近い二年生からと思ってケティを誘ってお茶をしているのだが、なんとも驚くことばかりだった。……いやまぁ、人類の半分くらいはテファには勝てないだろうからなぁ……。

 

「それであの取り巻きか……」

 

 俺たちの座るテーブルから少し離れたところでは、目深に帽子をかぶっているテファが様々な学年の男の子たちから世話を焼かれ、言い寄られている姿であった。

 

「アルビオンからいらっしゃったんですよね? ギル様のお知り合いと言うことですし……オルレアン家に関係のある方なのですか?」

 

 ケティは俺のカバーストーリーの方である『アルビオン辺境伯』の知り合いなのではとあたりを付けたらしい。……まぁそうしておいた方が楽か……?

 

「それでしたら、早めに後ろ盾となってあげるのが良いかと……最近クルデンホルフ大公家のベアトリス殿下がテファニアさんのこと目の敵にしてるようなお話をたまに聞くので……」

 

「む? クルデンホルフ……? なんかそんな家聞いたな。やんごとない血筋だって」

 

「そうなんです。トリステイン王家と血縁関係にあるんですって。少し遠いんですけど」

 

「なるほどなー……」

 

 俺にもそんな奴があったな。生前は俺の血を濃く継いだりした子が一部宝具を共有出来たりして驚いたものだ。

 

「そうなると少しあれだな。テファにその辺を教育してあげないとダメかもな」

 

 あの森の中で牧歌的に暮らしてきた女の子だ。そう言う世俗のあれやこれやは確実に疎いに違いない。それにあの性格だと、この世にはちょっとした地雷を踏んだだけでへそを曲げて敵対する人間がいるってことも教えてあげねばならないか。

 ……しかし、そのクルデンホルフ大公家とやら、少し調べる必要があるか。

 

「ケティ、一年生に仲のいい子はいないかな? 少し聞きたいことがあるんだけど……」

 

「一年生に……もちろんいますわ。同じ同好会の子が。ご紹介するのは吝かではありませんけれども……」

 

 そう言うと、カップを持ったままこちらを上目遣いに見つめてくるケティ。少し表情が不安げになっているのは、これから言おうとしていることに罪悪感か何かを感じているからだろうか?

 

「その、見返りと言っては卑しいかもしれませんが……その、今度一緒にお出かけしませんか?」

 

 お出かけ。確かに最近城下町とか行ってなかったな。そうじゃなくても最近は必要な場所にしか言ってなかったから、少し息抜きも必要かと思っていたところだ。ケティのような可愛らしい子が一緒に出掛けてほしいと言ってくれるのなら、なおさら行きたくなってくる。

 

「そのくらいはお安い御用だよ。見返りと言わず、どこか出掛けたいときは遠慮せず頼ってくれ」

 

 俺がそう応えると、先ほどの暗い表情から一変し、嬉しそうな顔に変わった。

 

「まぁ! それは楽しみですわ! ありがとうございます!」

 

 楽しそうな表情で最近の同好会の話をしてくれたケティと共に、お茶のあと一年生の下へ案内してもらった。数人の一年生は急に紹介された俺のような男に驚いていたが、ケティの知り合いであること、そして俺の持ってきたお土産のお菓子が王都でも人気のお菓子だったことからすぐに打ち解けてくれた。

 

「……ふぅむ、なるほどなぁ」

 

「でも、ベアトリス殿下もそうですけど、取り巻きのお方たちもあんまり評判は良くないというか……」

 

「立場を弁えて目立たなければ特に何もないんですけど、ちょっとしたことで取り巻きの人たちが怒ったりして……」

 

「だから、最初は男性の人気も凄かったんですけれど、今ではテファニアさんが人気者になっちゃったから……もしかしたらテファニアさんに何かあるかもって不安なんです」

 

 少し打ち解けてから話を振ってみると、やはり女の子たちは独自のネットワークがあるのか、すぐに情報が集まってきた。

 

「そうだったか……ふぅむ……取り巻きの子たちの名前は?」

 

 そう聞いてみると、取り巻きの四人の子たちの名前が聞けた。家名はたしかどこかの男爵だったかどこだったかだった気がするけど、そこは大事じゃないだろう。外見的特徴と名前とを聞いて、俺は少しだけ動くことにした。……あんまりすべての困難を取り除くのは成長を妨げるからやりたくはないけれど……。大公家の子にハーフエルフの正体がばれるようなことがあればかなりまずいことになりそうだ。個人では解決しづらそうだし、そもそもテファはまだ他の人間との接し方になれていないだろう。一年後に同じような事件があれば任せようと思うかもしれないが、今は少し手助けをするとしよう。

 

・・・

 

「……あら? シーコはどこへいったのかしら?」

 

「……確かにそうですわね。朝は見たのですけど……」

 

 いつものようにお昼を済ませてティータイムを楽しんでいると、そういえば席が一つ空いていることに気づいた。いつもわたしの周りにいる中の一人がそう言えばいないなぁと気づいたのだ。……まぁ、彼女にも用事はあるだろうし、それこそお花を摘みに行っているのかもしれないし……。

 

「まぁ、すぐ戻ってくるでしょう」

 

「そうですね。あっ、このスコーンどうでしょうか? こちらのジャムで食べるととてもおいしいですよ!」

 

「あら、良いわね。……本当、美味しいわ」

 

・・・

 

「……あら? 今日はビーコもいないのね?」

 

 シーコと共にいなくなってしまったようだ。……どうかしたのかしら?

 

「最近夜に部屋にいないこともあって……何かあったのでしょうか?」

 

「うーん……あの田舎者に声を掛けようかしらと思っていたのだけど……」

 

 なんだか最近集まりが悪いですわね……。

 

・・・

 

「……ねえ、今日はエーコも?」

 

「……その、ようですね……」

 

 朝は一緒に朝食をとったからいるはずなのだけれど、こうしてちょくちょく席をはずすことが多くなった気がする。……他の貴族からの干渉かしらと思ったけれど三人とも会った時に聞いても特にそんなことはないというだけだし……。

 

「もうっ、肝心な時にいないんだからっ」

 

・・・

 

「……ついにリゼットも席を外すように……?」

 

 エーコがいなくなったあたりまではまだ少しムカつきの方が勝っていたけれど、リゼットまでこうしていなくなるようになるとどうも恐怖が勝ってくる。……これは今あの田舎者なんかに構っている暇はないのかもしれない……。

 平民のメイドが淹れた紅茶を飲み干すと、わたしはリゼット達を探すために学院に戻るのだった。

 

・・・

 

「あっ、ベアトリス殿下!」

 

「リゼット! エーコ達も。どこへいってたの!?」

 

 少し廊下を歩くと、向こう側から歩いてくる四人を見つけた。わたしをみつけると、何事もなかったかのようにやってくるが、何があったのか聞かないと……。

 

「ちょっとあなたたち。最近どこかへ行くことが多いわね。何をしてるの?」

 

「あっ……と、少々同好会の方へ……」

 

「同好会? 何か入っていたんだったかしら?」

 

「女子援護団というのに……その、お世話になっている先輩がいるものでして……」

 

 そうだったのか。……そう言えば私に学年が上の知り合いはいなかったなとふと思う。そもそも他国の人間と言うのもあって、同じ学年にすら知り合いはあまりいない。しかし、先輩……先輩か。そっち方面は少し考えていなかったな、と思う。ふぅむ、二年生や三年生に勢力を広げるのもありか。

 

「今度ご紹介いたしますね! ケティ・ド・ラ・ロッタと言う方なんです。二年生なのですが、とてもお優しくて……しかも、あのオルレアン辺境伯ともお知り合いなのです!」

 

 リゼットが少し興奮したようにまくし立ててくる。オルレアン辺境伯……最近聞くようになった、アルビオンの代行統治者として抜擢されたという、新進気鋭の貴族だったはずだ。……このトリステインの貴族にしては、ウチに頼らず上手くやっているらしい。それだけ優秀ならば、知り合っておいた方が良いかもしれない。確かオルレアン辺境伯は独身だったはず……引っかけられれば、かなりの良物件だろう。わがクルデンホルフ大公家がアルビオンを手に入れられれば、とんでもなく大きい戦果と言えるだろう。

 

「ふっふっふ……。リゼット、今度私にもそのお二方を紹介してほしいわ。ぜひ! クルデンホルフ大公家と良い関係を築きたいものですしね!」

 

「はっ! もちろんです! お二方とも、喜ぶと思いますわ!」

 

 リゼットがそう言うと、残りの三人も笑う。

 

「それが良いですわよね! 殿下も『お仲間』に入ってくれれば、とっても愉しそう!」

 

「確かに! 殿下もきっと『悦んで』下さるわ!」

 

「わぁ、とっても良い事ですわね!」

 

「ええ……本当に。早く『王さま』にお伝えしないとね……」

 

 三人がきゃいきゃいと私に笑いかけていたからか、うつむき気味のリゼットが何か言っていたような気がしたけれど、聞き逃してしまった。

 

・・・




「本当に『王さま』の言う通りになったわね」「ええ。誘ってくださったケティ先輩にはお礼をしませんと」「それに……これで『ご褒美』は私たちのものね」「まぁ! まぁまぁ! まだお昼ですわよ! はしたないですわ!」「でも楽しみなのでしょう?」「……ええ、まぁ、その……」「みんな気持ちは一緒ですわ。そしてきっと、ベアトリス殿下も……」


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