ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント!   作:AUOジョンソン

60 / 64
「これが私のっ! 完全究極決戦終幕スーパーウルトラロマンチックパーフェクトギャラクティカアルティメットシャイニングサバイブブラスターキングアームドハイパーライナーエンペラーコンプリートな必殺技!」「必殺しちゃうのか」「……土下座ですっ」「みっともないなー……。まぁ、やらかしちゃったら謝るっていうのが確かに一番の極意なのかもな」


それでは、どうぞ。


第五十九話 極意を伝えよう。

 宴会に向かい、ジョゼフからみんなに紹介され、今はいろんな貴族やらと親交を深めているところだ。小碓がいるのも確認済みで、そちらから意識を反らすためにちょっとだけカリスマを出してみんなの意識をこちらに向けるよう立ち回っている。

 マスターもこうしてドレスに身を包み、貴族然としてふるまっていると、流石は公爵家の娘と言うべきかかなり人気が出ているようだ。メイドとして謙信とジャンヌも裏方で動いてくれているらしいので、表から裏からこうして情報を集めて行こうというのだ。

 先ほどからにこやかに話はしているが、欲しい情報は中々手に入らないな。ガリアでの流行りの帽子と流行りのドレスの色ととある男爵家の恋愛事情にはとても詳しくなれたが……どこで生かせばいいんだこの情報……。

 

「楽しんでいるかな! 辺境伯殿!」

 

 さてどうしようかと思っていたところにジョゼフ登場である。ほんとこいつフットワーク軽いな……。しかしジョゼフがこちらに来たということは少しまずいな。かなり粛清をしているという噂のガリア王ジョゼフは貴族たちから恐れられているらしく、周りにいた貴族の八割くらいは苦笑いを浮かべながらどこかへ行ってしまった。残っているのはジョゼフの派閥と言うか少なくとも彼の機嫌を損ね無いような立ち振る舞いをする自信のある貴族たちなのだろう。ちなみに先ほど恋愛事情に詳しくなった男爵家の男はジョゼフ派のようだ。にこやかにこちらを見ているのがわかる。

 

「それはもう。ガリアはとても良い国ですね」

 

 美辞麗句のお手本のような言葉だが、実際に良い国ではある。ジョゼフは『無能王』と馬鹿にされているようだが、その実かなり有能な王である。以前のアルビオンに対する大船団の件もそうだし、様々な騒動に裏から手を回したり突然現れたサーヴァントを作戦に組み込める柔軟性と言いこうして何か腹に一物隠している様な奴らも自分で対応してみたりと、彼の能力は間違いなく天才のそれであると思われる。話を聞いてなんとなく理解できたのは、人柄と魔法の才の無さだけが彼に足りないものなのだろうと感じた。

 

「はっはっは、そうであるか! もちろんトリステインやゲルマニア、アルビオンなどに負けているという気もないが、それでもそう言っていただけると嬉しい限りだ!」

 

 なぁ、と周りに声を掛けると、貴族たちからは「その通り!」と言う言葉が上がってくる。うぅむ、ジョゼフ、隙の見当たらない男である……。

 こちらから切り込んでみるか……? 

 

「そうだ、今日は私の娘もここに来ていてな。良ければ辺境伯殿と顔合わせをしたいと思っていたのだが……おい、イザベラはどこだ?」

 

 ふと思い出したようにジョゼフが自身の娘を紹介しようと周りを見るが、辺りにそれらしい女の子はいない。ジョゼフもそれが意外だったらしく、周りのお付きの人間に行方を聞いている。どうやら、先ほどまではいたものの、急に飽きたと言ってどこかへ行ってしまったとのこと。……ふぅむ、娘いるのか。どんな子なんだろうか。

 

「いやはや、済まぬな。我が娘ながら我儘に育ってしまったようで、少し席をはずしているとのことだ。帰ってきたならば紹介しよう。それまではまた楽しんでいてくれたまえ!」

 

 そう言って、ジョゼフはお付きをぞろぞろと連れてどこかへ去っていく。おそらく王族用の席に戻ったのだろう。普通王族は一番上の席で他の貴族たちの挨拶を優雅に待つものであって、こうして歩き回るジョゼフのほうが少し異端扱いされるものだろう。俺も最初にジョゼフの所へ行って形式通りの挨拶をしてからこうしていろんなところを回ったりしているしな。

 

「……ギル、少し席を外すわ」

 

「む。……どうするかな」

 

 おそらくマスターは花を摘みに行きたいらしいが、流石にそこに付いていくのはよろしくない。謙信やジャンヌは今裏で動いてくれてるし……そう思っていると、ガリア貴族に扮した小碓が自然に近づいてきて、マスターと一言二言交わした後、こちらを一瞥してから去っていくのが見えた。……ナイスフォローだ。

 俺も一旦離れるべきかと思い、適当なことを言って会場から少し離れる。……ふぅむ、貴族側からのアプローチはあんまり成果が出ないかもな。兵士とかそっち側に当たってる謙信たちの方が何かを掴んでくるかもしれないな。あとはあの男爵家に対してちょっと贈り物するくらいか、と思いながらベランダに出る。夜風がとても気持ちいい。

 

「ふぅ。……ん?」

 

 ベランダから見える綺麗に手入れをされた中庭らしき場所。そこに一瞬、青い髪の毛の女の子が見えた気がした。……ふむ、ジョゼフやタバサと同じ髪の色……これは追いかける価値があるかもしれないな。……女の子だし。

 俺は素早く周囲を見渡すと、宝具を一つ起動した。俺がいなくても違和感を覚えなくなる宝具だ。これで少し俺の姿が見えなくても宴は続くだろう。素早くベランダから身をひるがえし、中庭に向けて飛び降りる。

 城からの明かりが漏れているとはいえ、中庭は薄暗く、なんの明かりもなしに歩くのは不安になりそうだ。ここを灯り無しで歩けるのは、俺のように目の良い者か、ここをよく知っているものだろう。

 

「……いた」

 

 茂みからのぞき込むと、そこには青い髪をした、気の強そうな顔の女の子。ストレスでも溜まっているのか、眉間にかなり深いしわが寄っているのがここからでも見える。……よーし、久しぶりに女の子ナンパしちゃうぞー。……なんてな。

 とりあえず声を掛けようと、荒々しくベンチに腰掛けた少女の前まで向かう。

 

「こんばんは」

 

「……なに?」

 

 つっけんどんな声色で、ゆっくりとこちらを見上げる少女。そういえば、暗いから顔も見づらいのか。少し屈もう。そう思って片膝をつき、少女に向けて挨拶をする。

 

「トリステインから来ました。アルビオン辺境伯です。どうぞよろしく」

 

 そう言って俺は握手のつもりで片手を差し出す。そこでようやく彼女は俺の顔を見たのか、にらみつけるような顔をしていたのが驚いたような顔に変わった。

 

「へ、へえ、そう。トリステインの……そういえばお父様が挨拶するとか言ってたわね……」

 

 そっぽを向きながら、ぶつぶつとつぶやく少女。やはり、この子がイザベラで間違いないようだ。

 

「よくこんなところまで来たわね。……迷ったの?」

 

「いえ、バルコニーで夜風に当たっていたところ、こちらに歩いていく人影が見えたので、追いかけてきました」

 

 どうやらこの子には強めに行くと反発してきそうな、うちのマスターと同じ気質を感じるので、柔らか王子ムーブでまず距離を詰めることから始めようと思う。戦闘時と違って髪の毛も降ろしているし、今回は他国のパーティに参加するということもあって大人しめの服装で固めてきている。……いつもの夜王スタイルできていたらやばかったかもな。獲物を引き込もうとするホストみたいに見られていたかもしれん。

 俺の言葉を聞いて少し黙っていたイザベラ王女も、おずおずと話し始めてくれた。

 

「……変な奴。私に媚びを売っても無駄よ? 素直にお父様に……ガリア王ジョゼフに媚びを売った方が早いと思うけど」

 

「はっはっは、手厳しい」

 

 こういう子には接し方を間違えると一生仲良くなれないからな。……美しいとかかわいいとか、本心から思ってても言ったらブチ切れそうだし、ここはとっかかりだけ掴んでゆっくりやるしかないかもな。

 それからしばらく……と言っても十分ほどだが、イザベラと自己紹介やら他愛のない話をしていると、小碓から念話が飛んできた。む、マスターも戻ってきたか。

 

「……どうしたの? ……ああ、そろそろ戻るの?」

 

 少し仲良くなれたからか、寂しそうな表情をしてくれるイザベラに謝りながらベンチから立ち上がる。隣に座って話すくらいは許してくれたので、このパーティに潜り込んだ甲斐はあったというものだろう。

 

「そうなるな。……また、手紙か何かを送るよ」

 

 言葉遣いも敬語は気持ち悪いと言われたので、こうして素の言葉遣いに戻している。俺の畏まった態度って滅茶苦茶不評なんだよな……。

 

「……ん。仕方ないから待っててあげるわ。感謝することね」

 

「もちろん。中々ないからな、王女との文通なんて」

 

 最後にそう言って、再びバルコニーへ飛び移る。宝具を回収しながらマスターと合流しようと会場を歩く。

 ……パーティが終わるまでもう少し。頑張ろう。

 

・・・

 

「うあー! つっかれた!」

 

「……あんたねぇ。マスターたる私の前で、私より先にベッドに倒れこむんじゃないわよ。だらしないわねぇ」

 

「仕方ないだろ。いつもと違って完全にアウェーな状況でのパーティだったんだし、無駄に気を張ってたんだから。……来るか?」

 

「行かない!」

 

 文句を言うマスターにベッドの隣を誘ってみたが、すげなく断られてしまった。……まぁこれですぐに来るのはたぶん惚れ薬飲んだ時くらいだろう。今度飲ませるか……。

 

「じゃあボクいきまーす! どーん!」

 

 そんなマスターの横を音もなく通り抜けて、俺の隣に寝転んでくる小碓。ほんとにこの子はこういうの逃さないよなぁ……。

 

「おーよしよし。怪しいのはいたかー?」

 

「わー、なでなでだー……。んふー。変なのはたくさんいましたけどー……流石にサーヴァントはいなかったですねぇ……」

 

 ドレス姿のまま俺に甘えてくる小碓からパーティ中のことを聞いてみるが、あそこにはサーヴァントやそれに類するような存在はいなかったようだ。小碓とマスターにはもしかしたら小碓と同じように女性と言う立場で紛れ込んでいるサーヴァントがいないかとみていてもらったのだ。

 

「そういえばあんたが召喚した以外に女の英霊って見たことないわね。やっぱり少ないわけ?」

 

「ん? ……あー」

 

「ふっふっふ、それは殿がいるからだよ」

 

 俺の代わりに答えたのは、メイド服姿で部屋に入ってきた謙信だった。仕事がひと段落して戻ってきたのだろう。何故かドヤ顔腕組みでやってきていた。

 

「どういうこと?」

 

「ルイズ嬢も殿の宝具は知っているだろう? 絆を結んだ英霊を召喚するっていうやつ」

 

「え、ええ」

 

「そうなると一部の英霊以外は戦いたくないから召喚に応じないっていうのもあるんだよねぇ」

 

「それって可能なの……?」

 

 マスターの疑問ももっともだろう。……だけど、英霊の召喚と言うのは英霊側からの合意がなければ成功しないもの。壱与なんかはマスターが男性なら絶対に召喚に応じないだろうし、何だったら俺以外の召喚は基本応じないし……。

 一部俺と絆を結んでいるけど積極的に敵対するために俺以外の召喚に応じてる変わり者もいるにはいるし、俺との絆を結べず、敵対する人間に召喚される女性の英霊もいる。

 

「へー……あんたみたいな女ったらしにも口説けない英雄がいるのねぇ」

 

「……いや、口説くと殺されるというか……」

 

 北欧のあたりにいるやべーカップルとか、綺麗だなーとは思うが手を出そうとは思わんな。そこまでかかわりがないっていうのもあるし、相方と世界を壊すような殺し合いも出来ないしな……。そういうのもあって、近づかんとこ、みたいなのはある。

 

「後は、俺と相性が最悪な英霊もいるからな」

 

 絆を結ぶべきじゃない英雄もいるのだ。特にコノートの女王とかな。お互いの性質がお互いをダメにすると分かっているから、お互い絶対近づかないように気を付けているところはある。そういうところは、気が合うのかもしれないな。

 

「そういう人もいるのね……。あんたって全人類愛してるくらい言いそうなもんだけど」

 

「はっはっは、俺は聖人君子ではないからな。すごく好きな人もいれば、すごく嫌いな人もいる。特に何も思わない人もいるし、俺も普通に好みもあるしな」

 

「ふぅん……英雄にもいろいろあるのねぇ……」

 

「まぁそもそもギルさんに召喚されるかもしれないから他の人に応えてる暇はねぇ! みたいなのもありますけどね!」

 

 ジャンヌが身も蓋もないことを言い始める。……いや、英霊は座にいる英雄の分身、影法師みたいなものだし、同じ英霊が二人出てくることもあるのかもな。……もしかしてその内、自分で自分を召喚する英雄とかも出てくるかもしれないしなぁ。

 

「ま、なんにせよ俺に答えてくれるってだけでうれしいものだよ。ほら、ジャンヌも謙信もこっちくるか?」

 

「えっ、良いんですか!? ……ほ、他の人いるとか少し恥ずかしいけど……わーい!」

 

「おっと、今日はこっちもぱーてぃたいむってことかな? 私も私もー」

 

 ばふ、ぼふ、と二人が結構大きめのベッドの上に飛び込んでくる。これで俺含めて四人いることになるが、流石来賓用のベッド。全員を受け入れてくれる。

 

「本当に来ないのか? マスター?」

 

 挑発するようにマスターに声を掛けると、マスターは顔を真っ赤にしてこちらにずんずんと近づいてきた。おっと?

 

「……そこを開けなさい、小碓」

 

「ひゃ、ひゃい」

 

 なにやら背後に『ゴゴゴゴゴ……』みたいな奇妙な擬音を背負っているように見えるマスターに気圧され、小碓がおずおずと場所を開ける。そのままマスターはドレスも脱がずにドスンと座り込み、俺の胸元に倒れこんできた。

 

「……私だって、このくらいできるんだから……」

 

 そう言って、俺の手を持ち自分の体に回すマスター。……なんて可愛いんだ。

 

「……今日はみんなで大人しく寝るか」

 

 なんだか毒気を抜かれてしまった。警戒は必要だが、ここは大人しく寝るとしよう。謙信たちもそれに納得してくれたので、今日はみんな仲良く健康的に寝るとしよう。……あ。

 

「待て待て。一回起きよう」

 

「? 何かあったかい?」

 

「いや……着替えないと」

 

 いつもはこのままだんだんと服を脱いでいって最終的に全裸になるから着替えなくてもいいのだが、今日は普通に寝ようと思っているので、寝間着に着替える必要がある。マスターは。俺達は一瞬で着替えられるしな。

 

「あぁー……確かに。自動人形と私でルイズ嬢の部屋に行ってくるよ。大人しく待ってたまえ」

 

 そう言って、マスター達は一旦部屋へと戻っていった。

 

「よっと」

 

「ほあー、英霊になっていいことの一つは魔力で色々編めることですねー」

 

 いつもの服装に戻った二人を両隣に抱きしめながら、明日に向けて英気を養おうと目を閉じる。あとでまたマスターが戻ってきたらみんなで寝るとしよう。

 

・・・

 

 翌朝。謙信たちの話も聞こうと朝食のついでに情報を共有する。

 

「兵士たちの話とか、色々聞けましたよ。居場所らしきものもわかりました」

 

 謙信が言い出したのは、まさに欲しかった情報だった。

 なんでも、裏でメイドの仕事をしているときにタバサの母親を移送した兵士たちの立ち話を聞けたらしく、ここからかなり離れた城に連れて行ったという話を聞けたらしいのだ。その城の名は、『アーハンブラ城』と言うらしい。よし、これで行き先は決まったな。後はここでの用件を終わらせて、タバサの案内でその城に行くまでだ。おそらくだが、タバサへの人質として確保しているというのなら、そうそうひどいことはされないだろう。おそらくだが、タバサを呼び寄せて始末するか何かに使うかするための罠に使おうというのだろう。

 

「それならばこちらは忍び込んでタバサの母親を奪還するだけだ。兵士やあのエルフもいるかもしれないが……最悪は強襲する」

 

 そして、俺はみんなの前で、これからの構想を語る。

 

「だから、もしものために、とある英霊を召喚する」

 

 俺の中で色々と問題児扱いされている、学者系サーヴァントの内の一人、変な奴に影響を受けて自分も変になったという変わり種中の変わり種。

 ここから帰ったのち、すぐに召喚に当たるとしよう。

 

・・・

 

 ガリアでの仕事も終わり、今は再び飛行艇の上に戻ってきていた。留守番組のみんなにも情報を教え、さてこれであとは向かうだけ……となったので、甲板の上で英霊を召喚することにした。……と言うのをみんなに言ったら、全員が見学したいと言ってきたので、周りはギャラリーがたくさんだ。

 

「すごいわねぇ。『サモン・サーヴァント』を何回もできるみたいなものなんでしょう?」

 

 キュルケがぼそりとそんなことを言う。……確かに、召喚した使い魔がさらに召喚する(無制限)とか、この世界の使い魔常識からしたら結構非常識なんだろうなぁ。……まぁ、英霊界隈でも結構非常識だから、もう慣れたものだけどな。

 そんなギャラリーを意識から外しながら、魔力を回していく。この宝具は俺の体に刻まれたもの。体内をめぐる魔力が宝具に充填されていくのを感じながら、呼び出す英霊のイメージを固める。

 ……ほんと、ちょっと呼ぶのに覚悟がいる英霊だからな……。心して当たるとしよう。

 

「……よし。魔力を回す。俺の名は英霊王。我が座に縁ある英霊よ、この声、この名、この魂に覚えがあるなら応えてくれ!」

 

 口上を上げ、座から現界するための大量の魔力が体を巡り、俺の伸ばした手から目の前に働き、かたちを作ろうと集まっていく。あとは真名を開放して、この魔力に形を与えるだけだ。

 

「『全知なるや全能の星(シャ・ナクパ・イルム)』!」

 

 真名開放すると同時に風が吹き荒れ、見学しに来ている女性陣のスカートをめくりあげる。クッソ、召喚に集中しないといけないから全然見れないな……。

 すぐに風も収まり、その暴風の中心には、形を得た英霊が一人、目を閉じて俯き気味に立っていた。背格好はタバサと同じくらい。乱暴な言い方をするならロリだろう。体つきも平坦で、髪型はボブカット……と言うのだろうか。首元までの髪の長さで、顔の右側面を覆うように前髪が垂れている。服装はシンプルで、白く大きな布を頭からかぶったような、ゆったりとした服装をしている。アクセサリーもしており、綺麗に光を反射する小さな鏡のようなものが連なっている首飾りが見える。あと目を引くところは背中にある綺麗に畳まれた羽のような機械と、そこから肩を経由して指先まで覆う鎧のような金属部位。そこだけ服が通らないからか、背中は大きく開いている。

 ……やっぱり、この姿だよなぁ、と思う。とある英霊に影響を受け、自身すらも改造した、学者系サーヴァント。

 

「……ふむ。そろそろ呼ばれる頃と思って居ったぞ、小僧」

 

 口調はかなり渋い……と言うか、老人のソレだ。大体他人とか下に見てる……と言うかどうでもいいと思っているので、基本的にしゃべり方はこんな感じだ。

 

「このワシの力が必要と見える。……かっかっか。よかろうよかろう。力を貸してやろう。『素材』を借りた礼じゃしな」

 

 目を開き、こちらを見上げて拳を突き出してニッコリと笑う、少女にしか見えない英霊。

 後ろにいるマスターたちはともかく、俺の召喚した英霊たちも流石に正体はわからないはずだ。

 

「……かっかっか、気になっておるようじゃの、ワシのクラス! そして真名を!」

 

 足を開いて腕を組み、仁王立ちしたかと思うと、周りを見渡しながらそう叫ぶ。

 ……ウチのサーヴァントの中に真名聞いてわかる子いるかなぁ……。

 

「ワシのクラスはアーチャー! その真名は、アルキメデス! シラクサのアルキメデスじゃぞ!」

 

 ……そう。彼女こそは。

 人類史において数学者として名を刻み、その頭脳、経歴をもってして英霊として登録された、大発明家。

 『シラクサのアルキメデス』その人なのである。

 学者系サーヴァントなのに『学者だからと言って思考停止でキャスタークラスに甘んじるなぞ許されない』と言って自分の霊基、宝具を弄り倒し、アーチャークラス適性をもぎ取ったり、別のキャスター系天才発明家サーヴァントに触発されて自身も女性体を作ろうとして失敗し、俺の座にゾンビみたいな状態で押しかけて材料を要求してくるなど破天荒なことしかしない元おじいちゃんなのである。

 

「……私より小さいじゃない。……本当に大丈夫なの……?」

 

 一連の流れを見ていたマスターが、ぼそりと不安を口にする。

 だが、ステータス表を見る限り彼女は多方面に活躍できる優秀なサーヴァントなのだ。

 

「心配するな! このワシが召喚されたからには、お前たちの戦力に何の不安も残さぬだろう!」

 

 ……まぁ、能力はとても優秀なのだが、人格は……その分削られたのかと思うくらい不安になるものなのだが……。この際、上手に付き合っていくしかないだろう。何も悪人じゃないんだし、急に人を殺し始めたりはしないしな。

 

「これで後方支援もかなり層が厚くなってきたし、バランスの良い戦いができると思う」

 

 アーチャーだけあって宝具は遠距離攻撃だし、普通に攻撃する際も宝具ほどの威力ではないものの遠距離を攻撃できると言う由緒正しいアーチャークラスなのである。

 

「よし、なら次の目的地へ向かうぞ! アーハンブラ城だ!」

 

・・・

 

「……いやー、助かった助かった」

 

 記憶を頼りにガリアと言うところまで帰ってきたが、特に何か言われることなく次の仕事を与えられた。怪しまれないためにもここはこのガリア王と言う奴のいうことを聞いておいた方が良いだろう。それにしても、此方でいう『魔法』と言うものは面白いな。精神力をエネルギー源に、様々な現象を起こせるとは。更には『先住魔法』を扱えるエルフ……。

 

「……幸いこの体もエルフだ。あと何人か研究すれば、『先住魔法』とやらも扱えるようになるだろう。土着の精霊を利用した術式ならば……この私の星の力も、少しは取り戻せるかもしれないしな」

 

 すべては、この後の作戦がどう動いていくか……だな。

 

・・・




――ステータスが更新されました。

クラス:アーチャー

真名:アルキメデス 性別:女性 属性:秩序・善

クラススキル

単独行動:C+
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失っても一日程度現界可能。

対魔力:C(A+)
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 ……が、これは本人の素の物。彼女の戦闘時の対魔力は装備展開中に上昇する。

保有スキル

道具作成:A+
 魔術により様々な道具を作り上げる能力。
 しかし彼女の場合は魔術ではなくその時代にある素材から、様々な道具を作り上げる。

術理解明:EX
 術式を呼ばれるおよそすべての指揮を解明し、これを修復する技術。
 魔術だけではなく破損してしまった魔術回路、魔術刻印まで修復する。
 かつて魔術が実在した時代においても秘伝中の秘伝とされたレアスキルだが、戦闘面では全く役に立たない。

自己改造:A
 自分の肉体に、全く別の肉体を付属、融合させる適性。
 このランクが上がれば上がるほど、純正の英雄から遠ざかっていく。
 ……と言うのも当たり前である。彼女は怪物を目指してこのスキルを取ったのではない。
 『美しいものに自らを改造する発明家がいる』と言う事実を座に上がってから知り、『美しいものを追いかけ続けるものとして負けてられない』と自分を女性に改造し、結果このスキルを取得するに至っただけなのである。

殺戮技巧(道具):A
 アサシンやバーサーカーに該当する英霊が持つとされるスキル。
 使用する道具の『対人』ダメージ値にプラス補正をかける。
 アルキメデスの場合は本人が望まずともこの補正が掛かってしまうため、一種の呪いと言えなくもない。


能力値

 筋力:E 魔力:B 耐久:D 幸運:A 敏捷:D 宝具:A+

宝具

■■■■■■、■■■■■■(■■■■■■・■■■■■■■■■)

ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:500 最大補足:■■


誤字脱字のご報告、ご感想お待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。